ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
彼らの一回戦は、波乱の連続だった。
第一試合のコウサカ・ユウマ対カミキ・セカイの試合から、終始目を離すことが出来ない激しい攻防が繰り広げられたものだ。二人の腕は選手権の頃よりもさらに磨きが掛かっており、彼らのチームメイトであるホシノ・フミナすらも驚かされるばかりだったほどである。
特に凄まじかったのは、セカイの新機体であるTRYバーニングの恐るべき性能か。
それでも、途中まで優勢だったのはコウサカ・ユウマのスーパーエステバリスの方だった。ユウマが自身の手で生み出したオリジナルの特殊フレーム、WWフレームを持つスーパーエステバリスの機動性は「アシムレイトの力を持つガンプラ」である、TRYバーニングの全推力を持ってしてもなお上回っていたのだ。
防戦一方というほどではないにしろ、そんなWWバリスの機動力から繰り出されるラピッドライフルとエアマスターバスターライフルの二丁拳銃による銃撃は元来近接戦闘を得意としているTRYバーニングに苦戦を強いり、着実にセカイを追い詰めていた。
――しかし追い詰められながらもセカイは、水のような静かな心の中で、ユウマが見せたほんの僅かな隙を逃さなかった。
神樹ガンプラ流、バーニングバーストダッシュ――ゴッドガンダムのゴッドフィールドダッシュを元に編み出したセカイの新技によって一時的にスーパーエステバリスの動きに追いついたTRYバーニングが、瞬時に彼の二丁拳銃を一刀で両断する。
そうして彼の手から厄介な火器を奪ったことによって、セカイはユウマを自身の土俵へと引き摺り込んだのである。
「いくぞユウマッ!!」
「来い! セカァイッ!!」
白熱していく戦いの中でボルテージが最高潮に達した二人が近接戦闘を繰り広げ、お互いの出せる全力でぶつかり合った。
これに観戦者達が驚いたのは、執念めいた意志さえも窺えるユウマの強さである。セカイが最も得意とする近接戦闘においても、彼のガンプラの体捌きは決してTRYバーニングのそれに劣らなかったのだ。
そして彼らの決着の行方は、お互いのガンプラがそれぞれに持つ最強の武器へと委ねられた。
「流派神樹ガンプラ流の名の下に! 俺のこの手が真っ赤に燃えるぅッ!」
「勝利を掴めと轟き叫ぶぅッ!!」
まるで本物のガンダムファイターのように気迫を込めた叫びを上げながら、二人のガンプラは衝突する。
「今爆熱するのは二人とこの俺! 鳳凰! 天驚おおおおけえええええええんッッ!!」
「RG! ダブルビルド・ゲキガンフレアアアアアアアアッッ!!」
ガンプラと拳法の融合。
ガンプラとナデシコ愛の融合。
激突する力と力。ディストーションフィールドと共に浸透させた粒子エネルギーを両手に注ぎ込んだスーパーエステバリスが、TRYバーニングの放った神の如き不死鳥の炎を押し込んでいく。
まるで機動武闘伝Gガンダムの作中で繰り広げられたドモン・カッシュ対シュバルツ・ブルーダーの戦いの如く、彼らの戦いはジャブローの鍾乳洞基地ごと粉々に吹き飛ばす大爆発と共に幕を下ろしたのである。
そして、爆発の煙が晴れた時――そこに立っていたのは、カミキ・セカイのTRYバーニングだった。
死闘を繰り広げた二人のファイターに、力の差などありはしなかった。
二人のガンプラはどちらも戦闘続行が不可能なほどのダメージを受けていたが、先に砕け散ったのがユウマのスーパーエステバリスであり――その時間差が、二人の勝負を分かったのである。
こうして第一試合は、カミキ・セカイが二回戦進出を決めることとなった。
一方で試合に敗れたが壊れたスーパーエステバリスを抱えて「次は僕が勝つ!」と今回の勝者に対して堂々と宣言するユウマの姿は、まるでいつぞやのどこかの誰かさんのようだとヤジマ・ニルスが微笑んでいたという余談である。
彼らの後に続くのは第二試合、ビルダートJ対アワクネ・ユリの対決だった。
勝った方が次の二回戦でセカイと戦うことになるこの試合の運びは、一部の者を除いては誰もが我が目を疑ったことだろう。
