壊れかけた少女と、元非モテおっさんの大冒険?   作:haou

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ダイの関わる部分はどこまで描いたものか悩みものです。

今回みたいに全部書いてると長くなっちゃいますから、ともかくミリアたちだけに集中してダイやアバンの使徒達の動きは説明だけにとどめたほうがいいかもしれませんね……

本編が終わってから、あとで描写を追加してもいいわけですし。


使徒の片鱗

煙がくすぶる焼け焦げた身体を震わせ、

痣だらけで血を流しながら、

激しい怒りをその身に湛えた――

 

手負いのライオンヘッドがダイに向けて、大口を開けていた。

 

「グオォオオォーーッ!!」

 

彼は最期の力を振り絞って再びベギラマを撃ち放つ。

 

「ぐ、ぐぅ……ち、力がっ」

 

慌ててダイは再び、力をこめようとするが、もはや限界だった。

紋章の力は使いきってしまい発現せず、自力でどうにかするしかない。

 

「ヒャド!」

 

放たれたベギラマをダイはヒャドで迎撃するが、その程度で防げるはずもない。

 

「くそぉっーーーー!」

 

一瞬の拮抗すらしなかった。

瞬く間にヒャドの氷雪は押し込まれて、ダイに閃熱が直撃してしまう――その直前。

 

「ヒャダルコ!」

 

背後から氷雪の嵐が放たれてベギラマの熱線をギリギリのところで拮抗させ、じわじわと押し返していく。

 

「レオナ、来てくれたんだ!」

「なんとか間に合ったみたいね、ダイくん?」

「うん! でももうおれ、魔法力も力も空っぽなんだ」

「あとは私に任せなさい!」

 

レオナはヒャダルコを撃ち続けながら、ダイと女の子の前に立ちはだかる。

 

「ごめんレオナ……おれに力が残ってたら……」

「ダイくんはもう十分やったわよ。次は、この私の番!」

 

レオナは、一部始終を見ていた。

ダイの奇跡的な奮戦も、自分にも使えないような強力な呪文を使ったことも。

次は自分の番だとレオナは気力に満ちていた。

 

「ぐ、ぐぐ……っ」

 

だが、ベギラマの威力はレオナの想像以上。

 

「こ、このっ……!」

 

ダイのヒャドでいくらか弱まっていたから一瞬押し返したものの、その影響が消えると同時に逆にじわじわと押し込まれてしまう。

 

「なんで、なんでよっ!」

 

レオナは必死に両手を突き出して、魔法力を放ち続けるが、状況は悪くなる一方。

 

「私の呪文じゃダメなの……?!」

 

並の使い手のヒャダルコ程度では、ベギラマは抑えきれない。

それはこの世界では当たり前のことだった。

 

「もういいレオナ!」

 

そのことを悟ったダイは、レオナの背後に立って両手を広げる。

 

「ミーナをつれて逃げて!」

「そんなこと出来るわけないでしょっ!?」

「……おれなら大丈夫。こう見えて頑丈だからさ耐えて見せるって」

 

ダイは、自分の身体で呪文を受け止めてふたりを逃がす、そのつもりだった。

今の状態でベギラマを受ければ死ぬだろう。

 

でもそれでも。

ブラスからの教えと、勇者を目指す気持ちと、彼の中の純粋な善性が頑なに女の子を守ろうとしていた。

 

「ダイくん……!」

 

その姿にレオナは感銘を受けながら、どうしようもなく自分が嫌になる。

 

(なんてっ、私はなんて情けないのよ! 年下のダイくんがあんなに頑張ったのに。親友のミリアは多くの人たちを救ってきているのに! 私は……私は!)

 

「レオナ、もうこうするしか」

「ふざけないでよ! 友達を犠牲にするなんて……」

「ありがとうレオナ。もういいよ、ふたりだけでも」

 

「うっさいのよ!! 黙って見てなさい!!」

 

涙目でレオナはわめく。

レオナの中でふがいない自分と、その為に自己犠牲に走ろうとするダイへの怒りに火がつく。

 

そんなに自分は情けないのか。

そんなに自分は頼りないのか。

しかしダイくんのその態度は正当なものだ。

 

だって現に負けかけている。

――自分はミリアのような強い女の子じゃない。

 

みんなに守られるだけの、か弱いか弱いおひめさまだ。

――友達を犠牲にして助かるなんて、正義じゃない!

