翌日。サボってホームでダラダラしてたらキリトとアスナに連行された。なんで俺ん家知ってんだよ。
で、ヨルコさんと四者面談。なんで俺がヨルコさんの隣なの?まだ容疑者ってことなのこれ?
「ねぇ、ヨルコさん。グリムロックって、聞いたことある?」
アスナが聞くと、ヨルコさんは反応する。
「は、はい…昔、私とカインズが所属していたギルドのメンバーです」
「!」
マジでか。
「実は、昨日の剣を鑑定したら、その剣を作成したのはグリムロックさんだったんだ」
その瞬間、口に手を抑えて反応する。
「なにか、思いあたらことはないか?」
そのキリトの問いに、少し間を空けて答えた。
「はい、あります…昨日、お話出来なくてすいませんでした。あまり、思い出したくない話だったし…でも、お話しします。そのせいで、私達のギルドは消滅したんです」
早い話が、レアアイテムがドロップしてそれ使うか売るかの多数決で売ることになってそれを売りに行った人が帰ってこなくて後になって調べたらその人死んでたらしい。
「……つまり、睡眠PKか。犯人は黄金リンゴのメンバー、それも反対した三人のうちの誰かだろ」
俺が言うと三人は頷く。そこまでは考えられていたみたいだ。だが、その時の犯人を探しても仕方ない。
「そのグリセルダさんって人はどんな人だったんですか?」
俺の気も知らずにアスナは質問する。
「美人で、頭も良くて強くて、それとグリムロックさんと結婚していました。もし、仮に昨日の犯人がグリムロックさんなら、指輪の売却に反対した三人を狙っているんでしょうね。指輪の売却に反対した三人は、私とカインズなんです」
「!」
「じゃあ、もう一人は!?」
「シュミットというタンクです。今は青龍連合に所属していると聞きました」
「シュミット…聞いたことあるな」
なんて話をしている中、俺は俺なりに考える。
さっきのヨルコさんの仮説、あれはかなり性格を悪く解釈すれば指輪売却をした三人を庇っているようにも見える。そもそも、ヨルコさんには話していないが、俺はカインズという男が死んだとは思っていない。
だとすれば話を誘導しようとしているヨルコさんと、昨日死んだことになっているカインズは共犯者で、なにかを企んでいるように見える。だが、あの殺人(仮)を起こしてなにをしたかったのかが分からない。そこに辿り着くにはまだ情報が足りない。
「シュミットに会わせてもらえませんか?もしかしたら、彼も狙われているかも…」
「分かった。ヨルコさんは自分の宿屋から出ないで」
ってことで、そのシュミットって人に会いに行く。その途中でアスナが聞いた。
「君は、今回の圏内殺人、どう考えてる?」
「おおまかに四通りだな。昨日、エイトマンが言ったようにそもそも死んでないか、デュエルか、システムの抜け道か、未知のスキルか、だが四つ目はないだろう。昨日、エイトマンが言ったようにフェアじゃない」
「でも、死んでないっていうのもないんじゃないの?だって私達は見たのよこの目で」
「それをも誤魔化す、スキルかあるいはなにかしらがあるかもしれない…」
なんて話してる二人。
「悪い。すぐ戻るからちょっと抜けるわ」
「はぁ?どこに行くのよ」
「すぐ戻るって。じゃな」
それだけ言って俺は抜けた。カインズが死んだかどうか?そんなことすぐに確かめられる。俺の考えが正しければやりたいことは分からずとも方法だけは…、
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少し遅れて戻って来た。なんかヨルコさんのすごい声が聞こえたんだけど……。とりあえず宿の中に入る。
「よう。なんか分かった?」
窓に座ってる。ヨルコさんにさっきから貧乏ゆすりが半端ない男の人。こいつがシュミットか。あとはキリトとアスナ。で、なんで俺の質問には誰も答えてくれないの?と、思ったらヨルコさんが口を開いた。
「ただ一人、グリムロックさんはグリセルダさんに任せると言った。だから、あの人は私達全員に復讐して、グリセルダさんの仇を撃つ権利があるんだわ」
「冗談じゃねぇ…冗談じゃないぞ…今更、半年も経ってから!今更!お前はいいのかよヨルコ!こんなわけの分からない方法で殺されてもいいのか!?」
だが、そこでドスッと音がした。それと共にヨルコさんの目が見開かれる。
「………!」
全員が呆気に取られ、ヨルコさんは倒れそうになる。そして、背中にナイフが刺さっているのが見えた。その瞬間、確信した。
「キリト!ヨルコさんを逃がすな!」
「はぁ?」
ダメだ。理解してない。俺は二階から落ちるヨルコさんに手を伸ばそうとするが間に合わず、そのまま死亡エフェクトが見えた。
いや、まだ平気だ。殺されたように見せ掛ける必要がある以上、近くに犯人と思わせるためのプレイヤーがいるはず。
「アスナ!後は頼む!キリト、手伝え!」
