戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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「家具作りで余った板をL字になるようにナッツの周りに置いて…よしできた。うわ怖っ!部屋の隅にいる悪霊みたいだぞ。写真撮っとこう」
『…………』
「ひいっ!呪怨の男の子!?その姿勢のままでこっちを見るなよ!怖いなぁ…写真撮っとこう」
「…平和ですねぇ」



15時間目 召喚大会⑥

〜茜Side〜

 

 

あたしを含めても片手で足りる人数しか居ない空間で、"そいつ"と対峙する。

 

名前は…知らない。バカ(ナツル)がきちんと紹介しなかったからだ。

まあ正直、興味もねえからクソアマでいい。けど確かなことは―――

 

このクソアマはあたしの敵だってことだ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

ガキィンッッ!

 

 

クソアマが投げた鎖付きの短剣を、武器である拳銃のグリップ部分で防ぐ。

 

 

Sクラス 三郷雫 世界史 516点

        VS

Dクラス 美嶋茜 世界史 269点

 

 

そのタイミングで空中に表示されるあたしとクソアマの点数。

 

他は比較的平均的なDクラス相応な点数だが、世界史は点が取れる科目だ。

 

担当の田中先生(じいさん)の採点が甘いってのもあるが、一番の理由は知り合いが世界中飛び回っていて、旅先のいろんな国々から手紙を送ってくるからだろう。

 

中途半端に歴史が絡んでくるから、つい気になって調べてしまう。

そうしているうちに詳しくなった。

 

いや、詳しくなったつもりだった。

 

「ナツルとは別方面でバケモンだなてめえ…」500ってなんだよ。

 

「理解不能な独自のルールで動いてる、無法者な瀬能君を引き合いに出されても困るのだけど」

「別の星から来たエイリアンだっつってんだよ」

「あら、酷いこと言うわね」

 

「テメーら協力して俺をディスるのやめろ!」

 

外野が騒がしいけど無視する。

 

相手が異星人だろうと関係ねえ、ぶっ殺す!!

 

 

パンッパンッ

 

 

あたしの召喚獣がクソアマ目掛けて発砲する。

 

試召戦争の時は弾は出なかったが、今回は大丈夫みたいだ。ちょっと頼りない発砲音だが。

 

点数が200超えないと使えないのか?

 

 

キンキンッ

 

 

涼しい顔して銃弾を短剣で防がれる。

 

この程度屁でもねえってか?舐めやがって…!

 

「死ねっ!!」

「野蛮ね」

 

再び引き金を引くが、同様に防がれる。

 

それだけじゃなくて、召喚獣が猛スピードで向かってきやがった。接近戦も出来んのかよ!

 

「短剣だからな…」←ナツル

 

すぐさま拳銃(ぶき)を盾代わりにして攻撃をかわす。

 

それでも少し点数を削られた。バケモンが!

 

 

パンッ、パンパンッ

 

 

お返しに連続して弾を撃ち込むが、短剣の一振りで全て破壊される。

こんなのどうしろってんだチクショウ!!

 

「大物ぶって頭使ってんじゃねえよバカ!テメーにやれんのは泥試合だけだろうが、アクビが出ちゃうぞ!!」

 

 

ドパンッッ!!

 

 

「がもっ!?」

 

口汚い雑音が聞こえたので、そっちを見ずにエアガンをぶっ放す。

 

使用した弾は特製とりもち弾。作った奴は『ホワイトベリー』とか呼んでたな。

名前の通りほんのり甘いそうだけど、衝撃を受けて何かに当たった瞬間、破裂して広範囲を絡め取る物体を味見したいくはねえから本当かどうかは分からない。

 

「…!……!!」

「瀬能君、大丈夫ですか?口と鼻が溶けてなくなったみたいに白いものが貼り付いてますけど、息出来てます?」

 

どうやら口に当たったらしい(※正確には歯に当たった)。丁度いいから後でどんな味がしたか聞いてみよう。(※鬼か)

 

…ガヤに同調するみたいで気分悪いが、このまま()っててもジリ貧だ。

 

それなら―――!

