今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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今話は時間が結構飛びます。

2017/10/25 改稿しました。



そうだ、旅に出よう

この洞窟を拠点にして約2年が経過した。その間、僕は学んだ。学び続けた。時にジェミニに色々教えてもらって、時に自分で経験して。ずっとずっと、今まで何も出来なかった時間を埋めるように、貪欲に、浅ましく学び続けた。

 

料理の仕方

僕の能力とその使い方

危険種の種類

地理、地形

食料について

狩りの仕方

医術

薬草の見つけ方

薬の作り方

調合方法

 

そして、正があれば負もまた然り。

 

人を殺さない殺し方

人の色んな殺し方

力のコントロール

毒の作り方

戦闘術

 

 

ホントにいろんな事を教えてもらった。特に医術に関しては、かなり筋が良いと言ってもらえた。その際に、僕の両親の話を聞いた。僕はそれが何なのか知らない(両親を忘れてしまった)けれど、ジェミニはちゃんと知っていた(覚えている)から、一応聞いておいた。

 

僕の父は北方出の戦闘民族、母はテイムという特殊な力を持った一族の末裔だったらしい。でも母にはその力がほとんどなかったそうだから、僕は先祖返りという奴なんだろう。容姿も見事にその2つの民族の特徴を引き継いでしまったらしく、今までにない、かなり珍しい色合い。僕が村八分にされていたのは、特殊な力があっただけでなく、この容姿も相まってのことだろうとジェミニは言っていた。

 

ジェミニが医術にも僕の能力にも詳しいのは、父が医者だったから。母もわずかながら力を使えたから。そして、それを実際に見聞きしていたから。

 

更に驚いたことに、村の奴らは2人を信用していたらしい。でも僕が2歳のある日、母がうっかり溢してしまった。

「この子は、私よりも強いつながりがある。危険種すらも従えるようになるかもしれない。」と。

それをたまたま聞いてしまった村人は恐ろしくなり、村長に伝えた。そして、少しして、父と母を流行り病に見せかけて殺すと、僕を利用しようと考えた。でも、普通に育ててはどんなことになるか分からない。だから、僕から人としての尊厳を奪うことにした。暴力をふるい、口で罵倒し、肉体的にも精神的にも叩き潰すことで、従順な奴隷のようにしてしまおうと考えた。

 

ふふふ、ま、失敗したわけだけど。

それに、もうあんな奴らどうでもいい…。うん、どうでもいいんだ。

 

それに、特にここ1年は、本当に楽しい。独りじゃなくなったから。

 

「主、ご飯が出来たぞ~」

 

「あ、うん、ありがとう…カンザシ」

 

「ふっふ~、もっと褒めても良いのじゃぞ!」

 

「…よしよし♪」

 

ご飯を作ってくれたお礼にと、頭を撫でてやれば

 

「ふふふ~♪」

 

すごく、嬉しそうに…()()()()()

 

そんな彼女の名前はカンザシ。

 

超級危険種だ。もう一度言う、超級危険種だ。

カンザシは東方の国に祀られる九尾の狐らしく、僕と同い年くらいの少女に化けては、色々手伝ってくれる。その出来は、力の節約として耳と尻尾は出ているが、人間に変わりない。一見して彼女が危険種だなんて気が付かないだろう。

 

テイムしたときはすごかった…。遭遇は偶然だった。彼女は国のあまりの退屈さに小旅行と称して国を出奔してきたそうだ。その先にたまたま僕がいたというだけ。九尾の狐を見かけて、ジェミニが面白そうだと煽ってきて…出来ないだろうけど、試しにしてみようかという流れになって…だから、目を合わせて言った。

 

僕に付いておいで(ボクに従え)」って。そしたら…

 

《ドッキューーーンvV》

 

いや、ホントに。断じて冗談とかではなく本当にこんな効果音が聞こえた。

そうして結局、

 

「一生付いていきます、主!!」

 

めっちゃ好かれた。

 

 

という経緯やその他色々出会いがあって、今は1人(僕とボク)と5匹で生活している。

 