 

その憤りが。

出来なければ死ぬという状況が。

 

「友達ひとり守れなくて、何が、何が……っ!」

 

――レオナに眠っていた力を引き出させた。

 

「私はパプニカの姫で、未来の賢者なのよ! ……我がパプニカを守護する母なる大地の神よ! 御神の祝福と加護を与えたまえっ!!」

 

パプニカ王国の祀る神々へと、強い正義の願いと祈りで呼びかけたレオナの全身に淡い緑の光が宿る。

 

「神よ、友を助け民を守護する力を授けたまえ……我が名はレオナ。正統なるパプニカの王位を継ぐものなり!」

 

レオナは一世一代の賭けに出た。

彼女はヒャダルコを止めると、即座に別の呪文を発動させる。

 

「……ヒャダインッ!!」

 

それは、契約だけして使えなかった高度な氷系呪文。

稀代の天才と称される3賢者がようやく最近使えるようになったばかりのもの。

 

猛烈な氷雪の嵐を魔法力の輪っか状の光線の中に収束させて打ち放つ強力な呪文であり、並のメラゾーマを超える威力がある。

普段ならレオナに使えるはずもない難易度の高い呪文だった。

 

だが、レオナの決然たる意思の力が眠れる才を呼び起こし、神々の加護を受けて不可能を可能とする。

 

ダイが未来の勇者にして、純粋を司るアバンの使徒だと言うのならば――

レオナも未来の賢者にして、正義を司るアバンの使徒なのだ。

 

「最近のお姫様をっ、舐めんじゃないわよォォーー!!」

 

ベギラマの熱線を呑み込むように押し返し、ライオンヘッドは氷漬けにしていく。

そして断末魔の声を上げる間もなく、氷像と化したライオンヘッドは今度こそ息途絶えた。

 

「や、やったっ、やったぁ! すごいやレオナ! ほんとにすごいよ!!」

「は、はは。ざまあみなさい! やったわ! やってやったわよ!!」

 

駆け寄ってきたダイがはしゃぎ、震えていたミーナがひっしとレオナに抱きついてくる。

 

「おにいちゃんおねえちゃんありがとう……ぐすっひぐっ、こわかったよぉっ!」

「ミーナって言ったっけ? ほら、足を出して……」

「うん!」

 

レオナが最期に残った魔法力を振り絞ってミーナにホイミを掛けると、強くくじいて歩けないほどだった足が見る間に回復していった。

 

「わぁっ、ありがとう!」

「はぁー……今ので魔法力は完全に打ち止め」

 

安堵と同時にレオナに襲ってくる極度の疲労と緊張からの反動。

力量に見合わない呪文を無理やりつかった反動はかなり大きく、体力も激しく消耗していた。

レオナの手の震えは今更になって、激しさを増して止まらない。

 

「ははっ。我ながらほんと、なっさけないわ。でもぶっつけ本番にしちゃ、上出来よね……ちょっとダイくん!」

「なに?」

「頑張ったご褒美にこれあげる。だから、後は任せたわよ。ダイ、くん……」

「ちょっ!? レオナ!?」

 

レオナは、腰のベルトからパプニカのナイフをダイに渡すとそのまま、満足げな笑みを浮かべて気絶してしまった。

 

「おねえちゃん大丈夫……?」

「うん、ちゃんと生きてる……おれ達は生き延びたんだ」

 

これで死闘は終わり。

後は気球船に戻るだけ……しかし。

 

「――ぐふふっ。面白いものを見せてもらったぞ小僧!」

 

今の時期に出会うはずのない存在が、ダイ達の前へと姿を現した。

 

ダイの絶望は続く。

 




若干タイトル詐欺なところも。

原作の『ダイ爆発!』をひねって『レオナ爆発!』にしようかとも思いましたが。そっちのほうがよかったのかも。

正義や破邪の力を目覚めさせたほうがよかったかなぁとも思いますが悩んでたら投稿が数ヶ月先になるので思い切って投下しちゃいました。微妙なところは全部終わってから改めて考えればいいということで……

タイトルや、ネーミングはセンスが問われるので、どうも辛いです。
自分が考えるとダサいものばっかりになっちゃうのどうにかしたい……

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