 

「くたばれ!」

「物騒ね」

 

2・3発撃つと同時に銃のグリップを(えぐ)りこむようにクソアマに叩きつける。

 

 

Sクラス 三郷雫 世界史 489点

        VS

Dクラス 美嶋茜 世界史 212点

 

 

中学の時、ナツル相手に散々試した接近戦での攻撃方法は流石に効果があったみたいだな。

 

「…瀬能君にも困ったものね。パートナーは私なのに、敵側の相手にアドバイスを送るなんて」

「耳鼻科か精神科に行け」

あんな頭の悪そうなヤジがアドバイスとか、正気かこいつ。

 

「声をかけられる前と後とで、雰囲気がまるで違うじゃない。迷いがなくなった顔をしてるわよ」

「関係ねーなっ!!」

 

横薙ぎに振るわれた短剣をグリップで防ぎ、即座に顔面に照準を合わせて引き金を引く。

 

2発 3発 4発…普通ならリロードが必要だけど、何発撃っても弾切れを起こす気配がない。

無限なのか?銃使う身からすると夢みたいな状況だな。

 

「たった一声言われただけでこうまで変わるなんて、3年の信頼は凄いわね。いえ、想いの力かしら?」

「はっ、なに言ってんだてめえ!」

「だって好きなんでしょ?瀬能君(カレ)のこと」

「はっ?」頭が真っ白になった。

 

スキ?あたしが?誰を?……ナツルを!?

 

待て、待て待て待て待て!ちょっと待て!

 

ナツルだぞ!?あの…普通によく分からない、正体不明のナツルだぞ!!

そんなのに恋愛感情持つ訳…!

 

思わずチラっとクソの方を見る。

 

 

 

(ト…モ…ダ…チ……)

『…………』

 

 

 

プルプルと小刻みに震えながら、ピク●ンみたいな自分の召喚獣と手を取り合っていた。

 

「(ブチッ)テメエなにポルナレフとチャリオッツゴッコしてんだ!」

「(ドゴッ!)イーティーですっ!!」

 

あまりにもムカついたので、すぐさま走り寄ってナツルの腹にそのまま蹴りを入れる。

 

つま先がいい感じに横隔膜を貫いたみたいで、口についたとりもちを引き剥がすくらい大きく息を吐き出し、ゴホゴホと盛大に咳き込み出す。

 

「ゴホっ…ゲホッ!ハー…ハー……死ぬかと…思った…!」

「勝手に死ね!」

 

つーかお前 死にかけたら宇宙人との友情育むのか?

 

「…隙だらけよ」

「ハッ!?」

 

背後からかけられた言葉に、慌てて振り返ると、あたしの召喚獣がクソアマの召喚獣の手によって切り裂かれる光景が目に入った。

 

 

Dクラス 美嶋茜 世界史 0点

 

 

身体が上下に別けられて無事な筈もなく、当然0になる点数。

 

「それまでですね。勝者、生徒会チーム」

 

無情にも田中先生(ジジイ)に試合終了を告げられた。

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「テメエのせいで負けたじゃねえか!!」

「(ドゴッ!)りふじん!?」

 

足元で今だ転がるクズを蹴飛ばすと、奇妙な音がした。

 

「ごおぉっ…酸欠に脇腹はキツイ……!ていうか敵同士で争ってんだからどっちか負けるのはあたり前――」

「ならテメーが負けやがれ!!」

「(ドゴッ!!)ふじょうり!?」

 

言い訳をするクズにもう一度トーキック。

さっきより強く、つま先をみぞおちに打ち込む。

 

「…あまり生徒会(うち)の役員をいじめないでほしいのだけれど」

 

悶絶するナツルに連続で蹴りを食らわせていると、呆れたような雰囲気なクソアマが近づいてくる。

 

「うるせーよ!そもそもテメーがあんなこと言わなきゃ…!」有利だったあたしが勝ってたハズだ!

 

「あんなこと?」

足下のナツルが目ざとく食いついてくる。

 

「なんか話してたのか?」

「っ、」

 

 

『好きなんでしょ?彼のこと』

 

 

「〜〜〜〜〜!うるせーバカヤロー!!」

「(ドゴッ!!!)ふかかいっ!?」

 

立ち上がろうと膝立ちになったナツルの顎にひざ蹴りを入れて、足早に剣道場から出る。

 

あたしはぜっっったい、認めねえからな!!

 

 

 

 

 

 

 

会長「ところで、なぜ彼女をパートナーに選んだの?」

清水「美嶋さんも召喚大会に参加したがってたからですわ!なんでもペアチケットが欲しいとか…」

ナツル「…換金でもする気だったんじゃねーの?」

会長「(きっと話すきっかけに使いたかったのでしょうね…それが分からない瀬能君は鈍感を通り越して異常だわ)」

 




■「大物ぶって頭使ってんじゃねえよバカ!テメーにやれんのは泥試合だけだろうが、アクビが出ちゃうぞ!!」
 はじめの一歩。青木の初タイトルマッチでの鷹村のヤジ。
 うちのナツル君、こういう非道なセリフ使ってるとき生き生きしてる気がする。

■ポルナレフとチャリオッツゴッコ
 ジョジョ第3部、バニラアイス戦でポルナレフが攻撃から逃げようとした行動。決して遊びではない。

副題: Queen VS Solar

召喚大会二試合目終了。
そろそろFクラスとの絡みを書きたい…

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