戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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原作でやらないことが出来るのが、二次創作の醍醐味だよね。




7時間目 真実の時間

〜明久Side〜

 

「それで、なんの話だったか…うちのクラスがなにをするかだったっけ?」

 

直江くんがナツルの返答を振り払うように首を振って話題を変える。

いや、この場合は戻すって言うのが正しいのかな?

 

「そうだな。食い物屋ってのはなんとなく分かるんだが、テーマはなんだ?」

「飲茶、つまり中華だな。もっともごま団子や桃マンといったお菓子ばっかだけどな。ちなみに名前は中華喫茶『ヨーロピアン』だ」

「中華ねぇ、だから丸テーブルばっか作らせたのか」

 

ナツルは納得したような台詞を言いながら、机の上にあるメニュー表に手を伸ばす。

 

「…なんかメニューに大福とかずんだ餅とか書いてあるんだが」

「クリスがごねてな…出し物も最初は『峠の茶店』を押してた」

「そんなに言うんだから作れるんだろうな和菓子…」

「いや、まったく」

「誰かシバけよ。これ以上調子に乗る前に」

 

過激なこと言うなぁ…ナツルらしいや。

 

そして"シバけ"と言われた本人はというと。

 

 

「冴島殿!この子ら(ぬいぐるみ)を自分に貰えないだろうか!?」

 

ナツルが作った(らしい)学ランを着て頭に『猫のヒタイ』と刺繍された鉢巻をした三毛猫っぽいぬいぐるみを抱きかかえてはしゃいでいた。

 

「どーぞー。ただ文化祭終わるまでは教室に置いといてね」

「いいんですか?凄い凝った作りしてますけど…」

 

確かに、姫路さんの言う通り学ランの生地もフェルトじゃなくポリエステルを使ってる――って着脱可能!?凝りすぎでしょ!?

 

「愛着とかないんですか?」

「なくはないけどさ、小学校の時からちょくちょく作ってるから置き場がないんだよ。今はもっぱらイベントリの肥やしになってる」

 

そんな収納場所用意できるの君だけだよ。

 

「このまま際限なく増え続けるの目に見えてるからな…貰ってくれるなら正直嬉しい」

「クオリティ高いのにもったいないな。いっそ売ればいいのに」

「売れるかよ。第一どこに持ってくんだ」

「フリマとかなら、買う人が何人かいると思うけどな」

 

……………………………

 

ナツルが「その手があったか…」みたいな表情をして顔を手で覆う。

考えつかなかったんだね。

 

「…まあいいや。ていうかこれ、メニューに書かれてるやつ全部作れるのか?結構手間かかるぞカステラとか」

「…問題ない」

「どわっ!?」

 

いきなり現れたムッツリーニに、椅子から飛び上がるナツル。

そこまで驚くことかな…?

 

「土屋かよビックリしたぁ!気配殺して後ろに立つな!呂布かと思っただろうが!?」

 

そういえば今日は1人だったね。珍しい。

 

「呂布さんはどうしたんですか?」

「自分のクラス手伝ってるよ。俺にかまけて孤立した、なんてのは寝覚めが悪いからな」

 

意外に面倒見がいいなぁナツルは。

 

「…話を戻してもいいか?」

ムッツリーニから催促が来た。

 

「…メニューに書いてあるものは、全部作れる」

「ああ、そう土屋が言ったから大丈夫って判断したんだ。作り置きも用意して貰った」

「作り置きねぇ、いくら作れても味が駄目なら客は来ないぞ」

「…試作品」

 

挑発とも取れるナツルの言動に怒った様子もなく、いつもと同じ感じでテーブルにお皿を置くムッツリーニ。

 

その上にはごま団子やあんドーナッツが乗っていた。

 

「えー、食べていいの?」

「…(コクリ)」

「おお、では遠慮なく…うむ、美味なのじゃ!」

「ほんと、美味しいです!」

 

川神さんの問いに対するムッツリーニの返事を皮切りに、みんな次々とお菓子に手を伸ばす。

 

あっという間にお皿の上が寂しく――ってヤバイ!せっかくの貴重なカロリー摂取の機会が!

 

「ぼっ、僕にも1つ!」「そういや朝飯まだだったわ。貰うぞ」

 

お皿の上に残った最後の1つに手を伸ばそうとした瞬間、さっと横から別の手が出て掠め取っていった。

 

「ちょっ、ナツル!僕まだ食べて無いのに!」

「俺もだよ。いいだろ減るわけでもあるまいし、ケチケチすんな」

 

減るよ!思いっきり減ったよ!僕のお腹も!

 

 

「ふむふむ、外はがりがり。中はぬまぬまとしてて甘酸っぱすぎず苦い味わいがなんとも言えずん――ゴパッ」

 

 

あんドーナッツをひと口齧ったナツルは、静かに倒れ伏した。

 

「ってえぇっ!?なんで!?」

 

まるで姫路さんの料理を食べたような――ってまさか!

