今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。 作:漣@クロメちゃん狂信者
特殊警察
三獣士が竜船での要人の暗殺に向かって数日、彼らは死体で帰って来た。
早朝だと言うのに軍用墓地の一角に佇む女がいた。
「…リヴァ、ニャウ、ダイダラ…お前達は負けた…。つまり弱かったと言うことだ。弱い者は淘汰されて当然だ…仕方ない部下共め。」
手に持っていた花を墓に供え、その十字架に手を置く。
「仕方ないから…私が仇を取ってやろう。…帝具使いの新しい部下は今日到着か…」
そう呟いた彼女の顔に、先ほどまでの憂いの色は一切としてなかった。
“何とか7人集めましたが、配属を動かせる者となるとやはり地位の低い者かクセのある者に限られます。悪しからず。…ああ、7人なのは三獣士がいなくなった分です。特別に一人追加しておきました…が、少々難ありなのです。というか現在進行形で説得中なんですよ…。まあおそらく大丈夫だとは思いますが…後はお任せしますよ。”
昨日大臣に言われた言葉…ふふ、楽しみだ。口角を吊り上げ、最後に並んだ3つの墓を一瞥すると彼女は踵を返した。
「さて、どんなのが来るか知らんが…ちょっと遊んでみるか。」
ウェイブside____
俺はウェイブ。帝国海軍で戦っていた海の男だ。この度、帝国の特別警察から招集がかかった。栄転ってヤツだ。失礼があってはいけないと母ちゃんが持たせてくれた土産の海産物も、絶品揃いとぬかりない俺は海賊や海の危険種と戦ってきた男だ!さぁ、いざ新たな職場へ…!!
…そう決意を新たにしていた先ほどまでの自分を、ぶん殴りたい。特別警察の集合場所になんとか辿り着き、入室する。しばらくしてメンバーと思しき人物たちが集まりだすと、この会議室は混沌と化した。
ひとり、お菓子を貪り食う少女、クロメ。
ひとり、白衣を着たオカマ、Dr.スタイリッシュ。
ひとり、犬?を連れたオカマを慕う女、セリュー。
ひとり、怖い仮面?をつけた大男、ボルス。
ひとり、唯一マトモそうな優男、ラン。
そして、この俺、ウェイブ。
クロメはジッと犬もどきを見つめ、たまにオカマを睨むように横目で見る。
オカマはセリューと談笑しつつ、その他を観察。
セリューはオカマと談笑しつつ、犬もどきとじゃれ合い。
ボルスさんは茶の準備に給湯室へと消えた。
ランはそんなヤツらをニコニコと眺める。
……なんだこれ。渡されたボルスさんからの茶をちびちびと飲みながら、やり過ごす時間…つらい!この混沌とした空気の中、まだ来ていない奴を待っているが…頼む、誰かツッコミ要員をくれ!それか上司!早く来てくれ…!
そんな胃痛に耐えていた時だった。ガチャリと音を立てて、会議室の扉が開いた。そこにいたのは仮面を付けた背の高い女。その女はこの会議室を見渡すと口を開いた。
「なんだ…、お前達見ない顔だ!ここで何をしている!」
「おいおい…俺達はここに集合しろって…」
言われてるんだ、と続けようとした言葉は仮面をつけた奇妙な女闖入者に消された。女の蹴りをマトモにくらい、壁まで吹き飛ぶ。この女…強い!
俺に蹴りを入れると、次はラン。俺に入れた蹴りを見ていたからか、女の蹴りを器用に避ける。ランに集中していると見たセリューは女を背後から急襲するが、その殺気でばれて、床に投げ飛ばされた。
そして…
「ふざけられても、こちらは加減出来ない」
お菓子を咥えたクロメが刀を抜き、女の仮面を砕いた。
「…それが帝具八房か。流石の斬れ味だ…」
「「「「え、エスデス将軍!?」」」」
どうやら彼女が上司だったらしい…。美人だが…上司までなんか変だぞ!?
「ふふ、悪かったな。驚いたか?普通に歓迎してもつまらんと思ってな…少し趣向をこらしてみた。」
「荒々しいのは慣れてますから…」
「むしろご指導ありがとうございます。」
「よし!では、早速だが陛下と謁見しに行くぞ」
趣向を凝らす場所がおかしいと突っ込もうとした瞬間、まるで買い物にでも行くかのような気軽さで発されたのはそんな言葉。…え?
