今宵、紅月の夜のお話ひとつ致しましょう。   作:漣@クロメちゃん狂信者

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2017/10/31 改稿しました。
作業BGMは「ハロウ!ゴーストシップ」でお送りしました。
ドハマりしたので、しばらく作業BGMがこれに固定されます(笑)

前話から少し時間が飛んでいます。


閑話休題~日常~
少年の憂鬱


今の僕のやりきれない気持ちを聞いて欲しい。

数十日前、いきなり帝都警備隊にひっとらえられた僕。何故か皇帝陛下の直属医療部隊に入れられ、隊長職に就く羽目になったことはご存知のことだと思う。そして、医療部隊の皆さんがそれをそんな簡単に納得出来ないことであろう事実も何となく察していることと思う。だから、あの日…僕は皆さんに宣戦布告した。

 

僕にとって、あれは一種の賭けであり、遊びだった。そう、何日で医療部隊員たちを掌握し、従え、僕好みで僕色な隊を作り上げるか。すべては僕らの平穏な生活のために。そういうゲームの筈だった。

 

なのに……

 

「あ、ラザール隊長おはようございます!今日連れてるのはマグルですか!」

 

「隊長おはようございます~!!朝からマグルちゃんを見れるなんて、今日は良いことがありそうです!」

 

「「「「「おはようございます!」」」」」

 

「…うん、おはよう。」

 

……どうしてこうなった!

 

「あら、隊長おはようございます。今日はマグル君が一緒なんですね。…って、カンザシ補佐はどこに?」

 

「おはようございます、アルエット女医。カンザシは陛下に見つかり、捕まりました。」

 

「そうですか…陛下はカンザシ補佐が大好きですねぇ。……補佐とあろう者が隊長の側を離れるなんて…いつか必ず私の方が補佐に相応しいことを分からせてやるわ…うふふ。」

 

後半の台詞はボソリと誰にも聞こえないように呟いたのだろうが、細胞単位でハイスペックな流石な僕には丸聞こえである。ちなみにカンザシの正体が危険種だと知っているのは皇帝陛下と大臣、ブドー大将軍だけ。実はロクゴウ将軍は勿論、ナジェンダさんもこの事は知らない。

…まぁ、それは置いといて。

このアルエット女医を見て、お分かりいただけただろう。僕は見事(多少の歪みはあれど)信頼を得ました。やったね…達成感皆無だけどな!!

 

 

 

信頼を勝ち取れたのにどうして僕がこんなに不満げなのかと言うと、この状態が、隊長就任からわずか10日で形成されてしまったからである。もっとかかると予想していたからこそのゲーム計画だったというのに。単純すぎて逆に不安だ。

 

ゲーム開始日…つまり隊長になった日の最初のお仕事は、いきなりだったけど怪我人の手当てだった。陛下直属の僕らが何故下っ端兵士の手当てかと言うと、単に人手が足りないからと、将軍経由でお手伝い要請が来たからだ。それに僕は直属隊員の数名を連れて行った。基本僕らは定期的に大臣、将軍方のカルテをチェックして、毎朝陛下の体調検査するのが仕事だ。あとは…季節や体調に合わせて食事バランスなどを料理人の人たちと一緒に考えたり、依頼に合わせて薬を調合したり、個人的に薬の研究をしたりするだけらしく…まぁ、ぶっちゃけ結構暇らしい。しかし、勿論そこは流石エリート。自主的に一般の医療部隊のお手伝いに行ったり、新薬の開発に努めたりしていて、素直に感嘆した。

 

 

話を戻すが、まぁ、要するに僕が兵士1人の手当てにかける時間や完成度が異常に良いことに気がついた直属メンバーは、僕を侮っていたことを恥じたらしい。結果、その時の僕を見ていたメンバーは僕を認めた。…ま、聞いた話だし、本当かどうかは知らんけどね。

 

