実績解除
= あらすじ =
呂布とナツルの身体の不調を改善するため保健室へやって来た一行。しかしそこは尋常じゃない存在が支配する人外魔境の地であった…
「大変失礼な解説にわたくし、激しく物言いでございます」
エリザベスさん、モノローグに勝手に割り込まないでください。
☆ ★ ☆
腕を掴まれ、引きずられるように入室した俺。善くんたちもそれに続いて保健室に入る。
そのままなぜかエリザベスだけが椅子に座り、診察が始まる。患者は座らせんのかーい。
今さらながらここはヤヴァイ。直感が焦り声で危険を囁き続けている。
しかし一瞬たりとも腕を離されないので逃走ができない。合気を利用しても外すどころか動かすこともできないってどんな力してんだコイツ。
「ふむふむ、診察いたしましたところ瀬能さまの不調は上腕骨の圧迫骨折。それに血流の滞りによる皮膚の変色のようですね、見事な紫色です」
「いやいやいやまさかそんな、ご冗談を。これはアレですよアレ、今流行りの片腕
所々狂気が垣間見える異様な女なのに、診察眼は確かというのが異様さを加速させる。
「え?まさかエリザベスさん知らないんですか?うわっマジか…うわー………遅れてるぅー」
「なにを言っているのだ瀬能、腕の治療を希望したのはきみだろう」
「ばっかおまっ、余計なこと言うんじゃねえよ!」
さっきまで忘れてたけど、人の傷口引き裂いて消毒液ぶっかける女だぞ!?
両腕のバランスを整えるために掴んでる左腕も紫にしましょう、とか言って二の腕握り絞るに決まってる!
「瀬能さまはわたくしをなんだと思っているのですか…そのような治療とも言えぬ行為、このエリザベスがする筈ございません」
「え……そっ、そう?」
「もちろんでございます」
無表情ながらにどこか不機嫌な雰囲気を醸し出す彼女の姿に、失礼かもしれないけど少しホッとする。
そうか…俺の考えすぎか………
「バランスを考えるならば左腕は赤くするのが正解でございます」
「たぁすけてぇぇーーーーーー煮られるーーーーーーーーーー!!!」
ひいィィッ!?いつの間にか部屋の隅にグツグツと煮えたぎる鍋が用意されている!?さっきまで無かったのに!?
「さあさあ瀬能さま、トキは金なりと申します。ズバッと奥まで、あ 突、入っ」
「ヤメロぉぉーーーダチョウクラブじゃねーんだぞ俺は!!」
椅子から立ち上がったエリザベスがそのまま鍋の方へと歩き出す!
こん畜生!なにが「そのような治療とも言えぬ行為する筈ございません」だ!しれっと嘘つきやがって!!
「うぉぉぉぉッッ!!」
ダメだ!向こうの方が力が強い!全力で踏ん張ってるのにズルズルと引きずられる!!
= ライブセレクション =
次の選択肢の中からひとつ選べ。
①ハンサムなポルナツルは脱出のアイデアを閃く
②仲間が助けてくれる
③逃げられない。現実は非情である
いかん、極限すぎて変な三択出た。
ひとつを選べ?この中でなら…俺がマルをつけたいのは二番目――
ダメだ。突然の状況に善くんも玲ちゃんもドン引きのまま固まっている。呂布ちゃんは限界が来たのかぐったりと壁にもたれてそれどころじゃないし。
そもそも俺や
となれば当然、俺が選ぶべきなのは①!
「正当防衛だッ悪く思うな!!」
骨折した右腕を"気"で覆い、無理やり動かして手刀を作り振り上げる。
そしてすぐに勢いよく振り下ろす!
「ナイフッ!!」
「アラハバキ(パキィン)」
ガギンッッ!!
………ガギン?
俺の手刀とエリザベスの腕がぶつかった瞬間、金属音が響いた。
なんでそんな音するんだ?
いや、俺はいいんだよ。"気"で硬質化してるから。
でも向こうはおかしい。触れた時の感触は普通に人間の腕のものだった。なのになぜ金属音が…?
「って呑気に考察してる場合じゃねー!」
問答無用で引きずられてる最中だった!少しは配慮しろ!
「ナイフッ!ナイフッッ!!」
(ガギンッガギンッ!)「物理無効でございます」
なにその常識無視した特性!?武闘家の天敵か!!
「くっ、川神流雪達磨!ベルリンの赤い雨!」
(パキパキパキッ、ボウッ!)「氷結無効に火炎無効でございます」
「エレキアタック!!」
(バリバリバリバリッ!!)「電撃無効でございます。瀬能さまは多彩でございますね」
氷も炎も電気も効かねーーーーーーーどうなってんのコイツ!?
