戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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シリアス(けんぷの方)に飽きた。
ストックも無いし、ネタが浮かぶまでしばらくギャグ路線で気楽にいこうと思い投稿します。

〜あらすじ〜

悪質なクレーマーを非暴力で撃退(?)したFクラス。
これで店には客が一人もいなくなり、やっとひと段落がついたのだった。


41時間目 ようせいさんのへやで

〜直江Side〜

 

ようやく客がいなくなったので、『本日閉店』の張り紙ををつけてドアを閉める。

誰も入らないようにした後は教室内の掃除だ。色々と暴れて内装がめちゃくちゃだからな。

 

その際(ナツルが見えないところで)木像たちが壊れた物の修理とかを手伝ってくれた。

…童話なんかに出てくる妖精みたいだな。

 

「そういえばナツル、お前頭の怪我はそのままでいいのか?」

「あ?…あー…そうだな」

 

血が止まってカサブタ状になっている箇所を軽く指で触れて、逡巡するように黙り込む。

 

「悩むくらいなら保健室行ってこいよ。人前に出る機会があるんだろ?」召喚大会とか。

 

どんなに寛大な人でも、目の上を切った痕があったら追求するぞ普通。結構目立つし。

 

「時間も無いんだし、さっさと行った方がいいぞ」

「俺まだ昼なにも食ってないんだけど…」

 

…諦めろ。お前なら一食抜いたぐらいは大丈夫だよ。多分。

 

 

「そういえばナツル。さっきはなんですぐに反撃しなかったんだ?」

 

いくら考えても、あの時手を上げなかった理由が思いつかない。

結果的に全て丸く収まったが、まさか狙ってたわけじゃないだろう。

 

「お前なら花瓶をぶつけられる前に…いや水をかけられる前に相手を制圧できただろう。なんで黙って受けたんだよ」

 

俺の問いかけにナツルは気怠げな雰囲気で見つめ返して、

 

 

「……さぁな…」

「さぁなって…」

「そういう気分だったんだよ。いいだろ別に、問題なかったんだから。保健室行ってくるよ」

 

そう言って、一方的に会話を打ち切って教室から出ていく。

 

そうなんだけどさぁ…なんか引っかかるな…

いつになく真剣な顔してたし。どうしたんだあいつ?

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「ありがとうござます」

「ええ、お達者で〜」

 

保健室でなんかよく分からんナースコスの美女に治療してもらい、ついでに見送られてFクラスの教室に戻る。

 

うちの学校の保健医の教師あんなんだったっけ…?前に利用した時と違う気がするんだけど…

………まあいいや。ただの記憶違いだろう。

 

もしくは頭を打たれたから、ちょっと混濁してるのかもしれない。

 

 

「…………」

 

絆創膏が貼られているところ…陶器を叩きつけられた部分をそっと指でなぞる。

 

なんであんなことしたかなぁ。

 

 

『お前なら花瓶をぶつけられる前に…いや水をかけられる前に相手を制圧できただろう』

 

 

確かにな。

制圧どころか、あの程度のザコなら五秒あればひき肉にできた。

 

でもしなかった。やろうと考えなかったし、身体も動かなかった。なぜだろう?

 

「………ま いっか」

俺の肉体と精神は時たまに俺自身の理解を超えた行動を取るから、今回もそれだろう。

 

結論が出たところで、教室に向けて再び歩き出す。

いつの間にか足が止まってた。

 

思考に没頭しすぎたな。

いきなり廊下の真ん中で立ちつくしてぼーっとするとか、不審者として周りから白い目で見られてねえよな?

 

 

 

『あの人かっこよくない?』

『憂いを帯びた表情の執事…いい!』

『九鬼の人かな。ランクたかーい』

 

 

 

…そういえば俺今 燕尾服だったわ。いい加減着替えたい…

 

汚れた制服メイドに持ってかれたままなんだけど どうなったんだ?

 

……洗濯されて返ってくると信じよう。

あんま九鬼の家行きたくないから。

 

 

「っと、到着か」

 

色々考えてたらFクラスに戻ってきてた。危うく通りこすとこだったよ。

 

『本日閉店』の貼り紙がしてあるドアを開けて――鍵かけてなくていいのかな――中へ入る。

かったるいからサンシャインのくだりとかは無しだ。お腹が減って力出ないし。

 

「ただいまー」

 

…返事がない。ただのしかばねのようだ。

いや冗談だけど。

 

俺が入ってきたと言うのに、クラスメイトたちは教室の真ん中で固まっている。

 

何してんのお前ら?

 

 

「ん、ナツルか。どっか行ってたのか?」

 

坂本が目敏く気づいて、人の輪を外れ近寄ってくる。

 

「ああ、ちょっと保健室にな」

「そういや額を切ってたな。大丈夫か?」

「大丈夫だ…問題ない」

「そうみたいだな」

 

さらっと流しやがった。

 

「…みんなで固まってるみたいだけどなんかあったのか?」

「ああ、島田の妹が来てるんだ」

それだけでアイドルが来たみたいな状態になるんか?

もっと他にやることあるだろ。明日の店の準備とか学園祭を楽しむとか。

 

そういやウチの学校、一年生に現役のアイドルがいるらしいな。どうでもいいけど。

名前なんつったっけ………まあいいか。

 

 

「で、その島田の妹をなんでみんなして囲んでるんだ?そんなに美人なのか?」

 

たとえどんなに美人でも、姉を見たらだいたい予想がつく。どうせぺったんこだろ。

 

 

ボディに鉄拳食らった。

 

 

「ゴバァッ!!」何事!?

 

「瀬能、あんた今何か失礼なことカンガエタデショ……?」

 

ヒィィッ!?いつの間にか島田さんが女子がしてはいけないレベルの怒りの形相でファイティングポーズを取っていらっしゃる!

 

ホントにいつの間に現れたの!?つい一瞬前までいなかっただろうに!!

 

 

「……気のせいだろ…」

「聞こえないわね」

「けして!島田さんを貶すようなことは考えておりません!すいませんした!」

 

握り込まれた拳に力が入っていくのを感じて、速攻頭を下げる。

恐ろしい…!"気"を使えないハズなのに、拳を中心に赤い闘気が渦巻いて見えるぞ。

 

「今回は許してあげるわ。教室が騒がしいみたいだけどなにかあったの?」

 

よかった。荒れ狂ってたオーラが四散した。

あの状態の一撃を食らって無事でいられる自信がなかったからな…、どうしてウチの学校の女子は強い(こわい)のが多いんだ。

 

「島田の妹が来てるんだ」

「ウソ、葉月が?ホントに?」

「なんで疑うんだよ」

 

つーかまずなんで来てること知らねえんだよ。

 

「さっきまで召喚大会に出てたのよ。朝家を出る時もなにも言ってなかったし」

「あっそ」

 

召喚大会か…島田は確か姫路とチーム組んでたな。

んで、俺とは別ブロックだったはずだ。そろそろ俺も次の試合の時間が近いか?

 

「あの子一人で来たのかしら…葉月!」

「! お姉ちゃん!」

 

島田の声に反応して、クラスメイトの集団から一人抜け出してくる。

 

それは周りの人間と比べると(一部除く)随分小さく―――小学生くらいの少女だった。

 

 

 

 

 

ガタタッ、

 

 

思わず引いた脚が椅子にぶつかり、音が鳴った。

 




画面にはいないけど吉井はロビィンたちの手によって壁際に追いやられています。

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