必要もなかったけどなんとなく思いついたので
〜美鶴Side〜
・夜
「瀬能ナツル…か」
自室で一人、昼間出会った生徒のことを思い出す。
「まさか通り名を出されただけであのように反応されるとはな…」
―――神月学園では様々な分類に分けてランキングをつけている。
中でも"強さ"を対象としたランキングは裏・神月ランキングと名付けられ、日々ランカーが目まぐるしく入れ替わっている。
しかし、絶対に順位が変わらず不動の地位を築いている者が二人だけいる。
一人は川神百代。ランキングの二位で、通り名は武神。
もう一人は冴島タイガ。ランキングの一位に君臨する、学園最強の人物。
最も、誰も姿を見たことがなく噂だけが一人歩きしているがな。
その冴島の通り名が…裏番。
周りに関心がなくとも、自分の呼び名は知っていたようだ。
「それとも誰かに教えられたか…。どちらにせよ有意義な会合だったな」
報告や噂でだけではなく、直接本人の人となりを知ることができた。
代わりに…というわけではないが、役員が一人減ったがな。
…阿久津は恨んでいるだろうな…私と瀬能を。
しかしやり過ぎたとは思っていない。あれは当然で必要な行為だったのだ。
あの場で即決しなければ阿久津は…死んでいただろう。
いや、そこまでいかないまでも、それに近い状態にまではなったはずだ。
敵と認識し、立ち向かってくるものは動かなくなるまで…戦闘不能になるまで攻撃する。
戦う姿を見て分かった。瀬能には欠落した部分がある。
それを何と言えばいいか…あいにく当てはまる言葉が見つからない。
理性と狂気と獣性を兼ね備えた男。それが私が彼に持った印象だ。
「…戦士としては理想的、か…」
昔の資料を眺め、目についた一文がつい口から零れる。
殺気をぶつけられた時、猛獣を目の前にしたかのような錯覚に陥った。
恐怖を感じたがそれよりも、咄嗟に頭を過ったことがある。
試してみたい。
この男相手に、自分がどれほど戦えるかを知ってみたい!強くそう思った。
正直、
自分にあのような一面があったとは思わなかった。明彦のことを言えないな。
「面白い男だ…それ故に、残念ではあるな」
まあもう過ぎたことだ。気にするのは止そう。
わざわざ引っ張り出した資料を片付ける。
明日も早い。今日はもう休むとするか。
―適性者リスト―
対象者名:瀬能ナツル
××××年10月31日、沖縄生まれ。
両親は単身赴任で他県へ行っており、現在は一人暮らし。
高い身体能力と、幼少期より教え込まれた武術を持っており、戦闘能力は極めて高い。
性格は少々難があるものの、戦士としてはある意味で理想的であると言える。
しかし影時間にて象徴化を確認。適性は無しと判断する。
次回はまた間が空きますが、しばらくは戦士を書き続けたいと思います。