いかん、そうこうしてるうちに鍋までもう距離がない。かくなる上は……
「おや?」
突如這い寄るように背後から広がった闇に、エリザベスの足が止まる。
背後…つまり俺から放たれた"闇"は、昨日の宇宙のように無数の細かい光があるものではなく、黒煙のような形で見る者に不安や畏怖を抱かせる。
習得したけど食らわした結果が分からない技第二弾。何度ダミー人形に使ってもなにも起こらなかったんだよね。
多分生物にしか効果がないと見た。かと言って動物とかに試し撃ちするわけにもいかず今日までお蔵入りされていたのだ。
昨日のゴールデントライアングルを使ってもいいんだが、なんとなく効果がなさそうな気がする(即死無効とか言って。知らんけど)。
俺にとっても未知の技でリスクは大きい、しかしそれ故にリターンも大きいはず!この技に賭ける!
「テメェーが一人目だ、喰らえギャラクティカイリュージョン!!」
無作為に広がっていた"闇"が一斉にエリザベスへ襲いかかる。
それに対してエリザベスは、今まさに振り返り状況を確認したところだ。
いくらなんでもここから大した反撃はできないだろう。回避行動を取るにしても俺の手を掴んだままじゃいられないはず。
勝った、第三部完!
「メギドラオンでございます」
――瞬間、白い光が闇を飲み込んだ。
「は?――へぶァッ!!」
そのまま進行方向にいた俺にぶち当たり、とんでもない衝撃と痛みを与える。
答え
答え
答え ③
逃げられない。現実は非情である
「おや、どうされました瀬能さま。そのようなずた袋のようなお姿になって…」
ダメージで全身に力が入らずぐったりとしている俺にエリザベスが話しかける。
自分がやった癖にいけしゃあしゃあと……今も床に倒れ込みたい俺を、掴んだ片腕を上方向に引っ張り無理やり膝立ちにさせている。人間のやる事じゃねえ。
「少々汚れてはおりますが、まだ赤色には程遠いご様子。これは一刻も早く湯通しをせねばなりませんっ」
そう言って再び鍋の方へ近づいていく。
もうダメだ……万策尽きた。それに身体が痛くて動いてくれない。
答えは③だ。現実は甘くねーぜ。
きっとこのまま俺は伸ばして畳まれて1ミリ幅に切られてじっくりコトコト茹でられた挙句に醤油ベースの濃い目のつゆにネギや油揚げをトッピングされて玲ちゃんにずるずるすすられる最期を迎えるんだ…(※蕎麦か)
ごめんよ呂布ちゃん…キミを信じてやれなかった俺が馬鹿だった……
許してはもらえないだろうけど、せめて一言謝りたかっ……た…………
「ま……待つ…!」
諦めが思考を埋め尽くす中、前方から声がかけられた。
「あるじ…煮る……ダメ………!」
いつの間にか俺たちの前方に先回りしていた褐色肌の少女が、両腕を広げて進路を塞いでいた。
「りょ…りょふ…ちゃん……」お前初めて忠臣らしい行動を…!
しかし今はまずい。
この状況でその台詞はどう考えても死亡フラグ。満身創痍だからデッドエンド待ったなしだ。
吉井や直江だったらいくらでも犠牲にできるが彼女はダメだ。絶対にダメだ。
かくなる上はこの左腕を引きちぎってでも部屋から脱出を―――
「おや?貴方さまもけが人ですか。では真面目に治療致すとしましょう」
ドシャっ
呂布ちゃんを視界に収めた瞬間、エリザベスはあっさりと俺の手を離した。
あまりに急だったため身構えることも出来ず、重力に引かれるまま地面に倒れ伏した。
………鼻打った……
つーか今コイツなんつった?真面目に?てことは今までのはおふざけってこと?ふざけて人の手茹でようとしたり謎の閃光で傷つけたりしたの?ふざけんなよ?
