戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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7時間目 お前のそういうところが好きだよ

試験召喚戦争特別ルール "決闘システム"使用通達。

 

対戦者

 Aクラス  阿久津真

 Fクラス  瀬能ナツル

 

試合場所  東第二武道館

開始時間  4:30より

 

 

〜ナツルSide〜

 

 

「……恐ろしいほどあっさりとことが進んだな」

 

放課後、教室でカバンに教科書をつめていたら隣に座っていた坂本が話しかけてきた。

 

「というか。俺が宣戦布告にいったときにはすでに怒り狂ってたんだが…お前もしかしてなんかしたのか?」

「いやー別にー、ちょっと相手側に顔出しておしゃべりしただけですよ?」

「今にもうちに乗り込んで来そうな勢いだったぞ」

 

もう少しで俺が被害受けるところだった。とその時の状況を思い出したのか苦笑いを浮かべる。

無傷なとこを見ると、きっとAクラスの奴らが必死に止めたんだろうな

 

 

「いやいや、本当に2・3話しただけだぞ。手は出してない」

 

 

 

〜回想(坂本が宣戦布告をする15分前)〜

 

-Aクラス前-

「はろー、阿久津くんいるー?」

「あぁ?なんだてめえは」

「………………」

「なんだって訊いてんだよ。人のことじろじろ見やがって」

「(フッ…)戦闘力たったの5。ただのゴミか…」

「あ"ぁ"!?喧嘩売ってんのかてめぇ!!」

「俺が相手をする間でもない」

「なんっ…まちやがれクソが!」

『ちょっ、ちょっと待て阿久津!』

『なにがあったか知らないけど落ち着け!』

「離せてめえら!あの野郎ブチ殺してやる!!」

「バカですねーアホですねー、そんなことできる訳ないじゃないですかー。(ぼそっ)戦闘力たったの5のゴミじゃ」

「マジで殺す!」『だから落ち着けって!』『つかなんなんだよお前は!?』

「2年F組の瀬能ナツルだ。別に覚えなくてもいいぜ?ザコに知っててもらっても嬉しかねーから」

 

 

〜回想終了〜

 

 

 

「ってな感じで」

こうやって思い返してみるとけっこう会話してたな

 

経緯を黙って聞いていた坂本は、若干引いたような表情を浮かべて

 

「……相手を激怒させることに関しては天才的だなお前」

「挑発使い(マスター)を自負しております」

 

んべっと舌を出してみせる。

そこにはでっかく"挑"と書かれていた。

 

「字が消えかかってるぞ」

「あ、やべ。昼休みに書いたから」

 

思いついたのチャイムが鳴る直前だったもんで、字も乱れてるし

 

ちなみに使用した塗料は身体に害のないもの……とかいう都合のいいもんじゃなく百数円で買った油性マッキー。まあ死にゃせんだろ

 

 

「はぁ…まあいい。俺は先に行ってるから、遅刻せずに来いよ」

「善処するよ」

 

 

別れを告げる坂本にひらひらと手を振って見送る。

 

さて、時間まで何をしてヒマ潰そうか

 

とりあえずなんか飲み物でも買ってこうかな。そう思い立ち上がって教室をあとにする。

 

「――お、いたいた。おーいナッチ~」

 

 

ぎくり。この声はまさか…!

 

 

廊下から出た瞬間、後方からとても聞き覚えのある声がした。

 

嫌な予感を全身で感じるが、無視する訳にもいかず後ろを振り向く。

そこには予想通りの人物が待ち構えていた。

 

 

「げぇ、モモさん!?」

「いや、そんな武将を見つけてしまったみたいな呼び方されても反応に困るんだが…」

 

気分的にはまさにそれなんですけど

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜百代Side〜

 

 

「……いかようなご用で来られたのでせうか?先輩」

「なんだよ~、こんな美少女が来たんだからもっとよろこべよー」

 

苦い顔して見つめてくるナッチに背中から抱きついて、グイグイと密着する。

 

