戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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仕事が忙しくて中々書けない…社会人って大変。

それが理由ってわけじゃないけどちょっと短いです。


25時間目 にこにこと這い寄る混沌(?)

「やー、なんか悪いね。すっかりご馳走になっちゃって」

 

先ほどとは場面を移し、豪華な造りの廊下を出口へと案内されながら歩く。

正直一人で歩かされたら五分で迷いそうだ。似たような通路多すぎじゃね?

 

「別に構わないよ。初めに言った通り、今回の件はうちに非があるんだ」

「それでもお土産まで貰っちゃうとなんかね」

 

レシピ集とは別に、様々な珍しく且つ高価な食材の詰め合わせを婆さんからプレゼントされた。荷物になるから全部イベントリに入れたけど。

 

今夜はご馳走だ!

 

「…そういや結局学校完全にサボっちゃったな」

「それもこっちの方で連絡を入れておいたよ。欠席扱いにはならないはずだから安心おし」

 

至れり尽くせりだ。あと半日なにしよう。

 

 

「あ、ミス・マープル、と呂布ちゃんと…知らない人」

「うん?あ、ホントだ」

「…………」

 

 

曲がり角に近づいた辺りで、向こうから先に三人組が現れた。

 

先頭のポニーテールの女子の発言からしてこの家の関係者だろう。婆さんマープルって名前だったのか。(そういやお互い自己紹介してないや)

 

見たとここいつら、俺と同い年みたいだが…全員私服だ。

 

「おやあんた達かい。…ちょうどいい、紹介しとこうか。この男はあんた達が通う神月学園で一番おかしな生徒だよ」

 

謝罪云々言ってたくせにずいぶんな物言いだ。

 

「よせよ婆さん…照れるだろ?」

「…こんな奴だけど一・二年生の中で二番目に偉い第二生徒会の副会長だから、なにか困った事があったら話だけでもしてみるといい」

 

相談されても解決できるか微妙だけどね。

 

「あー、ご紹介に預かりました学園一の変人でまことに遺憾ながら第二生徒会副会長の瀬能ナツルです。お前らがアレか、過去の偉人のクーロンってやつか」

「ああ、義経は源義経(みなもとのよしつね)のクローン、源義経(みなもとよしつね)だっ。よろしくな、瀬能君っ」

 

三人の中で一番小柄な女が、即座に笑顔付きで挨拶を返してきた。

 

こいつ今義経三回言ったぞ。

なんとなくアホの子っぽい匂いがするのは気のせいじゃないはず。

 

「私は弁慶(べんけい)だよー」

 

今度は気だるげな雰囲気の女が口を開く。

 

弁慶…武蔵坊弁慶か?なんでどいつもこいつも女子供なんだ?

別にそれが悪いって訳じゃないが、『女のくせに』とか言う弱者は絶対出てくると思うぞ。

 

俺?戦闘に性別年齢立場は関係ないと思ってますがなにか。

 

 

つかこいつら、分かりやすく"クローン"を"クーロン"と言い換えるボケをかましてやったというのになにも言いやがらねえ。婆さんや呂布子ちゃんも含めて総スルーだ。

仲良くやっていける気がしない。

 

 

「んでまあ、最後にこいつが…」

「(ブツブツ)なぜだ…どうやって俺の中に眠る闇黒龍の力を見破った?…くっ、封印が弱まっているのか…それともまさかコイツ、組織の一員――」

「ただのナスだよ」

 

小声でなにやらつぶやいていた男を弁慶さんが素早く(シメ)る。

 

九龍(クーロン)のくだりに全力で食いついていた上に独自の設定を作りさらにそれに全力で浸っていた。お兄さんビックリだよ。

 

彼とはなんとなく上手くやっていけそうな気がする。

 

本当に名前がただのナスってのは流石になしだろう。あらためて名前を訊こうとぐったりしてるナスくん(仮)に声をかけようと一歩足を踏み出す。

 

 

―――瞬間、刃を首に横薙ぎに突き立てられた。

 

 

「ぅおぉわぁぁぁぁぁっっ!!?」

 

瞬時に床を蹴って窓際に移動する。

 

そのまま窓のない場所(壁)に背を付け、ファイティングポーズを取りながら辺りに最大限の注意を払う。

 

なんだ今の殺気は!?思わず自分の首が落ちる未来をリアルにイメージしちまったじゃねえか!