「えぇぇぇ!?い、いきなり陛下と!?」
「初日から随分と飛ばしてるスケジュールですね…」
どうやら驚いたのは俺だけではないらしい…良かった…俺の感覚がずれている訳ではなさそうだ。
「あの、エスデス将軍。聞いていた話では、今回招集された帝具使いは7人だとか…あと1人がまだ来ていないようなのですが…?」
「あぁ、その件だが、大臣に6人揃ったら謁見に来てくれと言われていてな…おそらくそこで会うことになるのだろうな…」
「「「「………」」」」
残りの1人も厄介そうだと俺は察した。
「ところでエスデス様、アタシ達のチーム名とか決まっているのでしょうか?」
オカマ…もといドクターが尋ねる。確かに特殊警察だけだとなんかこう…味気ないよな。
「…うむ、我々は独自の機動性を持ち、凶悪な賊の群れを容赦なく狩る組織…ゆえに、“特殊警察 イェーガーズ”だ。」
「イェーガーズ…ふふん、なかなかスタイリッシュな名前ね…気に入ったわ!」
「悪を狩る…ふふふ、今からとっても楽しみです!」
なんだかあの2人が怖い。
「そうか。では、謁見に行くぞ!」
エスデス将軍のスルースキルも高い。そして陛下と謁見…あぁ、緊張する…。俺の胃痛はしばらく止むことはなさそうだ…
謁見の間にて、俺たちは玉座に座る陛下に向かって跪き、名を述べる。
「陛下、本日ここを以てイェーガーズ発足とさせて頂きます。」
「うむ、お前達の働きに期待しておるぞ!」
幼いと言うのに陛下はハキハキとしていた。王は生まれながらにして王と聞くがあながち嘘ではないんだろうな。
「…して、大臣。7人目はどうなったのだ?」
エスデス将軍がその質問をしたその瞬間、大臣はふっと遠い目になった。…え。
「…えぇ、ちゃんといますよ…頑張りましたよ…説得。つい三時間程前にやっと納得してもらえましたよ…。…はぁ、いつまで拗ねてるつもりですか?自己紹介してください。」
後半は誰かに呼びかけるように言っていた。すると、すぐ側の柱の影から気配を感じた。すげぇ隠密力だ…でもきっとおそらく変人…やべえ、見るのが怖い。だが、そんなことも言っていられないので、思い切ってそちらを見やる。するとそこにいたのはロングヘアーの女だった。
「…大臣殿、私に命令していいのはマスターだけなんですが……チッ、まぁいいです。」
大臣に向かって舌打ち……!?この女…勇者か!?俺が内心悶絶する中、彼女の自己紹介が始まった。
「…帝下直属医療部隊隊長付きでした…スピアです。別によろしくする気はないですが、仕事はしっかりこなしますので安心してください。正直移動は嫌なんですが…はぁ、マスターの顔に泥を塗るわけには参りません。それに、大臣殿の話に釣られた私も私ですし…。」
「「「「「「「………………」」」」」」」
絶句。…としか表現できねぇ……
「…そうか、ちなみに話に釣られたとは?」
「あ、それは…」
その時、スピアさんの話を遮って、いきなり勢いよく扉が開かれた。そこにいたのは1人の男。白銀の髪、紫と闇のオッドアイ、たなびく白衣、そして、美しい容姿─────を、怒りに染め上げた男だった。
「はぁはぁはぁ……ねぇ。」
走って来たのか乱れた息が色っぽい…って待て待て、そんなことは今はどうでもいい!怒っているからか、発せられた声は容姿から想像した声よりもずっと低く、ゾッとするような声音だった。
「ああ、きましたか…ラザール医療隊長。」
「あは、そうだね…よくわかんない勅命書がついさっき!いきなり!急に!届いたよ。あははは、まあ、それはあとで聞くとして…ねぇ大臣殿、僕に何か言うことはない?」
「言うことですか?その勅命書について位しかないで…((ダァン!………え。」
大臣に向かって投げられた…なんだアレ…デカい…注射針?ってはぁ!?大臣に向かって投げたのかアレ!?反逆者か!?
