今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。 作:漣@クロメちゃん狂信者
蕎麦とうどんならうどん派です。讃岐うどんも稲庭うどんも好きです。でも麺類って言われると、ラーメン派です。具に海藻さえ入ってなければ、味は何でも好きです。…ただし、俗にいうスイーツ系ラーメンは除く。なんでごはんとスイーツを一緒にしようと考えたのでしょう…食事もおやつも美味しく食べてこそでしょうに…。
弟に騙されました。…餅ならまだしも、白米に砂糖使うなよ!しかも具が鮭かよ!不注意ならともかく故意って…もう、馬鹿!(深刻な語彙力の欠如)
不味かったです。
タツミside____
マズいマズいマズい!!これはかなりヤバいぞ!
「それを着てるってことは、お前ナイトレイドの奴だな?なるほど、胡散臭い山には胡散臭い奴が潜んでるぜ!!」
オレはピンチに陥っていた。
事の始まりは数時間前。ギョガン湖の任務を終え、兵舎に戻ったイェーガーズとオレとラザールさん。何故かは分からないけれど、昨夜一晩をエスデスさんの部屋で明かした俺(決して疚しいことは何も無い)は、エスデスさん、ウェイブ、クロメと四人でフェイクマウンテンに来ていた。昼はウェイブと、夜はエスデスさんと組んで探索することになり、俺はウェイブとの行動の際に隙をみて逃げることにした。
そして、先ほど危険種との戦闘に乗じて逃げ出すことに成功した……と思ったんだが。ある程度離れたところで、オレのインクルシオと同じ、鎧型の帝具を纏った奴(おそらくウェイブだと思う)に見つかってしまった。
とにかくエスデスに追いつかれるとマズい!早く離脱しないと!そう思って、戦う姿勢をとってフェイントをかけ、その隙に逃げようとしたのだが……結果は失敗。
「逃がさないぜ?腹括って戦いな!」
ウェイブ(と思しき奴)に回り込まれてしまった。相手は俺よりも戦い慣れていて、向き合っても攻撃の隙がない。くそっ、どうすれば…!
そう思ったその時だった。
フッと、上から何かが落ちてきた。ソレは地に接触すると同時に勢いよく煙を吐き出す。…煙玉?一体だれが!?
その煙が俺と相手の鎧型の両方に触れた。
それと同時に俺達は意識を失ってしまった。
ラザールside____
マグルに頼んで特製の煙型記憶置換薬の入った筒を落としてもらった。2人が意識を失うと同時に僕は急いでウェイブ君の元へ行き、中和剤を打ちこむ。これでウェイブ君は大丈夫。ちょっと記憶が曖昧なだけで、目を離した隙にタツミ君を逃がしちゃったことになる。
そして問題のタツミ君。
「…僕はイェーガーズに入れられて、調薬係をしている。僕は大臣に脅されている…」
そうタツミ君の耳元で繰り返し囁きながら、背中にタツミ君を背負い、川沿いを下るように歩き出す。
しばらくして、川辺の少し開けた場所に着くと、僕は背からタツミ君を降ろした。
「…アカメちゃん、いるんでしょ?」
ガサリと茂みが揺れ、木影からアカメちゃんが出てくる。オロチ、ナイス探知。
「…タツミを返してもらう。」
「勿論。そのためにわざわざフェイクマウンテンから離れてる此処まで運んで来たんだから。感謝してよ♪」
「…何故だ。ラザールと言ったか?お前はイェーガーズなのだろう?」
「…そうか、君には直接会ったことがなかったね。クロメちゃんから話は聞いていたから、初めて会った気がしなかったや。はじめまして、僕はラザール。アカメちゃんだよね?聞いているかもしれないけど、改めて君に言っておこうか。…僕は医者だ。戦闘員じゃないよ。少なくとも今はね。つまり君と戦う理由も必要性がない。」
「……ボスが、お前を探していた。こちら側に引き入れたいと。しかし、私はお前と話したことがない…私にはお前が分からない。だから、率直に聞こう。何が目的だ。」
「さっきの回答で納得いってないって顔だね。じゃあ、君が信じられるように…敢えてこう言おうか。タツミ君がウチにいると、僕がしていることの邪魔になる。…要するに利害の一致って奴さ。あと、僕の目的だっけ。そんなのみんなに言ってるけど、平穏に暮らすことだけだよ。そちら側に行かない理由?…僕の望みは、ナイトレイド側についたところで解決できる問題なのかな?」
「!!お前は…!」
「タツミ君、さっきウェイブ君と戦って何発か食らっているよ。早く連れ帰って手当てしてあげて。悪いけど、そろそろウェイブ君が起きるから僕が手当てしてる暇はない…今回は見逃すから行って。さ、早く。」
「…信じたわけではない。しかし、私も今回だけは感謝しておく。」
アカメちゃんはそう言うと、タツミ君を担いで森の中に消えていった。