 

「あ、それ私が作ったやつです」

 

お菓子を食べて恍惚としてた姫路さんから裏が取られた。

必要じゃない、知りたくなかった裏が。

 

「少しでも皆さんの力になれたらと思って、家で作ってきたんですけど…」

「姫路ちゃん…!なんていい子なんですか…!」

「健気だねぇ」

 

事情(料理の腕)を知らない甘粕さんたちが、姫路さんを囲んで次々に褒めていく。

そして事情を知ってる僕らはというと、

 

 

「…!…!」

「むっ、ムッツリーニ!?どうしてドーナッツの残りを僕の口にねじ込もうとしてくるの!?無理だよ食べられないよ!!」

 

 

Fクラスの最大戦力をも一撃で倒す料理の押し付け合い(後始末)をしていた。

 

「ぐっ…!なっ…なにが起きたんだ…?」

 

その最中目を覚ます最大戦力(ナツル)

頭を押さえて立ち上がる。

 

ってもう起きたの?早くない?見たところ後遺症とかも無さそうだし。

 

鍛えてるからかな。

 

「……数日前も同じ体験した気がする…直前の記憶がないんだが、俺なにしてた?」

 

真剣な様子で問いかけてくる。

そういえば姫路さんの料理の威力を知らないんだっけ。

 

「寝不足じゃない?ほら、君忙しいって言ってたじゃない」

「え?あんドーナツ食って倒れたんじゃないのか?」

 

うまくごまかそうとしたけど、すぐに訂正された。

直江くん…!

 

「ドーナッツ…アレか」ムッツリーニが持っているものを睨む。

 

「アレ作ったのはどこのどいつだ」

「はい?私ですけど…」

 

いつもと違った雰囲気のナツルに、おずおずと緊張した表情で手を挙げる姫路さん。

 

「お前か…」

「はい…あ、お口に合いました?」

「口か…うん、口に…」

 

大丈夫かな…いや、相手が姫路さんなんだ。ナツルなら気を使って笑顔で優しい嘘をついてくれるはず――

 

 

 

「不味い美味くねえ以前の問題なんだよボケ!!」ドゴッ!

「ぷもっ!?」

 

 

 

いきなり、高速で額に頭突きをした。

 

 

「ってちょっ、ナツル!姫路さんになにをっ」

「お前もうわぁぁぁ!!」スパァッン!!

「ごぱーっ!?」僕もーー!!?

 

勢いのいい平手打ちを食らって壁際まで吹っ飛ばされる。

 

「みっ、瑞樹!それにアキも…瀬能!あんたなにしてんのよ!?」

ヤッさーまり((だまれ))ペタテール、もとい島田美波ィィ!!クリが怒らずんかいいらりゆんか((これが怒らずにいられるか))ーー!!」

 

なんかちょっとドラゴンボールっぽく怒った!

ていうか何語!?(※沖縄方言)

 

ナツル、さっきからなんかおかしいよ!いやいつもおかしいけどさ!

 

でも今は…頭の上に緑色の輪っかと赤色の煙と紫色の泡がぐるぐると渦巻いてる。(ついでに目の周りが真っ黒)

おかしいの度合いが違う。

 

「あんな劇物食わされた上に、美味いかとか訊かれて平常心保てるか!!僧侶じゃねえんだよ!!」

「げっ…劇物?」

 

あ、まずい。

 

「ナツル、ちょっと――」

「どういうことですか瀬能さん…?」

 

咄嗟に止めようとしたけど、それより早く姫路さんが話に割って入る。

 

「お前の料理っぽいナニカは一撃で対象を殺す即死魔法だ。間違いない」

「言いがかりですっ。私、そんなもの作ってません!」

「ならテメーで試してみやがれ!!」「もがっ!?」

 

目にも留まらぬ早業で、ナツルがムッツリーニからドーナッツの残りを奪い取り、姫路さんの口にねじ込んだ!

 

ちょっおお!ナツル、それは!!

 

 

 

 

「どんな味か言ってみろ!」

「むぐ…えっと、外はがりがり。中はぬまぬまとしてて甘酸っぱすぎず苦い味わいがなんとも言えなくてん――ゴパッ」

 

「みっ、瑞樹ーーーーーー!!?」

 

 

 

…この日、姫路さんは真実を知った。

 





瀬能ナツル

状態:混乱・ヤケクソ・もうどく・暗闇

※混乱:FF6
 ヤケクソ:ペルソナ
 もうどく:ポケモン
 暗闇:FF5

恐ろしき姫路ドーナッツ。ちなみにナツル以外が食べると戦闘不能に陥る。

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