今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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唐突ですが、スーパードクターって、格好いいですよね。



自己証明

気づけば、旅を開始して数ヶ月。野宿をしつつ街を探し、図書館を求め、情報を集めエトセトラエトセトラ。度々出会う、危険種に襲われたという商人の怪我を治療したり、病気の人に薬を安めに売ったりしてお金を稼ぎ、生計をたてる毎日が続いている。

 

初めはかなり苦労した。

まず、僕が人に話しかけられない。話しかけたらまた暴力を振るわれるのではないか、また心無い言葉が飛んでくるのではないか…。不覚にも恐怖で緊張した。…不安で怯んだ。そんな自分を自覚して気付いた感情は、ただただ不快でどうしようもない苛立ち。

 

あぁ、僕は人が嫌いなのか。

 

そう思いつくのに時間はかからなった。

他人とまともな会話などしたことがない。村では一方的に罵られるだけだった。話しかけるのは僕に寄って来てくれる小鳥や犬猫たち。カンザシたちだって危険種だ。人ではない。こればっかりは、ホントに困った。こんなところで頓挫するとは思ってもいなかったから。

 

でも、僕だって諦められるものではない。だから、勇気を持ってカンザシと一緒に話しかけに言った。しかし、ここでもまた問題が。

 

僕はまだ齢8歳である…。

 

“金のない子供の乞食行為”

“こんなガキの売る薬なんざ誰が使うかよ”

“ハァハァ、オジサンのお家においで!”

“お医者さんごっこはよそでやってくれ”

 

などなど、何度言われたことか。(なお例外の3番目においては、カンザシが笑顔で夜中に出かけて行ったので、結末は推して図るべし。)

まぁ、そう思われるのは当たり前だろう。

 

だから、僕は頑張った。人嫌い故に少し口調は荒かったが、一人一人を説得してかかった。

 

例えば、怪我人には

「とりあえず治療させて。この怪我、僕なら5日で治すよ。あんたら商人でしょ?足は商売道具じゃない?途中までお前らと行く方向一緒だし、それまであんたらに付いていくよ。5日で治んなかったら、お代はとらないよ。ほらほらお得意の損得勘定してみてよ。僕はお得だとおもうけどなぁ?…なんなら僕の命でもかける?失敗したら僕のこと殺してもいいよ。…は?だって僕失敗なんて無様な真似しないもの。いいよね?いいね。はい、5日間よろしくねぇ!」

 

病気の人には

「僕に診せてくれない?そうだね、この状態なら…10日。10日で回復の兆候見せてみせるよ。僕もちゃんと10日間この町に滞在しよう。10日経っても回復の兆しがなかったり、悪化したりしたらお金は要らないし、僕を殺してくれても構わないよ。…なんでって…大事な息子さんの命を僕に預けるんだもん、このくらいの担保は当たり前でしょ。」

 

等々。暴論も暴論、型破り、唯我独尊、傍若無人、こじつけ、理不尽、屁理屈。何だろうが言って説得してやった。ここまでくると、人嫌いも一周回って開き直っていた。僕を下に見るなんて許さないってね。もちろん、ちゃんと治してみせましたとも。実力で証明してみせたよ。

 

 

 

だから、最初は僕を侮っていた馬鹿も僕を認めるしかなくなっていく。しかも、僕の顧客は商人が中心だったから、噂の広まりも速かった。商人特有のルートってやつなのかな。

 

そんな僕に付いたあだ名は『白兎』。

白衣を着てて、東国の兎みたいに薬を作ってくれるから、というのが由来らしい。僕が商人達を治す度に、彼らが行く先々で名前を拡散したらしく、僻地の町村や商人たちの間で、そこそこ有名になってしまった。

 

実力があれば、信用される。

信用されれば、コネが出来る。

コネあれば、信頼されて、

信頼されれば、物も金も情報も回る。

とにかく“お得”ということだ。

 

 

 

 

旅をしていて気づいたことがいくつかある。

まず、ジェミニの知識の凄さ。

この国は手術をほとんど怪我人に対してしかやらないらしい。病気を手術で治すと言ったら、手術で治せるのは怪我だけだろ!?なんて真面目に言われた。例の文句で説得して、治してやったけどね。でもジェミニの知識の一端は両親から聞いたものである。僕の両親は一体何者だったんだろうね。案外、両親もバケモノだったりしたのかなぁ?まあ今となっては知るすべもないけれど。

 

 

そして、この国はどうやら少しヤバいらしい。村の人は大臣の所為だとか言ってたね。圧政も圧政。そのおかげでか大臣とその一派は甘い蜜を吸いまくっているみたい。大臣も馬鹿だなぁ、どうせ搾取するなら、搾取されている当人たちが搾取されていると気づかないようにやらないと。カリスマ性ないのかな?これじゃあいつか破綻するよ、きっと。

 

……ま、大嫌いな人間が何をしようと別にどうでもいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ?街だ、やっと到着~♪野宿10日は流石にきつかったね~、カンザシ」

 

「そうじゃのぅ、主。この街に宿があればよいが」

 

「これだけ大きい街なら流石にあるんじゃないかなぁ。兎にも角にもお風呂!お風呂に入りたい。」

 

「まったくじゃ。まぁ、宿はなくともここには主と懇意の商人も多かろ。久々にゆっくりできそうじゃ。」

 

「そうだね。ま、その前にお仕事お仕事。お金がないと何にもできないからね。取り敢えず露店の許可貰いに行こうか。」

 

2人でふぅとため息を吐いて、僕らは街に入っていった。

 

 

 

 

 

「「ありがとうございました。」」

 

そう言って今日分の薬を売り終える。お客さんに聞くと、この街にはちゃんと宿があったので、今日は宿に泊まれる。人気だというふかふかのベッドに期待。

 

宿に着いて考える。この街には大きな図書館があるそうだ。明日行ってみる予定だけれど、とても楽しみ♪入館料は取られるらしいけどね。

しかし、心配は無用。意外と僕は金持ちなのだ。まず、道中エンカウントする危険種を狩っている。その素材を得意先の商人に売る。僕たちの売る素材は傷が少ないとにんきがあるそうで、相場より少し高値で買ってもらえるから、余計お金には困らない。さらに、圧政の影響か薬を買えない人がいるから、不本意ながら闇医者もどきである僕に頼ってくる人も多い。診療費も比較的安いから、僕の腕がいいことに気づいた人は普通の医者よりも僕のところに来る人もいる。え、逆恨み?そんなもの覚える隙もなく実力で叩き潰しますが何か?おかげで何故か最近“御兎様”なんて呼ばれるけどなんでだろうね、とかすっとぼけてみたり。

こんなわけでついでに体力もつくし、腕は鈍らないし、本で世界は広がるし、なんて素晴らしいサイクルなんだろうね。

 

 

 

とりあえず今日は疲れたから、寝ることにする。

 

「「おやすみなさい」」

 

 

 




次回、帝具ゲットだぜ。
オリジナル帝具で安定のチートが漂います。微妙にクロスオーバーっぽいです。
よろしくお願いします。

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