俺は今、アスナとキリトに問い詰められている。
「で、動機は?」
「いや俺が犯人が犯人確定かよ…」
どうやら、圏内PKなるものが起こったらしく、その場にたまたま居合わせてしまった俺が犯人だと思われているらしい。まったく、冤罪もいいところだ。
「証拠出せ証拠」
「その台詞が犯人と言っていいわね」
おい、こんなやり取りなんか前にもあったぞ。確か雪ノ下だったな…。そういえば懐かしいなぁ奉仕部。大して楽しかったわけでもないが、思い出だけは残ってる。だから、失うとダメージだけは残るのだ。だから今までボッチをキープしていたはずなのに。
きっと、キリトやアスナとの思い出も消えるのだ。なら、一層の事……、
「おいエイトマン!聞いてんのか?」
急に呼ばれて我に帰った。
「あ、あぁ悪い。聞いてた。で、なに?」
「聞いてなかったんじゃないか…」
「で、なんて言ったの?俺、ラーメンの具材買わないといけないんだけど」
「ラーメン…?あ、いやそうじゃなくて!お前犯人だろ?」
「いやいやいや。違うから。そもそも圏内でPKとか無理でしょう」
「その方法を吐いてもらおうか」
「だから知らねっつの」
そこで、アスナに胸ぐらを掴まれる。
「あんたねぇ!今、あんたが容疑者なのよ!?あの場で塔の中にいたのはあんたしかいないんだから!」
「……へ?そーなの?」
あれ?ってことはこれ…。
「俺、牢獄行き?」
「このままだとね」
「待て!俺は犯人じゃない!そもそも俺がそんなことしてもメリットないだろ」
「じゃあなんであんなところにいたの?」
言えない、あの見晴らしの良さそうな所に立って「フハハハッ!人がゴミのようだ!」と心の中でやりたかったとは言えない。
「とにかく!俺は犯人じゃない!そもそも俺がPKするなら圏内なんかじゃなくても十分出来るだろ!」
「でもお前のその腐った目なら犯人にされてもおかしくないと思うぞ」
「あの…その人は犯人じゃないと思いますが…」
おぉ!弁護士来た!
「その…私、被害者の人と元同じギルドだったんですけど…あ、ヨルコっていいます」
「キリトだ」
「アスナよ」
「弾よりも速く走る…」
ポカッ
「え、エイトマンです…」
いきなり殴ることないじゃないですかーアスナさーん。
「それで…その、私達のギルドはこの人と関わったことないし…私、基本的に彼…あ、カインズっていうんですけど、彼と一緒にいましたから…」
「………」
俺は改心のドヤ顔で二人を見る。その笑顔にはもちろん、「ほら見ろ?俺犯人じゃねぇだろ?探偵気取りも大概にしろよ?お前らみたいなガキが探偵になるなんて一万年と二千年早ぇーんだよ?」的なニュアンスを含めてやった。
「とにかくヨルコさん。今日は俺達が送っていくから、明日、また話を聞かせてもらえるか?」
「は、はい……」
キリトが言うと、三人は歩き出す。
「じゃ、俺帰るから」
反対側に歩こうとすると、アスナに襟を掴まれた。
「待ちなさい」
「なんだよ…」
「あなたも手伝いなさい。どうせ暇なんでしょ?」
まぁこうなることは分かってたよ。働きたくないーって言っててもなんやかんやで働く羽目になるんだよな…こんな現実嫌だ。
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ヨルコさんを送った後、
「さて、どうする?」
「帰る」
「あなたは黙ってて。とりあえず、手持ちの情報を検証しましょう。あのスピアの出処が分かれば、犯人が分かるかもしれない」
「となると、鑑定スキルがいるな…お前は上げて、ないよな」
「当然、君もね。ていうか、そのお前っていうのやめてくれない?」
「ねぇ、俺にナチュラルに質問しないのもやめてくれない?一応、俺もいるからね?」
「じゃああげてるの?」
「……あげてませんけど」
ゴミを見る目で一瞥された後、アスナはキリトに向き直る。
「ていうか、そのお前ってやめてくれない?」
「あ、あぁ…えっと、じゃあ…あなた?」
「……」
「副団長様」
「…………」
「閃光様」
「………………普通にアスナでいいわよ」
キリト、その気持ち、痛いほどわかるぜ!
