戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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13時間目 召喚大会④

・剣道場

 

二回戦開始の十数分前に来たにも関わらず、試合会場には立会いの教師と会長がすでにいた。

 

教師は分かるが会長はいるのおかしくね?ちゃんと見回りしたんでしょうね?

 

「あなたじゃあるまいし、きちんとしてるわよ」

「失敬な、俺だって真面目にやっとるわ」

 

強制だけどな!

 

…もはや考えを読まれてる事にツッコミを入れる気すらなくなってきた。

 

「ところで瀬能君。…さっきの試合、本当に不正はしていないの?」

「あー?なんだ会長。疑うのか」

パートナーとか言ってたくせに。とんだ相方だな。

 

「そういう訳じゃないけど…一定以上の点数じゃないのに、分身したり手も触れずに相手を圧し潰したりされたら気になるわよ」

 

少し気まずそうに眉をひそめながら、言い訳がましい台詞を返す。

 

自分でも今のはどうかとでも思ったのか?平気で筋弛緩剤打ち込むような奴が、んな殊勝な神経してるとは思えんがな。

 

「あれは俺の持ち技の一つ…いや二つか?まあそんなもんだ」

「…召喚獣なのに、あなたの技術を使えるの?」

「あんたとの試合でもやって見せたけど?」

 

極みコンボに始まり自流派の技の数々、()めには天狼抜刀牙。

 

当時のことを思い出したのか、会長が額を押さえながら目を瞑る。

 

「…そういえばそうだったわね……」

「それに技術を使うっつっても、他の奴らだってやってるしな」

 

召喚獣の身体を動かす、持っている武器を振るう。

 

突き詰めればこれらも立派な"技術"だ。

 

「自分の身体動かすのが得意な奴は、他の素人より一歩先の行動ができるんだろ。ワン子も"気"を飛ばしてたし」

Dクラスとの試召戦争の時に。

 

先ほどの試合やワン子のケースを参考して察するに、"気"を使う攻撃は本来なら体力を削るところ、代わりに点数を消費するようだ。

 

詳しくは覚えてないけど、俺の物理の点数は確か130点くらいあった。なのに表示された点数は100そこら。

 

技一発放つたびに体力を三割以上消費(つかう)ってどんな鬼ゲーだよ。レベル上げて物理で殴った方が早いじゃねーか。(あ、シャレっぽくなっちゃった)

 

それとも強力な"気"攻撃ほど多く点数を消費するのか…?よく分からん。

小技がどれくらいの威力で、どれほど点数を削られるか調べてみたい気もするが…他に誰か協力してくれる奴いるかな?

 

実戦以外に調べる機会ないだろうから、一歩間違えたら点数零で即補修室行きだ。俺ならやりたいとは思わないがね。

 

しかしそうする大々的な"気"を使った攻撃がほとんど撃てなくなる。もどかしい、

 

「検証するべきか、やめるべきか…それが問題だ」

「あら、ハムレット?瀬能君は昔の偉人や詩人の台詞に詳しいのね」

中二の影響です。

 

「…とか言ってる間に、相手側のチームが来たみたいね」

 

会長が出入り口に視線を移すと、二人組がゆっくりと入ってくる姿が見えた。

一回戦目とは違い両方とも女のペア。今度は先ほどと違い、つい最近どこかで見たような顔をしている。

 

…というか。

 

「茜?」

「なっ、ナツル!?」

 

かつての悪友であり、対Dクラス試召戦争で敵として戦った女・美嶋茜だった。

 

「久しぶりだな。一年ぶりか?元気してたか?」

「試召戦争の時会っただろうが!!先月だぞあれ!」

 

 

うん、そうだよ。だから大体一年ぶり。

 

むしろ一年超えたよ。

 

 

「あれから全く音沙汰なしだったけど、どうしてたんだ?」

「なんでテメェにあたしの日常をいちいち報告しなきゃならねえんだ」

 

