戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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平成最後の投稿。内容が主人公の秘密ってどうよ?


42時間目 彼の秘密

 

「? どうしたナツル」

「………いや…なんでも」

 

 

坂本の言葉に適当な返事をして、僅かに動いた椅子をもとに戻す。

 

落ち着け…!動揺するんじゃあない!

甘粕(いいんちょう)みたいなもんだろ、あんなの。

 

むしろ委員長よりマシのハズだ。本物のJSだから。

ゲロを吐くぐらい怖がらなくてもいいじゃあないか。落ち着け…落ち着くんだ俺……

 

 

「葉月、アンタ一人?それともお母さんと?」

「驚かせようと思って、一人で来たの!」

「アンタね…」

「えへへっ」

 

 

ゴメン、俺ちょっとリバーシしてくるわ。

 

じゃなかった。リバースしてくるわ。もうヤバイ。

昨日の夜からなにも食ってないから、純粋な胃液が喉元までせり上がってきてるのが分かる。

 

込み上げるものを頑張って嚥下していると、俺に気付いたのか幼女がこちらに視線を向ける。

 

おいやめろ。近づくな。逆流性食道炎になる。

 

「あれ?どうして執事さんがいるんですか?」

「さあ?きっと趣味でしょ」

違う(あらん)わい」

これはな、止むに止まれぬ事情というやつがな。

 

「…それがあれか、島田の妹か」

 

説明すると長くなるので、否定だけして話を進める。

早く…とにかく早く済ませてこの場を離れなければ……!

 

「そうだけど…瀬能、あんた大丈夫?顔色がすごい悪いわよ?」

「大丈夫だ、問題ない」

「イヤ、真っ白じゃない。大丈夫じゃないわよ」

 

ハハっなにをおっしゃるウサギさん、瀬能君ちのナツルさんは昔っから大根肌って言われてるんだゼ?

 

「調子に乗って食い過ぎたかな…」

「え、ナツルお前、昼食まだじゃなかったっけ?いつの間になにを食ったんだ?」

「霞」

「仙人か」

 

うちの祖父(じいさん)そんな感じのあだ名で呼ばれてるらしいけどね。

 

「ナツル、お前ホントにおかしいぞ?どうした?」

「おかしい?俺が?ハハッ、何言ってんだお前…いつものことだろ」

「自覚はあるんだね」

 

そりゃあ…ね?

 

「なんで照れるんだよ…」

「出会って一年くらい経つけど何考えてるか今だに分かんねえ…」

「執事さん、大丈夫ですか?」

 

さりげなく距離を置いた(※本人基準)幼女が再び会話に混じってきた。

しかも物理的に距離を詰めてくる。や…やめろ……!

 

 

――俺に近づくなぁぁ――――――――!!

 

 

「なんでいきなりデ●アボロ?」

「声に出してないのに台詞がはっきり聞こえたんだけどどうやったの?」

 

直江とモヤシ。お前らのそういうとこ嫌いじゃないぜ。

 

「しっ、執事のお兄さん…葉月、なにか気に触ることをしましたか…?」

 

幼女がいきなりの拒絶に瞳を潤ませて狼狽する。

 

今にも泣き出しそうな表情を見て…とくに何も感じないな。

むしろスカッとする。イエイ!なぜなら僕はゲスだから!

 

「瀬能!あんたなに葉月泣かせて笑ってるのよ!」

「うわっ、さいってー」

「お、お姉ちゃん、葉月泣いてないですよっ」

「瀬能ちゃん、そんな態度はダメですよ!お姉さん怒りますよ!」

 

いかん。クラスの女子から非難の眼差しと声が。

つい最近上がり始めていた俺の株が一気に下がっていくのを確かに感じる…いやまあそれはどうでもいいけど。

 

問題はアレだ。いいんちょの甘粕が目尻を上げて近づいてくる。きっと説教でもする気だろう。

 

奴は…奴はマズイ……!

