戦士たちの非日常的な日々   作:nick

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別にナツルを幸せにしたいとは微塵も思ってはいない。



82時間目 絶対私は、忘れない。

 

「まあできなくてもいいけどね」

 

波紋とかいうチャチな超能力なんぞ、使えなくても気にはしない。

 

瓶コーラの蓋を手を使わず開けたり、サボテンを爆発させたりとかしたいって思ったことねーし。

 

羨ましくなんて、これっぽっちも思ってねーし。

 

 

「羨ましいのか?」

「そんなことねーし」

「不満を全力で表現する愈史郎みたいな表情してるけど…」

 

演技だよ演技。きみのおかげでこんな器用な顔芸できるようになりましたよー?

 

だいたい波紋(あんなもの)、使える方がおかしんだよ。応用すれば他人を操るとかもできるんだろ?危険極まりないわ。

 

"気"の方が安心安全よ。電気は直流より交流よ。(意味が分からん)

 

 

「なぁ呂布ちゃん」

「…………」

 

 

コォォォォ…

 

バチバチバチバチ…

 

 

彼女を見ると、独特の深い呼吸音と共に、褐色の肌から山吹色の細い電流が立ち上っていた。

 

 

呂布ちゃん波紋使えとる!!!

 

さっきから静かだと思ったら波紋練ってたんかい!

 

 

「凄いな、さっきまでその存在も知らなかったのだろう?」

「呂布ちゃんバリバリしてる。電気ウナギみたい!」

「数分でさらっとマネされるとなんか…面白くないかも」

「ひかりちゃんより質高くない!?」

放出されるエネルギーの色も量も力強くハッキリとしてる。

 

忘れてた!この娘才能の塊なんだ!数秒見ただけで完コピできるくらいに!天才め!

 

「チクショー!なんだかとってもチクショー!!(ガンッガンッガンッ)」

「ひゃうっ!?」

「なっ、なにいきなり!?」

 

俺がいきなり金槌で壁と藁人形に五寸釘を打ちつけ始めたので、女の子二人が身をすくめる。

 

「氏ね!吉井氏ね!!」

「誰だ、吉井というのは」

「吉井…もしかしてFクラスの?学校で成績が一番悪いって噂の」

 

あいつそんな噂立ってたのか。事実だけど。

 

 

 

 

 

〜〜同時刻。吉井明久宅〜〜

 

「ぐあぁ!ハクション!グアぁっくしょん!!」

「どーした明久。いきなり胸なんか押さえて」←坂本

「分からな…!なんかいきなり胸に激痛とくしゃみが同時に…!」

「そうか。もしかしたら誰かがお前を噂して呪ってるのかもな」

「なんで!?」

 

 

 

 

〜〜神月学園・ナツルSide〜〜

 

 

「全くの無関係の人間の名前をなぜ出したのだ?」

「それは…まぁ、ノリだ」

 

直江でもよかったんだけどなんとなく。

 

「ていうか、やっぱり羨ましいんじゃない」

「ああ、そうだよ!羨ましいよ!」

 

俺だってオーバードライブしてみてえんだよ!!

 

でも駄目だったよ。ムリだったよ…俺呼吸使えなかったよ。

 

ジュース入れたコップに指突っ込んで、プリンみたいに固定して齧り飲みしたり、

 

シャボンランチャーとか言って割れないシャボン玉作ってみたかったのに!!

 

 

「願望が幼稚……」

「そんなことして何が楽しいのだ?」

 

 

なんか言われてるけど無視。

 

「それをよりによって呂布ちゃんが使うなんて!」

 

彼女は…彼女は……ヒロインポジションだと思ってたのに!まさかヒーローの方だったなんて!!

 

主人公は俺じゃないのか!世代交代か!世代交代なのか!?

竹筒の猿ぐつわはめて桐箱に収まらなきゃいかんのか!?

 

こうなったら血鬼術覚えるしか……!

 

 

「…………(コォォォォ…)」

「つーか呂布ちゃんさっきからずっと波紋練ってるけど、いったいなにに使うんだよ」

 

 

ひかりちゃんみたく俺を攻撃するんじゃないだろうな。やめろよ、その勢いで『震えるぞハート!』なんてかまされたら肉が気化するぞ。

 

 

「……主に捧げる…」

「は?どういう意味?」

「……私の生命力に乗せて主に送る。定着すれば波紋が使えるようになる…」

 

 

は?

 

 

「オイ何考えてやがる、今すぐやめろ」

 

確かにその方法なら素質が無くても波紋が使えるようになるだろうけど、やったら呂布ちゃん死んじゃうじゃん。

 

ツェペリのおじさんみたいに髪の毛真っ白になるよ?

 

港湾棲姫(かんぜんたい)にでもなる気?

 

 

「命ごとの献身なんて今どき時代おくれなんだよ。重すぎる、迷惑だ」

「……でも主、使いたいって――」

「見損なうなよ、呂布」

 

 

 

「お前を失ってまで手に入れたいものなんてこの世に存在しないんだよ」

 

 

 

これは結構本気だ。

 

出会って一か月も経ってないが、後ろにこいつが控えてないと物足りなくなってきた。

ピンチのときに助けてくれないポンコツで、たまに幼児みたいなことする困った娘だが、なんだかんだ言って安心して背中を任せられる存在なんだろう。

 

それに明確なやりとりは無いが、呂布ちゃんは九鬼家から預かってるようなもんだからな。

 

俺のくだらん我が儘やミスで命を捨てたとかなったら、詫びで腹でも切らにゃならん。

ハラキリナツルとか誰も得しねえよ。

 

 

「…………ん?」

 

そこまで考え込んで違和感に気づいた。やけに周りが静かだ。

 

視線を周囲に向ければ、何故か呂布ちゃんは顔を…耳まで真っ赤にして俺を見てる。

 

波紋の練りすぎでオーバーヒートしたか?

 

玲ちゃんも呂布ちゃんほどでは無いが顔を赤らめて、両手で口元を隠している。

やり取りを見守っていた周りの人間も似たり寄ったりなリアクションだ。(男は唾でも吐き捨てそうな表情してるけど)

 

ひかりちゃんは…

 

「…………(ムー…)」

 

不満を全力で表現する愈史郎みたいな顔してる…女の子がそんな表情していいの?

 

てかなにこの空気?

 

 

「瀬能、つまり君にとって呂布が一番という事なのか?」

「え?えっと…まぁ……そう、かな」

 

 

「………!!///」

「はぅっ…///」

「(ア"ーー…?)」

 

 

周りのリアクションがいっそう深くなった…俺なんか変なこと言った?

 

………呂布ちゃん最高峰。

うん、なにもおかしくない。

 

でも何か引っかかるのなんでだろう?





でも呂布ちゃんには幸せになってほしいと思ってる。理由は追々。

そのせいでナツルが鈍感キャラになっていく…


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