戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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今回は難産でした…サブタイトルが。
いいのが思いつかなかったので話中の単語を使ってみた。




18時間目 SWK

4月。

 

穏やかな気候。爽やかに吹き抜ける風。

 

 

 

『HAHAHA!ついにワタシが世界一になる日がきたなゲイツ!』

『そうだねゲイル兄さん!』

「…………」

 

 

路上で外人二人に絡まれる主人公。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

平日、いつも通りの時間に家を出ていつも通りの道を歩きいつも通りに学校へ向かっていたら、いつもとは毛色の違う奴らに行く道を塞がれた。

 

なんだこの展開。

 

これまでも何回か登校途中に絡まれたことはあるが、ストファイのアメリカ軍人みたいなのと一目でインテリっぽい外人コンビに絡まれたのは始めてだ。

 

本当になんだこの展開は。

 

 

『モモヨに勝った男というからどんなものかと思っていたが、見た目は平凡そのものだな!』

『ノンノンノン、見た目に騙されちゃいけないよ兄さん!この数週間観察し続けてきたけど、彼は中々凶暴なファイターだよ!』

 

 

(※カラカル=ゲイル・ゲイツ兄弟は英語を喋っています)

 

 

やべえ、なに言ってるかまっったく分からねえ。

 

「お前ら日本語喋れよ」

『んん?どうやらアイツ、英語が分からないみたいだよ兄さん』

『OH…世界でもっともポピュラーな言葉が分からぬとは…なんとも可哀想なヤツだ』

 

外人二人はお互いに顔を合わせ、やれやれと肩を竦める。

 

馬鹿にしやがって。

 

『ククク…でもどんなに無知だからって油断は大敵だよ。モモヨに負けてから開発したこの小型スーパーコンピュータで、確実にあのナツルを倒す!』

 

インテリの方がノートパソコンを取り出した。

そのまま、カタカタカタと物凄い勢いでキーをたたき出す。

 

『そこらのならず者を使って集めたデータ、それに学園での戦闘記録を元に、ヤツの行動パターンを100%算出する!!』

『頼むぞゲイツ!』

 

なんか向こうの方盛り上がってんなぁ。なにやってんだ?

 

…もしかして戦力分析?今から?

 

でもそう考えると最近の襲撃状況に色々と合点がいく。一度として同じシチュエーションがなかったのは調べてたからか。

でも結果弾き出すのをわざわざ本人の目の前でやるか?その間に攻撃されたらどーすんだ。

 

いいこづかい稼ぎになったし結果が気になるから待つけど。

 

 

『あとはコレを入力すれば…クククっ!これでナツルは丸裸さ!!』

 

 

カチ。

 

ボカァンッッ!!

 

 

『Noooooooooooooooo!!!』

『げっ、ゲイツぅぅぅぅっ!?』

「PCが爆発した…」

 

インテリがエンターボタンを押した(と思われる)次の瞬間、ノートパソコンが木っ端微塵になった。

ノーパソを持っていたインテリは当然爆発に巻き込まれ、髪の毛をアフロみたいにチリチリにさせてぶっ倒れる。

 

『なんだ!一体なにが起きたというのだ!?』

「俺の情報にパソコンが耐えられなかったみたいだな」

電子機器のくせに軟弱な。

 

黒煙を上げる機械の残骸と黒焦げなインテリを前に、分かりやすく狼狽える軍人もどき。さっきまでの余裕な態度が嘘みたいだ。

 

………さて、と。

 

「じゃあそろそろ始めますか。時間も無いし」

『なっ…まっ、待て!?』

「待ったなし、だ」

『お前本当は英語理解してるだろう!』

ワーターシー英語ワーカリマセーン。

 

両手を突き出し、あたふたと狼狽する外人に向かい、片手でゴキ…と拳を鳴らして一歩足を踏み出す。

 

その瞬間、殺気を感じた。

 

「スキありだぜー!!」「っ!?」

 

少女のような声と共に、後頭部に鈍器が当たる感触がした。

 

――柳に風!

 

『グボッ!?』

 

咄嗟に衝撃を逃がすと、外人が顔を凹ませて吹っ飛んだ。

 

…しまった、焦って前に衝撃送っちゃった。

まあ顔面殴るつもりだったし結果オーライでいいや。

 

「こ…コイツ、ウチの一撃を他人になすりつけやがった!?」

「天!一旦戻りな!!」

 

打たれた箇所を摩りながら振り返ると、茶髪でツインテールの中学生ぐらいのガキが驚愕の表情を浮かべていた。手にゴルフクラブ持って。

 

オイちょっと待て。それで俺を殴ったのか。

一歩間違えたら死んでたぞ。

 

「思いっきりやったのに手応えがまるでなかったぜ!?」

「ちっ…挑んだ師匠が返り討ちにあったて言うから不意をついて仕掛けたのに、まったくダメージがないってどんな化け物だい!」

「でもいい男だぜ亜巳姉」

「黙ってな竜!」

 