「ラザール…どうしたの!?」
「ラザール医師、落ち着いてください!どうしたんですか!?」
「あら、珍しく荒れてるわね。」
「マスター、何かされたんですか!?」
クロメ、セリュー、ドクター、スピアさんが次々に男に問いかける…って、え、知り合い!?
「あ?…あぁ、クロメちゃんにセリューちゃん…あとマッドサイエンティストのオカマ…あ、ボルスさんも居る…お久しぶりだね。エスデス将軍もこの前ぶりです。……でもごめん今それどころじゃないの。」
ゆらりと大臣の方へ歩き出したソイツ。いつの間にやら、後ろには男の補佐官と思しき女性もいた。…男と同様に顔を怒りに染め上げていたが。
「ねぇ、大臣…僕言ったよね…“食べ過ぎ注意”って。“間食止めろ”とも言ったよね…?」
「…言われましたねぇ」
大臣の顔が真っ青である。対して、ラザールと呼ばれていた男の顔は笑顔である。しかし、目は笑っていない。声も低い。怒られていない俺も怖い。
「…なんで?」
「…は?」
「…僕忠告したよね…何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!…なのに、何コレ?血液検査の結果……悪化してんじゃねぇかゴラァ!!!前のに増してえらいことになってんぞ!?テメェ、また隠れて大量にモノ食ったな!?」
「妾達の仕事を増やすなと…何度言えば理解するのじゃ!それに主の指示を無視なんぞしよって!それで病死でもされれば主の責任になるのじゃぞ!妾達は止めていたというのに!そのような理不尽…されてたまるものかぁ!!」
「スミマセンモウ間食シマセン」
「ねぇその言葉もう何回目?ねぇ何回目?いい歳した大人がそれでいいの?自分の言葉に責任も持てないの?馬鹿なの?死ぬの?」
「主の言うことは絶対主の言うことは絶対主の言うことは絶対主の言うことは絶対主の言うことは絶対…」
ヤバい、なんか泣けてきた。コイツら…苦労してんだなぁ…くっ。
「ラザールお疲れ…元気出して?」
「あーうん、クロメちゃんありがとう…。…で?何?この勅命書。はっきり言っていい?僕のこと…殺す気?」
……はい?
ラザールside____
僕は今謁見の間にいる。見覚えのある人もいるが気にしない。
「とりあえずここに僕が来た理由をご説明しましょう。そう僕は、つい10分前まで!いつものように仕事をしていました。丁度陛下と大臣の血液検査結果が出たところでした。陛下、問題なし。好き嫌いもなくお食事を摂られているようで何よりです。これからも健康的な生活を続けていきましょう。」
「う、うむ!」
「し・か・し!!大臣、貴方はダメだ。問題ありです。なんです、コレは?怒りと驚愕のあまり、貴方に会いたくて会いたくて震えていた時、文句を言いに行こうと思い立ったその時!文官に手渡された勅命書。その時の僕の気持ちが分かりますか?」
「」
僕から目を逸らしてダラダラと冷や汗を流す大臣。話を聞くときは相手の顔を見て、でしょう?圧を送って目をこちらに向けさせる。
「…それでこの勅命書は何ですか?エスデス将軍がいらっしゃるということは、貴方関連ですよね?説明を求めます。…はぁ、僕そろそろ過労死出来る自信が出てきたんだけど…はぁ…。あ、取りあえず大臣は今日から間食禁止です。料理人にも言っておきます。もし、料理人を脅して無理やりに作らせたり、罰を与えたりした場合…覚悟はよろしいですね、大臣殿?」
「ハイ、タイヘンモウシワケアリマセンデシタ。」
「「「「「!!??」」」」」
なんだか周りの人達が呆然としている。
【…ちょっとからかってみるか?】
ナイスアイデア、ジェミニ!たまには
「…ハッ!まさか僕に死んで欲しいとか!?だからこの仕事量だったのか!?…カンザシ、僕ら殺されそうになってたんだね!死ぬ前に気づけて良かった!今なら逃げれるよ!どこ行く?」