ビルダートJのサイコガンダムキングジュンダーはサバイバルレースでも圧倒的な強さを誇り、メイジンのアクシズ落としにおいてもその殲滅力によって絶大な貢献を果たしていた筈だ。
そんな彼と彼のガンプラでさえも――アワクネ・ユリの操る「ベルティゴ
まるで未来を予知しているかのように、彼女はビルダートJの操作する機体の動きを見切っていたのだ。
「これでも……届かねぇのか……!」
「いえ、そんなことはありませんよ。この前より、ずっと面白い勝負でした」
幼い少女のガンプラが、圧倒的な技量の差で巨大MSを追い詰めていく。試合前の予想とは打って変わって一方的に蹂躙していくだけの試合に、場内は静まり返った。
だがそれでも、ビルダートJは最後まで勝負を諦めず、最大の秘策、最後の賭けとして「ジュンクフェニックス」なる大技を発動したが――惜しくも届かなかった。
そうして結局一度も被弾することなく、第二試合はアワクネ・ユリが勝利を収める結果となった。
ビルダートJもまた十分すぎるほどの力量を持ったファイターであったが、今回ばかりはただ相手が悪すぎたのだと……特別席からその試合を観ていた細身の仮面の男が一人、怪しげな笑みを浮かべていたとかなんとか。
第三試合は、イズナ・シモン対アスカ・シンの対決である。
機体名はデスティニーインパルスとマークデスティニーという、共に「デスティニー」の名を冠するガンプラである。そんな彼らの攻防は、イズナ・シモンに軍配が上がった。
元々、素組のガンプラでも並のファイターを凌駕する実力を持っていたシモンだ。そんな彼が弟によって専用のチューニングを施された機体を扱ったのだから、デスティニーインパルスを操るシモンの実力は選手権の時の比ではなかった。
アスカ・シンもまた彼に劣らぬ腕を持ってはいたが、シモンがボクシングで培ったパルマフィオキーナクロスカウンターが炸裂し、最後は紙一重の差でマークデスティニーが力尽きる終幕となった。
試合の後には「良いバトルだった」とがっちり固い握手を交わす二人の姿はまさしく中高生大会における見本となるべき爽やかな光景であり、観戦していたメイジン・カワグチもまた席を立って「見事であった!」と二人の健闘を拍手で賞賛していたものである。
――そして第四試合、キジマ・ウィルフリッド対ミナキ・ソウシ。
キジマの機体は選手権での敗北以来、改良を重ねに重ねた新型のガンプラ――ジーベックガンダム。
ソウシの機体はその豪快さとテクニカルさで、あらゆる敵を無に帰す英雄の一角――キュベレイMark-
片やガンプラ学園最強のファイターと、片やそんな彼をチーム戦で撃破した戦術指揮官。
一対一の方式であるこの戦いでは技量の差によりキジマが優位か……というのが主な前評判であったが、実際の試合内容は完全に互角と言っても良いものだった。
単純な正面からの戦いでは、確かにキジマのジーベックガンダムに軍配が上がる。
しかしソウシのマークニヒトは、このジャブロー地下というフィールドの特徴を生かした地の利を得ていたのだ。と言うのも、基地施設の内部であるこのフィールドでは同化ケーブルによって周辺に配置されている機銃を強化利用したり、密閉空間を生かした「地盤を巻き込んだ同化攻撃」をしたりと、ソウシの得意とする戦術がフィールドの恩恵を受けていた為かまさにやりたい放題だったのだ。
そんな知略と精神を張り巡らせたギリギリの戦いの中ではキジマとて苦戦を強いられたが、彼は狼狽えるどころか嬉々として彼の戦術に立ち向かい、その全てを自らの手で粉砕しては大喝采を上げていた。
「流石だと言いたいが、甘いぞソウシ!」
「なに!?」
「対ザルヴァートルプラモデルに特化した、このジーベックガンダムを見くびるな!」
今のキジマにとって、ミナキ・ソウシこそが今まで戦ってきた誰よりも手強いと感じるファイターであった。
彼はキュベレイMark-
故に、キジマもまた彼の対策は事前から考えていた。
彼から「蒼穹のファフナー」のBDをレンタルしたのもまた、彼を倒す為に講じた対策の一つだったのだ。
「楽しいなソウシ! これぞ私の求めていたガンプラバトルだ! 私は私に敗北を与えたお前を……私のメイジンロードを閉ざしたお前を許しはしないッ!
