戦士たちの非日常的な日々   作:nick

64 / 129
26時間目 召喚大会⑧

〜美鶴Side〜

 

 

召喚大会、第四回戦試合会場。

 

と言っても場所は三回戦目の時と同じ、急遽設置された特設会場。

 

他の出場選手には悪いが、瀬能の試合を観るためだけに再びお父様とここへやって来た。

 

やって来た…のだが……

 

試合開始の時間が過ぎても、三郷のパートナーである瀬能が一向に姿を見せない。

 

 

『なんか遅くねぇ?』

『まだ始まらないのかよ』

 

 

客席に座る観客も徐々にざわつき出す。

 

「遅いな…なにかあったのか?」

「さぁ…」

 

隣に座るお父様の疑問に、なんとも言えずに簡潔に答える。

 

召喚大会のルールで、選手は試合開始から五分以内であれば参戦することができる。

 

しかし5分を過ぎても現われなかったら、試合に参加できない。

一人遅刻なら一人で戦わなくてはならないし、二人なら不戦敗となる。

 

三郷が簡単に負けるとは思わないが、相手は三年。一人だと厳しいだろう。

 

まさかそれが狙いか?はじめから乗り気ではなかったからな。ここでわざと負けて大会から降りるつもりでは…

 

三回戦までは勝ち残れと命じはした。それは確かに守ったから文句は言えない。

しかし、状況は変わってしまった。今瀬能に試合放棄されたらとても困る。

 

「デバイスを使って現在位置を特定してみます。最悪通信で呼び出しましょう」

 

タブレットを取り出して起動する。

 

今から呼んでも間に合わないだろう。それでも何かせずにはいられない。

 

「美鶴――まて、なんの音だ?」

 

咄嗟の行動をお父様が窘めようとしたが、その台詞が途中で怪訝なものに変わる。

 

音…?

 

 

『なんだ?なんか音楽流れてるぞ?』

『ホントだ…ロッキーか?』

 

 

周りの観客達も突如聞こえてきた音…メロディはあるが歌詞がない、テーマソングのようなものに気づいたようだ。

 

音楽が流れ出したことにより、ざわつきが苛立ちから来るものではなく、困惑を含んだものに変わる。

大会のスタッフが機転を利かせたのか?

 

 

テテ〜テ〜テテ〜テ〜♪

テテ〜テ〜テテ〜テ〜♪

 

 

音楽に合わせるかのように、試合会場の選手入場口から一人の男が現われる。

 

頭からタオルをフードのように被っているため顔は確認できないが………先ほども見た燕尾タイプの執事服を着ている。

 

 

テテテ〜テテ〜テ♪

テテテ〜テテ〜テ〜テ〜テ〜〜〜♪

 

 

男は軽やかに、ランニングするような走りで会場の中央―――立会いの教師と生徒達がいる場所―――に近づいていく。

 

そして音楽も佳境に入ったところで、

 

 

テテ〜テッ!

 

「エイドリアーーーーーン!!」

 

 

タオルを払い、拳を握りしめて高らかに両手を挙げる。

 

……なぜか、客席が盛大に湧き歓声と拍手が鳴り響いた。

中には立ち上がる者までいる。

 

意味が分からない。

 

「…大丈夫そうだな」

「………ええ」

「…なかなかユニークな男だ」

「………………そうですね」

 

瀬能、後で処刑だ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「瀬能君、遅刻ですよ」

「あ、ハイ、すいません」

 

っべー。マジやっべー。立会いの教師高橋先生じゃねーか。やらかしちまったぜ。

 

一年の時担任だったせいか、なんかイマイチ強気になれない。背中がゾクゾクする。

 

「5分以内ですので参戦は認めますが、次からは注意してくださいね」

「はーい」

 

不可抗力なんだけど…説明が面倒だから言うのやめとこ。時間もったいないし。

 

「あははっ、ナッチはいつも面白いな」

「あん?」

 

対戦者側から急に話しかけられる。

 

「!?あっ、あんたは―――!」果たしてそこにいたのは!

 

 

 

 

モモさんだった!

 

 

……ぁ?『次回に続く』とか『CMの後で』とか無いのかって?

 

別作品含めてもう二、三回やっただろアレ。もう飽きたんだよ。いいだろやんなくて。

 

そんな事より。

 

 

「なんでいるんすかモモさん」

 

明らかに大会の趣旨にそぐわない人がここにいる。

その疑問を解決する方が先だ。

 

「豪華賞品が貰えるって聞いて」

「他の大会行け」腕ずもうとか力自慢とか。

 

「いやあ、それがな?『川神禁止』っていうルールがあって出場できなかったんだ」

 

まさかの完全出禁!?

 

「まったく…こんな美少女を禁止にするなんて、酷いと思わないか?」

「…格闘系の催しの過去の記録を見ましたけど、すべて優勝者は川神百代さん。対戦した全員が病院に運ばれてると書かれてましたね」←雫

「順当じゃん」

 

どう考えても酷いのはモモさん(あんた)だよ。

 

「むぅぅ、ナッチまでそんな事言うのか!酷いぞ!」

「あんたも大変だな。こんなののパートナーって」

 

むくれる馬鹿(先輩)を無視して、相手側のもう一人の方に話しかける。

 

「問題はない。もともと召喚大会に興味はあったからな」

 

淡々とした様子で返された。

 

同学年の奴としか組めない決まりだから、この人も三年なんだろう。

 

「しかし、瀬能といったか?学園祭とはいえ中々変わった格好をしているな」

「いやあんたに言われたかねーよ」

 

着物じゃん。どんな出し物の衣装だよ。

 

「失敬だな。普段からこの格好だ」

「余計悪いわ」

 

これが許されるって、今更ながらフリーダムな学園だよな。

俺もライダースーツとか着て来ようかな。

 




副題:force

まさかのモモさん登場。

Fクラスで絡むと思っただろ?残念ハズレだよ。
ちなみにパートナーは京極さん。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。