 

「ここは退くのだ…ここで一時退くのは敗北ではない……!!」

 

 

「おいなんかあいついきなり呟きだしたぞ」

「しかも髪の毛になんか…キノコみてーな斑点が浮き出てんぞ」

「瞳の模様までディアボ●に…あれもう演技じゃなくて変身じゃないか」

「瀬能は多芸じゃのう。ワシも見習いたいもんじゃ」

 

 

俺には頂点に返り咲ける能力がある。

 

「まあまあちょっと待てよナツル。帰って来たばかりじゃないか、少し話そうぜ」

 

ダッシュで出口に移動しようとほんの少しだけ後ずさったところで直江が近づいてきた。

 

…島田の妹を前衛にパーティを組みながら。

 

「断る。俺は忙しいんだ。近づくな」

「そんな冷たいこと言うなよ、クラスメイトだろ?友好を深めると思ってさ」

「プライベートでいつも深めてんだろ。こっち来んな」

ファミリー(おれたち)だけじゃなくて、その他の人間とももっと仲良くなろうぜ。卒業まで付き合っていくんだから」

「まったくの正論かもだが今じゃなくてもいいだろ。だから近づけんな」

「いやいや、こういう大きなイベントの時とかでもないと動けないだろ。だからさ、そんな警戒しないでもっと心を開こうぜ。そもそもなんで逃げ腰なんだ?」

「は?ちょっと、言ってる意味がわからないんだけど。警戒もしてないし腰も引けてないんですけど。あと寄ってくんなし」

 

「…………」

「…………」

「あ…あの……?」

 

 

 

ナツル は にげだした !!

 

 

 

「ここで姿をくらませたらこの子連れて自宅に押しかけるぞ」

 

 

しかし まわり こまれて しまった !!

 

 

「汚ねぇぞ直江ぇっ!!」

「まさかホントに止まるとは思わなかった」

 

こんチクショウ!!

 

「というかお前の家って、学園(ここ)から歩いて一時間くらいかかるだろ。そんな所夜に小さい子連れて行けるかよ」

 

クソがッッ!!ハッタリかよ!

 

「で?なんでそんなにこの子を恐るんだ?もうバレてるんだからキリキリ話しちゃいなよ」

「ヤダよ。バレてるんならむしろ説明したくないよ」弱味になるから。

 

「…………」← 直江 じっと見つめる。

「……」← ナツル そっと目を背ける。

 

 

「なんでぇ?ねぇなんで教えてくれないの?ねえねえなんでなんで?」

「ばっおまっ、や…やめ…やめろやめろほんとマジでやめろ!?」

「教えてほしいなッ!」

 

幼女(かか)えて迫って来んな!

 

 

 

「…直江ってあんな奴だったか?正直ナツルの狼狽ぶりよりも衝撃的なんだが」

「なんだかんだ言って冴ちゃんと出会って大和が一番変わったよな」

「だな」「うん」「言えてる」

「あはは…瀬能さんが2人いるみたいですね…」

「少し前まではあんな風じゃなかったのに…でも好き」

 

 

 

しばらく逃げ続けてたが、的確に進行方向を先回りされて教室隅に追い込まれてしまった。

コイツこんなスペック高かったっけ!?覚醒イベント?!

 

「分かった!言う!言うから!!」

「スネェェーーク!まだだ、まだ終わってはいない!!」

「ブッ殺すぞ!?」誰がスネークだ!

 




■ディア●ロ
 ジョジョ・五部のボス。
 髪の毛に斑点模様あるけどあれって地毛かな。超目立つ。

■「スネェェーーク!まだだ、まだ終わってはいない!!」
 初代プレステのメタルギア。ラスボスリキッドの台詞。


『t!』ではカレーに弱く、『戦士』では幼女に弱い主人公・瀬能ナツル。

令和でもnickの作品をどうぞよろしく

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