……そうとも、私にとってお前は唯一無二の
自分こそが四代目のメイジン・カワグチへ至るのだという悲願。そこに求められるのは、何者をも粉砕する勝利への執念だ。
対するミナキ・ソウシの戦いは、メイジンの在り方とは似て非なる「負けない戦い」である。
自分自身のガンプラさえも盤上の駒のように操り、こちらに気持ちの良いガンプラバトルをさせない。テクニカルな戦法でこちらの力を削ぎ、どんな条件からも対等な勝負に、最悪でも相打ちへと持っていく。
選手権で自分が負けたのは、慢心だけが原因ではない。キジマはたとえ万全の状態で挑んだとしても、あの時の自分がソウシに勝ち切れたとは思わなかった。
「勝利だけが、メイジンの道か!」
「私の戦いのロードに、敗北は要らん!」
「敗北の痛みが怖いかキジマ? それが僕の与えた祝福だ!」
「ソウシッ!」
「キジマァァァッッ!!」
最高に高めたプラフスキー粒子の光で最強の力を手に入れたと自負するキジマは、その実力を極限を越えて引き出した。
そうして混沌を極め続ける二人の戦いはジャブロー一帯を結晶体に変えるまで続き、キュベレイMark-
――勝者はキジマ・ウィルフリッド。
彼は遂に、選手権での雪辱を晴らしたのだ。
――そして、後日。
事実上の決勝戦と言える、空前絶後のガンプラバトルが幕を開けようとしていた。
「カミキ・セカイ、TRYバーニングガンダム――いくぜ!」
KTBKガンプラバトルアイランド杯、第二回戦。
カタパルトから射出される赤と白の機体は、カミキ・セカイが仲間と共に完成させた新たなガンプラ「TRYバーニングガンダム」である。その誕生経緯はサバイバルレースで大破したカミキバーニングガンダムをホシノ・フミナのスターウイニングとキジマ・シアのポータントのパーツを使って修理、改良を行った、まさに彼らの絆を組み合わせたガンプラと言っても良いだろう。
異なるガンプラを強引に組み合わせた為か造形はややアンバランスだが、機体性能に不備は無い。それどころか彼ら三人のガンプラはまさに奇跡とも言えるバランスで絶妙に嚙み合っており、原型となったカミキバーニングをも上回る性能を発揮していた。
その絆の力により死闘の末、優勝候補の一角であるコウサカ・ユウマのスーパーエステバリスを下したのが先日のセカイの一回戦のことである。
TRYバーニングガンダムの持つ武装はカミキバーニング同様、リアスカートにマウントされている一本の太刀のみ。後はセカイの本領たる次元覇王流拳法が、近接戦闘に特化したこのガンプラの長所を最大限に生かしていた。
セカイはそんなTRYバーニングの、カミキバーニングの時よりもスムーズになった機動でジャブローの鍾乳洞を飛行しながら、自身が待ち望んでいた試合がようやく始まったことへの高揚に浸る。
「やっと、借りを返す時が来たな」
トーナメントの第二回戦を迎えたこの日――対戦相手の名前はアワクネ・ユリ。
ビルダートJ――イノセ・ジュンヤとの激闘を制し、この試合に駒を進めた世界最強の小学生ファイターであった。
そんな彼女の操るガンプラの名は、ベルティゴ
ベルティゴと言えば「機動新世紀ガンダムX」に登場するMSであり、作中では「フラッシュシステム」を用いた十二基の「ビット」によるオールレンジで主人公のガロード・ランを苦しめてきた機体であり、後に彼らと共に戦うことになる名機だ。
外見は長い鶏冠と槍のような両腕が特徴であり、腕はキュベレイのように変形させて肩と一体化させることが出来る。ビット使用時にはこの形態に変形して射出するのだが――アワクネ・ユリのベルティゴ思兼神はまだ、その姿を見せたことがなかった。
……と言うのも、彼女はここまでこの大会で一度も「ビット」を使っていないのだ。
彼女がこれまでに扱ってきた武装は手首後ろから射出されるオーソドックスなビームサーベルが一本だけであり、他の武装はビットは愚か、射撃武器すらも使っていなかった。
それは彼女があえて射撃武器をオミットしたからなのか、使う必要が無かっただけなのかは定かではない。しかし少なくとも、彼女が「ビームサーベル一本だけで」この大会を勝ち抜いてきたことだけは確かだった。
《まっていましたよ》
その彼女――アワクネ・ユリのベルティゴ思兼は器用に鍾乳洞内をホバーリングしながら、セカイの到着を待ち構えていた。
純白の色彩は原作のベルティゴと同様。しかし格闘戦を重視している為か、全体的に原作のベルティゴよりもシャープな外見をしており、小回りの効きやすい細身な造形をしていた。
彼女のガンプラを改めて間近で見て、セカイは自身の闘気が心の底から沸き上がってきていることを自覚する。
彼女との最初の戦い――最初の敗北から数か月を経て、遂にリベンジの機会が訪れたのだ。
「ああ、俺も待っていた。俺はずっと……君と戦う日を楽しみにしていた!」
