翌朝、イェーガー達は同行しているティッタやバートランを町に残しベルフォルの町をたった。
ベルフォルはテリトアールの中心となる町でオージェ子爵の屋敷があるのもこの町だ。目的地であるヴォージュ山脈まで馬で一日と言う距離だ。
「そういえば、ティグルヴルムド卿に見ていただきたい物がありました。」
そう言ってリムアリーシャがティグルに馬を寄せ数枚の紙を見せる。
なんだろ?
イェーガーも気に紙を見た。纸の中にはかなり数字が書かれていた。
「・・・何だ、これ?」
「私たちがアルサスをたってから発生している戦費です。」
ティグルが顔をしかめて尋ねるとリムアリーシャはそう答えた。
おいおい、これが戦費だって?0が5個くらい見えた気がするぞ。
「・・・俺だって百人の兵を率いたことはあるがここまでかかったことはないぞ。」
「もともと騎兵は馬がいるぶん歩兵より費用がかかります」
それに、とリムアリーシャが言葉を続ける。
「ティグルヴルムド卿が率いていたのは普段は畑を耕している者たちのことでしょう。いま、あなたが率いているのは普段から戦うために己を鍛え続けている兵です。練度が高く畑の収穫期でも問題なく戦える兵ですので給料が高いのは当然です。」
ここまで、リムアリーシャがいった言葉を聞きイェーガーは訝しく思った。
なんでリーちゃんはよりによって戦いの前にそんなことを?
《イェーガー。随分と答えに近づいてるぜ。その疑問に当たったのならもう一歩だ。》
ヴァルガスがイェーガーに語りかける。
その口調だとお前は何か気づいたのか?
《まあな。》
ふぅん・・・。
《・・・全然信じてないだろお前。》
なんのことかな?
イェーガーはヴァルガスにシラをきると考えを続けた。そして少し考えひらめいた。
「なるほど・・・だから今戦費の話を。」
イェーガーがそうひとりごちた時リムアリーシャがイェーガーに僅かに微笑み尋ねた。
「気づきましたか?」
「ああ。」
すると、ティグルが尋ねた。
「どういうことだ?」
「ティグル・・・考えてみてくれ。百騎でもこれだけの戦費がかかるんだ。二百もの野盗が食いつなぐとすれば相当なもんじゃないか?」
「・・・近いうちにまた山を降りるってことか。」
その言葉にリムアリーシャが頷く。
「彼らが最後に村を襲い、食糧を奪った日から考えると数日中には。」
「これ以上被害が出ないようにしなくちゃな。」
ティグルはそう言って手綱を強く握りしめた。
その翌日、ヴォージュ山脈まで半刻というところでリムアリーシャは進軍を止め軍を二つに分けた。百騎の兵を二十と八十にわけ八十のほとんどを馬からおろす。二十の兵に馬を守らせその場に残すと再び進軍を始めた。
そして、太陽が昼と朝の中間くらいにきたところで両軍は対峙した。
「イェーガー殿、どうですか?」
野盗を見るイェーガーにリムアリーシャが尋ねる。イェーガーは頷きこういった。
「一体・・・いや、二体ってとこか。だがこの程度の力なら多分俺だけでなんとかなる。」
イェーガーはただ敵を見ていただけでなく、オージェ子爵の軍を打ち破ったユニットに注意を向けていたのだ。
「どこにいるかはわかりますか?」
「・・・今はわからない。だがすぐにわかると思う。」
イェーガーがそう言った時、野盗が雄叫びを上げて襲いかかって来た。
その野盗からまず二つの影が姿を現した。
「オラァ!金目のもんをよこしなぁ!」
二つのうち斧を担いだ中年の男がそう言う。もう一人の男は若かったが二本のナイフを持ち続いている。
・・・山賊鬼サザンと大盗賊レナードか。また微妙なの出してきたなぁ。
イェーガーはそう思ったがそれでもこの世界では十分脅威だ。イェーガーはダンデルガを構えると馬からおり走り出した。イェーガーはすぐにジスタート軍から突出しサザンとレナードにダンデルガを横薙ぎに振った。
「おっと!」
サザンはそう言ってダンデルガを受け止めレナードはイェーガーに刃を振った。
「喰らうか!」
イェーガーはそう叫ぶとレナードを蹴り飛ばした。レナードは四メートル程吹っ飛んだ。
サザンは素早く下がりレナードに目をやると二人で軍から離れだした。
俺をジスタート軍から離そうという魂胆か・・・。まあいい。そっちの方が楽だ!
イェーガーはすぐに二人を追った。