イェーガーがモルザイム平原で戦いに入った頃
―帝都ランドール
アクラス召喚院のゲートの狭間に四人の人物がいた。その中の二人はカルとリムで、あとの二人のうち一人は赤い鎧を纏い黒い髪を無造作に束ねた女性で、もう一人は白を基調としたローブを着ており右目に眼帯をつけた老人であった。
老人が尋ねる。
「・・・カルや、本当に突然ゲートが閉じたんじゃな?」
「何度も言ってるだろう、グラデンスの爺さん。はっきりとはわからねえが見てた奴の話を聞く限りそうとしか思えないんだ。」
カルが老人―グラデンスにそう言う。
グラデンスはイェーガーの師匠にしてカルの育て親だ。あるところで捨て子の時のカルを見つけ村に連れて帰り村人に世話を頼みつつカルを見守っていたのだ。
というのも、彼は当時召喚師の中でも最も位の高い『召喚老』と言う位におりとてもではないが子育てを自らの手で行うのは無理があったからだ。
現在は『召喚老』と言う地位にありながら最前線で戦うがその強さは他の召喚師を遥かに凌駕し神ですら一目おいているほどだ。
「全く・・・ゲートが突然閉じるなんてあのバカも大変ね・・・。」
カルの隣で女性がそう言うとリムが泣き出しそうな顔になりこういった。
「すいませんセリアさん!やはり私が先輩を止めていれば・・・!」]
「べ、別にあなたが悪いと言うわけじゃないのよ!」
女性―セリアは慌ててそう言う。
「それにあいつがそう簡単に死にはしないわよ!」
セリアはそう言った。
というのも、セリアは以前自分と深い因縁がある魔神の討伐をイェーガーに助けてもらって以来イェーガーの強さを信じているからだ。
「ふぉっふぉっふぉっ、セリアよ果たして本当にそうかの?」
「どういうことだよ?グラデンスの爺さん。」
グラデンスの一言に真っ先に反応したのはカルだった。
カルにはグラデンスの一言が意外だったのだ。
「カルよ、わしが今回あやつに依頼したのは理由がありまたいくつかの展開も予想してたのじゃ。そのうちの一つが当たったと言うことじゃよ。」
「グラデンス様!予想していらっしゃったのにあいつを調査に出したのですか!?」
セリアの問いかけに老召喚師は頷いた。
「いかにも。」
「その予想とはなんなんですか!?先輩は無事何ですか!?」
リムの問いかけにグラデンスは笑みをこぼした。
全くあやつめ、すみにおけんわい。
「リムよ。無事かどうかは分からぬ。なにせあやつの相手はゲートを閉じることができるほどの力を持った魔神なのだからのう。」
「そんな魔神がいるのか!?爺さん!」
カルが驚きの声を上げた。
「カルよ、お主も名前ぐらいは聞いたことがあるじゃろう?相手の名はおそらく、アルトニクスじゃ。」
「・・・!!」
カルは絶句した。
アルトニクスとはカルがリーダーを務めている第二十四魔神討伐部隊『レブルエンス』こと通称『ニーヨン』が一ヶ月前から追いかけている魔神、それがアルトニクスだ。初めて交戦した時、被害は最小限で食い止められたがその力の差をまざまざと見せつけられたのだった。
「じゃが、問題は無い。すでに手はうっておるからの。」
グラデンスは笑いながらそう言った。