称号:七色の美声
「会長さんもあんな風に取り乱したりするんですね…」
「ちょっと…かわいそうに見えてきましたわ」
チョーと一花が、これ以上ないってくらいにパニック状態の桐条先輩を気の毒そうに見つめる。
そんなに珍しいのか…じゃあいい機会だから、もう少し追撃しとこう。
「瀬能君、なにを考えてるのか知らないけど、バカなマネは止めなさい」
「言われなき誹謗中傷」今日は"酷い"の大安売りや〜。
「俺はただチャンスだからトドメを刺そうと思っただけだ」
「立派な『バカなマネ』じゃないの」
「よくもまあ誹謗中傷とかぬけぬけと…」
「瀬能さんゲスすぎですよ…」
酷くね?とくに一花。
先輩に向かってゲスとか…ありがとうございますっ!
「………………」
む、マズい。会長の睨む眼がキツくなった。より具体的に言うと目尻が上がった。
これ以上は危険だな…かといってこの空気をそのままにしておくのもヤバい。
ここはふざけてごまかそう。
「ンもー、会長さんたら、そんなに怒っちゃイヤクマ〜、キュートな顔が台無しよー?
ほぉら、笑って笑って!」cv.山口勝平
「その不快な口調を今すぐヤメロ腹立たしい…!」
ぅえー!?赤い方の会長さん釣れたーー!!?
さっきまで蹲るように頭抱えてたのに、今はどこから出したのか、よく手入れのされたレイピアの切っ先を俺に突きつけてくる。
流石は名家のお嬢様。いい武器使ってやがるぜ。
素材といい鋭さといい、鉄板ぐらいなら簡単に貫けそうだ。
「んんっ、あー…オーケイ、分かった。俺が悪かった話し合おう。だからそのアブねー"モン"の切っ先を向けるのをヤメロ」cv.東地宏樹
「処刑だっ!!」ビュッ!
「だっぶなッ!?」
コイツ本気で刺しにきやがった!!
「処刑処刑処刑処刑、処刑だーーーーーー!!!」
「ドぅおおぉぉおおおおっ!!?」
息もつかせぬ連続突きーーーー!!疾風怒涛とはこのことか!
ぶっちゃけクリスより速いんですけど!?
「さて、ふざけるのもこの辺にしておくとして、そろそろ会議を始めますか」
「了解です」
「異論はありませんわ」
「あたし議事録書きますね」
「ちょオォイ!ここに絶賛追いかけられ中の人がいるんですけど!?」
そしてそれと同時に追いかけ中の人もいる。俺の真後ろに。
なにこれトムとジェリー?仲良くケンカしてないよ?
「はぁッ!!」
「ぬをっ!?」
ちょっ!今一瞬で二度突きを繰り出したんですけどこの人!ホントに一般人!?
この学園の女、容姿に比例して武力高すぎじゃない!?
容姿…はっ、そうだ、呂布ちゃん!彼女なら助け――ダメだ、餌付けされてやがる。
なにしてんのお前なにしてんのおまえぇぇっ!?主(ぽい扱いしてる奴)の危機だぞ!?なにほのぼのとインディアンと菓子食ってんだオイ!
つかそもそもこっちに気づいた様子がねえ!マジ使えねえしこのポン
「今回の議題は前回同様、すぐそこにまで差し迫った『清涼祭』についてです」
「ちょっ、ホントにこのままやるのか?」赤毛の怖い人がレイピアの切っ先で急所狙ってるんですけど。
「準備期間もあと僅かですが、なにか問題とかはありましたか?」
無視!?
「そういえば一年のCクラスが三年生に、決闘で負けて使用場所を取られたって泣きついてきたんですけど…」
「その件は双方同意の下、正式に受理されているので不当性はありませんね。代理を立てることも決闘を受けないこともしていませんし、陳情を期待されても困ります」
「部活の先輩で断れなかったって、言ってました」
「諦めてもらうほかありませんね」
「セイッ!!」ビュッ!←二連突き
「無駄ァッ!!」パンッ!←白刃取り
「次は…体育館や武道場を使った大型イベントですね。主なものとしては学園主催の二人一組で行う試験召喚獣を使った勝ち上がりトーナメント、『召喚大会』。複数の運動部合同開催の『力自慢コンテスト』。過去に行われ、せっかくだからと復活した男子が女装して美しさを競う『ミス?コン』」
「あ、軽音部や合唱部がやる音楽の出し物の『バンドオーケストラ』。あたしの友達も出るんですよ。よかったら皆さん見に来てくださいねっ」
「ふふっ、ちゃっかりしてますわね一花は」
「むうっ…!やるな、瀬能!」
「だてに総合九位にゃいませんからね…! 無刀転生!」
「うわっ!?」
レイピアを両手で挟んだまま、背負い投げの容量で桐条先輩を投げ飛ばす。
投げた際に先輩が武器から手を離したので、これ幸いとイベントリに放り込む。高そうな突剣、ゲットだぜ!