闇討ち食らわされた上に散々な言われようだ。

襲撃者の数は…女が二人に男が一人か。なんか男の発言に身の危険を感じるんだが。

 

「テメーらいきなりなんなんだコノヤロー。罪もない一市民にドライバー打ち込みやがって。ホームランでも狙う気かバカヤロー」

「この訳の分からない喋り口調、瀬能ナツルに間違いないようだね」

 

無視か。

つーか間違いないようだねって、万が一でも間違いだったらどうするつもりだったんだ。

 

「俺の顔に口調を知っているとは…随分とお詳しいじゃないの。何奴だ」

「板垣家長女、板垣亜巳」

 

ムチを持ったサドっ気ありそうなおねーさんが真っ先に口を開いた。

名乗るんかい。

 

「くくっ、勝ったら食ってやる…板垣家長男!板垣―――」

「隙ありゃぁぁぁアァッッ!!」

 

持っていた鞄を捨て、瞬動で喋り途中の男に飛びかかる。

 

そのまま相手の膝を踏み台に、勢いをつけて自分の膝を顔面に叩き込む。

 

「ぐぶぉっ!?」

(エス)(ダブリュ)〜…」

 

膝蹴りが決まった後、即座に踏み込んだ足を男の首に巻きつける。

 

そして力一杯締め上げて、後ろに体重をかけて顔面を膝に落とす!

 

()ェェェェェエエェッ!!」

 

勢いよく地面に着地するとどグチャッ!と派手な音がした。

 

これぞSWK(シャイニング・ウィザード・虎王)!良い子はマネして友達に使っちゃダメだぞ!(※できねーよ)

 

足で拘束するのをやめて男から離れると、男はうつ伏せの体勢のままピクリとも動かない。まあ死んじゃあいないだろう。

 

「なっ…竜!」

「てめー、よくも竜兄を!!」

 

あーん?

 

「なんだテメーら。復讐かなんか知らんが、自分が傷つくこと考えてなかった口か?」

「…そういう訳じゃないさ」

「名前訊いといて喋ってる途中で攻撃すんのはなしだろーが!」

 

訊いてませーんー。何奴ってゆっただけでーすー。

 

「ちっ…気を引き締めないとね…天、挟むよ!」

「オッケーアミ姉!」

 

言うが早いか、二人して両サイドがら近づき武器を振り回してくる。

ガキンチョはゴルフクラブを上段から、亜美と名乗ったおねーさんはボクシングのスマッシュみたいな軌道で鞭を振るう。

 

これは…片方を避けてももう片方に当たる絶妙な挟撃だ。いいコンビネーションしてんじゃねえか。

 

だが…

 

「(ス…)鉄塊…空木!!」

 

ガギンッ!!

 

「なっ、」「うわ!?」

 

脱力した状態で待ち、それぞれの武器が当たった瞬間にカウンターで跳ね返す。

六式を体得した俺にこの程度の攻撃効きはせん!!

 

「かかったね…!辰!やっちまいな!!」

「りょうかーい」

 

「なに!?」伏兵がいたのか!?

 

今までまったく気配を感じなかったぞ!?どうやって隠れてたんだ!

ヤバイヤバイヤバイ空木を使った反動か全身が硬直して身動きできない!今攻撃されたら無防備てもろに食らう絶対ヤバイ!!いやいやまてまて今の今まで存在感無かった奴だぞ?そんな大した攻撃力は持ってないだろそうだそうに決まってる!!

(※ここまでで0.5秒)

 

大丈夫!瀬能さん家のナツル君は強い子だから大丈夫!なにがどう大丈夫かはまったく分からないが、とにかく大丈夫!!

 

そうやって必死に自分に言い聞かせ、覚悟を固めている俺の頭上に、

 

「や〜」

 

間の抜けた声と、

 

ブォンッ!!

 

四角柱の形をした設置型のバス停兼時刻表が降ってきた。

…次のバスは20分後か。走るのとどっちが早いかな。

 

 

グァシャァン!!

 

 

バス停が頭に突き刺さった。

しかも貫通しなかったからかぶり物みたいになったし。

 

なに、このまま被せ手刀打ちの極みでもされんの俺?

 

「辰!本気でぶちかましな!!」

「―――っぁぁああ!!」

 

ドグォンッッ!!

 

女の叫び声と共に、凄まじい衝撃が側頭部からやって来た。

まるで何百キロの鉄槌でぶん殴られたようで…思わず意識が飛びかけた。

 

しかし身体は正確に反応した。

 

殴りかかってきた奴の右肩と左脇腹を、両手でガッチリ掴む。

 

「!?」

「…今のは……かなり、効いた…」

 

今だにクラクラする頭で、真っ正面からしっかりと相手を見据える。

 

かなりの美人さんだった。

 

…モモさんといい会長といい…最近の美女はハイスペックがデフォなのか?