セカイの脳裏に蘇るのは、彼女と初めて出会った夏休みの合宿の日のことだ。
その時の屈辱と衝撃と、喜びは今も忘れてはいない。
屈辱はたった七歳の女の子に為すすべも無く敗れたことへの感情であり、衝撃は自分の次元覇王流が手も足も出なかったことへの感情であり……そして喜びは、自分の知らない世界にはとんでもない強者が居るのだという、武道家特有の闘争心である。
そんな思い出を振り返り、セカイは目の前の少女に訊ねる。
「なあ、俺ってあの時より強くなったか?」
《まだ戦っていないのに、そんなことわかりません。自信があるってことはそうなんじゃないですか?》
「それもそうだな……じゃあ、今見せてやるよ!」
鍾乳洞内でホバーリングしつつ、静かに向かい合う二人のガンプラ。
既に試合開始のゴングは鳴り響いている。もはや思い出話に浸る語らいは、不要だった。
「これが、俺達のガンプラだ!」
セカイが吠えると、TRYバーニングのクリアパーツが輝き、激しい炎が噴出する。
TRYバーニングガンダムの特殊機能、「アシムバーストシステム」の発動だった。
「いきなりバーストだと!?」と、観戦席から聴こえるのは、このシステムのことを熟知しているコウサカ・ユウマが驚く声だ。
アシムバーストシステム――かつて封印されたアシムレイトの原理をガンプラのシステムとして取り込み、パワーアップ効果のみを再現した機体の強化能力である。
ファイターの精神の高ぶりによって機体の性能を最大三倍まで上昇させることが出来るこのシステムはトランザムシステム以上の持続時間を持っているが、当然ながら永続的に続くものではなく、その限界時間を過ぎれば粒子の消耗によりパワーダウンもしてしまうハイリスクハイリターンのものだ。言わばこれは、セカイにとって切り札のシステムだった。
「いっくぞおおおっ!!」
彼がそんな諸刃の剣とも言えるシステムを開幕早々に発動したのは、この試合を短期決戦で決めるという覚悟の表れ――もあるが、単にそこまでしなければアワクネ・ユリを倒すことが出来ないということを理解した上での思い切った作戦だった。
アシムバーストシステムにより、雄々しい炎に包まれたTRYバーニングが弾丸のような速さで接近し、リアスカートから太刀を抜刀する。
修行の成果を遺憾なく発揮する、彼の目にも留まらぬ一閃は――彼の接近と同時に引き抜かれたベルティゴ思兼神のビームサーベルによって交錯し受け止められた。
《いいふみこみです》
「……ふっ」
挨拶代わりの一太刀を涼しい顔で受け止めながら、アワクネ・ユリが僅かに微笑む。セカイが闘気の笑みを浮かべるのは、同時だった。
《あたらしいガンプラはどうですか?》
「ああ、最高だ!」
通信回線から聴こえてくるアワクネ・ユリの問いに、セカイは迷いなくそう答える。
TRYバーニングガンダムの性能はカミキバーニングのそれを上回り、昨夜の修繕ではミキシングに定評のあるコウサカ・ユウマの監修も受けた為にさらなる進化を見せていた。
その性能は、まさに底が無しである。このTRYバーニングならば、どんな相手にも勝てるという確信がセカイにはあった。
「今だって、びっくりしてるぜ! ガンプラは、こんなに強くなるんだって!」
ベルティゴ思兼神との鍔迫り合いから一旦距離を取ったTRYバーニングが、さらなる加速を掛けて旋回し、再び切り込んでいく。
燃え盛る炎と共に派手な動きで迫る彼のガンプラに、ベルティゴ思兼神は必要最小限の動きで応じ、再び太刀とビームサーベルをぶつけ合った。
「このTRYバーニングは、本当に最高の機体だ……でも俺は、まだなっちゃいねぇっ!」
火の粉と火花が飛び散るつばぜり合いの中で、TRYバーニングがアシムバーストで大幅に向上した腕力で太刀を押し込み、セカイが叫ぶ。
しかしその言葉はどこか彼らしくなく、自身に対して嘲けるような響きが込められていた。
《どうしてですか? わたしと、こんなに戦えるじゃないですか?》
「違うんだよ……!」
《?》
「シアと修行したりして、一人でガンプラを作れるようになったと思っていた……だけど実際、まだ俺には、みんなの助けが必要だったんだっ!」
両手持ちで振り抜いたTRYバーニングの太刀は、単純なパワーではベルティゴ思兼神のそれを上回っていた。
しかし、どちらが押しているかと言われれば、大半の者がベルティゴ思兼神と言うだろう。
アワクネ・ユリは一瞬だけビームサーベルの刃を切ると、行き場の無くなった彼の太刀を空振りに終わらせ、返す刀が襲い掛かるよりも早くベルティゴ思兼神の右足でTRYバーニングを蹴り飛ばしたのである。
彼女はそんな、まるでかつてのリカルド・フェリーニが披露していたような格闘技術を見せた後、しかし追撃には向かわずTRYバーニングの挙動を窺った。