返事を待たずに窓からジャンプして追い掛ける。圏内ならダメージはない。ならいくら斬っても死なないってことだ。俺は剣を抜いて一気に近付く。が、向こうは逃げながらなんか釘みたいな奴を投げ付けて来た。それを弾いている間に転移結晶で逃がしてしまった。
「クッソ……」
渋々、元の場所に戻る。ドアを開けて中に入ると、アスナが剣を突きつけていた。
「えっなにこれ」
「バカ!無茶しないでよ!」
「え?や、だからなんで剣」
「……それで、どうだったの?」
「悪い、逃がした」
すると、キリトが壁を叩く。
「クッソ!宿の中はシステム的に保護されているから平気だと思ったのに…!」
「大丈夫だキリト。問題ない」
「なにが!?どういう意味だ!」
「ヨルコさん、ついでに言うならカインズも死んでない」
「そういえばさっき、ヨルコさんを逃がすなとか…」
アスナも呟く。
「今から説明する。グリセルダさんがどうしたとかは分からないが、圏内殺人の方は犯人はいない」
「「はぁ?」」
バカにしたように二人に言われるが、それを余裕まんまで言い返す。
「二人とも死んでないってことだ」
「どうしてそんなことが言えるのよ」
「まずヨルコさんの時、50層まで来てるプレイヤーがナイフ一発、後ろから刺されただけで死なないだろ。しかも、このゲーム内では痛みなんて感じないはずだ、背中になにか刺さった感覚はあっても精々、蚊に刺された程度の感覚しかこないだろ?それなのにナイフが刺さったと分かっていたかのように、激痛が走ったかのようにヨルコさんは倒れ込んだ。これは演技だ」
俺の話を黙って聞く二人。
「で、二人が死んだように見えた件だが、アイテムが耐久値を切らして消える時、プレイヤーが死ぬ時と同じエフェクトが見える。ヨルコさんとカインズは自分の鎧の耐久値が切らして消える瞬間に、転移結晶を使ってあたかも死んだかのように見せたんだ」
「なるほど……」
「じゃあ、あの二人は一体なにをしたかったの……?」
「そこまでは分からない」
「とにかく、俺達の役割はもう終わりだな」
キリトがそう言うと、アスナも息を着く。
「いや、まだだ。グリムロックという奴がいる以上、あの三人は狙われている可能性が高い。シュミット、お前はしばらく俺達と一緒に…」
「……いないよ?」
「「へ?」」
捜索開始。結局、探偵って足が命なんだな。
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19層の丘。ヨルコさん達がそこにいるというのでそこに向かうと、ラフコフのメンバーがそこにいた。それとヨルコさん、シュミット、そしてもう一人はおそらくカインズであろう。
「先行くぞ」
俺はそれを見るなりキリトとアスナを置いて走った。で、斧が振り下ろされる瞬間、後ろから仮面ライダーバリのライダーキックで蹴り飛ばした。
「頭!?」
ラフコフの面子は俺に剣を向ける。
「なんだ、お前は」
「よくもやりやがったな!ははっ!」
「ヨルコさん、カインズ、シュミット。お前ら早く逃げろ。ここからは殺し合いになるぞ。転移結晶持ってんだろ」
「で、でも…!」
「いいから。邪魔だ」
それだけ言うと、三人は走ってどっかに隠れる。おい、転移結晶って言ったろ。さて、始めるか。俺も剣を抜いて構え、後ろからキリトも来る。アスナにはグリムロックさんの方を任せた。
「お前は、黒の剣士、か…」
「攻略組二人相手にするか。あ、もう一人血盟騎士団の副団長様もいるぞ」
それだけ言うと、ラフコフの面子は逃げた。ま、そんなもんでしょ。この後、捉えてきたグリムロックと前にいる三人がなんかお話ししてたが、俺には生憎興味ないのでぼーっとしてた。
「あなたがグリセルダさんに抱いてたのは、ただの所有欲だわ!」
「えっ!?な、なに!?」
「………なんであんたが反応すんのよ」
び、びっくりした…大きい声出すから……。で、そのまま三人がグリムロックを連行。取り残された俺も、キリト、アスナ。
「ねぇ、二人とも」
「「あ?」」
急に声を掛けられ、俺とキリトもヤンキーみたいな返事をしてしまった。が、まったくヒビることなく、アスナは続ける。
「ねぇ、もし仮に誰かと結婚して、その人の隠れた一面に気づいた時、どう思う?」
先に答えたのはキリトだ。
「ら、ラッキーだったって思うかな。だってさ、結婚するってことは、それまでに見えてた面はすでに好きになってたわけだろ。だから、其の後に新しい面にきづいて、そこも好きになれたら、二倍じゃないですか…」
キリトビビり過ぎだろ…。
「ま、いいわ。あなたは?」
俺か。
「や、その面にもよるけど悪い面なら慰謝料と教育費ふんだくって離婚」
「…………そんなことよりお腹空いたわ。せっかくご飯作ってきたのに耐久値切らしちゃったかもしんないし」
おい、俺の意見。丸々なかったことにされたぞ。
「2日も前線から離れちゃったわ。明日からまた頑張りなくちゃ」
「あぁ、今週中に、今の層は突破したいな」
で、その場から離れようとした時、グリセルダさんを見た気がしたが、まぁ気のせいだろう。