 

「中々イイもん持ってんじゃねえか…でもそれぐらいじゃあこの辺では――」

 

 

(とお)んねえんだよ。

 

 

「ロぉぉぉぉぉぉおぉおッッッ!!」

「っ!!?」

 

掴んだ手をそのままに、全身全霊を込めて押し込む!

 

押す!押す!押す!

 

「なっ、」「たっ、タツ姉!」

 

「…!、っ!!、っ!?」

 

向こうも力を込めて止めようとしてくるが、お構い無しに倍プッシュ!

 

プッシュ、プッシュ、プッシュ!!

 

勢い余って靴底踏み抜こうが、アスファルトが耐えきれなくなって破壊されようが、気にせず倍ドン!

なぜなら僕は魚雷だから!!

 

そうして道路の端へと押し込み、民家を隔てるブロック壁にどん…と軽くぶつかる。

 

そのままの状態で相手の顔を見てみれば、困惑と驚愕、そして若干の恐怖が浮かんでいた。

 

 

キーンコーンカーンコーン…キーンコーンカーンコーン……

 

遠くから学校のチャイムの音が聞こえてくる。

 

 

…チッ、SHR(ショートホームルーム)開始のチャイムか。

 

ここから学園までの距離を考えると、今から行っても一時限目には間に合わないだろう。遅刻は確実だ。

 

じゃあバックれるかと言われたら…気が乗らねえ。久々に全力出したせいかな。

 

 

仕方ない、走るか。

 

 

掴んでいた手を離し、鞄が落ちているところへ歩く。

 

俺の突然の行動に、対峙していた女も含めて全員がぽかんとした表情をする。

……このままほっといたら追いかけてきそうだな。

 

「あー…その、なんだ」

鞄からシガレット(チョコ)を取り出し、口に加えて俺を見つめてくる全員に向かって口を開く。

 

「今回のは俺の負け、ってことにしといてくれや」

 

返事を待たずに踵を返し、学園へと走る。

 

…やべ、まだクラクラする。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「えっと…ウチらの勝ち、ってことでいいのかな」

「本気で言ってんのかい?ったく、四人がかりだってのに辰の一撃しか効いてないなんてね。竜!いつまで寝てんだい、さっさと起きな!!」

「……………かっこいい…」

「「はぁ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

〜〜おまけ〜〜

 

「せんせ〜信じてくださいよ〜。ホント、遅刻したのはそういう理由なんですってば〜」

 

最早おなじみとなったF組の教室スペース―――という名のグラウンドの片隅―――で必死に鉄人教師に弁明する。

 

「ほう、じゃあその理由とやらを言ってみろ」

「産気づいたお婆さんを介抱してて…」

「水を張ったバケツを両手に二つづつ持って廊下…はなかったな。クラスの中央に立っていろ」

罰にしても古典的な上にクラスメイトが見つめる中ってどんな羞恥プレイだ。

 

「…瀬能、お前はバカだが人として大切なことを知っている奴だと俺は思っている」

「なんすかいきなり」

そんなちょっと優しい…ゴリラが我が子を見るような眼をして。

 

「俺が許せんのは遅刻をした挙句に嘘をつくことじゃない。真実を話してくれないからだ。正当な理由があるなら俺もこんな仕打ちはしない」

「せ…先生…!」

「高橋先生も嘆いていたぞ。一年間担任だったのにお前は心を開いてくれなかったって」

 

あの先生のこと引き合いに出されるとちょっとキツいな。

 

「完全に信用しろとは言わんが、少しは歩み寄ってくれてもいいんじゃないか?俺たち教師陣にさ」

「…っ、先生。すいません、俺、嘘ついてました。ホントは別の理由で遅れたんです」

「そうだろう。で?もう一度訊くがなんで遅刻したんだ?」

「実は…実は……!」

 

感極まった表情をしながら、懐から木彫りの熊を取り出して。

 

「天啓を…得てました…!」

「両腕を地面と水平に大きく広げスクワットを千回やれ。バケツの水を一滴でも零したらもう千回追加だ」

 

もうそれ体罰のレベル超えてるよね。

 

 

 




■鉄塊・空木
 ワンピース。六式と呼ばれる体術の一つ、"鉄塊"のカウンター技。
 うちのナツル君は一応六式全部使えます。習得が一番難しかったのは月歩だったとか。
■被せ手刀打ちの極み
 龍がごとくのヒートアクション。相手に被り物をかぶせてから、 その被り物の上から手刀を連続で 繰り出して攻撃をする。
 四角柱型のバス停でやられたら首がねじ切れそうだ。


○念心流・柳に風
 外部からの衝撃を受け流し、他の場所へ任意に移動させる技。
 多少の距離ならば離れていても空気中を移動して衝撃を送ることができる。


その作品一押しのキャラって誰にでもいますよね。作者にとって一番は辰子さんです。

あの人マジで好き。






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