うむ…相変わらず男なのに抱きが心地いいなナッチは。

 

 

「………暑いんですけど」

 

青色の髪の毛に頬ずりしてたら仏頂面で抗議してきた。

 

なんだ照れているのか?初い奴め。

 

 

「あんた隙あらば絞めを決めようとしてくんだろうが、正直気が休まんねーんだよ。それに重いし」「失礼な奴だなお前は」

 

思わずキュッと両手に力を込める。

ナッチはとっさに首と私の腕の間に右手を差し込んだが、構わずに絞め続けるとぐぇっと潰されたカエルのような声を上げた。

 

「…っ……こっ…!…ほっとに…!な、に……しにっ………来たんだよ!」

腕の拘束を外された。

 

「俺これから用事あるんであんたの相手してるヒマないんですけど!?」

「ああそうだ。それについて来たんだ」

 

すっかり忘れてた。

 

「聞いたぞナッチ。今から決闘に行くんだろ?」おぶさるように抱きついたまま話しかける。

 

「私の挑戦は無視するのに…浮気か?」

「週一のペースで『やらないか』って言ってくる奴と付き合った覚えはない」

「つれないな…京の気持ちが今ならよく分かる」

私の愛が届くのはいつになることやら。

 

抵抗される方が燃えるけど。

 

「それで?嫉妬の言葉でもかけにきたんですか?それなら聞いたんでもう帰ってくれませんか」

「対戦相手の阿久津についてだ。ガクトが腕を折られたことは知ってるか?」

「知ってますよ。本人から聞きましたから」

「そのガクトの仇を取ろうとしたキャップが返り討ちにあったのも知ってるか」

「っ、」

 

ピクッと、ナッチの体が一瞬震えた。

 

「…その日のうちに挑みに行ったが、鼻の骨を折られて惨敗したらしい。すぐに治ったみたいだがな」

そういえばホントに骨折したのかってくらい綺麗に治ってたな。あいつの治癒力は私の瞬間回復並みだ。

 

 

「…………」

「私やワン子が決闘を申し込もうとしても色々理由をつけて拒否してくる。気を使う相手や自分より強い奴とは闘いたくないみたいだな」

「…それで?俺に島津や風間の敵討ちでも取って来いとでも言いたいんですか」

 

抱きつかれたまま、ナッチが目線だけを向けてくる。

 

「大和から聞いたぞ。もともとガクトの借りを返すつもりだったんだろ?ならキャップのも頼む」

「……勘違いも甚だしいっすよ」

するりと腕から抜け出して向かい合う。

 

「俺が闘うのはクラス代表に指示されたから。それ以上でも以下でもないです」

「…ん、そうか」

「もういいすか。試合に遅れそうなんで」

 

時計を確認すると4時を過ぎていた。

移動距離や準備を考えたらそろそろ行った方がいいだろう。

 

「ああ、いいぞ。言いたいことはもう言ったから」

「じゃ、失礼します」

 

ナッチはそう言うとくるりと背中を向けて歩き出す。

 

………嘘がヘタだな、相変わらず。

 

 

 

 

「ナッチ、私はお前のそういうところが好きだよ」

 

 

真剣になったときの引き締まった表情。

静かに闘志を宿す瞳。

そしてなにより、

 

自分ではなく他の誰かのために本気になれる。

そんなお前が、大好きだ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

〜〜〜〜

 

 

東第二武道館。

午後4時30分。

 

「両者、前ヘ!」

 

選択科目『武道』の担当教師にして本日の決闘の立会人のルーの呼び声に、二人の男が姿を表す。

 

 

片方は身長二メートル以上、岩のような筋肉が全身についている柔道着姿。

もう片方は対象的にほっそりとしており、格好は神月学園指定の制服。それの上着を脱いだだけ。

 

阿久津真と瀬能ナツル。二人は東西にある別々の出入り口から入場し、向かい合う。

 

 

―――真っつーかゴウキじゃねーか。つける名前完全に間違ってんだろコレ

 