そしてその次の日。僕は帝都メインストリートの自分の店で今まで通りに運営してた訳なんだけど…それを見にきた隊員が数名いた。あ、勿論僕を認めていない奴らね?多分、偵察でもしに来たんだと思う。で、またしても其処で僕の腕を見た隊員は以下略ということで僕を認めたそうな。

 

…というのが何度か続き、気がつけばたった10日で隊員全員に認められていた。元々人数が少ないのもあるだろうけれど、解せぬ!まだ僕指導っぽいこと何にもしてない!つまらない!理解はしても納得はしていない感じだ。

 

気分が晴れない。

 

「あとでフェルたちと昼寝でもするかな…。天気も良いし…中庭辺りでやるか。」

 

そして僕は今日の仕事を開始する。……はぁ。

 

 

 

 

 

アルエットside_____

 

私は、自分の腕と知識にそれなりに自信を持っていた。勿論、それを更に磨くための努力を惜しんだことはない。…けれど、直属医療部隊というエリート集団の隊長になった私は…やはり、どこかで慢心していたのかも知れない。彼が来て、そう思うようになった。

 

 

数十日前、いきなり、部隊宛てに急ぎの伝達が来た。聞けば…

 

『×日をもって、直属医療部隊隊長を新たにする。アルエット現隊長、キリク現副隊長はその役を外れることとする。』

 

耳を疑った。私たち直属医療部隊はこのどこかおかしな帝都の中、数少ない良識派に属していたと思う。勿論、大臣に消されないためにたまに賄賂程度は最低限おこなってはいたが、あくまで必要悪だと思える程度にだ。だと言うのに、隊長職の代替わり?しかも大臣の合意の上だという。正直、信用出来なかった。

 

大臣に連れられてやってきたのは…うん、見紛う事なき美少年だった。自分の方が年上の筈だが、纏うオーラは間違いなく私以上。更に個人的に言えば、皇帝陛下もかなりのカリスマの持ち主だと思っていたのだけれど、彼はこれほど上に立つのに相応しいと思える人はいないと本気で思える程のものを持っていた。先恐ろしい才能だと直感した。ガキだと見下そうとも思わなかった。しかし、大臣が連れてきた者であることに変わりはない。その美貌の裏はどれほど腐敗しているのだろうか、どうやって大臣に取り入ったのだろうかとみんなで疑っていた。

けれど、彼は私たちが疑っていたような人ではなかった。視野が広く、手が足りない所にすぐに気づいてヘルプに入るし、患者との対話も上手い。技術に至っては何も言えない程で、もはや神の如く。あの変態カマ科学者なんかよりもずっと繊細で綺麗な動きに見えた。…あの歳で身につくであろうレベルを裕に越え、『神ノ御手(カマ野郎の帝具)』にも遜色ない動き…私が見てきた医師の中では間違いなく一番の腕。加えて前述したあのカリスマ性。

 

“『補佐』として認められたい”

 

いつしかそんな思いが心の中にくすぶっていた。でも、彼の補佐の座はカンザシと言うやけに彼と息のあった存在のもので。いつか絶対その座を奪ってやると言う志のもと、私は今副隊長として彼の側にいる。

 

「絶対認めさせてやるんだから…!」

 

何故か椅子ではなく机に座ってカルテとにらめっこをする彼を横目に、私は書類の手を進めた。

 

 

 

 

 




初のアルエットさんsideでしたー。
アルエットさんは多分ナジェンダさんと同じくらいの年齢だと思う。

追加でテイムされた2匹
★シオン
・種族名:妖鴉
・特級上位種
・風を操る大鴉。マーグファルコンよりも少し大きい。
・赤い目、三本足、四枚翼の黒に近い濃い紫の鴉。
・東洋では八咫烏とも呼ばれているらしい。

★リン
・種族名:麒麟
・超級
・雷を操る聖獣
※作者のイメージとしては、モン○ンに出てくる麒麟まんまです(笑)

以上。

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