「り、了解…で、フレンドに鑑定スキル上げてる子は…」
「んー…友達に武器屋やってる子がいるけど…今は一番忙しい時間だし…」
「一応聞くけど、エイトマンは?」
「一応ってなんだ一応って…いや友達いませんけどね?」
「じゃ、俺の知り合いの雑貨屋にでも頼むか」
で、今度は50層。その知り合いの雑貨屋はエギルさんの店だった。
「相変わらず、アコギな商売してるようだな」
「安く仕入れて、安く提供するのがうちのモットーなんでね」
「ついでに安い人間関係はぶった切っといた方がいいぞ」
「おう。エイトマンも一緒だったのか」
さらに俺の後ろからアスナがひょこっと顔を出す。その瞬間、キリトの首を掴んで尋問するエギル。
「どうしたキリト…ソロのお前がアスナと一緒って…どういうことだ?」
丸聞こえ、丸聞こえですよ…アスナ苦笑いしてるじゃん。ていうか、いいからさっさと話し聞けや。
その願いが届いたのか、奥の部屋でお話タイム。
「圏内でHPが0に?デュエルとかじゃないのか?」
「ウィナー表示は確認出来なかった」
「直前までヨルコさんと歩いていたなら、睡眠PKもないしね」
「突発的デュエルなら、やり口が複雑過ぎる。事前に計画されたPKなのは、確実を思っていい。そこで、こいつだ」
キリトの視線の先には剣が置いてある。多分、これが被害者を殺した武器なんだろうな。エギルさんが武器を手に取ってさっそく検証。
「……プレイヤーメイドだ」
「本当か?」
「誰ですか?作成者は」
「グリムロック…聞いたことねぇな。少なくとも一流じゃない。それどころか武器にもこれといった特殊なことはない」
「でも、手掛かりにはなるはずよ」
「一応、固有名も教えてくれ」
「ギルティソーンとなっているな。罪の茨ってところか」
「中2臭っ」
「エイトマン本当黙れ」
言われて俺が黙るはずもない。
「ていうかお前ら、本当に武器に原因があると思ってんの?」
「「はぁ?」」
「そんな武器が実在したらフェアじゃないだろ。茅場がそんなもん作ると思ってんの?」
「でも、これ以外に方法は…」
「なにより、」
そこで言葉を切ってエギルから剣を取り上げる。そして、キリトを突き刺した。
「なっ!?」
「え、エイトマン!?」
「お、おい!」
だが、なんも起こらない。キリトはピンピンしている。
「これが全てを言ってるだろ」
「あ、あなたねぇ!それで本当に死んだ人がいるのよ!?」
「そもそも俺は今回、本当にあの人が死んだとは思ってない。圏内でPKなんてさっきも言ったようにフェアじゃないし、茅場がそんな機能を着けるとは思えない。だから、なにかしらあるはずだ。見落としてることが」
「で、でも!実際に私達は見たのよ!?」
「それも問題だろ。圏内だろうと圏外だろうと、犯人に取っては周りに見られたくないはずだ。だが、カインズさんはあんな目立つところで消えた。これは犯人にとってメリットがあることなのか?」
そこまで言うと、全員が俺を目を丸くして見る。なんだよ?っと視線で問うと、アスナが答えた。
「エイトマン…意外に頭良いのね…」
「常に一人だったからな。ボッチは思考力と洞察力にたけるんだよ。ていうか意外ってなんだ意外って。こう見えても国語は学年三位なんだぞ俺」
「そ、そう…」
「で、エイトマン。お前が言いたいことはよく分かった。で、なんで俺を刺した?死なないって分かってなるなら自分でも良かったんじゃないか?」
「や、万が一ってこともあるから…」
「訂正。やっぱあなたバカよ」
「エイトマンちょっとこい。圏内ならいくら殴られてもダメージないんだよな?ならいいよな?」
「待ってキリトちょっとタンマ俺が悪かった俺が…待って待って待っ……」
外でボコボコにされた。