戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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超久々の投稿。ついでに新年初。


前回のあらすじ

生徒会に入会した主人公・瀬能ナツル。これから共に仕事をする仲間と自己紹介をしたのだが…?

※3/11 一部修正しました。



16時間目 生徒会で二衝

生徒会役員たちへの挨拶が一通り済んだ後、すぐに場所を移動すると言われた。

 

「なんでだよ…もういろいろあってお腹いっぱいなんですけど」

「次が最後だから我慢なさい」

「トラブルの予感しかしないんですけど…」

「多分当たりますわよ、その予感」

チョーさんヤメテー、フラグ立てるのヤメテー。もう帰って休みたいんだから。

 

「はぁ…まあ駄々こねても仕方ないし、さっさと行ってさっさと終わらすか」

「そうしてくれると助かるわ。注射器の使いまわしは衛生面から見てもよくないから」

「さっさと捨てろ」

 

まだ持ってんのかよ筋弛緩剤。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

そんなこんなで生徒会室(2)から歩いて、別の棟へ通じる連絡通路へやって来た。

 

ちなみにチョーはきちんと制服に着替えている。そのせいでまた時間がかかった。

 

 

「なあ会長、俺の記憶が正しければこの先は三年棟があったはずだが」

 

三年棟とは名前の通り、三年生が使用する専用の校舎のことだ。

 

 

神月学園は無駄に敷地が広いのをいいことに、様々な施設を数多く設置している。

 

体育館、武道館、図書館、屋内・屋外プール、リング場、資料館、ジム、風雲川神城、飼育場、工作場…

 

中には超巨大な樹をまるごとくり抜いて作った『天然棟』なんてのもある。

ここで病気にでもなったら助からなさそうだな。

 

 

「ええ間違ってないわ。偉いわね、学校の敷地内の間取りをきちんと覚えてるなんて」

「一度遭難してから、数日かけてマッピングしたからな」

嘘ではない証拠に作成した地図を取り出す。

 

過程で全部暗記しちゃったから、全く使ってないけどね。

 

「…生徒手帳に描いてあるのだけれど」

「無くした」

「これ、すごい正確に描かれてますね。お勧めスポットまでありますよ」

「もはやガイドブックですわね…」

 

始めると案外楽しくて、ついやり過ぎちゃった。俺って凝り性みたい。

 

「また意外な才能を…瀬能君、この地図だけど借りてもいいかしら?」

「別にいいけど、どうするんだ?」

「最新版の学校の見取り図として使いたいのよ。コピーして配布してもいいかしら」

「それは構わんが…」

んな素人が暇つぶしで作ったもんでいいのか?

 

 

とか思っていたんだが、後日公式に発行されたものはとても分かりやすいと大好評だった。

 

それまでかなりの数が出ていた遭難者も、それを証明するように減ってきていると教師陣も上機嫌だ。今までどんなポンコツが描いてたんだよ。

 

 

「で、三年棟行ってどうするんだ?」

「顔見せと組織図への名前記入よ。早いうちにやっておいた方があなたもいいでしょう」

 

え、なに、生徒会の役員他にもいんの?

会長、副会長、会計、書記。庶務がいないっつってたから、これで全部のはずだぞ。

それに組織図への名前記入って、さっきのとこでもできるだろ。

 

俺の疑問を察したのか、会長が再び口を開く。

 

「瀬能君、神月学園の生徒が何人いるか知ってる?」

「は?」

 

なんだ藪から棒に…まあいいけど。

 

え〜っと…

一年はAからEまでの5クラス。二年はS~Fで7クラス。三年もそれと同じと考えると…

 

「600人くらいかな」

「870人よ」

 

は?

はああああああ??

 

「そんなに多いのこの学校!?」

「小学から大学まで合わせるともっといるけど」

「もっと!?」

 

そんなマンモス校だったのかここ!?

 

「それだけの人数相手に対して、役員5人ではとても手が回りませんわ」

「武闘派や過激な生徒も多いですからね…」

「そういう理由で、三年生担当の生徒会と一・二年生担当の生徒会に分かれてるのよ」

「ちなみに三年生担当の方を『第一生徒会』、一・二年生担当の方を『第二生徒会』と呼ばれています」

「なるほどね…だから生徒会室に(2)ってあったのか。にしても800って…」

 

魔法先生がいる学校みたいだな。

そりゃ施設も多い訳ですよ。遭難者も出る訳ですよ。

 

「一年のとき、やけに机が多いなとは思ってたが…」

「あなたや私みたいに高校から受験する人は気づき難いけどね」

 

