今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。 作:漣@クロメちゃん狂信者
作業BGMはまだまだ「ハロウ!ゴーストシップ」です。
今回はカンザシの愚痴大会です笑
短いよ!
帝都・王宮殿にて、ある日、カンザシは一人思い悩んでいた。
カンザシside____
妾の主は綺麗な奴じゃ。容姿は勿論のことじゃが、何よりその想いが綺麗なのじゃ。自分に正直…いや、違うな…忠実、か?自分の想いに、欲に、決定に、忠実じゃ。好きなモノはとことん愛でる。嫌いなモノは跡形もなく壊す。だから主の周りに“好き嫌い”は無い。何せ主は好きなものしか手元に置かないからな。ほら、アレじゃ、人に食べ物の好き嫌いがあるようなものじゃ。様々な料理を出されれば、人間は基本『好き嫌いなく、残さず食べなさい』と言うだろう。だが、それが主の場合だと、『好きなものだけ食べる』になっているというだけじゃ。
つまるところ、主は基本、白黒がはっきりついておる。気に入ったなら救う。気に入らないなら殺す。実に単純明快。その純白でいて同時に漆黒である主に妾は惚れた。優しくて同時に酷く残酷で、どことなくちぐはぐな主にな。…あぁ、勿論恋愛感情ではないぞ。妾が主に恋をするなど恐れ多い上、そもそも妾は人間ではない。俗に言う敬愛、親愛の類じゃろうな。
…要するに妾が何を言いたいかというと、主は最高の存在だということじゃ!
故に、害虫が多い。
綺麗な花には棘がある。美味い蜜には毒がある。美しさに釣られて、身の程を弁えない輩には死あるのみ。棘も毒も避けたところで今度は花自身に喰われてお終い。
………今までずっとそうだったのに。
帝都に来て、主に“お気に入り”がたくさん出来つつある。
チェルシーはまぁ良い。あの女は主を尊敬し、崇拝し、心酔しておる。裏切ることも無かろうし、主に着いてきた危険種に理解もある。主も彼奴を信頼しておるし、認めんわけにはいかないじゃろう。
…じゃがのぅ…何じゃ?他の人間共は!?
まず、マイン!あやつは主にキツい言葉ばっかり掛けよって何様のつもりじゃ!?あんな小娘と比べるまでもなく、主の方が圧倒的に強く、美しく、素晴らしい!主は今流行りの“つんでれ”じゃと言っておったが、主に“つん”は要らん!ただただ主を褒めそやしておれば良いものを生意気な!
次、シェーレ!人間的には好ましい部類ではあった。…じゃがな!?あやつは馬鹿か?馬鹿の子なのか?どうすれば人間あんな失敗ができるというのじゃ!?おかしいじゃろう!それにそれに、ナイトレイドなぞに加入しよって!加入したなら加入したで、何か一言連絡くらい寄越せ!『暗殺家業、始めました』とまでは言わん!じゃがな、せめて『諸事情により、しばらく行けません。いつもありがとうございました。』くらいは寄越しても良いじゃろう!?主への敬意が足りん!
次、レオーネ!痴女のクセに生意気な。以上!それ以上は言う価値もない!
次、ナジェンダ!帝国を出てからもなお、気色悪い手紙を寄越しよって!あやつはいつからストーカーになり下がった!?もはや人間として最低じゃろう!馬鹿者めが!
次、アルエット!貴様は良い度胸をしておるな!その度胸と根性は買うが、妾にあの様な態度を働くなど無礼も甚だしい!主の補佐はこの妾じゃ!医者としての主の隣は渡さん!舐めるな小娘が。
次、キリク!いけめんなるものの撲滅とはよく分からんが、主を敵視するとは何事じゃ!まぁ、仕事はしっかりしておるし、仕事面では主を尊敬しているようじゃから生かしておるが…反旗を翻したら即…ふふふ。
後は……あ、皇帝!いつもいつも妾を見つけては自室に連れ込み、モフモフさせろなど…妾を愛玩動物か何かじゃと思っておるじゃろう!?幼子であることとその権力故に我慢しておるが…はぁ。そして自室に連れ込むのは好いた女だけにしておけ…将来が不安じゃ。
それと大臣!とにかく痩せろ!主の最近の悩みの種はは貴様の体調管理じゃぁぁあ!まったく、権力を盾に主を軍に縛り付けておきながら、何じゃそれは!あぁもう思い出しただけで腹立たしい!小賢しい猪め!牡丹鍋にして食ろうてやろうか!
………。
はぁ、苦労が絶えん。癒やしが欲しい……妾の癒し……主か。よし、主の所へ行こう!ブラッシングしてもらいながら甘えに甘えてやる!そう決めるなり、妾は走る。あ、勿論人型でじゃぞ?
「~♪♪~~~♪」
楽しみじゃぁ♪
???side____
「……誰だろう。見ない人…侵入者?…いや、それは無理か。私が知らないだけだよね。」
そういって私はまた一つ袋からお菓子を取り出し、口に入れる。…うん、美味しい。
「おーい、何立ち止まってんだ?さっさとあのクズ共んとこ行くぞ~。さっさと終わらせて戻ろうぜ!」
「…うん。帝都のスイーツ店巡らなきゃ。」
「……うん、まぁ何でもいいや。」
「お前ら何してんだ~?さっさと行くぞ!」
「あ、悪ぃ!」
今日は久々に研究者達に呼ばれた。また、痛いことされるんだろうな~…まぁ、いっか。スイーツのために頑張ろう。
「おら、行くぞ~……クロメ。」
「うん。お菓子のために早く終わらせよ。」
またお菓子を袋から取り出し、一つ口に放り込んで、私は歩き始めた。