「!?え、主!?」
いきなり話を振られ困惑していたカンザシだったが、僕の目を見て愉快犯だと悟ったらしい。次の瞬間、カンザシの目も愉悦に染まる。
「きっと皆僕らに死んで欲しいんだよ!だからこの仕事量だったんでしょ!?それ以外考えられないよ!」
「なるほど!そ、そうじゃったのか…!ならば早く逃げねば…殺されるということか!…ハッ!だからここにエスデスが!?」
「ヤバいね…大臣、本気で僕らを殺る気だ…!」
「クッ…ここは戦うしか…!」
「「「「ちょっと待て!」」」」
「ラザール医師!あなたは何か勘違いをしている!」
「そ、そうだ。大体私がここにいるのは新部隊発足の挨拶を陛下にしに来たからであって、ラザールを殺す為ではない!」
怒涛の返答が来たので、演技をやめて不機嫌面に戻る。それにしても、反応が思ったより面白くないなぁ。つまんない人達。
「え、何そんなマジレスしなくていいよ?────冗談だし。」
「本気でとったか。からかい甲斐のある…いや、でも反応がありきたり過ぎるな。訂正、つまらん奴らじゃな。」
全員がずっこけた様に見えたが気にしない。
「それで?結局何なんです、この勅命?“兼任命令──本日を以て医師ラザールに特殊警察特別補佐官に命ずる。尚、可能な範囲で直属医療部隊隊長の任も行うこと。”特殊警察とか初めて聞いたんですけど。」
まぁ、オロチから情報は貰ってたから嘘だけど。この情報は大臣から貰っていないから知らないふりをしないといけない。
「ゴホン…まぁ、その書面にある通りですよ。あなたにはエスデス将軍率いる新部隊、特殊警察イェーガーズに所属してもらいます。」
「イェーガーズ…あぁ、スピアが行かされたとこね。…って、それじゃあ補佐せざるを得ないじゃん…」
「はぁ、相変わらず計算高いのぅ、大臣。」
「しょうがないよ、カンザシ。だって大臣だし。頑張ろうか。」
「そうじゃのぅ…大臣だし。妾は主について行くぞ。」
「それはどういう意味ですか!?…まぁいいです。よろしくお願いしますね。」
「「了解した。」」
2足の草鞋も大変だなぁ。めんどくさい。
ウェイブside____
謁見を終え、会議室に戻ってきた俺達。とりあえず改めて自己紹介をすることになった。
「と、言うわけで巻き込まれました。直属医療部隊隊長のラザールと申します。よろしくねぇ♪」
何と言うか…比較的まともそう!是非ともよろしくしたい。先ほどとは打って変わって口調は緩いが、これが普段の彼なのだろう。軽いのではなく、ゆったりとした落ち着いた話し方だ。
「補佐のカンザシじゃ…。よろしゅう頼むぞ。まったく大臣め…主にまたしても迷惑を…」
後半に目を瞑れば、こちらもそこそこにまともそうである。何より美人だ。目の保養である。…ところで何時から俺の判断基準はまともかまともじゃないかになったんだろう。
「エスデスだ。知っているだろうが位は将軍。まぁ、改めてよろしく頼む。」
「クロメ。
「ウェイブだ!帝国海軍からきました。よろしくお願いします!」
「ランです。以前は教師をしていました。よろしくお願いします。」
「スピアです。直属医療部隊隊長付きでした。マスターが来た以上、前言撤回、全力でよろしくさせていただきます。よろしくお願いします。」
「セリュー・ユビキタスです!帝都警備隊から来ました!この度、悪を断罪する部隊に来れて嬉しく思っております!よろしくお願いします!」
「焼却部隊のボルスです。誰かがやるべき仕事ならしっかりやります。よろしくお願いします。」
「…科学者、兼“医者”のDr.スタイリッシュよ!皆さんどうぞよ・ろ・し・く♡」
うぇ…やっぱりオカマなのか。ずっと科学者だと思ってたけど医者でもあるのか。
というかなんで医者の所強調?てかラザールも医療部隊ってことは…医者2人?