 

無事である事を確認するように、片腕を構えたままもう片方の手で首を摩る。

 

「せっ、瀬能君?どうしたんだいきなり?」

「…………」

「苦手な虫でもいた?」

 

義経ちゃんたちがいきなりの俺の行動に怪訝な顔をする。

呂布子ちゃんまで不思議そう(無表情だけど)に小首を傾げている。なんで気づかなかったんだよ!?

 

まさか…俺にだけピンポイントで殺気当ててきたのか?なんのために?

 

周囲に目を向ければ、俺たちが歩いてきた方の廊下からやって来る人影が一つ。

 

「あ、みんなここにいたんだ。…どうかしたの?」

清楚(せいそ)さん」

 

義経が近づいてきた人物(女)に気さくに返事をする。

どうやら知り合いみたいだ。

 

「…誰だ、アレ」

瓢箪に口を付けて、なにやら飲んでいる弁慶に話しかける。

 

「んくっんくっ…ぷはー。あー、やっぱり川神水はいいねー」

「おーい…」

「んー?ちゃんと聞いてるよー?あの人は葉桜清楚。一つ違いの歳上だけど、私たちと同じ過去の偉人のクローンだよ」

 

意外としっかり答えてくれたな…てか川神水ってなんだ?

 

「なんの偉人のクローンなんだ?」

「それは私だけじゃなくて本人も知らない。成人してしばらくしたら教えられるらしいよ?」

 

そう言ってまた川神水を飲み始める。知り合いの正体に微塵も興味無さそうだ。

 

とそこで、自分のことを話題にされているのに気づいたのか、葉桜…先輩がこっちに近づいてくる。

 

「初めまして。瀬能ナツル君…だよね?私は葉桜清楚。神月学園の三年生だから会う機会は少ないかもだけど、よろしくね?」

 

邪気の無い、美しい華のような笑顔を浮かべながら手を差し伸べて握手を求めてくる。

 

 

その顔を見ると先ほどの殺気とは無関係そう…なんだが……

なぜだろう。彼女から得体の知れないものに対する漠然とした恐怖を感じる。

 

しかもさっきから俺の本能がしつこいくらいに警笛を鳴らしてくる。

 

大丈夫かな。この手を握った瞬間バッサリやられたりしないかな。

いやだぞ、いきなり『第3部完!』みたいな流れになるの。俺はモモさんみたく便利な速攻回復技なんて使えないんだからな。

 

 

「どうかしたの?」

 

なんのリアクションも返さない俺を不審に思ったようで、若干眉をひそめる葉桜先輩。

 

 

見た目が美麗なのが逆に恐ろしい。

 

 

まるでそう…美味いだろうと予想して口に入れたら、実は混乱・瀕死の状態異常(バステ)を引き起こすほうれん草のおひたしだった…みたいな。

…なんだこの例え。俺最近おひたし食ったっけ。

 

 

「瀬能君?」

「あー、いや…」

 

多少迷いはしたが、結局相手に応じることにした。

なにかしらの隠れた悪意があったとしても、この場で敵意を示すのは得策じゃない。

 

掌を自分の服で擦って、平常を装いながら突き出す。

 

「よろしくお願いします。…葉桜先輩」

「うん、よろしくっ」

 

久しぶりにした歳上の異性との握手は、とくになんの波乱もない普通なものだった。

 

 




………

…ふぅ…『学校』というのは存外面白みのなさそうなところだな…なぜ我があのようなものに通わねばならぬのだ…

…む…あれは義経たち…と呂布か…

……!なんだ…呂布のあの姿は…!?まるで主君に付き従う臣下ではないか…!

前に見かけた時にはああではなかったのに…いったいこの短い間になにが…?

いやそれよりも主は…?義経か?それともマープル…?

立ち位置からしてあの青い髪をした男のようだが…呂布が下に付くほどの者には見えんが…

ふむ…………ふっ!

―――「ぅおぉわぁぁぁぁぁっっ!!?」

なに!?

我の殺気を躱すとは…!それにあの身のこなし、ただ者ではない…

呂布が従うほどの素質といい…まさか奴は……!

くくく…まんざら退屈という訳でもなさそうだな…



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