後で聞いた話だが、いつも月一でやってた全校集会は実は学年集会だったらしい。

入学式や夏休み前の集会は遅刻したりボーッとしてたから人数の多さに気づかなかった。周りに興味が無かったってのもあるけど。

 

「…ってあんたも外部受験組だったのか。なんでここ受けたんだ?」

 

ちなみに俺は見学しに来たときにモモさんに会ったのが―――やめよう。長くなる。

 

「………そろそろ行きましょう。いつまでも先方を待たせるのも悪いわ」

 

そう言って会長はさっさと歩いていった。

他の二人も一瞬唖然としていたが、すぐにハッとして後を追う。

 

……なんだろう。なんか癇に障ることでも言ったのかな。

 

 

つーか会いに行くのって三年かよ。

知り合いはモモさんしかいないし他に見たことないけど、校風考えるとあまりいい印象は感じられない。

 

2ーSみたいな高飛車な奴が運営してて、俺みたいなのは速攻否定されるんじゃないかなー

 

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

・生徒会室(1)

 

「うむ、分かった。南條、組織図を持ってきてくれ」

「HAHAHA!了解デス!」

 

赤茶っぽく髪をくるんくるんさせた女性に言われて、インディアンな羽飾りを頭につけた女が壁に掛かっていたボードを外す。

 

そして『第二生徒会』と表記されているところの、副会長の欄に書かれていた名前を躊躇なく消す。

 

「ソコノアナタ。名前、ナンテイイマシタカ?」

「え、瀬能ですけど…、瀬能ナツル」

「セ……ノ…ウ……コレデアッテマスカ?」

「あ、ハイ。名前はカタカナデス」

「瀬能君、移ってるわよ」

 

ああいかん。つい…

 

俺の予想とは裏腹に、トントン拍子で話が進んでいく。おかしいな。

 

「…そんなあっさり決めていいんすか?」

「もともと私たちに第二生徒会の人事に口を出す権利はないのでな」

「そうなん?」

「そうだけど…強く言われたら、従わざるを得ないわね」

「え、意外」

なんだかんだ言って自分の意思を押し通すんだと思ってた。

 

俺のときみたいにな!

 

「あなた…私をなんだと思ってるのよ」

「腹黒生徒会長」

「…………」

「いたっ、あいたっ、ちょっ、やめ…無言でわき腹刺すのやめろ!」しかも万年筆で!

 

「ふふっ…中々、良好な関係を築いているな」

「どこが!?」

 

すっげー痛いんですけど!

 

「三郷が一年生の時からの仲だが、君が他人にそのような態度を取る姿を見たのは初めてだ」

「…見苦しいところをお見せしてすみません」

「なに、目をかけていた後輩が信頼できる仲間を見つけたのだ。かまわんよ」

「俺がかまうよ!」横から刃物突きつけてくる友などいらん!

 

「つーかこのためだけに連れてこられたのか俺は?いらんだろ正直!」

「顔合わせも兼ねてますから…」

「全員で来る意味は?」

「伝統ですので、仕方ないですわね」

 

「そうでもなければ来たくなかったですわ…」と憎々しげに眉間にしわを寄せて、嫌悪感を露わにするチョー。

水無月も困ったように「アハハッ…」と苦笑いをする。

 

どんだけ嫌われてんだよ三年生。

 

つか顔合わせ兼ねてるっつーわりには、向こう二人しかいねーじゃねーか。トップは誰だよ。

 

 

「HEY!私、南條・M・虎子イイマス!ナツルト同ジ、生徒会副会長デス!チナミニ会長ハアッチネ」

 

インディアン風の頭飾りをつけた女が、組織図を元の場所に戻して話しかけてくる。

 

「ヨロシク!」

「え、あ、ハイ…」

 

ハイタッチを求めるように手を突き出してきたので、勢いに押されながらもタッチを返す。

 

なんだろうこのハイテンション。

 

今までに出会ったことのないタイプだ…ワン子をグレードアップさせたらこんな風かもしれない。

 

三年ってこんな個性派ばっかりなのか?

