戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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17時間目 2-S 水着喫茶『あるじ様とお呼び!』

 

「着替えた方がいいわね」

 

的確なボディブローを十数発決めた後、まるでそれが無かったかのように話題を変える会長。

 

なんという変わり身の早さ。お兄さんビックリだよ。

 

周りのギャラリーも――って誰も見てねえ。なんで!?

 

「瀬能君。ジャージか替えの制服はある?」

「…持ってない」

 

色々と言いたいことはあるが、何一つ満足できる答えが返ってきそうにないのでとりあえず流す。それよりも現在のことだ。

 

今日が文化祭ってことだから、体操着もなにも持ってきてない。

そもそもカバンを持ってきてない。

 

ついでに言うと財布も持ってきてない。(←オイ!)

 

イベントリがあるとなにか持つのバカらしくなるからなぁ。

 

「でも流石に衣類は…入ってないか」仕方ないな。

 

「ならうちのクラスに来なさい」

 

決意を固めて一歩踏み出そうとしたら、会長さんが命令口調で待ったをかける。

 

「…うちのクラスって…S組か?」

「あなた、今から何かするつもりでしょう。顔を見れば分かるわ」

 

そんなに分かりやすいですか自分?

 

「どんな行動をするかまでは分からないけど、どうせろくでもないことでしょう。問題を未然に防ぐのも生徒会長の務めよ」

「君はホント実に失礼だな」

 

俺が問題起こすの前提って酷くない?なんだよ未然に防ぐって。

エライ偏見だよ!

 

「じゃあどうするつもりだったのよ」

「吉井の制服を強奪する」

 

身長差を考えたら坂本や島津の方がいいんだが、一番後腐れがないのはやっぱり奴だけだからな。

幸いソーイングセットはあるから、服のサイズは合わなかったら直せばいいや。

 

「…ろくでなしじゃなくて、人でなしなことを考えてたわね」

 

山田くん、座布団一枚あげたってー。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

結局、俺は2-Sの教室に行く事にした。時間勿体ないし。

 

そうすると問題なのは当然…このデバイスだ。

 

さっきも言ったがこれ、進むべき道順勝手に決められるから自分が行きたいとこに自由に行けないんだよね。どうしよう。

 

というかトイレとかどうすりゃいいんだ?

 

「桐条先輩に訊いてみればいいんじゃない?そのデバイスを用意したのも取り付けたのも先輩なんだから」

「なるほど」言われてみりゃ確かにそうだ。

 

じゃあ早速デバイスの通話機能で…俺の携帯 電池が切れてるからな。

マジでこれ貰えないかな。

 

 

ピッポッパッ、…プルルルルっ プルルルルっ

 

 

『(ガチャッ)はい、桐条です』

「メイ・リンッ、サムスが…サムスが脱いだぞ!」

『………』

 

 

ブッ、ツー ツー ツー

 

 

ノーリアクションで通話を切られた。失礼な奴だなぁ。

 

「…………」

 

いかん、隣にいる会長が液体窒素よりも冷めた眼差しでこっちを見てる。身体に霜がつきそうだ。

 

違うんだよ、あの…プルルルルって電子音が無線の呼び出し音にそっくりだったからつい…、だからけして悪気があったわけじゃっ。

 

あ、ハイ、次は真面目にやります。

 

 

ピッポッパッ、…プルルルルっ プルルルルっ

 

 

『(ガチャッ)…はい、桐条です』

「お前か」

 

 

ブッ、ツー ツー ツー

 

 

又しても無言で切られた。しかもさっきより早く。

 

「…瀬能君」

「いやっ、ちがっ、今のは素の対応だ!」

「なおさら悪いわよ」

 

ごもっともです。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

その後、会長の携帯で―――俺のは着信拒否されて繋がらなかった―――無事に自由行動を許された俺たちは、そのまま二年Sクラスが出し物を主催している教室へと足を運ぶ事にした。

 

「そういえば会長のクラスってどんな出し物をしてるんだ?」

「喫茶店よ。ごく普通の」

「へー」正直意外。

 

だってSクラスだぜ?ほんの一部を除いてクッソエリート意識(笑)持っちゃってる奴らの集まりが、喫茶店とかいう接客業を選ぶとか。ねえ?

 

出来る出来ない以前に、なんでその案が出たのか疑問だよ。

 

「作成・接客・経営。その他色々なものを学べるから、是非喫茶店にしようって葵君が提案したのよ」

「葵…ああ、あの優男風の」試召戦争のときに姫路に勝った奴だったな。

 

インテリみたいな見た目だったが、外見だけじゃなくて中身もそうだったのか。

 

つーかこの流れから行くと、俺店の制服着せられるのか?召喚大会にも出なきゃならんし、いい広告塔にされそうだな。

 

 

「ちなみに店名は?」

「水着喫茶『あるじ様とお呼び!』よ」

「帰るわ」

 

 

即座に踵を返す。

 

「どこに帰るのよ。自宅?」

 

が、腕を掴まれてしまった。

……くっ、力強えな…

 

「…会長。あんたのクラスの方針にどうこう言うつもりはねえけどよ、水着喫茶はどうかと思うぜ」

 

一歩間違えたら営業停止されるぞ。よく企画通ったな。

 

「つーかそこでどんな服を俺に貸すつもりだったんだ」

 

水着か?水着なのか?テイルズじゃねーんだぞこの世界は。

 

足は普通に靴を履き、腕には近未来的なデバイス付けて身体は海パン一丁ってどんなファッションだよ。

フランキーだって上にアロハシャツ着とるわ。

 

「勘違いしないでちょうだい。いくら企画が半裸でも、それをあなたに強制するつもりはないわ」

「どうだか」人を勝手に生徒会に入れたり、筋弛緩剤撃ち込んだりする奴だからな。

「…一時間もしないうちにチームとして同じ舞台に立つんだから、おかしな格好をさせるわけないでしょう」

 

…それもそうか。

 

「でも水着喫茶だろ?」

「一人か二人は制服の替わりになるようなものを持ってる人はいるでしょう」

 

……ほ・ん・と・う・だ・ろ・う・な〜〜?

なんかそこはかとなくイヤな予感がするんだけど。

 

「疑ぐり深いわね…少しは信じなさい。女の子にモテないわよ」

「うるせーな…そこまで言うなら信じてやるよ」

「そ、じゃあ行きましょうか」

 

そう言って俺の腕を離し、歩みを再開する。

 

…いい加減、軽くでもいいから身体を拭きたくなってきた。

ここはパートナーを信じるとしよう。

 




■メイ・リンッ、サムスが脱いだぞ!
 スマブラ。ゼロスーツサムスとの戦いでスネーク無線使うと聞ける。

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