…僕の目的の曖昧さにも気が付かないで。
「ふふっ…ありがとう、タツミ君、アカメちゃん。逃げ出してくれて、助けに来てくれて、本当にね!お陰でインクルシオに直接細工が出来たし、マーキングも出来た…ふふ、あはははははははは!!!」
「ご主人、これで良かったの~?」
「うん、助かったよ。運搬とマーキングありがとう、キノ。帰りもよろしく!」
「ぜーんぜん、大丈夫~!これ位任せて任せて~♪」
人型をとって隠れていたキノ。キノの背に乗って隠密行動してタツミ君を追ってたんだよね。…それにしても、あのオカマ科学者、タツミ君を追うみたいなんだよね…ま、記憶置換したし。最悪アイツが死んでも大丈夫でしょ。
『ご主人~、帰りましょー!』
おっと、そうこうしてる間にいつの間にか、本来の大蜘蛛に戻っていたキノ。さて、カンザシが僕のアリバイ工作をしているとは言え早く戻らないと。帰るよ、キノ。
翌日───
「…あの…本当に申し訳ありませんでした。このウェイブ深く反省しております。」
朝ナイトレイドの会議室に行くと、ウェイブ君がエスデス将軍の拷問ライト版を受けていた。何でもタツミ君を逃がした上に偶然遭遇したナイトレイドをも逃がしてしまったとか。へ、へぇ~…(棒)
「タツミを逃がしたのも注意散漫だがそれより何より…ナイトレイドを逃がしたというのが情けない。クロメ、石!!」
「んっ!」
ゴトッという音を立ててウェイブ君の足に乗せられた石。ウェイブ君は現在進行形で木製のトゲトゲした台の上に正座させられており、膝下から脛、足の甲までピンポイントの刺激が走っているはずだ。自分の体重+石の重みだ…激痛だろう。その上に今5個目の厚い石盤が重ねられた。これはツラい(確信)
「インクルシオならば中身は百人斬りのブラートだろう。ナイトレイドの中でも要注意人物だが、だから逃げられていいということにはならん。クロメ、火!!」
「んっ!」
今度は上半身裸のウェイブ君の背中に蝋燭を垂らされる。…変態なご趣味の方が使う、性的玩具の低温蝋燭ではなく、ガチの蝋燭。これは熱い(確信)
「今回はあと水責めと鞭打ち程度のお遊戯で済ませてやるが…次に失態を犯したら、私自らお前を処罰する。肝に銘じておけ。」
「…ハイ。」
……怖っ。若干罪悪感もあるし、拷問終わったらウェイブ君治してあげようっと…。すると、ガチャリといきなり開けられた扉。入ってきたのはフェイクマウンテンを捜索しに行ったセリューちゃん。
「隊長!!申し訳ありません!フェイクマウンテンを山狩りしてもタツミも賊も見つからず!コロでも追跡は不可能でした!」
「ヘカトンケイルの本分は戦闘だろう。気にするな。スタイリッシュの方はどうだったんだ?」
「独自に動かれているようですが…まだ連絡は入りませんね。」
「まぁ、望みは薄いか…」
………何だろう。嫌な予感がする。
「主、妾嫌な予感がするのじゃ…」
「奇遇だね…僕もだよ。……エスデス隊長、ちょっと僕も動いていいかな?なんか嫌な予感がするんだよね…。」
「…まぁいいだろう。許可しよう。」
「ありがと。」
「あの、隊長…そのタツミ君の件なのですが…先ほどのお話では彼が反乱軍に入る可能性があるとおっしゃっていましたが…」
「あぁ。大胆にも私を誘ったほどだからな。」
あぁ、やっぱり誘ったんだ、タツミ君。馬鹿だなぁ…この人がソッチに行くわけないじゃん。愉しい愉しい殺戮が出来るのはコッチ側なんだもの。反乱軍なんて現状を破壊する場所に彼女が行くわけ無いよ。
「もし彼が敵として現れた場合、私達はどのように対処すればよろしいのですか?」
「正直…タツミのことは今でも好きだ。……だが。それよりも部下の命が優先だ。生け捕りが望ましいがいざとなれば生死は問わん。」
「了解しました。」
「悪に染まっていた場合は裁くしかありませんもんね!」
「了解でーす。…んじゃ、僕は今日はこれで失礼しまーす…カンザシ、スピア、行くよ。」
「「御意に。」」
部屋を出て、自室に戻る途中の事だった。何かを考え込んでいたカンザシが重々しく口を開いた。
「……主、少し良いかの?大事な話があるのじゃが。」
「?いいけど…どうかした?」
嗚呼…嫌な予感がする。
王宮内の部屋に戻ってきた。依然としてカンザシの表情は暗い。聞きたくないという思いと、聞かなきゃという思い。相反する意識が僕の中で暴れている。しかし、他ならぬ彼女の頼みなのだ…聞かなければいけない。
「それで話って?」
「うむ。…主、落ち着いて聞いて欲しい。妾は…あとわずかで一度この世を去らねばならぬ。」
「…は?」
呼吸が止まった。呼吸の仕方を忘れてしまったみたいに。…幼い頃からの、僕の大切な……か…ぞく……なん…で…、