「皆、おいで!ご飯だって!」

 

《♪♪》

 

 

しかし、最近ジェミニやカンザシと話していて考えていることがある。

 

「みんな、ご飯食べながら聞いてくれる?あのね、少し前から考えていたことがあるんだけど……僕そろそろ此処をでて、各地を回ってみたいんだ。それで、僕は本格的に医術を学びたい。色んな医学書も読んでみたい。で、みんなはどうするかってことなんだけど…」

 

みんながジッとこちらを見つめ、次の言葉を今か今かと待っている。…が、しかし。

 

「みんなには、此処で待ってて欲しい。」

 

…この時の危険種達の空気を擬音語で表すなら、間違いなくこうだろう。

 

《ガーーーーーーンΣ(゚д゚lll)》

《ズーーーーーーンorz》

《ショボーーーーン(´・ω・`)》

 

決めたことではあるが、もの凄い罪悪感である。見るからにしょげている。くっ、なんて攻撃だ(可愛いんだ)

 

【おい、ラザール、言葉足らず過ぎるぞ…】

 

自分の発言を思い返してみてハッとする。

 

「ごめん、ごめん!ちょっと訂正!カンザシにはついてきてもらうよ!カンザシは人型になれるから助手してもらう予定。その方が人に溶け込みやすいし。ただ、全員集合は目立ってしまうからしばらくお預けっていうこと。…何処かに拠点を建てようって考えてる。だから、拠点が決まったらみんな必ず呼ぶ。そのためのカンザシでもあるから。それまで、ちょっとの間だけ、待ってて欲しい。」

 

少し待って、コクリと頷いてくれたみんな。

 

「ありがと…」

 

自分の話を聞いてくれたことに嬉しくなって笑った。

その日は全員でくっついて眠りについた。悪い夢は見なかった。

 

 

 

 

 

 

「みんな、おはよう。…それじゃあ、行ってくるね!」

 

「うむ、主のことは妾に任せよ!!拠点を見つけ次第、妾の空間術で迎えに来る!お前らこそ人に目をつけられて、討伐されるような愚行を犯すでないぞ!」

 

少し寂しそうな他のみんなの頭を撫でて、さて。

 

「行ってきます♪」

 

 

 

最終目的地は帝都。

 

「世界を、見るんだ」

 

僕は、バケモノ。でも、それでいいのだ。

それが、僕だと、今なら受け入れられる。

 

「行くよ、カンザシ!」

 

…ジェミニもよろしくね。

 

すぐ後ろと頭の中で、

 

「【了解】」

 

声が響いた

 

 




主人公の父を軽率に北方出身にしたけれども、エスデス様と関わりがあったかは不明。というか民族が一緒かも不明。どっちみちラザールは父親を覚えてないから、解明されない。役に立たない設定かもしれない←

おまけ
テイムした危険種について、ぐだぐだ解説もどき

フェル:フェンリル
氷を操る狼さん。軽率に北方出身にしているが、幼少期のエスデス様と関わりはない。せいぜい存在を知っている程度だと思う。人の言葉を理解し、自分の意思を伝えられる程度には賢い。超級危険種。

カンザシ:九尾狐
狐火や空間を操る白い九尾狐。人に化けれるし、普通に会話が出来る。獣状態でもテレパス的な何かで会話は可能らしい。超級危険種。

オロチ:地纏蛇
影を操る白い蛇。種族的に本来は黒い体表をしているが、アルビノ的な何かで群れを追い出されて、主人公に拾われたんだと思う。種族は作者が適当にそれっぽく作ったオリジナル。多分特級危険種あたり。

マグル:マーグコンドル
鋭い爪と嘴をもつ鳥型危険種。漫画で見て気に入ったので、作者が急遽メンバー入りを決めた。二級危険種だけど、魔改造するかもしれない。

ニャル:マーグパンサー
ネコ型の可愛らしい危険種。まだ子供。これから大きくなるはず。三級危険種だけど、魔改造するかもしれない。


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