 

イメージしてた生徒会と全然違う…反対されて脱退する計画がパアだ。

 

 

「会長と副会長がいることは分かったけど、他はどうなんすか?」

「ああ、それは―――」

 

三年会長(と思われる)が口を開いた瞬間、生徒会室の扉がガララッと開いた。

 

「失礼します…むっ」

 

ドアを開けた先には、黒髪でオールバックのキレ目が深い男。

学校指定の制服を着てるから生徒だろう。

 

その人物は室内に入ってくるなり、あからさまに嫌悪感を露わにした。

 

「第二生徒会連中か…なぜここにいる。お前ら程度がいていい場所ではないぞ」

 

うっわー、感じ悪ーい☆

 

「阿久津、なんだその言いぐさは」

「事実でしょう」

 

向こうの生徒会長――面倒だな、超会長でいいか――に咎められても、オールバックの男はしれっとしている。

 

 

「…なあ、アイツ誰だ?」

側にいるチョーに小声で話しかける。

「阿久津障司。三年生徒会の書記で、性格はご覧の通りですわ」

「いや、見ただけの印象だとただの高慢ちきな嫌な奴なんだが…」

「ご覧の通りですわ」

 

なるほど、お前も嫌いなんだなアレ。

そりゃ用事でもなきゃ近づきたくないわけだ。

 

 

「今日は新しく入ったメンバーの顔見せと組織図への記載に伺いました」

 

空気が不穏なものに変わりゆく中、会長が何事もないかのように対応する。

 

「新しいメンバー…?Sクラスの者か?」

「クラスはFです」

「Fクラス?ハッ!話にならん」

 

会長の言葉をオールバックは鼻で笑う。

次いで、侮蔑を含んだ目でこちらを見て…いや睨んでくる。

 

「初めはDクラス。その次は特に目立つところのない庶民の一年生ときて今度は底辺とは、二年の最高学力生とは思えん暴挙だな」

 

なんとも生徒会の人間とは思えない物言いに、チョーは悔しそうに顔を背け、水無月は「ひぅっ…」と小さく悲鳴を上げて身体を硬くする。

 

「三郷、お前は生徒会を軽んじているようだな」

「そんなつもりはありませんが」

「言い訳をするな。まったく、いい人材なら他にたくさんいるだろう。同じクラスの不死川や九鬼、葵でもいい。いやそうするべきだ」

 

有名どこしか挙げてねーじゃねーか。こいつもしかして、二年の生徒会を利用してコネでも作ろうとか考えてんじゃねえか?

 

不審に思っていると、視界の端で超会長が片手を額に当ててため息を吐いているのが見えた。

俺の予想はあながち間違ってもいないようだ。

 

「今からでも遅くないからこんな奴ら切り捨てて、頭を下げてでもSクラスの奴に入ってもらえ。こんなどこの馬の骨とも思えない人間を生徒会に入れたところで品位が下がるだけだろう。まったく、もう少し二年の代表としての意識をだな―――」

「おおーっとバスが急ブレーキっ」

 

ドカッ

 

パイプイスが一つ、勢いをつけて床の上を滑る。

 

「ぐはっ!?」

 

椅子はそのまま、進路上に存在していたオールバックにぶつかった。

その後、オールバックを巻き込んで壁際まで移動する。

 

「ごぶぶっ!!」

 

最後には押し込むような形で壁に激突し、汚い悲鳴が上がった。

…想像以上の結果が出た。

 

「阿久津、ダイジョブデスカー!?」

 

一部始終を目撃し、皆が固まったままの中、南條副会長が真っ先に話しかける。

しかし彼女はその場に立ったままで近寄ろうともしない。声かけるだけかい。

 

「グッ…い、いきなりなにをする…!」

 

机と壁の間からオールバックが睨みつけてくる。

 

「悪かったな、バスが急ブレーキして」

「嘘つけ!」

つきましたがなにか。

 

「貴様、自分がなにをしたかわかってるのか!私は生徒会の役員だぞ!!」

 

俺もですけど。

 

ついイラっとしてイス蹴っ飛ばしたが、ちょっと不味かったかな。後悔は微塵もしてないけど。

 

流石に即座に退学とかはないだろうが、数日停学はありそうだ。期間中なにしようかな。

 

「阿久津、少し落ち着け」

「落ち着いていられませんよ!会長も見たでしょう?こいつは――」

「急に止まったんだ。仕方ないだろう」

 

…は?

 

「な…なにを言って――」

「そうですね。バスに乗っていて急ブレーキを踏まれたら、勢いがついてしまっても仕方ないですね」

「宙を飛んでいかなかったのは幸いでしたわね」

「ええっと…」

「ナツルモ反省シテルミタイダシ、許シテアゲルトイイヨ!」

 

三年を含む女子陣が一斉に俺の行為を事故だと主張する。(水無月だけは困惑してるが)

 

なんだこの状況。

会長やチョーはともかく、向こうのインディアンや超会長までもがかばうとは思わなかった。このオールバックそんなに嫌われてんのか。

 

「くっ…まあいい、今回は見逃してやる。感謝しろ」

 

自分の不利を悟ったのか、オールバックは舌打ちをしてそんな台詞を吐く。

 

正直許されても許されなくてもどうでもいいんだが。面倒臭いことになりそうだから黙っとこ。

 

「それより、貴様は誰だ。興味はないが一応名前を訊いてやるから名乗れ」

 

一々癇に障る言い方するなあ。なんかいいことあったの?