―――背はそれなりだが、それ以外は普通だな。

 

 

一度顔を合わせているにもかかわらず、お互い第一印象のような感想を心に抱く。

 

とくに阿久津は、相手がほっそりとした体躯をしていると分かると途端に顔を緩める。楽な試合になるとでも思っているのだろう。

 

 

「二人とも揃ったネ。それじゃあ、決闘のルールを説明するヨ」

 

 

 

〜神月学園 "決闘" ルール〜

 

一,人数は試合前に決めておくこと(今回は一対一)。参加者以外の乱入は禁止。

一,武器の使用は認められているが、殺傷能力の無い物を使うこと。

一,急所への攻撃は禁止。

一,時間無制限の一本勝負。相手の気絶、又は敗北宣言を持って仕合を終了とする。

 

〜〜〜〜

 

 

「以上だヨ。何か質問はあるカイ?」

「ないですよ。これが初めてじゃないんで」

「基本はプロレスとかと同じって捉えりゃいいんすね」

「まあそうだネ。その認識で間違ってないよ」

「ならオーケーです」

 

ナツルの返事を聞き、満足げに頷くルー。

 

「それじゃ、二人とも指定の位置について」

 

ルーに促され、両者共にそれぞれ開始線が引いてある場所にまで下がる。

 

 

「くくくくく…ギタギタにしてやるぜ」

「…………」

 

「レーーッツ、ファーイト!!」

 

「おおおおおッ!!」

 

開始の合図と同時に、阿久津がナツル目掛けて突進する。

その姿は一般人を襲う暴漢のようで―――とてもスポーツマンシップを持っているようには見えない。

 

 

「死ねぇええぇええええ!」

野球のグローブのような手がナツルの襟首に触れようとした瞬間、

 

「ッラァ!!」ドガンッ!

「!!?」

 

阿久津の身体は綺麗に一回転し、背中から道場の壁にぶち当たった。

 

 

なんだ今のは、なにが起きた――?

 

 

トラックか何かと正面衝突でもしたかのような衝撃を受け頭が回らない。しかしそれでもなんとか状況を把握しよううと阿久津はさっきまで自分がいた場所に視線を移す。

 

「……なんだ、終わりか?」

 

そんな彼を、ナツルが嘗めたような目で見下す。

 

「とっと来いよ。7位(・・)さん?」

「っ…サ、マァァアッッ!!」

 

 

再び突進してきた阿久津。

 

ナツルは掴みかからんと伸ばされた腕を逆に掴み、そのまま捌いていなす。

 

「!?」

 

急にバランスが崩れて転びそうになったが、そうはならなかった。

 

なぜなら背後に回ったナツルが瞬時に跨るようにのしかかり、両足を絡めて両腕を決めるように掴んで捻り上げたからだ。

 

 

「なぁ!?」

「下手に動かん方がいいぞ。倒れたショックで腕が折れるから」

 

 

軽い口調で話しかけるが、実際にはコンクリートで固めたかのようにピクリとも動かない。

 

阿久津はそのことに驚愕した。

 

「て、てめえいったい――」

「さて上から目線で申し訳ないが、ひとつ訊いておきたいことがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冴島タイガ

 

 

 

裏・神月ランキング(全校生徒を対象とした強さのランキング)

 

 

 

順位

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「折られたっていう島津の腕は右左どっちだったんだ?」

 

 

 

    1 位

 

 

 

 




 挑発使い(マスター)
  挑発使いはめだかボックスの鶴喰鴎のスタイル。挑発マスターは龍が如くの秋山さんのスキル。二重の意味がかかってます。
 ゴウキ
  ストリートファイターのキャラ。本家と違いこちらは中身ただの三下です。



冴島タイガ(MAX時瀬能ナツル)

属性:(きょう)
   (赤の他人は気にも掛けないが仲間のためなら命も懸ける)

攻撃力:120 ※"気"使用
守備力:120
走力:120
瞬発力:120
体力:95
知力:53

総合武力ランク:S



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