今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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2017/11/16 改稿しました。
先が見えてきました。改稿作業もあと少し、ファイト一発。

作業BGMは「プロトディスコ」でお送りしました。




第1回恋愛相談室

チェルシーside____

 

「あーぁ、つまんないな…」

 

自分の真っ赤に染まった手を見て思わず呟く。

 

私は革命軍に戻った後、そのまま地方のチームにとばされた。私を駒として死地に送った上の奴が粛正済みだったのは残念だったな…私が殺してやりたかったのに!

 

地方のチームに与えられていた任務は、地方軍に薬を配達し回っている配達員がいるという噂の真偽確認と、いた場合の配達員の捕獲または排除。つまり、イエヤスの暗殺だ。そんなのさせるわけ無いでしょ?だから、マスターを通じて帝国に情報を送って、チームを壊滅させた。私はまたまた唯一の生き残りってわけ。ま、別任務で情報収集に行ってたのは本当だし、別に嘘は吐いてない。その後ついでにイエヤスについての情報を削除!噂は嘘だったことにして処理する。これでイエヤスは大丈夫。

 

 

ガイアファンデーションのボックスからアメを取り出し口に入れる。もちろんマスターがよく食べているものと同じアメだ。お揃いのアメを舐めながらマスターからもらったピアスに指で触れると、それだけで幸せな気分になれる。もうマスターなしでは生きてはいけないだろうなぁ。チームの仲間を殺したのに痛まない心。だって私の仲間はマスター達だもん。当たり前だよね。

 

「はぁ…早く帰りたいな…。」

 

とりあえず、あと数日したらチームが皆殺しにされてたって本部に連絡入れて…やることは盛り沢山だ。まぁでも、頑張れば頑張った分ご褒美増えるし!もう一度、耳につけられたピアスにソッと触れる。マスター…私もっともっと頑張って、もっともっと役に立って見せますから…もっともっと愛して下さいね?

 

「あははっ…私も大概狂ってるなぁ…。さて、お仕事お仕事♪」

 

そして私は本来の任務地だった場所へ向かって歩き出した。勿論足跡も証拠も残さない。だって私はプロだからね!

 

 

 

レオーネside____

 

エスデスは一人街を歩いていた。今日の仕事はエスデスについての情報収集…もとい偵察であった。……だったはずなんだが、私の脳は怯えに支配され、体は今カタカタと震えている。…エスデスが一人で宮殿の外に出ているのだ、襲う絶好のチャンスだと普通なら考えるだろう。しかし、幾筋もの汗が私の頬を伝い落ちる。

 

獣化している今だからこそ分かるのだ。…単独行動は刺客を誘い込む罠だと!エスデスから滲み出る“匂い”は紛れもなく禍々しいまでの殺意。悔しいけど…ここは本能に従い退く!隠れていた屋根から隣の屋根に跳び、その上をエスデスとは真逆の方向へと走り出した。

 

つい先日、ボスから皆に聞かされた悪い知らせ。一つ、地方のチームとの連絡がつかない。二つ、エスデスの帰還。三つ、大臣によるナイトレイド偽装による犯行。

エスデスの偵察を任されたし、あわよくばなんて考えたけど…クッソ…隙あらば倒そうなんて甘かった…!エスデスがコレなら三獣士ってヤツらも…!タツミもブラートも、アカメもラバも頼むから無事で帰ってこいよ…!私は足を速め、アジトへ急いだ。もうあの女の偵察なんて御免だ!

 

 

 

エスデスside____

 

「む?誘いに乗らなかったか…残念だ。」

 

新しい拷問を試したかったんだがな…。買った菓子をペロリと舐める。…美味いな、名物と言うだけはある。任務が終わったらアイツらにも食わせてやるかな…。

 

「……!?」

 

その時感じた強い気配。先ほどまでの小物とは比べものにはならない、強者の気配だ。思わずバッとその方向を見やる。これは強敵だな?口の端がつり上がるのを抑えられない。誰だ…今の気配はどいつだ?その答えはすぐに得られた。

 

「…もしかして、そちがエスデスかのぅ?」

 

「!!…あぁ、そうだが…どこかで会ったことでもあったか?」

 