「…?…る…、………じ、………主!!!」
遠ざかっていた意識がハッと戻る。…苦しい。どうやら本当に呼吸をしていなかったみたいだ。…心臓がバクバクと音を立てているのを感じる。僕は生きている…息をする、しないと。カンザシは不安げにこちらを見ている。…しっかりしなければ。
しばらくして、少し呼吸が安定してくると、話を聞く余裕が出来てきた。でも、体に力は入んないし、ぐったりと頭が重く感じる。よろけながらもベッドに腰掛け、カンザシに続きを促す。
「…ごめ…ケホッ、取り乱した…。それで…どういうこと…カンザシ。」
「妾は、九尾の天狐じゃ。…じゃが、東方の出身では別名もあっての。妾の別名は千年九尾。名前通り、千年生きるとされておる。確かに妾は千年以上生きる…しかしじゃ、それは魂の話なのじゃよ。…百年程ならともかく、千年はこの肉体の方が保たぬ。これも妾が強い神通力を持つが故。故に、妾は約二百年程ごとに転生するようになっておる。魂はそのままに、肉体を新たに生み出して蘇るのじゃ。」
「つまり…?」
「あと十数日ほどで、妾は一度死ぬ。…この肉体が朽ちる。じゃが、少しすれば…まぁだいたい二月程度かの…転生し、妾は再び蘇る。何、僅かばかり、妾が旅に出ているとでも思っておけばよい。妾の主は、主じゃからな!転生して魂が体に馴染み次第、すぐに主の元へ帰ってこよう!」
「…カンザシ、死なない?戻ってくるの?」
「うむ、勿論じゃ!言い方が悪かったのぅ…すまぬ、主。死ではなく転生と言えば良かったのぅ。何の問題もない。」
どうやらカンザシは死なないらしい。ちゃんと帰って来てくれるらしい。…良かった。カンザシは僕がテイムした二番目の危険種。かなりの古参だ。僕が幼い頃から側にいる、母であり、姉であり、妹でもある大切な存在。
「できるだけ、早く帰って来るんだよ?」
「承知。」
スピアも後ろで涙ぐみながらうなずいている。…あ、そうだった。まだやることはあるんだった。いけないいけない。
「…さて、いきなりのことに思わぬハプニングはあったけど、やらなきゃいけないことがあるよ。スピア、カンザシ今回は2人に動いて貰う。」
「分かりました。それで私達は何をすればよろしいのですか?」
「……Dr.スタイリッシュを殺す。」
「ほぉ?救いに行けではなく、殺しに行けとな?」
「うん。そうだよ。……アイツは邪魔だ。僕とアイツが馬が合わないって言うのも勿論あるけど、さすがにそんな理由で人を殺す程子供なつもりもないよ。」
「では何故?」
「……僕の勘だよ。アイツは生かしておくと、きっと将来…僕らが自由になって本当に平穏に暮らせる日が来た時障害になる。…邪魔なんだよ。」
「それは…排除しないとですね。」
「うむ、そうじゃのぉ…話して解決出来る奴でもなし。仕方ないじゃろう。」
「うん。それでね、2人にお願い。タツミ君にはもう暗示をかけたけど…他の奴にも言ってきて欲しいんだ。“僕が無理やり働かされてる”ってね。あくまで疑心を持たせる程度でいいんだ。ナイトレイドが僕らに目を向けたり、襲ったりすることを避ける為に言ってきて欲しい。」
「「了解」」
「あ、あと。スタイリッシュは必ず2人が殺して。そして帝具を回収してきて頂戴。ナイトレイドもきっとパーフェクターを狙ってる。けど、アレはちょっと与えてみたい子がいる。」
「…もしかしてリデルにかの?」
「うん。あの子は賢い。きっとパーフェクターを扱える。」
「ではマスター、確認ですが、私達はドクターをこの手で仕留め、パーフェクターを奪う。そして、それをわざと目撃させることでナイトレイドにマスターが無理やり働かされていると伝える…ということでよろしいですか?」
「うん、完璧。よろしくね、2人共♪」
「「御意!」」
2人が部屋を出た後、リデルを呼ぶ。
「お呼びデスカ」
「リデル、その体はどう?」
「…そろそろダメデス。ヨワイし、バカですカラ。」
リデル、彼?彼女?は二級危険種。個体名は“ワイズパラサイト”。寄生虫の危険種だ。他の個体に侵入し、脳を喰い、体を奪って自分の体にする。本体自体は強くないものの、非常に高い知能を持つ。過去、エイプマンという特級危険種に寄生したワイズパラサイトが正体をバラすことなく一国の半分を落としたという話もあるくらいだ。二級とはいえ、体を得たワイズパラサイトの厄介さは特級や超級にも劣らないだろう。
僕は奪ったパーフェクターをこの子に使わせてみようと思っている。現在は地下にいた犯罪者の若い男に入っているが…リデル曰わく弱くて馬鹿らしいから物足りないだろうし…
___誰かいい奴いないかなぁ