「それで、そこの見たことない奴はいったい誰なんだ?」
呂布ちゃんの話がひと段落したところで、別のところに目と話を向ける。
その人物は、俺が来た時から今までずっとノートパソコンと向き合っている。氷漬けにされた時も微動だにしなかった。
見たところ三年生みたいだな…腕章を付けてるからきちんとした生徒会役員みたいだが、本当に見た事ない。
もともと所属してたけど会う機会がなかっただけか?
「彼女は阿久津の後任で入ってもらった人材だ。名前は…おい、いい加減パソコンを見るのをやめないか」
「…ああ、すいません。南條
超会長に注意された人物は、そこでようやく顔を上げてこちらに注目する。
茶髪で眼鏡をかけていて…知的な印象を受ける女だ。
でもなぜだろう。この人を絶対に信じることができない。
頼ることも任すこともできるだろうけど、心の内をさらけ出すのは危険だと俺の本能が警告している。
「あなたが瀬能さんですか。お噂は予々」
「はあ」どんな噂だろう。
「生徒会など面倒なのでやりたくはないのですが、美鶴様と虎子様に命令…いえ頼まれてはいやとも言えないので、仕方なく会計の仕事を担当させていただいてます。これからどうぞよろしく」
「うおぉぉぉぃっ!?」
なにこのよろしくし辛い自己紹介!?
「いいの!?そんなこと言っちゃって…いいの!?」思わず超会長をチラ見。
「事実ですから」
あ、超会長またため息ついた。
「仕事は早いしミスもないのだが、いかんせんこんな性格でな…」
「三度の食事も好きですが、貯金を増やすのも大好きです」
「ぶっちゃけすぎだろ!」
南條さんがさっきまで弄ってたノーパソを覗いてみれば、でっかい折れ線グラフや複数の企業の名前と数字が書かれているページが開かれていた。
…株式市場?
「学校でデイトレードしてるんすか?」
「いけませんか?」
堂々と訊き返された。
「我が校の規則に『学園内で株の取り引き禁止』とはありません」
「…そうだな」(←美鶴)
普通ねえよそんな規則。
「…ん?先輩今南條って言いませんでした?」自己紹介で。
「それってもしかして…」
「南條・M・虎子様とは、親族関係です」
ああ、やっぱり…って様付け?
「虎子様はこう見えて、世界でも有数の名家『南条家』の次期当主です。そうは見えませんが」
「ハッハッハッ!苦シュウナイネ!」
使いどころ間違ってんぞそれ。
あとこの会計ちょいちょい失礼。
「苗字違くないすか」
「成人するまでは南条の姓を名乗ってはいけないしきたりなのです」
「ややこしっ」
「私もそう思います」
「ていうか、……アレが次のトップって…」
思わずインディアンな羽根飾り頭に付けた女子生徒を見る。
なにやら鼻歌を口ずさみながら紙にラクガキしてた。
南条家終わったな。
「将来的には私がサポートすることが決まっています。現当主である虎子様のお父様の命令で」
「まぁそりゃ不安はあるわな…」
仕事してるとこ見た事ないけど、書類仕事とかできんの?
前なんか…農産部(牛や羊等の家畜や野菜類を育てる部活)の視察行った時、兎と会話しながら草食ってた。
(人)外交なら安心して任せられそうだな。
まあ…支える人材がいるんなら大丈夫…だろう。
「……当主補佐…実質全権を握る者……給金を貰いながらお金儲けができるって素敵…」
なんか小声でぶつぶつ言ってるけど聞かなかったことにしよう。
という訳で、けんぷファーより南條千紗さん。もとい女子部の委員長さんに登場していただきました。
名前の由来は出来る女性というイメージで最初に浮かんだのが鉄の女サッチャー。
別にサチとかそんな名前でもよかったんだけど、性格…というより性根が…ほら…アレなもんで、ひっくり返して千紗にしました。
南条云々の設定はテキトーです。マジ恋の生徒会長の名前が南條だったのを知った時、これはやるしかないと思いました。反省も後悔もしてはいない。
生徒会ターンはもうちょっと続きます。