コイツだ。先ほどの強い気配…間違いない。手合わせしたいと今にも襲い掛かりそうな体を抑え、努めて冷静に返す。

 

「いや、無いはずじゃぞ?つい先日、おぬしの部下には会ったがな…三獣士じゃったか?腹を壊して医務室に駆け込んで来よったヤツらは。」

 

「あぁ…リヴァの飯か…。医務室ということは、お前は…」

 

「名乗っておらんかったな…妾はカンザシ。直属医療部隊隊長補佐についておる。」

 

直属医療部隊…隊長補佐……ということは拷問薬のレパートリーを増やしてくれた者の補佐役か。

 

「そうか、先日は私の分の薬まで世話になったな。感謝する。隊長にもそう伝えてくれ。」

 

「うむ、承った。」

 

さて、本題に入るか。

 

「ところでだが…カンザシと言ったか?お前…強いな?」

 

「さぁのぅ。妾は医務官補佐じゃし?」

 

「私には分かるぞ?お前は…そうだな、その刀を使って私の一歩程下といった所か?」

 

カンザシとやらが腰に差している二本の刀…かなりの業物だな。帝具には及ばないが何かありそうだ。ただならぬオーラを感じる。

 

「…ふむ、まぁ実力がそうかは知らんが戦えはするな。」

 

「だが、お前まだ何か隠しているだろう?」

 

「…ほぅ?」

 

指摘した瞬間彼女の雰囲気が変わる。

 

「…そうじゃな…隠している力を使えばそちとしばらくは殺り合えるじゃろうな。」

 

「なるほど?それは是非手合わせ願いたいものだな」

 

誘いをかけてみるが、彼女は意味ありげな笑みを一つ浮かべただけだった。む、残念だな…断られてしまった。

 

「手合わせは御免被る。妾とてまだ死にたくはないのでな。それに妾よりも主の方が強い。…傲るなよ、小娘。」

 

コイツよりも強い奴がいるのか…!おそらくは例の隊長殿だろうがな。これはますます会うのが楽しみだ!それより…

 

「ほぅ、私が小娘とな?それはどういう意味だ?」

 

「言葉通りじゃよ。妾からしてみればそちはまだまだ年紀が足りん。実際、妾の方が何十倍も年上じゃろうしな。まぁ、傲ることなく精進せぃよ。」

 

…何十倍?聞き間違いか?いや、確かに何十倍と言った…。

 

「…お前、一体いくつなんだ」

 

「………同じ女とは言えど女に年を聞くのはでりかしーと言うものが無いぞ」

 

スゴい目でこちらを見るカンザシ。これは…

 

「…そうか、なら聞かなかった事にしてくれ。」

 

「うむ、それでよい!」

 

判断は間違ってはいなかったらしい。

 

「それよりも、おぬし今から時間はあるか?これから主と合流するのじゃが…言伝を預かっておいて難だが、礼は直接言った方が良かろう?」

 

それは願ってもいないこと。

 

「是非同行させてもらおう。」

 

見回りは多少後回しにしても問題あるまい。

 

 

 

 

 

ラザールside____

 

今日はこの前情報を流してくれたチェルシーに贈り物でもあげようかとカンザシと街へ出ていた。途中、カンザシが何かに気づいたらしく、いきなりいなくなったので、一度店に戻った訳なのだが…

 

「ここか…ブドー大将軍も認めいると言う診療所は。」

 

何故ここにエスデス将軍がいる…。何故カンザシはキラキラした目でニヤニヤとこっちを見ている…。あんの狐…愉快犯の血が騒いだか!…まぁ、いいけどさ。でもさすがにいきなりすぎると思うんだ。

 

「ほう…確かにカンザシの言うとおり…強いな。私とほぼ同格か…?」

 

「…僕は医者ですよー」

 

「主、棒読みじゃぞ。もうバレておる、諦めよ」

 

わー、マジかー…てかなんでカンザシはそんな気安い関係になってるの!?そしてエスデス将軍その手はなぁに?ってちょっとなんで僕の頬撫でてるの!?え?ちょっと手つきがエロ…じゃなくて、ホントに何!?そして何故密着してくるの!?恋人じゃないんだしこの距離感はちょっと男としてはキツいんですけど…って、え、ちょ、カンザシ?目が怖いよ?なんで僕を睨んでいるの?元はと言えばお前のせいだし、君が頼りだから頼むからエスデスさん止めて…ってちょ、なんで回れ右して店から出てくの!?え、マジで?ちょ、カンザシ!?

