翌日の朝、イェーガー達はロドニークを出た。朝から馬を進ませれば、昼になる前に公宮へ通じる街道へと出られるからだ。
「嫌な天気だ。」
イェーガーは空を見上げてそう言った。
空は暗く、濃灰色の雲が厚くたちこめいまにも一雨きそうな天気であった。
「イェーガー殿は天気をよく気になされますがどうしてですか?何か、戦術的な意味でもあるのですか?」
不意にリムアリーシャが尋ねる。
イェーガーは前を走るリムアリーシャにあっけらかんと答えた。
「ああ、それは戦術的とかじゃなくて気分の問題だよ。」
「・・・気分?」
リムアリーシャがおうむがえしに尋ねる。イェーガーは笑いながら答えた。
「ああ。旅する時に曇ってたらなんか嫌じゃないか?だからなんとなく天気を気にするようにしてるんだよ。それに、移動中に雨に降られても嫌だからな。雨に備えるっていう意味では戦術的なのかもな。」
イェーガーがそう言うとエレンは言った。
「イェーガー、それは戦術的とは言わんと思うぞ。どちらかといえば常識的だ。」
「ハハハ。そうかもしれないな。」
イェーガーがそんな感じだからかティグルとリュドミラの間で流れる剣呑な雰囲気も何処となく和らげられていた。
比較的穏やかな雰囲気にリムアリーシャはホッとしていた。というのも、エレンとリュドミラの仲が険悪であるからだ。
だが、その穏やかな雰囲気も終わりを告げた。
「止まれっ!」
ルジーナが唐突に叫び馬を止め、天魅を抜いた。
「どうしたの?ルジーナ?」
「ケッ!前をよく見やがれ!」
怪訝そうに尋ねるパリスにルジーナが不機嫌そうにそう言う。イェーガーも馬を止め目を凝らし前をよく見た。
・・・これは
「鋼糸、か。」
「そうだ。ケッ!クソッタレが!どいつだか知らねーがこの俺様を狙う奴がいるようだな。」
「別にあなたを狙ってるのでは無いと思うのだけど・・・。」
パリスもレイピアを構えながらそう言う。イェーガーも素早くダンデルガを構える。ティグルやリムアリーシャ、エレン達も既に武器を構えていた。
「面倒ね。エレオノーラ、あなたの『
「地面がえぐれて馬では進めなくなるぞ。まわりの木々も巻き込むしな。」
リュドミラの問いにエレンが答える。
『竜技』?また新しい言葉だな。後で聞いてみるか。
イェーガーがそう思った時、人の動く気配を感じた。
その瞬間、イェーガーは反射的にダンデルガを振った。
ダンデルガは違うことなくーーイェーガーに飛来する太矢を切り裂いた。
「チッ!仕掛けてきやがったか!」
ルジーナがそう叫んだ時、矢が飛来した場所から小さな人影が飛び出した。小さな人影は子供と間違えそうだったか間違いなく成人した男の顔だった。
男が細い筒を口元で構えた時、
「オラァ!」
ルジーナの天魅が男を真っ二つに切り裂いた。男は血を巻きながら地面に叩きつけられる。
「気をつけろ!こいつら、訓練されてやがる!」
「なんなのかしら?相手は暗殺団?」
パリスの質問にリュドミラが答える。
「そうよ。この連中は『
「『七鎖』?」
リムアリーシャがおうむがえしに尋ねる。
「必ず七人で行動しているという名うての暗殺集団よ。腕に鎖の入れ墨が入ってるのが見えるかしら?アレが奴らの目印よ。」
くっ・・・。つまり後少なくとも6人はいるってことか。面倒だな。森の中じゃ俺の『
イェーガーがそう思った時、一人の男が空から短刀を構えて落ちてきた。その男をリムアリーシャは冷静に剣で斬り裂く。だが、男に気を取られ反応が遅れたのか空から落ちてくる蛇の存在に気づかなかった。
「!?リーちゃん!」
イェーガーがそう叫んだが既に時遅し、蛇はリムアリーシャの胸を噛んだ。
「リム!」
エレンが叫びながら『銀閃』で蛇を斬りつけたがリムアリーシャの顔色はみるみる青白くなっていきリムアリーシャは落馬した。
「リム!」
「リーちゃん!」
イェーガーは馬から飛び降りるとリムアリーシャに駆け寄った。
くっ!こいつは毒蛇か?ここの地域に詳しくねえからなんとも言えない。取り敢えず、召喚院から支給されてる解毒薬で・・・!
だが、イェーガーが解毒薬を取り出すよりも早くにティグルが駆け寄ってくると躊躇いなくリムアリーシャの胸の傷に口をつけ強く吸って口の中の血を吐き出した。
なるほど!応急手当か!こっちはティグルに任せるか!後は・・・
イェーガーがそう思った時、空から四つの影が躍り出た。
暗殺者達が止めを刺しに来たのだ。
くそ!一か八か『勇技』で・・・!
イェーガーがそう思った時、ルジーナが動いた。
『
すると、無数の岩が舞い上がり暗殺者達を叩き潰した。
ルジーナ・・・!流石といえば流石か。
「失望したわ。エレオノーラ。臣下一人のためにここまで取り乱すなんてね。『戦姫』失格よ。いつかあなたの民をーー。」
リュドミラは最後まで言い切ることが出来なかった。
イェーガーが素早くダンデルガを振り下ろし地面に叩きつけたからだ。地面に叩きつけられたダンデルガはそこから火柱をあげて今まさに襲いかかろうとしていた『七鎖』の最後の一人を焼いたからだ。
「ーー良かったな。リュドミラサマ。今
その声は酷く冷たい声であった。魔神討伐隊隊長のルジーナが思わず言葉を失うほどに。
リュドミラは無言のまま去っていった。ルジーナは一度舌打ちをするとリュドミラに続いていなくなった。
「イェーガー・・・」
「パリス、俺なら大丈夫だ。そんなことよりルジーナの事を頼んだ。」
イェーガーはティグルに解毒薬を手渡しながらそう言った。
パリスは一度頷くと二人の後を追った。
リュドミラの良さを書けてない気が、、、>_<
ホントはいい子なのに>_<