戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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"けんぷファー"の主人公がメインなのに、百話以上やってて原作のキャラがナツルと雫と茜しか出てないんですよねぇ…(あと委員長さん?)



87時間目 ノーネーム

 

= あらすじ =

 浅からぬ因縁を持つ人物と再会し、壮絶に気分を害したナツル。

 

 そのことを察した善と玲は、彼の調子を戻すため――

 

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

 

 

ナツルの昔の知り合いのところに足を運んだのだった。

 

 

 

〜ナツルSide〜

 

= 2年Dクラス出し物 『わくわく交遊ランド』=

 

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

 

俺こと瀬能ナツルは、ダーツバー風に改装された教室で思いっきり、自分でも引くくらい大爆笑している。

 

さっきまで心に暗雲が立ち込めていたのに、今はウソみたいに晴れやかだ。

 

笑いすぎて捩れそうな腹を押さえて、体を折り曲げて頭を下に。

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

「………ずいぶん楽しそうだなクソヤロウ…!」

 

頭上で馴染みのある人物が剣呑な声をかけてくる。

 

おおっと、地獄の悪鬼も逃げだしそうな勢いだ。店員さんこわーい。

 

「ちょっと美嶋さん!ダメですよお客さんにそんなヤクザみたいな怖い顔向けちゃ!昨日一昨日騒ぎ起こして怒られたでしょう?あと1日なんだから我慢してください!」

「ぐっ…!わっ、分かってるよ…!」

 

別の女生徒が茜に注意すると、不満を全面に押し出しながらもそれに従う。

 

その店員の姿はフリフリミニスカのウェイトレス服。当然同じクラスの茜も同じフリフリを…フリフリ…を……!

 

「あっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!」

「…………」

「ナツルくん笑いすぎだよ」

「なにがそんなにおかしいのだ?」

 

こればっかりは身内ネタだから説明できないなー。おかしいからおかしいんだよ。

 

 

「美嶋さん、うるさくて迷惑だから、その人静かにさせてもらっていいですか?」

「喜んで(ジャキン!)」

 

え、ちょっと待って。そのどこからともなく取り出したそれは、中学のとき一学年上の先輩が「あたしの卒業祝いだ」とか訳の分からない台詞と共にプレゼントした特殊警棒じゃないかい?チタン合金とやらでできてるとかいう。

 

いやいや、振るわないよね?そんな一撃のダメージが200とか出そうなぶっ壊れ武器を、まさか昔からの知り合いにそう軽々と

 

「死ね」

 

あ、そういえばためらわない奴だった。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

「いったー…」

 

卓につきながら、ガードに使ったせいで痛みが残る右腕をさする。

 

左手はデバイスのおかげでなんともないけどこれ、超痣できてるじゃねーか。"気"を使ったのに…

 

衝撃を電力に変換するデバイスの充電率は137%。

 

バッテリーの上限って普通百じゃねえの?

 

 

「軽いジョークじゃんかよー。それなのに連撲の極みキメるなんて、大人気ないぞー茜ー」

「うるさい黙れ、口を開くなクズ」

 

接客しながら息を吐くように罵倒された。

 

迷惑かけた詫びとしてここで軽食を取って銭を落とすことにしたんだが早まったかもしれん。

それにそこそこ腹いっぱいだし…中々メニューリストに手が伸びない。

 

ただ玲ちゃんだけは嬉々として料理を選んでいる。

 

ここに来るまでに俺の倍は食ってるはずなんだが。

彼女はなに?胃の中に寄生虫でも飼ってるの?

 

「水です」

 

 

コト ←善くんの前

 

コト ←玲ちゃんの前

 

 

…………

 

「あの、俺のは?」

「ない」

 

ぅおーい。やめろよそういうの。

 

ファミレスで俺の前だけコップ置かれなくてガチへこみしたの思い出すだろ。

 

「お帰りください。クソ野郎(オキャクサマ)

「…このウェイトレス接客態度悪くなーい?」

 

先ほど茜に話しかけた名も知らぬ女子店員にクレームを入れる。

 

「美嶋さんは激ツンウェイトレスだから問題はないです」

「激ツンて…」デレはないんかい。

 

「人気なんですよ?指名が入るくらい」

「マジかよ」

 

あんなののどこがいいんだ?甘さが一切ないとこか?