 

「他人に名前を訊くときはまず自分から名乗るもんだ」

「…ふん、下級生が一丁前に礼儀を口にするとはな。まあいい、私は生徒会会計の「長いくどい興味ない俺は瀬能ナツルだ」」

 

…………………

 

あまりにもウザかったので食いぎみに、それでいて簡潔に自己紹介したら場が凍りついた。

 

見事に誰も動かない。オールバックもなんか、自信満々みたいな薄ら笑いのまま固まっている。

 

もう帰っちゃっていいかな。

 

「……ふ…ふふふふ…そうか貴様が瀬能ナツルか。なるほど、噂通りの男だな」

 

いち早く立ち直ったオールバックが、前髪をかき上げる仕草をしながら変なことを言い出した。

 

 

「(阿久津先輩のこめかみすごいピクピクしてますよ…)」

「(それだけ動揺しているんでしょう。もともと上がってる髪形なのにあんなことして、ワックスが手に付かないのかしら)」

 

 

部屋の隅っこでチョーと水無月がひそひそと好き勝手喋ってる。

 

言いたいことがあるんならもっと堂々と言えよ。そんなだから舐められるんだよ。

 

「流石は『神月の癌』だな。入学の際には面接もあるが、これからは精神鑑定もつけたほうがよさそうだ」

「阿久津!」

「なにそのあだ名、超イカす。つけた奴はセンスあるな」

「瀬能!?本気で言ってるのか!?」

 

真剣(マジ)ですがなにか。

 

「俺は自分が不良だって自覚してますから。癌ってあれだろ?完全な治療法がない悪性の病気だろ?それだけ評価されてるのは、まあ嬉しいスね」

「か、変わった捉え方だな」

「俺が癌なら誰かさんは初期の血栓だな。体調に大きな変化はないけど血流を妨げて身体をダメにする」

「なんだと!貴様、私がそうだと言いたいのか!?」

「おや心当たりでも?」

 

俺は誰かさんとは言ったが、明確に名前を挙げてないよ?

 

「グッ…貴様、よく性格悪いと言われるだろう」

「あんまり言われたことないかなー」

イイ性格してるとは言われるけど。

 

「やはり貴様のような人間は生徒会に相応しくない。良心がまだあるなら早々に辞表を提出しろ!」

「人を血も涙もないない悪魔みたいな言い方しよってからに…良心云々は別として、俺もメンドくせえから入りたくないんだよね」

「ならば「だが断る」なっ、なぜだ!?」

 

「あなたがそこまで自分の加入に反対するのであれば、俺は全力で職務を果たすことを宣言しよう」

 

生徒会の仕事って大変そうだけど大丈夫!俺ってば意外にYDKだから。

うん、瀬能さん家のナツル君はやればデキる子!

 

 

「そんな理由で生徒会に…破天荒とは聞いていたが度を超えているだろう…」

「なぜかしら、喜ばしいはずなのに全然嬉しくないわ」

「見てください瀬能さんの表情。なんて清々しい笑顔…」

「中身は芯までこってり濁ってますけどね」

 

 

外野の戯言は無視。

 

「瀬能ナツル!!」

 

突然、オールバックがポケットからなにか取り出し、それを俺に向かって投げつけた。

反射的に手で受け止めたからよかったけど、軌道からして目を狙っただろお前。

 

思わず力が入り、握り潰しそうになるのを我慢して手の中に収まっているものを確認する。

これは…ワッペンか?

 

 

「貴様に、決闘を申し付ける!!」

「はぁ?」

 

 




「おおーっとバスが急ブレーキっ」
 ジョジョ第六部。ストーンオーシャンより、ある看守のセリフ。

「だが断る」
 同じくジョジョ。漫画家の露伴先生のセリフ。


長らく連載を停止してしまって申し訳ありませんが、このお話もう一話ほど続きます。

なるべく早く投稿いたしますので、「三年の会長の名前出てねーぞ」ってツッコミは少し待ってください。

〜どうでもいいオマケ〜

「俺が癌ってことは…やべ、生徒会入ったら心臓ガンだ!やった!!」
「なぜ喜ぶ!?」

なんだこれ。


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