そんな思考に入ったその瞬間、ゴングは鳴った。
「にしても久しぶりねぇ、ラザール君?一応よろしくとだけは言っておくけど…まぁ、精々頑張ってね?」(無能なんだから精々足引っ張らないようにしときなさい。)
「ふふ、安心してよ。僕の仕事は陛下と大臣の体調管理と皆の怪我の手当て、皆と大臣との連絡が主らしいからさ♪…むしろ、貴方の方が気をつけて下さいね?正規メンバー唯一の支援型なんですから♪」(そっちこそ、支援型なんだから大人しくしといたら。)
「あら?心配してくれてるの?嬉しいわぁ。…ま、無用な心配だけど♡」(余計なお世話よ。)
「忠告はしましたからね?…只でさえ猫みたいに気まぐれなんですから、他メンバーの迷惑にはならないように頑張って下さいよ?」(女々しいカマ野郎が。盛りのついた雌猫みたいに浮かれてるのは結構だけど、僕らに面倒かけさせないでよ?)
え、何この2人…仲悪いのか?なんか…副音声が聞こえる気が…!
「始まった…名物、2人の戦争」
「クロメ、知ってんのか?」
「知ってるも何もこの2人の仲の悪さは有名。特に暗殺部隊には。」
まじかよ。…そんな2人の戦いはまだ続く。
「ふん、さっきから口が達者ねぇ…年上は敬いなさいよ。」
「はぁ?それはコッチのセリフ。位が上なのは僕の方。見下してんじゃねぇよ?」
「私は科学者でも医者でもあるの!あんたの出番なんかないから引っ込んでなさい。」
「は?僕は貴方を医者と認めたことなんてないですよ?科学と医療は似て非なるものです。どっちつかずの貴方なんかに医療に関わって欲しくもない。貴方こそ科学者の側面が大きいんだから、大人しく研究室にでも引きこもってなよ。」
睨み合う2人。口調変わってるし…怖ぇ。
「ふん、元通りに治すだけで探求心も向上心も欠片もない後進者のくせに、調子に乗らないでくれないかしら!」
「はっ、貴方たちが改造という名の改悪しか出来ないだけでしょう?実験の本当の意味も分からない、頭の軽いクズ共に言われたくないものですね!」
「改
「何でもかんでも弄くればいいってモンじゃないんだよ!ホントに馬鹿なんじゃないの!?」
2人の背後に竜虎が見える。今にも取っ組み合いを始めそうな2人を見て思う。
((((((あぁ、これを犬猿の仲と言うのか。))))))
「…2人共落ち着け。殺し合いなら後にしろ。」
おお…鶴の一声…!助かった…2人共怖かったぜ…。
「…私としたことが…つい熱くなっていたわ」
「チッ…ふぅ、すみませんでした。ちょぉっと腹立たしかったものでつい。」
絶対ちょっとじゃねぇ…!
「ふむ、では…パーティーでもしようか。」
「「「「「「は?」」」」」」
いきなり突拍子もないことを言い出す隊長。
「確か、ウェイブの土産があったろう?皆で食事でもと思ってな。」
ナイスアイデアだとは思うが…それを今言うのか?
「おお!魚か!では鍋にでもするかのぅ?主、妾は調理にまわるぞ!」
「うん、よろしく!」
「ふむ、他に料理の出来る者は?」
「海鮮の扱いだけなら…」
「家でよく作るので大丈夫です」
え、俺とボルスさん!?料理出来るメンツおかしくね!?…こうして俺とボルスさんとカンザシさんの調理タイムは始まった。
俺の苦悩はまだ続く。
エスデスside____
料理を待つ間、他メンバーと談笑する事にした。恋をしたいと言えば、全員に衝撃が走ったように驚かれた。それはそうだ。私自身も驚いた変化だからな。
「そうだ、そう言えば首切りから回収した帝具があるとか。未だ適合者が見つかっていないのだろう?」
「あ、それは聞いたことあります。折角悪から回収出来たのにもったいないですよね…」
「ふむ、確かにな…。よし、使える人材を探しつつ余興でもするか」
うむ、なかなかいい考えかもしれんな…!後で大臣に相談してみるとしようか。とりあえず今は楽しむとしよう。
「(…余興ねぇ?嫌な予感がするのは僕だけ?とりあえず、その余興が終わるまでは僕の能力は隠しておくとしようかな…。)」
「(…直属医療部隊隊長ですか…。大臣とのやりとりをみるにかなりの権力がありそうです。私の目的の為には権力が要る…今度話してみるとしましょう。)」
思考を巡らす2人に私が気づくことはなかった。