そんな彼女に、即座に体勢を立て直しカウンターの構えに入っていたTRYバーニングのセカイが語る。
「シアが、先輩が、ユウマが……みんなの手で完成させたのが俺のTRYバーニングだ!」
《ふむふむ》
「俺一人で作り上げたガンプラじゃ、まだまともに戦えそうにねぇ……すげぇよ、ユリちゃんは。そんなに強い奴と戦えて、俺は嬉しい!」
《うれしいんですか?》
アシムバーストを発動したことで爆発的に性能が上がっている筈のTRYバーニングを相手にしながらも、彼女はまだ涼しい顔をしている。
モニター越しに映る可愛くも憎たらしい表情を見て、セカイは彼女がまだほんのウォーミングアップの段階に過ぎないことを察する。そんな彼の頬には、ほのかに笑みが漏れていた。
一方でアワクネ・ユリが、そんな彼の態度に首を傾げる。
《自分よりも、強い人がいるのがうれしいんですか? 変わってますね》
「へへ、俺は次元覇王流の武道家だからな。相手が強ければ、強いほど燃えるんだ!」
何事も、セカイが勝負に望んでいるのは勝利の一点ではない。
それはひたすらに勝利に拘り、メイジンを目指しているキジマ・ウィルフリッドとは似て非なる在り方であろう。
彼にとっては戦いの中で、自分の極限を極め続けること――純粋に戦いを望むことこそが、セカイの本質だったのだ。
だからこそ、彼は敗北を長く引き摺らない。
確かに以前ユリに完膚なきまでに叩きのめされた時はショックが大きかったが、その翌日にも彼は立ち直り、負けた原因を冷静に分析するぐらいには切り替えることが出来ていたのだ。
その切り替えは、正しく彼をガンプラビルダーとして成長させていた。一度の大敗が、彼を強くしたのだ。
相手が強く自分が追い込まれるほど、カミキ・セカイは今までにない高みへと昇ることが出来る男だった。
《そういうことですか。あのびるだーとJさんがどうして楽しそうに戦っていたのか、やっとわかりました》
セカイの言葉に、納得したように相槌を打つユリ。
ビルダートJ――彼女と一回戦で戦った男もまた、今のセカイと同じ顔をしていたものである。
仮面を外し、一人のファイターとして純粋に死力を尽くした彼はまさに武人だったと言えよう。機体の持てる全ての力を用いてユリに挑み、最後の一撃として放った彼の「ジュンク・フェニックス」にはあのメイジン・カワグチさえも唸ったほどだ。
それでも結果的にはユリのガンプラに傷一つ付けることが出来なかった彼だが、その顔は憑き物が落ちたように晴れやかなものだった。
気持ちの良い敗北と言うのは、きっとああいうものを言うのだろう。
「ジュン兄は、俺よりもずっと立派な武道家だった。だから、ジュン兄も君と戦えて嬉しかったんだよ。……いや、武道家とか、そういうのはもう関係ないか。ユウマや先輩だって、俺達と同じ筈さ」
《なかまのこと、よく知ってるんですね》
「ああ! みんなすげぇファイターなんだぜ? ユウマは最初ちょっと変な奴だなって思ったりしたけど、今は二人とも尊敬してるんだ」
《コウサカさんなんかは自分でやっつけてしまったのに、いまさらそんけいなんてできるんですか?》
「そりゃそうさ! 今回は俺が勝ったけど、俺達に力の差はないし。師匠も言っていたけど、ライバルっていうのはお互いに尊敬しあうもんだろ?」
《そういうもんですか》
二人のガンプラは、お互いのファイターが対話中でもその動きを緩めることはない。この会話の最中でさえ異次元的な機動で一進一退の鍔迫り合いを繰り広げる二機の激闘は、一見互角に見えるものだった。
しかし操縦する二人の表情を見れば明らかにアワクネ・ユリの方が余裕そうであり、セカイの方には僅かながら息切れが見え始めている。
《わたしにはそういうの、傷の舐め合いみたいで嫌ですね》
「……うん?」
剣をぶつけ合い、密着した状態から、ユリのベルティゴ思兼神が胴部に蹴りを入れてTRYバーニングを突き飛ばす。
セカイが慌てて体勢を立て直した頃には既に、彼女の機体は彼の背後へと回り込んでいた。
《たたえあったって、あっさり負けてしまったら意味ないじゃないですか。強い相手と戦えれば、負けても満足なんですか?》
問いながら、彼女は何の容赦もなくビームサーベルを振り下ろしてくる。
背後からTRYバーニングの機体を縦一文字に切り裂こうとするベルティゴ思兼神のスピードは、セカイがこれまでに戦ってきた誰よりも速く鋭い。
しかし、セカイもまだ負けていない。まるでガンプラの機体越しに彼女の呼吸を感じ取ったかのように、彼はこれまでの反応速度を超えた動きで、身を翻してその斬撃をかわしたのである。
その一瞬だけ、アワクネ・ユリが少しだけ驚きの表情を浮かべた。
《やりますね》
「……勝負だもんな。そりゃ、やっぱり勝ちたいさ! だから、負けたらまた強くなって戦うんだよ! 何度でも……何度でも繰り返してな!」