「終わりましたね。そういえば会長、生徒会の人間で誰か召喚大会に出すようにと顧問から言われてましたけど、いかがいたしましょう」
「はぁはぁ…ああ、それならもう決まっている」
桐条先輩が多少なりとも乱れた呼吸を正して、室内全てを見渡し口を開いた。
「当日の大会に出場するのは三郷と瀬能だ」
「…はい?」
なにそれ。
なんか聞いたことない案件が飛び出したぞ?聞き間違いか?
「会長が出るんじゃないんですか?」
「当日はお父様が見物に来るのでな。その時間帯私は付き添いをすることになっている。瀬能、必ず優勝しろとは言わないが、せめて一般の観客に公開される三回戦までは勝ち上がれ」
「聞き間違いじゃなかった!」なんで俺指名で命令すんの?
「
「公平性を保つために同学年の生徒としか組めませんので。……面倒ですし」
リアルでクラス格差がある学校で公平もクソもないと思うんですけど。あとぽろっと本音飛び出したな?
「じゃチョーとか…」
「三郷会長に勝てるあなたを差し置いて立候補するほど、
それ言ったら俺なんかFクラスなんだけど。
「じゃあ…えっと…そうだ、呂布ちゃん!彼女なら同じSクラスだし――」
「生徒会の役員じゃないものに任せられるわけがないだろう。いい加減にしろ!命令だ、三郷と一緒に召喚大会に出場しろ!さもなくば処刑だ!」
有無を言わせぬ気迫で怒鳴られる。
「それとお前のクラス、まだ出し物の企画書を提出してないだろう。さっさと出せ」
しかも追撃まで。
「あと私のレイピアを返せ!」
忘れてなかったか。
〜〜〜〜
・学園の廊下
「チクショウ…面倒なのを押し付けられてしまったぜ…」
「……がんばる」
「しかも清涼祭当日は役員全員見回りとか…祭は三日やるんだぞ?前半二日が試召大会と巡回って、文化祭を楽しむどころかクラスの出し物にすら参加出来ねえじゃねえか」
「……がんばる」
「おまけに手に入れたレイピアも没収されたし…いいことなんもねえ」
「……がんばる」
「さっきからそればっかだな。正直イラッとするからやめて?ろくに助けてくれないくせに、ダメな方に優秀だなお前」
「……人間らしい?」
「その返し腹立つ」
「……それに。大丈夫そうだった」
「まぁ…あの程度なら…怒りで我を忘れてたのか手加減してたのか知らんが、本気じゃなかったからな。不可視の
「……信じてた」
「過去形!?そんな信頼いらない!…ったく、俺の周りはこんなんばっかか!」
「……類は、友を呼ぶ」
「…否定できないのがつらい」
タッタッタッタッ ← 進行方向から走り寄ってくる音
「……あっ、ナツルくん!さようなら!」
「はーい、さようなら」
…ピタっ ← ナツル、立ち止まり後ろを振り返る
「善、ぜーんー!忘れ物あったー!」
「そうか。よかったな」
「……あんなやつ学園にいたっけ」
「……?…制服、着てる」
「まぁそうなんだが…」
「……名前、知ってた」
「俺ってば有名人らしいからな。ま、800人?だっけ?そんぐらいいれば知らない顔がいてもおかしくないか」
「(こくり)……ない」
「それより文化祭だなー、生徒会の業務やりながら間見つけてクラスの出し物手伝わねーと。普通逆じゃね?いや、普通の奴は生徒会業務やんねえけど。つーか呂布ちゃん、お前はちゃんと自分のクラス手伝いに行けよ?」
「…………」
「こっち向け目をそらすな」
「文化祭、楽しみだね!善!」
「ああ。…そうだな、玲」
・どうでもいいこと:
東地宏樹は映画『メン・イン・ブラック』の主人公・Jの日本語吹き替えを担当した人。
本当は、〜〜〜〜以下の文章で一話作りたかったけど文字数の関係で泣く泣く追加。サブタイトルまで考えてたのに…
次回から清涼祭始まります。