「最期に・・・言い残す言葉はありますか?」
リムアリーシャが冷たい声音でそう尋ねる。その顔は僅かに赤く染まっているが目からは羞恥と怒りの織り混ざった光が放たれている。
「ま、待ってくれ!リーちゃん!話せばわかる!いやむしろ話をしよう!」
「話?話なら必要無いと思われますが・・・。」
イェーガーの必死の叫び虚しくリムアリーシャは静かにイェーガーに歩み寄る。
ヤバい・・・!これは本気でヤバい・・・!
イェーガーは身の危険を感じたが立ち上がる事はしなかった。いや、立ち上がれなかったのだ。リムアリーシャの放つ圧倒的な威圧感がイェーガーの行動を完全に封じていたのだ。
くそ!なんだよこれ!ルシアスと対峙した時以上の恐怖を感じるぜ!ってそんなこと言ってる場合じゃない!動け!俺の身体!うご・・・。
イェーガーがそう思った時にはイェーガーの体は宙を舞っていた。それに少し遅れてイェーガーの頭を激痛が襲った。
ああ・・・。オワッタ。
イェーガーはそんな事を思いながら地面に叩きつけられたのだった。
話は少し遡る。
イェーガー達が浴場に着いた後。
「この中にエレオノーラさん達がいるんだよな?」
イェーガーが尋ねる。
「そうね・・・。ここに案内されたということはそういうことよね。」
「ケッ、気にいらねーぜ。なんたってこの俺様があんなチンチクリンの為にここまで来なければならないのやら。」
ルジーナが不機嫌な様子でそういう。
それをパリスがとがめる。
・・・なんか、この流れパターン化してきてないか?
さてさて、そんな事はさておき。
イェーガーは浴場の入り口を見上げる。この中で合流できるかな・・・。
そう思った時、イェーガーはその気配を感じ戦慄を覚えた。
なんだ!?今、浴場の中からとんでもない程の力が・・・。
そっと、パリスとルジーナの方を見やる。二人もその力を感じたらしく臨戦態勢をとっていた。
「チッ、面倒な気配を感じるな。」
「どうする?中に入るか?」
「いえ・・・此処はこのまま待機した方が良いように思えるわ。」
パリスがそういう。
敵の数も内部構造も分からぬまま入るのは危険だ。
パリスはそう判断した。
ルジーナは不機嫌そうながらも同じ判断を下したらしくそのまま待機を選んだ。
一方でイェーガーはと言うと・・・
待機だって?だが、もし内部に魔神がいたらどうする?そうなるとあの四人は間違いなくあの世行きだ。
四人とも中にいるんならなおのこと、突入するしかない!
イェーガーはそう決意すると単身入り口から中に乗り込んだ。乗り込んだと言っても走った訳ではない。あくまで歩いて入った。
パリスとルジーナが何か呼びかけてくるがそれを無視して中に入る。
さて、中に入ったは良いがどうしたものかな。何故かさっきの気配はとんと感じられない・・・。
こちらの出方を窺っているのか?それとも・・・
などと考えながらイェーガーは廊下を歩いていた。そうしているうちに大きな部屋に入った。
ん?煙?・・・いや、湯気、というべきか。まあ、それはそうか。ここは温泉があるらしいし湯気の一つやふたーー
と、考えたところでイェーガーは目の前の人物と目があう。
そこにはリムアリーシャがいた。
・・・一糸纏わぬ姿で。
イェーガーとリムアリーシャの間の時間が唐突に止まる。だが、止まったのは一瞬だった。
次の瞬間ーー
「キャァァァァァァア!!」
リムアリーシャの悲鳴が響いたのであった・・・。
書きました。
やっちまった感はあります。が、後悔はしてません(;^_^A