《……作り上げてもこわして、またこわしてってかんじですか。それはそれでたのしいのかもしれないですけど、たんたんと迎えうっているほうはあんまりたのしくないですね》
TRYバーニングが返す反撃の太刀を蝶のように舞う動きでひらりとかわした後、ベルティゴ思兼神が地底湖の上に足のつま先をちょこんと当てて待機する。
それは一見無防備で、戦闘中に晒すには隙だらけの格好に見えるが……セカイは直感的に、今の彼女に迂闊に飛び掛かればあえなく返り討ちに遭うと確信していた。
アワクネ・ユリが得意とする戦法は、剛よりも柔。格闘技で言えば、主に敵の力を利用したカウンターである。スーパーロボットが大技を放った直後に見せる一瞬の隙などを完璧に突き、相手に何が起きたかも悟らせぬままその機体をバラバラにしてくる。これまでの分析でわかったことだが、アワクネ・ユリは現代のガンプラバトルに蔓延る大火力軍団にとって、まさに天敵とも言えるスーパーロボットキラーなのである。あのビルダートJもまた、そんな彼女のカウンターによって散っていったものだ。
そんな天才少女が目を瞑りながら、これまでの戦いを振り返るように言い放った。
《ぶっちゃけると私、ガンプラバトルで満足したことなんてほとんどないです》
「え……?」
それは残念そうに、という顔でもない。ただそれが当然のことのように、彼女は全くの無表情である。
彼女はガンプラバトル選手権の小学生チャンピオンだ。そしてこの大会でも、これまでの激戦を無傷で勝ち抜いてきた正真正銘の実力者である。
僅か七歳の身でそれほどの強さを持ち、誰の目に見ても順風満帆なガンプラ人生だと思えよう。しかし、当の本人は何の喜びも感じていない様子だった。
《もちろん、この大会でも満足していませんよ? ぶっちゃけ不満です。不満足じょうたいです》
「なんでさ?」
一方セカイは、この大会を最も楽しんでいるファイターの一人と言っても良いだろう。多くの強者達と渡り合い、新たなガンプラも得て……らしくなくほんのりと「恋心」も抱いたりして、彼はこの大会で多くのものを勝ち取っていたのだ。
そんな彼だからこそ、彼女の発言が解せなかった。
ガンプラバトルを心から楽しんでいるカミキ・セカイには、アワクネ・ユリのそれが悲しい言葉に聴こえたのだ。
《いちども本気を出さないまま勝てるたたかいなんて、面白くないじゃないですか》
彼女はまだ、全く本気を出していなかったのだ。
戦闘時の息遣いから、感づいてはいたことだ。彼女がこの大会でビームサーベル一本しか使っていないのもやはり、搭載されている武器がそれしかないのではなく、彼女が意図して手加減していたからなのだろう。
……まったくもってしょうもない、誰がこうも育ててくれたのか知らないが酷い幼女である。
「じゃあ、今はどのぐらい本気なんだ?」
《ちょい本気くらいです。ハンバーガーふたつぶんくらい》
「ええ? まっじかぁー……」
手加減の程度をよくわからない例え方で表現するユリの言葉に、セカイが悔しげに唇を歪める。
セカイは以前よりも、大きく腕を上げてこの試合に臨んだつもりだ。それでもまだ、彼女との力の差は大きいのだろう。
ここまでとてつもない天才を見ていると、いっそ笑うしかないだろう。中高生と小学生という大きなハンディがありながら、逆に小学生が本気を出さずして中高生を圧倒するなど普通はあってはならない。プライドの高いガンプラ学園の面々が聞いたら怒り狂いそうな発言だなぁと、セカイは他人事のようにそう思った。
だがそのセカイとて、一ファイターとして今のユリの言葉に感じるものがない筈が無い。
「でも、俺だって力を出し尽くしちゃいないぜ!」
機体から噴き出す炎の量がさらに溢れ、両手に炎の太刀を携えたTRYバーニングがセカイの咆哮と共に飛び出していく。
セカイの心には今、怒りとは言わないまでも激しい感情があった。
彼女の心に何の悪意もないのはわかっている。
ここまでコケにされて、悔しいと思う感情ももちろんある。
しかし何よりもセカイの中で大きかったのは、彼女がガンプラバトルを楽しんでいないことに対する悲しみだった。
「ライバルが居ないんだな! 君には!」
《いませんね。これでもあなたには期待していたんですけど、こんなもんでしょうか?」
これほどの強さを持ちながら……いや、これほどまでに強いからこそ、彼女は心の底からガンプラバトルを楽しむことが出来ないのだろう。
中高生にすら手に余る実力者なのだ。彼女と同じ小学生の中に彼女とまともに戦えるファイターは居ないことは、容易に想像出来る。
競技というものは、一人では成り立たない。共に高め合うライバルが居るからこそ楽しめるものであり――それが居ないことをさも当然のように言ってのける彼女のことが、セカイには寂しかった。
だからこそ。
ならばこそ――セカイの思いは一つだった。
