キキーモラの館を出た近くの森でイェーガー達は話し合いを始めようとしていた。森にはイェーガー、ルジーナ、パリス、そしてルーリックがいる。
「で、話を聞こうか。なんで、お前らはあのクソガキと一緒にいたんだ?」
「イェーガーまでリュドミラ様をその様な風に呼ぶの?」
パリスが少し非難めいた目線を送ってくるがイェーガーは気にしなかった。
そんな事と言われても事実だろ?
「チッ、気にくわねーが教えてやる。俺とこの女はこの地に入ってすぐに魔神の調査を始めた。その結果、魔神がこの世界の大貴族、テナルディエってヤローの所にいる事がすぐに分かった。」
「やはり、テナルディエの所に魔神がいるのか・・・。」
イェーガーはそう呟いた。
薄々感付いてはいた。だが、やはり事実か・・・。
イェーガーは質問を続ける。
「で、それがあのクソガキとどう関係が?」
「おいおい、お前は何も調査してねーのか?イェーガーさんよー。」
ルジーナが挑発するようにそう言うとパリスが顔をしかめてたしなめる。
「ルジーナ、その辺りにしておきなさい。」
そしてイェーガーのほうに向き直ると続けた。
「リュドミラ様はテナルディエ家と交流があるわ。なんとか、彼女にテナルディエとのパイプを作って貰おうと思ったのよ。・・・まあ、この男の所為でかなり手間取ったけどね・・・。」
パリスが表情を曇らせてそう言うとルジーナは鼻であしらった。
ああ、なるほど。確かにあのクソガキとルジーナじゃあ水と油みたいな関係になりかねん。というか、ルジーナと気の合う奴がそもそもいねえ・・・。
「つまり、お前らはリュドミラを通じてテナルディエ家に潜伏している魔神を滅ぼすって事か?」
「そうだ。まあ、最もこれは俺たち、魔神討伐隊の仕事だがな。バカなお前でもこれぐらいは理解できるようだろ。」
「次はイェーガーの話を聞かせてくれないかしら?どうしてあの方達といたのか。」
パリスがそうたずねる。イェーガーはため息を一つ吐き今までの経緯を語った。
「・・・話には聞いてたけど、やはりテナルディエは非道ね。」
話を聞き終えてパリスがそう感想を漏らす。ルジーナは苛ついてる表情で言った。
「ケッ。やっぱり、てめーには面倒事ばかり纏わりつくな。まあ、マヌケなてめーにはそれがお似合いだがな。なーイェーガーさんよー。」
イェーガーはイラッとはしたが、相手はルジーナだ仕方がないと諦めた。
「イェーガーはここからどうするの?私達と共に行動するの?」
「・・・いや、俺はこのままあいつらと動く。」
イェーガーはそう言い切った。
するとルジーナが目を細めてこういう。
「まさかテメー、目的を履き違えてる訳じゃないよな?言ってみろ、俺たちの目的はなんだ?」
「魔神の討伐じゃないのか?」
「バカか!この地の調査だ!誰もこの世界の人間のために魔神を倒せなんざ言ってねーんだよ!」
その言葉を聞きイェーガーは言葉を詰まらせた。
確かにイェーガーが召喚院から依頼されたのはこの地の調査だ。魔神を発見したのはあくまで副産物の様なものでしかない。魔神が討伐するのはそれこそルジーナ達魔神討伐隊だろう。
しかし・・・
「じゃあこのまま捨てておけって言うのか?この世界の人々では魔神に敵う訳が無いんだぞ!?」
イェーガーがそう言うとルジーナは嘲笑った。
「ハッ!なんで何の縁も無いましてや異世界の人間を助けなきゃならない?今は任務が優先だろうが!」
「ルジーナ!」
パリスが咎めるようにルジーナを呼ぶ。イェーガーはさっきとはうって変わって静かに言う。
「・・・確かにそうかもしれない。今は任務が優先なのかもしれない。」
その言葉を聞いてルジーナがニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが、とイェーガーが続ける。
「だからと言って、人命を軽視するなんて俺には出来ない。助けを求めてる奴を放っていって後で後味悪い結果になるなんて、後悔はもう御免だ。」
これは意地だ。あの日、グラデンスに助けられた少年、イェーガーとしての意地。イェーガーはルジーナを真っ向から見やり答える。
「だから俺はこのまま彼らと進み自分の信じた道を辿る!それで後悔するなら本望だ!」
そして、それともと続ける。
「超絶最強召喚師のルジーナさんは魔神が怖くて仕方が無いから調査だけにしようと言うのか?」
イェーガーがそう挑発するとルジーナは目を細める。
あれはかなりキレてるな。
「テメー・・・。言うようになったじゃねえか。まだ俺様の凄さが理解できねーようだな。・・・いいぜ。テメーが言う信じた道とやらを進みやがれ。だが、その過程で俺の邪魔になる様な事があればーー」
ルジーナは自分の剣ーー覇竜剣『天魅』を抜きイェーガーにその切っ先を向ける。
「遠慮なくぶっ潰してやる。いいな。」
ルジーナは一方的にそう言うと去っていった。
「ちょ、ちょっとルジーナ!」
パリスは慌ててルジーナを追いかける。
イェーガーは後ろで控えているルーリックの元に歩み寄る。
「待たせた。行こう。」
「・・・よろしかったのですか?彼らと共に行かなくて。」
ルーリックがそうたずねるとイェーガーはルジーナ達がいなくなった後の森を見て言う。
「あいつの言うこと、分からない訳じゃない。だけど、理解はできても納得できない事なら俺にだってある。」
「ですが・・・」
「良いんだ。ーーさあ、ロドニークに行こう。お前もこっちに呼ばれてすぐの事で疲れてるだろうけど頼めるか?」
「それは大丈夫です。それでは、行きましょうか。」