 

「えーっと、エスデス将軍とははじめまして、ですかね?」

 

「そうだな、はじめましてだな。」

 

「えっと、とりあえずちょっと距離が近いので離れてくれるとありがたいなぁなんて…」

 

身長が同じ位なので顔が近いんです…離れて下さいお願いします。

 

「ラザールと言ったか?お前、年はいくつだ?」

 

「歳ですか?えーっと、おそらく推定18~19くらいかと。」

 

「そうか…」

 

「…どうかしました?」

 

そう聞くとエスデス将軍はやっと僕から離れてくれた。そのまま近くにあった店のベッドに腰掛け、足を組む。そして耳を疑うような言葉を口にした。

 

「いや…最近恋をしたいと思っていてな…」

 

「…………恋、ですか?」

 

………え、ちょっと恋?鯉ではないよね?恋だよね?え、あのエスデス将軍が?恋?何事なの!?

 

「あぁ、それでな…よくよく考えてみるとラザールが…私の好みのドストライクにほぼ一致することがたった今証明されてな…」

 

ちょっと顔を赤らめたエスデス将軍。……うん、流そう。流す方向でいこう。勘違いだと嵌める方向でいこう。そうしよう(錯乱)

 

「…それ、僕口説かれてます?」

 

「…かもな。だがなにぶん初めてなのでな…これが恋かと聞かれると分からん。お前のことは嫌いではなく、寧ろ好きの部類に入るということは分かるんだが…これは恋なのか?」

 

いや知らねーよと言いたくなるのを必死に耐え、僕はエスデス将軍の矛先を変えることにする。

 

「…エスデス将軍は今恋に恋しているのでは?」

 

「…恋に恋?」

 

よし、食いついた!隠れてガッツポーズをしつつ話を続ける。

 

「年頃の娘さんによく見られるのですが…“恋愛したい”“運命の人に出会いたい”“彼氏が欲しい”などと言った想いから、相手が誰かも分からないのに、とにかく“自分好みの人と恋がしたい”と強く思う方がいるんです。そういう人は大抵“恋することに恋い焦がれている”人なんですよ。」

 

「ふむ、なるほど。よく分からん。」

 

「ふふ…けど僕らの場合は恋愛というよりも親愛…親友の意味合いが強い気がします。なんだか親近感が湧くんですよね…何故でしょう?」

 

「あぁ、それはあるな。…とりあえず保留にしておこう。」

 

勝った!心の中でガッツポーズをした僕は悪くない。とりあえずカンザシは後でオシオキしなきゃね…ふふふ。

 

「とりあえず少しはスッキリした。感謝する。」

 

「いえいえ♪また何かあればいつでもどうぞ」

 

「あぁ、また来よう。王宮の方でもよろしく頼むぞ。…そうだ、本題を忘れていた。ラザールの作った拷問薬のおかげでレパートリーが増えた。おかげで毎日楽しいぞ。感謝する。」

 

「ぶっちゃけあの薬たちは僕の研究の副産物なので…寧ろ処分の手間が省けてこっちが楽させてもらってますから気にしないで下さいな。」

 

「ふっ…ではな。」

 

 

そうしてエスデス将軍は帰って行った。……はあああぁぁぁ、心臓が痛い。

よし、とりあえず……

 

「カンザシ?」

 

「………な、なんじゃ?」

 

やっぱりいた。ふふふ♪

 

「…………………おいで?((ニコッ」

 

「………わ、妾用事を思い出して………」

 

「………………おいで?」

 

「……………い、行ってくるぞ……」

 

「………逃がさないョ?」

 

お前のオシオキは決定事項だ。その罪、その身をもって分からせてやる。

 

 

その後、店からカンザシの大きな悲鳴が響いたとか…

 

 


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