「生意気言うなって。師匠が言っていた……そうやって慢心していると、足元をすくわれるって!」
《おやや?》
ベルティゴ思兼神のビームサーベルと打ち合うTRYバーニングの斬撃が、これまでよりも一層激しくなる。
セカイの気迫を込めた攻撃に、少しだけ彼女が表情の色を変えた。
「俺が本気にさせてやるさ!」
乱暴に太刀を振り回し、一度打ち合えば即座に後退し、鍾乳洞の壁を蹴って再び斬りかかる。ひたすらにヒットアンドウェイを繰り返すTRYバーニングの動きは一見が出鱈目に見えるが、その攻撃はこれまでとは違い、アワクネ・ユリのベルティゴ思兼神に防戦を強いていた。
《この動きは……》
彼のそれは本当に出鱈目に機体を動かしているのではなく、機体性能を型に嵌まらない動作で引き出しているに過ぎない。その戦法は、他でもないユリにとって見覚えのある――かつての彼女の父、アワクネ・オチカの戦いに似た動きだった。
しかし、セカイのそれは決して猿真似などではない。彼はただ無意識のうちに、彼女の動きに全力で着いていこうとしているうちに、自然とこの戦法を編み出していたのだ。
TRYバーニングの炎が、三倍に膨れ上がる。
「俺のガンプラも……TRYバーニングも言ってる気がするんだ! 俺達の戦いに、限界はないって!!」
――そして五十回目のつばぜり合いの瞬間、TRYバーニングが繰り出した膝蹴りが、初めて彼女のガンプラに届いた。
「いいぞ、いけるぞセカイ!」
「そこだセカイ! フックだ! アッパーだっ!」
蹴り飛ばされたベルティゴ思兼神が鍾乳洞の壁に叩き付けられ、ギャラリー達が沸き立つ。その中でも目立ったのは、一回戦でセカイが下したコウサカ・ユウマとユリが下したビルダートJ、もといイノセ・ジュンヤの声であろう。
この戦いを見ているのは彼らだけではない。会場に詰め掛けた大会出場者達全員――多くのガンプラ馬鹿達が彼らの戦いに熱中し、奮い立っていた。
そんな熱狂の中で、セカイが叫ぶ。今この時だけは拳法もチームも関係なく、彼もまた一人のガンプラ馬鹿だった。
「俺は君の高みに行く! 俺が君の……ライバルになってやる!!」
《…………》
次元覇王流聖槍蹴り――ノータイムで放った拳法の一撃を、セカイはこの試合で初めて隙を見せたベルティゴ思兼神へと放つ。
素の状態でも大型MAの装甲を真正面から蹴破る程の威力を誇る一撃はこの時、アシムバーストによって底上げされた機体性能によりさらなる力を発揮していた。
その蹴りが叩き込まれた壁が鍾乳洞の地盤諸共崩壊し、基地内全体が大地震のような揺れに襲われるほどである。直撃を喰らえば、彼女のガンプラとてひとたまりもないだろう。まさに一撃必殺と言える一撃は、通信回線越しに見えるアワクネ・ユリの表情を変えた。
聖槍蹴りを紙一重でかわしたベルティゴ思兼神が、地盤の崩壊により落下してくる天井を避けながら、赤いモノアイを光らせる。
その瞬間、セカイは彼女のガンプラから強烈なプレッシャーを感じた気がした。
《……ビット》
呟くように放たれたユリの声と同時に、ベルティゴ思兼神が優雅に回転しながらその肩部から複数の小型銃器を射出する。
ビット――ガンダムX作中ではフラッシュシステムを介すことで脳波コントロールされ、重力下でも使用することが出来る小型無人ビーム砲端末である。作中設定のベルティゴが内部に搭載しているビットは計十二基であったが、この時彼女のベルティゴ思兼神が繰り出したのはざっと見てもその二倍は多かった。
「ファンネルか!」
《ファンネルではありません、ビットです》
縦横無尽に鍾乳洞内を駆け巡る大量のビットが急速に迫り、休む間もなく四方からビームの雨が降り注いでくる。
彼女がこれまでビームサーベルしか使っていなかったのは、やはり意図して手加減していたからだったのだ。
その事実に怒りを覚える一方で、セカイは彼女がようやく手の内を見せてくれたことに喜びを抱く。
しかし、それはそれとしても彼女のビット兵器の扱いはまさにガンダム作品の劇中に登場するニュータイプそのものであり、銃器一つ一つが生き物のように動いてくるオールレンジ攻撃の前にセカイのTRYバーニングは近づくことも困難であった。
「くっ……! そんなのありかよ!?」
全く容赦の無い彼女の本気のオールレンジ攻撃はTRYバーニングの機体だけではなく、周囲の壁や天井にも降り注がれていく。そして幾度となくビームが当たった箇所を軸に壁や天井に亀裂が走り、先ほどセカイ自身が繰り出した聖槍蹴りと同じように、この鍾乳洞基地の地盤を諸共崩していった。
《ガンプラバトルは、格闘技じゃないんですよ》
「冷めたこと言ってるんじゃないぜっ!!」
このまま避け続けていれば、崩壊していく鍾乳洞の生き埋めになる。ガンプラバトルは地形を生かすのがセオリーでもあるが、彼女のそれはあまりにも豪快過ぎた。