あいさつくらいしに来てくれてもいいと思うんだけど。

 

「グラウンドの片隅で青空教室開いてる奴のとこなんて行けるかよ。恥ずかしい」

「納得の理由だけど、俺が開いてるみたいな言い方やめろ」学園の方針だから。

 

あとそんな恥ずかしい奴の所に休み時間毎回来てくれる()もいるのよ?(←呂布ちゃん) 言わないけど。

 

 

「…瀬能君、そちらの()とは知り合いなのかしら?」

 

旧友と旧交を温めていると、隣に立つ会長から声をかけられた。

 

「ん?ああ、中学の頃の同級生だな。よくつるんでたんだ」

「……そう」

「おいナツル。誰だそのクソアマ」

 

今度は茜から声をかけられる。

どうでもいいけど初対面の相手をクソアマ呼ばわりすんなよ…

 

「こっちは あー…職場の上司?みたいな?ほら俺生徒会役員だから」

「知らねーよバカ、いつなったんだよ。聞いてねーぞ」

 

…なんで俺が自分の進捗状況いちいち報告しなきゃならんのだ。

 

「まあ…各々そんな感じの仲です」

「…………」

「けっ」

 

会長は無言・無表情で、茜はイラついた顔で舌打ちを一つしながらお互いに睨み合う。

 

え、なにこのいきなりの険悪ムード。居心地むちゃくちゃ悪いんですけど。

 

俺こんな中今から試合すんの?勘弁してよ…

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「えー。両チームが揃いましたので、これより二回戦を始めたいと思います」

 

二人の女子の異様な雰囲気をガン無視して、立会いの教師が口を開く。

 

確か田中先生だったっけ?初老の男らしい大人の対応…いやマイペース?どっちにしてもかなりの余裕が感じられる。

こっちとしてはありがたいけど、空気を読まん人だな。

 

 

「ふ…ふふふっ、相手側に生徒会長がいるのはちょっと驚きましたが、まったく問題ないのです!」

 

ついでに今までまったく口を開かなかった茜のパートナーが、こちらをキッと睨んで騒ぎ出す。

 

「美春の思いを踏みにじったこと…後悔させてやるのです!」

「…踏み躙る?あなた、Dクラスの女子のクラス代表の清水さんよね?なにかした覚えはないのだけれど」

「とぼけるつもりですか?美春が一生懸命考えた企画を何度も何度も却下したくせに…!」

 

今にも飛びかかってきそうなほど、分かりやすく怒気を噴出させている。

 

……ん?Dクラスの企画…?

 

「あ、それ否決(おと)したの俺だわ」

「えぇっ!?」

「あん、そうなのか?」

 

清水と茜がほぼ同時に声を上げる。

 

いやまあ、書類仕事してる時にたまたま回ってきたんだよね。

 

「瀬能君…きちんと仕事をしてくれてるのはありがたいのだけれど、クラスの出し物の是非を勝手に決めないでちょうだい。こういう問題が起きたりとか、後々困るでしょう」

「『美波お姉様の素晴らしさ博覧会』とか企画出されたらあんただって却下するだろ」

 

最終的に少し変わった喫茶店に落ち着いたが、そこに行くまで延々と『美波お姉様』が必ず出店名と説明文に出てきてた。

 

途中から面倒になって、もう通しちゃっていいかな?って思ったけど、流石にクラスメイトのプライバシーを侵害するもんを公表させる訳にはいかないので我慢して落とし続けた。

 

「………せめて次からは報告ぐらいしてちょうだい…」

「覚えてたらな」

ていうかまずない事を祈る。





副題:邂逅

プロトタイプ時代(小説家●なろう)で書いてた時はバトル無しでさらっと流してたけど、今回はマジメに書こうかと思います。よく考えたらこの二人初めての顔合わせだし。

結果ちょっと更新が遅れるかもしれない…ネタが…!

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