 

確かにスタイルはいいけど…

 

……………

 

 

カシャッ

 

 

 

「テメーなにしてやがる!?」

「はっ!」いかん、手が勝手に!

 

 

「カメラ音がしたぞ…!なにを撮ったんだおい?」

「いやあの」

「どうせその写真使ってあたしを笑いものにするつもりだろ!そうなんだろ!!」

「ああ?するかんな事!」

 

直江や吉井とかならともかく、中学からの知り合いにいじめ紛いな事はしない!

俺はただ、

 

 

「夜のオカズにするだけだ」

「なに言ってんだてめえ!?」

 

 

なにって、ナニ?

健全な男子高校生として一般的なことを言ったと思うけど。

 

「おかず?」

「それで飯が食えるのか?」

「利き手がとても捗る」

「死ねゲスクズ!!」

 

 

>茜の攻撃!警棒をフルスイング!!

 

>ミス!ナツルは座ったままでヒラリと身をかわした。

 

 

「避けんな!」

「無理ゆーな」避けれたら避けるだろ。

 

さっきからずっとやられたい放題だったけど、痛いのは嫌だよ。痣になるし。

しかも今頭狙っただろ。殺す気か。

 

 

「そういえばさっきひかりちゃんに会ったぞ。中学の同級生の」

何気なく、昔の友達のことを話題に上げる。

 

どうせこの学園にいる事は知ってるから、驚きはしないだろ。

 

「なんだよやっと再会したのか」

「…ちょっと待って、どういう意味?」

「お前がいつあたしたち二人のことに気づくか賭けてたんだよ」

「『賭けてたんだよ』!?」逆に驚かされた。

 

 

「ひかりが"1年生のときに再会"で、あたしが"卒業しても気づかない"。レッサーパンダが"2年"だな」

「初耳なんだけど!?」

「そりゃそうだろ。今言ったし」

テメーなんだそのすまし顔!少しは悪びれろ!

 

 

 

あ、ちなみにレッサーパンダってのはひかりちゃんと茜と俺と同じグループに所属していたもう一人の奴のことだ。

一つ年上の女で、先に卒業したんだが…流石にいないよな?この学園に。

 

その彼女の呼び名については、ひかりちゃんが作ったアニメーション映画の台本が元ネタだ。

 

俺たち三人を動物?に例えて登場させていたんだが、茜は気に入ったらしくずっとキャラ名で呼んでる。

 

見た目は穏やかで優しげで品行方正な優等生を絵に描いたような生徒会長だったが、性格は相当ねじ曲がっていた。

ぶっちゃけ俺に一番影響与えたのあいつだと思ってる。ひかりちゃんと茜もそれは認めた。

 

故に、レッサーパンダ。時折見せる腹は真っ黒。

 

 

そのほかにも俺が三日月型の口のみが白い、猫の形した『青』。気分屋。

茜がハリネズミのように全身の毛を逆立てて、常に骨を咥えている赤い犬。狂暴。

 

ラフスケッチやらストーリーやらもほとんど出来てて、あとは動画を作るだけって段階で見せられたんだが、肝心のひかりちゃんをモチーフにした動物キャラがいなかったのでやり直しを命じた。

 

それ以外にも誤字脱字が酷かったから…修正(赤ペン)めっちゃ入れたせいで卒業までにクランクアップしなかったけど、そういやどうなったんだアレ。

 

 

 

「つーかいい加減名前で呼んでやったら?」レッサーパンダパイセンを。

「はん、必要性を感じねえな」

 

なんだ必要性って。相変わらずよく分かんねえ奴だな。

どう考えてもレッサーパンダの方が言いづらいと思うんだけど。

 

 

「…もしかしてあれか、愛しのひかりちゃんが付けた設定を使いたいとかいういじらしい理由」

「死ね!!」

 

 

>茜の攻撃! 警棒を大きく振りかぶり、思いきり打ちつける!

>ミス! ナツルは椅子から立ち上がり、ヒラリと身を躱した!