いつか必ず復讐してやることを魂に刻む。
「それでは改めまして…治療しますか?料金は56800円になります」
「って金とんの!?」
床から立ち上がった瞬間にそう言われて思わずツッコむ。
右腕の骨折はともかく全身のダメージは
しかも高いし。
「適正価格でございます」
「どこの適正だよ…」もうなんか色々と疲れたわ。
一瞬またふざけてるのかと思ったが…ダメだな。眼を見てもよくわからない。ふざけてる時と真面目な時の表情の違いがまったく読めない。
基本無表情な人間ってこれだから苦手ですわー。
まぁそれはさておき。…どうしようか。
「うーん…」
五万…治療に五万か………
正直言って高すぎるわ。保険証なしの病院の初診料だってもう少し安い。
しかしここで払わないとまた左腕赤染めの件をやりかねん…次は本当に煮られるぞ。
でも五万は流石に…払えないことはないけど、払ったら今月ピンチだ。
どうしよう…どうすれば……
……… ……… ……… ……… ………
「ここってカード使える?」
「こちらは電子マネーに対応しております。お支払いはベル払いでよろしいでしょうか?」
「一括払いで」ベル払いってどんな支払い方法なんだろう…
エリザベスがどこからともなく――見てたけどなんか…六法全書みたいな本から出してた気がするけど気にしないことにする――差し出された掌サイズの機械に、ブラックカードを近づける。
持ってて良かったブラックカード。清涼祭期間中の学園内なら支払いがただになるブリリアントなカード。
ありがとう、美鶴先輩。マジありがとう、美鶴先輩。おかげで一命を取り留めることができました。マジで。
液晶パネルが付いてる部分に数秒程かざすと、『ガルペイ♪』と軽快な電子音声がした。エアじゃないんだ…
「はい、確かに。それでは…イシス(パリンッ)メシアライザー!」
「お?」「……ん」
お?
おお?
おおおおっ?
「すげえ!本当に治った!!」
「……ん、絶好調」
ここ最近全く感じることのなかった活力を全身に感じて、思わず手足を動かす。
腕の骨折だけじゃない。昨日召喚獣に受けた足のダメージも、学祭の準備に追われて蓄積されていた疲労も全部無くなっている。いったいどんな技術を使えばこんなことが…?
目の前で見てだけど分厚い本を開いたり閉じたりしてたぐらいで、あとは特別なことは何もしてなかったと思う。ホントどうやったんだろう。
つーかこんな事できるんなら初めからやれよ…いやあれか、あそこまで徹底的に脅さないと金払わないか。
くそっ、よく考えてるじゃねえか…戦略にまんまと乗せられた自分が憎い。
「そしてお二方にはこちらを贈呈致します」
「ん?」
エリザベスが差し出した物体…栄養ドリンクのビンみたいな形状のものを、俺と呂布ちゃんは思わず受け取る。
「なにこれ」
「保健室の初利用者記念品でございます」
あの魔法みたいな治療受けたの俺たちが初めてだったのか…それで適正価格とかどうやって分かったんだ。
「……"仙桃エキス配合!鼻の涙"」
「SPとHPが回復します」
「SPとHPってなに!?」
HPはなんとなく分かるけど、SPが分からん。スペシャルポリス?
「……主にあげる…」
「いや俺もいらな…呂布ちゃん勝手に人のイベントリに物突っ込むのやめて」どうやったの?
・解除条件:「瀬能ナツル」を恐怖状態にする。
■ナイフ
トリコ。週刊誌ジャンプに掲載されてた作品の技。
鉄と同じ硬度を誇る手刀で対象を切り裂く。
■川神流・雪達磨
マジ恋。モモさんが使っていた技をパクっ…勝手に拝借した。
この技を覚えてからはナツルの自宅の冷蔵庫に電気が送られなくなったらしい。
■ベルリンの赤い雨
筋肉マン。ドイツ超人の必殺技。最近活躍の機械が増えてよかったねっ
■エレキアタック
クロノトリガー。味方キャラ・ロボの技。
使いやすいから作者は必ず戦闘メンバーに加えていた。なつかしいなぁ…
■ギャラクティカイリュージョン
セイントセイヤ。終盤の終盤で1・2回使われてサラっと攻略された技。
本来は使うと無数の瞳が浮かぶ謎空間が発生してなぜか相手が吹っ飛ぶというよく分からない技。
ナツル版のソレは闇のようなオーラが触手状に広がり、相手を攻撃する。その闇に攻撃されると精神を傷つけられてネガティブ思考に陥る。
ナツルが急速に弱気になったのはメギドラと一緒にコレを食らったから。
■メギドラオン
ペルソナシリーズ。無属性の攻撃魔法スキルで相手全体に大ダメージを与える。
戦闘に参加してたのはナツル1人なので善くん達は無傷(どういう理屈だ)
64話目です。でも総話数は100超えてるんだよねぇ…なんか二章の五月編だけで100話いきそうな気がする。まぁいいけど。
今回の話実は投稿前に謎の全消去という最悪な事態が起きて大幅に書き直しました。……寝ぼけながら小説書くもんじゃねえな…マジで。
前話とセットだったのが分割してさらに削除されたから文字数かなり増えた。ナイフやギャラクティカのくだりなかったのに…まあいいけど。
次回もこんな感じでぐだぐだ書いてきます。