さらに不幸なことに、この時セカイは気付かなかったがTRYバーニングの機体から炎の噴射が止まった。
アシムバーストシステムが、とうとう限界時間を経過してしまったのだ。
それによって強度の低下したTRYバーニングの太刀がビットのビームに貫かれて砕け散り、セカイのガンプラの手から瞬く間に武器が無くなっていった。
「セカイ!」
「セカイ君!」
パーツと言うの名の力を貸してくれた少女達が、悲鳴の混じった声を上げる。
ビット兵器を解禁したアワクネ・ユリの前に、セカイは確実に追い込まれていた。
――しかし、セカイの心は穏やかだった。
圧倒的なユリの力を前に、なすすべもないというこの状況で彼がその心に抱いたのは、焦りでも苛立ちでもない。
ビームや瓦礫の雨が今まさに自分の機体を押し潰そうとしている今も、セカイの心は激情の中でもどこか穏やかだった。
――その精神状態が、彼に新たな境地を拓かせる。
「次元覇王流うううっっ!!」
《!》
TRYバーニングの機体が、
それは機体に意図して予め搭載していた機能でも、狙って起こしたわけではない。
どういう原理なのかもわからない。しかし彼の金色に染まった瞬間、彼のガンプラを貫こうとしたビームは遮断され、瓦礫の雨は焼き払われた。それは確固たる事実だった。
「あれは……アシムバーストじゃない!」
「明鏡止水……いや、ハイパーモードだ!」
試合を見ていた誰かが、TRYバーニングの姿を指して言い放った直後である。
彼の突きだした両手の拳から「火の鳥」が羽ばたき、鍾乳洞諸共ベルティゴ思兼神のビットを消滅させていった。
――セカイの放った神樹ガンプラ流奥義により、ジャブローの地下基地は跡形も無く消滅したのである。
しかしそれでも、セカイのガンプラもユリのガンプラも健在だった。
セカイは自分の居る場所には影響しないよう器用に計算して技を放ち、ユリは発射の瞬間、神がかり的な直感とも言うべきか咄嗟にベルティゴ思兼神が隠し持っていたもう一つの機能、「ボソンジャンプ」を使って事前に外部へと脱出していたのだ。
そうして鍾乳洞基地の消滅から逃れた二人のガンプラは、お互いの戦場をジャブローのジャングル、空へと移していった。
「はあああああっっ!!」
太刀が折られてしまった今、TRYバーニングが今扱える武器はかつてそうだったように自分の手足だけだ。徒手空拳でベルティゴ思兼神とぶつかり合い、ベルティゴ思兼神もまたビットを思わぬ方法で失った今、ビームサーベルによる接近戦を余儀なくされていた。
一進一退の攻防を繰り広げる、両者のスピードは全く同じだ。
全く同じスピードで二つのガンプラが動き、そこから瞬間移動するように最大推力を持ってTRYバーニングはベルティゴ思兼神に、ベルティゴ思兼神はTRYバーニングに向かって一直線に突進していく。
舞台が広い空中に移ったことで、もはや互いの機体を縛るものは何も無い。
金色の尾を引く流星と白亜の尾を引く流星とが正面からぶつかり合うように、互いにぶつかり合ったガンプラは一度離れ合ったものの再び衝突し、旋回し、雲を突き破りながら螺旋を描くように上昇していく。
高度をさらに引き上げた二人のガンプラはやがて成層圏へと突入し、青い水平線を目下に魂を燃やすような死闘を繰り広げた。
「俺のこの手が、真っ赤に燃える!」
白熱する攻防の中で、機体性能の限界を超えたTRYバーニングの両手が赤く燃え上がる。
その瞬間、再びTRYバーニングの機体から炎が噴出し、日輪の光が彼を取り囲んだ。
《勝利をつかめととどろきさけぶ……!》
少女が合いの手を入れながらも攻撃の手を一切緩めず、擦れ違いざまにTRYバーニングの胴部を蹴ってこの成層圏から叩き落そうとする。
だがその瞬間、TRYバーニングの機体が
《まさか……っ》
プラフスキー粒子を応用した、ゴッドシャドーのような炎の分身術である。
TRYバーニングと同じ炎を宿した分身達は超高速で旋回し、ベルティゴ思兼神を攪乱していく。
驚きながらも即座に鋭角的な軌道を描き、五秒の間で全ての分身を斬り伏せてみせたユリであったが、その頃にはTRYバーニングの真っ赤に燃える両手が、必殺の一撃を放とうとしていた。
「くらえええええっっ!!」
――石破鳳凰天驚拳。
両手のゴッドフィンガーと、神樹ガンプラ流の奥義を組み合わせた渾身の一撃。
TRYバーニングの両手の平から火の鳥として放たれた炎を一撃は、プラフスキー粒子で作られた地球の空を赤く染めた。
ユウマ君も、キジマ君も、良かれと思って個性を濃くしようとしました。
良かれと思ってハイパーモードの扱いを伝説の戦士っぽくしておきました。
良かれと思ってロリを鬼畜にしてしまいました。
今回で終わらせるつもりが、戦闘が随分と長くなってしまったので最終回は次回に持ち越しになります。