 

 

「そういえばこの学園の願書も二人で貰いにきたんだよね!中学卒業とともに恋愛も終了するかと思ってだけど、まだ恋人同士だったんだ!お熱いね!!」

「それは腹黒レッサーパンダが作って流したデマだろうが!!」

 

 

>茜の攻撃! 警棒を大きく振りかぶり、思いきり打ちつける!

>ミス! ナツルは駆け出し、ヒラリと身を躱した!

 

 

「はじめて〜の〜チュウ〜〜ひかり〜と〜チュウ〜〜( (ウフフっ))、あかね〜と〜ひ〜かりチュウ〜〜〜♪」

「ぶっ殺す!」

「おもい〜で〜の〜たいいくかん〜で〜あついチッスを〜し〜た〜〜〜♪」

「屈辱的にコロスッッ!!」

 

 

>茜の攻撃! ミス! ナツルは身体を捻ってヒラリと躱した!

 

>ナツルの反撃! 再び振り上げた茜の腕を掴み、立ち関節をきめた!!

 

 

「コキネリツイスター!」

「うわあぁやめろ変態!?」

 

掴んだ右腕を両手でクラッチ、さらに両脚使っての胴絞め!

どうだ!胴体と一緒に左手も巻き込んだから身動き取れまい!

 

ただ本家と違い、相手の正面から技を仕掛けたから全然締め上げれてないけどね。全身で拘束してるだけ。

 

ああ…腹部にむにゅぅっとした感触が………(ちょっと物足りない…)

 

 

「お前今なに考えた?」

 

 

突如向けられる立夏の気温も凍らす冷ややかな眼差し。

 

いつもの睨みつけるようなソレではなく、深淵のような無表情。

三年ぐらいの付き合いだが初めて見る顔だ。

 

手を離したら殺される…!

 

 

「ははは、何をおっしゃるウサギさん」

「………」

 

ははは。ははははー、ハハッ。

 

手首のスナップだけで警棒ぶつけてくるのやめない?地味に痛いんですよ。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

結論から言うと、俺は生きている。腕の痣は増えたけど。

 

技を解く際に警棒を没収したのが功を奏したな。

 

叩かれた瞬間に奪い取って、素早くイベントリに突っ込んだら「どうやったんだ!?」って驚かれた。

(実は俺もよく分からん。気づいたら使えたからなイベントリ…)

 

警棒は後で返しておこう。茜専用に作られてるから俺が使うとグリップに違和感覚えるんだよな。

 

 

「茜ちゃん!注文お願いします!」

「うるせえ、ちゃん付けすんなクリーム」

 

ハイッ!と勢いよく挙手した玲ちゃんの元に、文句を言いながら注文を取りに行く茜。

 

さっきから静かだったけど、もしかしてずっとメニュー選んでたの?すぐ側であんなにバタバタしてたのに。

人のことあれこれ言えないけど、この娘も大概だな…

 

………ん?

 

「ていうか何、君ら知り合い?」

 

玲ちゃんは紹介してないのに茜の名前知ってたし、茜もなんか玲ちゃんに対して態度が柔らかい。普通ならもっと距離が遠いのに。

初対面のはずだろ?

 

「なに言ってんだお前、お前が紹介したんだろが」

「え、」

 

俺が紹介?

 

茜に?いつだ?

 

そもそも二人との出会いは?どういう経緯で仲良くなった?

 

直江に尋ねられた時も咄嗟に思い出せずに濁したが、全く覚えていない。

茜やひかりちゃんのことも忘れてしまえる残念な脳だから気にしてなかったけど、これはあまりよろしくない気がしてきた。

 

 

「…ハードが異様に頑丈なのはメモリを削ってるからだな」

 

意味は分からんが多分俺今ものすごい罵倒されてる。

 

 

「出会いのきっかけを忘れてることは、あいつらには黙っといてやるよ」

「……ありがとう」

 

マジで。




■コキネリツイスター
 筋肉マン。てんとう虫をモチーフにした超人の持ち技。
 胸に鉄杭突き刺さって死んだらしいけど、その後会話シーンあるから急いで治療すれば一命は取り留められたんじゃないの?


懐かしの茜さん登場。貴重な原作キャラ同士の会話シーン。8割が暴力描写なのはこの子達らしいといえばらしい…かな?

そんな中でも変わらない『さわやかなゲス』瀬能ナツル。略してゲスル。
流石です。


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