魔弾の王と召喚師   作:先導光

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セレスタ

「ここがセレスタか・・・。」

《結構賑わってるな。》

 

ヴァルガスの言葉にイェーガーは頷いた。

ゲートが閉まってからおよそ一時間。イェーガーはセレスタの町についていた。

賑わってる、と言っても田舎にしてはと言う意味である。

イェーガーは道行く人々の穏やかそうな雰囲気に目をやり知らず知らずのうちに自分の育った故郷を思い出していた。と、いうのも彼の故郷もまた田舎だからだ。

・・・今はそんな事考えてる場合じゃないな。とにかく情報収集だ。

 

「すいません。」

 

イェーガーは道を歩いていた若い男に声をかけた。

 

「ん?なんだい?」

「人がよく集まる場所を知りたいのだが、どこか手頃な場所はないか?」

 

すると男は怪訝そうな目をイェーガーに向けた。

 

「いいけど・・・あんたは旅人さんか?」

「まぁそんなとこだ。」

「しっかしなんでこんな田舎に?」

 

いや。なんでと言われてもゲートを通ったらここについたんだが・・・。

とは当然言える訳もなく若干引きつった笑みを浮かべてこういった。

 

「実はこの辺に来るのは初めてでな。近くの森で迷ったんだ。」

「ああ、なるほどねぇ。」

 

男は合点がいった顔で頷いた。

 

「じゃあ、この通りの先に宿も備えた酒場があるよ。」

「そ、そうか。ありがとう。」

 

イェーガーはそう言うと足早にそこを離れた。

 

「とりあえず。酒場の場所はわかったな。」

《ああ。早速行くか?》

「ああ。」

 

イェーガー達は男に言われた通りに歩き出した。イェーガーはあたりをキョロキョロしながら歩いてた。

その所為で注意力も散慢になっていたのだろう。

案の定―

 

「キャッ!」

 

人にぶつかった。

 

「す、すまない!大丈夫か?」

 

イェーガーはそばに倒れている少女に慌てて謝り目を向ける。

少女は侍女の服を着ており栗色の長そうな髪はツインテールでまとめていた。

 

「い、いえ!こちらこそ申し訳ございません!」

 

少女はあわてて立ち上がりはしばみ色の瞳に狼狽の色をにじませてこちらを向きこう尋ねた。

 

「あの、お怪我はありませんでしたか?」

「ああ。俺は大丈夫だがあんたは?」

「いえいえ、大丈夫です。」

 

少女はそう言うが袖の部分が少し破れ、そこからわずかに血が滲んでるのをイェーガーは見逃さなかった。

 

「良ければこの薬を肘の怪我に使ってくれ。」

 

イェーガーはそう言いながらカバンから取り出したのは回復薬だった。

回復薬は召喚院の召喚師達が長く愛用している薬で程度の軽い怪我なら少しの量で治ると言う薬だ。

少女はイェーガーが薬を出したのを見て慌ててこう言った。

 

「いえいえ!それほどの怪我ではございませんので!」

「だが怪我をさせたのは間違いじゃないだろ?せめて持って行ってくれ。」

「・・・分かりました。」

 

少女はイェーガーの誠意に気づいたのか回復薬の瓶を受け取った。少女はイェーガーに一礼するとそそくさと走っていった。

 

「・・・気を付けよう。」

《だな。》

 

ヴァルガスの賛同を聞きながらイェーガーは宿屋へと向かった。

 

 

「弱ったなあ・・・。」

 

イェーガーは夕焼けに染まった道をトボトボと歩いていた。

宿屋に泊まろうとしたら、ゼルが使えなかったのだ。それからいくつも宿屋をまわったがどこもゼルが使えず泊まれなかったからだ。

 

「うーん・・・。ゼルが使えないってどういうことだよ・・・。」

《俺にもさっぱりだ。》

 

イェーガーのつぶやきにヴァルガスもそう言った。

ちっ。このままじゃあ町の中で野宿か・・・?

旅の途中で野宿するのは珍しいことでもなくイェーガーもよくやっている。だがそれはあくまで人がいない森や廃墟での話だ。流石に町の中で野宿するつもりはなかった。だがこのままでは町の中で野宿することになるだろう。

・・・それだけは嫌だ。

イェーガーがそうして頭を抱えているところに声をかける者がいた。

 

「あ、あの・・・?」

「ん?」

 

イェーガーが声のした方を向くと昼間にイェーガーとぶつかった少女がいた。

 

「あんたは昼間の・・・?」

「ティッタと言います。」

 

少女―ティッタはそう名乗った。

 

「あの・・・。あなたは旅の方ですよね?」

「そうだが?」

 

イェーガーがそう言うとティッタは少しためらったがこういった。

 

「よろしければ、お屋敷の方に来ませんか?」

「いいのか?こんな見ず知らずの旅人何か招き入れて?」

「構いません。」

 

うーん・・・ありがたい申し出だがなあ・・・。

結局いろいろ考えて一晩お世話になることにしたのだった。


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