「ルジーナ・・・!!」
イェーガーが驚きと困惑に満ちた声でそう言う。
ルジーナはニヤリと笑いながらイェーガーを見る。イェーガーは取り敢えずラヴィアスから手を離す。するとリュドミラも静かに後ろに下がっていく。
「誰だお前は?」
エレンが不機嫌極まりないという風に尋ねる。ルジーナはイェーガーを睨むと怒鳴った。
「おい!イェーガー、てめー!この俺様の事を話してねえとはどういうことだ!」
その言葉にイェーガーが半ばうんざりした表情を浮かべて答える。
「いや、そもそもお前がここにいるなんて知らなかったしな・・・。つか、お前どうやってここに?」
イェーガーがそう尋ねるとルジーナはニヤリと笑い答える。
「へっ。最強の俺様はな、なんでもお見通しなんだよ。」
「・・・。」
イェーガーが半眼で見つめるとルジーナはイラっとした表情を浮かべた。
「・・・ぜってー信じてねえな。くそ、グラデンスの爺さんだよ。いつかのゼヴァルアの時のように万が一の時はてめーをサポートするように依頼されてたんだよ。」
「お師匠様が?」
ん?つまり、お師匠様はゲートが閉まる可能性を知ってたって事か。
「で?なんで俺の居場所が?」
「それは私たちがリュドミラ様と行動を共にしてたからよ。」
ルジーナの後ろから一人の女性が姿を現す。その女性は白く輝く鎧を身に纏い、長い髪を背中まで伸ばしているが清潔感がある。そして、どことなく高貴な雰囲気を醸し出している。
「久しぶりね。イェーガー。」
「パリスまでいるのかよ・・・」
イェーガーは呻くように言った。
こりゃあ、カルやセリアがこの世界に来てたとしても多分驚かないだろうな。
パリスーーランドール皇国皇帝直属の近衛兵部隊『インペリアルガード』の隊員。四堕神討伐の最中ではイェーガーに協力した仲間の一人。
「ええと、イェーガー。取り敢えず、この人たちは?」
ティグルがそう尋ねる。
「ええと、こっちの女性がパリス、んで、そこの野郎がルジーナ。二人とも俺のいた世界の仲間だ。」
「ケッ。正直気にいらねーな。」
ルジーナがそう言うとパリスが顔をしかめて言った。
「相変わらず、下劣な事を言う人ね。」
ルジーナは不快感を隠さずに応じた。
「ケッ、さすが『インペリアルガード』様は礼儀正しいなーおい。それと、おい!そこのチビ女!来て早々喧嘩ふっかけてんじゃねーぞ!」
チビ女ーーもといリュドミラは顔を真っ赤にしてルジーナを怒鳴りつける。
「誰がチビですって!?」
「はっ!誰彼構わず喧嘩をふっかけるような奴なんざチビで十分すぎるぐらいだぜ。」
そのルジーナをパリスが些かうんざりした表情でたしなめる。
「ルジーナ、もうその辺りにしておきなさい。リュドミラ様も分かってらっしゃるはずよ。」
すると、リュドミラはハッと我に返ったようになりティグルの元に歩み寄る。
「待て、貴様ティグルに何の用だ?」
エレンが尋ねる。その表情はあからさまに不機嫌が最高潮に達しているようだった。
よほど、リュドミラの事が嫌いなんだな・・・。
イェーガーが漠然とそう思った時、リュドミラがティグルに声を掛けた。
「あなたがヴォルン伯爵ね?」
「そうだけど・・・?何か用でも?」
「来なさい。貴方と二人で話がしたいの。」
リュドミラがそう言った時、エレンが言った。
「待て、話ならここでもできるだろう?それに二人で話とはどういう事だ?」
リュドミラはチラッとエレンとルジーナの方を見てから答えた。
「ここでは、邪魔が入るからよ。エレオノーラ。」
「待て、何故俺の方を一回見た?」
ルジーナが不機嫌極まりない様子で尋ねる。
「そのままの意味だと思うけど・・・。」
パリスがぼそりと呟くとルジーナがパリスを睨んだ。
ルジーナが怒鳴る前にイェーガーは慌てて提案した。
「待て、これは俺達にとっても一つの機会じゃないか?少なくとも、俺はお前らが何故あのクソガキと一緒にいるのかが分からない。」
「誰がクソガキですって!?」
リュドミラがそう怒鳴った時少しイラっとした様子でイェーガーが言った。
「いちいち叫ぶな。話が進まん。」
「ケッ、不本意だが同意だ。話し合いの件も叫ぶなって方もな。」
「そうね・・・。一度お互いの状況を確認し合った方がいいかもしれないわね。」
話が纏まるとイェーガーはエレンに尋ねた。
「エレンさん、という訳で少し話をしてくるけど何処で合流すれば良い?」
エレンはリュドミラを油断なく睨みながら答えた。
「私達もこれから出立する。ロドニークで落ち合おう。ルーリックに案内してもらえ。」