ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男   作:GT(EW版)

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優勝候補と最強とアクシズ落とし

 

 

 

 俺の名前はアワクネ・オチカ。家族を愛するガンプラビルダーだ。

 

 

 一日目のプログラムが終わり、俺達の仕事もやれやれと言った具合だ。尤も俺の場合は戦った相手が一人しか居なかったし、そう疲れたわけじゃない。と言うか、ぶっちゃけ暇だった。まあ、おかげで嫁と色々と喋くったり出来たんだけどNE。

 しかしまあ、ナガレ会長も容赦無い奴だ。今回のサバイバルレースの難易度と言ったら、正直プロでもクリア出来るかわからんぐらいだった。

 島全体を使ったこのバトルフィールドには、ナガレが最初に言っていたようにKTBK社に雇われた腕利きのファイター達がボスイベントの如く各地に配置されている。俺やルルヤマ君にショクツさんにルワ……じゃなかった、クロキシさんと四天王もまた、全員がそんな感じに散らばって待機している状態だ。

 そして雇われのファイターは俺達KTBK所属の人だけじゃなく、ガンプラバトル選手権世界大会の常連も紛れているのだ。具体的には、ラルさんやリカルド、チョマーにマオ君にニルス君、レディー・カワグチさんやカイザーさんと言ったそうそうたる顔ぶれである。そして今のところみんなには内緒だが、あのメイジン・カワグチも当然待機していた。メイジンに関しては明日大々的に何かやらかすそうなので、子供達も大いに楽しんでくれるだろう。

 

 さて、一先ず今日の仕事はこれでお開きということで、俺は嫁のラズリちゃんと一緒に控え室の大広間へと戻ることにした。するとそこには既に先客が居たようで、こちらの姿に最初に気づいた伊達男が手を振って挨拶をしてきた。

 

「よう、アワクネ夫妻も来たか。お疲れ」

「リカルドさんも、お疲れ様です」

「どうもラズリさん。まあ、俺はまだ一人としか戦っていないし、そんなに疲れていないけどな」

「……そっちもか」

 

 彼の名前はリカルド・フェリーニ。イタリア最強ガンプラファイターの座を十年以上もキープしている、言わずと知れた実力者だ。そんな彼とは何度も世界大会で会っている縁か、歳が近いこともあって色々と良くしてもらっている。

 まあ、現役のコミュ障な俺にとっては貴重な友人という奴だ。実際、彼とはガンプラに対する考え方とか色々共感出来るところがあったり、中々話が合ったりする。「女の趣味(ロリコン)はちょっと理解できねーわ」とは前に彼に言われたが、俺は全く挫けない。だって俺はロリコンだけど、愛妻家だもの。

 

「しっかし凄いな、この島は。そこら中がバトルシステムになっているし、島のどこに居てもガンプラバトルが出来るんじゃないか?」

「実際、出来るように作られている。会長の最終目標はこの島に首都並の都市を作り、ガンプラが住民票代わりになるガンプラバトルシティを作り上げることなんだそうだ」

「ガンプラバトルが挨拶になりそうだな。凄い時代になったもんだ」

「しかもそこで行う新たなバトルスタイルとして、特殊なバイクに乗りながらガンプラバトルをするライディングガンプラバトルというのが考案中だ。……大真面目に」

「マジかよ!? 流石、金持ちはやることがでかいな。導入する時は言ってくれよ、テスターになってやるから」

「そう言えばバイク好きだったね、リカルドさん」

「まあな」

 

 俺よりもガンプラバトルの経験が豊富なリカルドから見ても、やっぱりこの島は異常に見えるようで安心した。……いやね、しばらくここで仕事してると感覚が麻痺してくるのよ。その内普通の町の方が異常に感じちゃうんじゃないかとおじさんは自分の将来が不安だ。その分娘と嫁には癒されていますがね。

 まあ、驚きはあれどリカルドも他のファイター達も、とりあえずはこの島のことを気に入ってくれているようで何よりだ。まだまだ島の半分ぐらいは試験段階で完全とは言えないが……将来的には、ここがガンプラ特区ニッポンとなる日も近いだろうとミスター・ゼロことルルヤマさんも言っていた。なんか盛大に失敗しそうなネーミングなのはご愛敬である。

 

 ――と、そんな感じに俺達三人が駄弁っていると、これまた見知った顔の男が二人もやってきた。

 

「お揃いですね、皆さん」

「フェリーニさんとは去年ぶりですか」

「おう、久しぶりだな。ヤジマ・ニルスに、独身(・・)のヤサカ・マオくん」

「大学出てから! 大学出てからが勝負ですから! まだ縁は続いています!」

 

 二十代前半の若い二人はヤジマ・ニルス君とヤサカ・マオ君。そう言えばこのメンバーではマオ君だけが独身になのか。まあ彼はまだ大学生だし、そういうのはもうしばらく後でも全然問題ないだろうが……なんというかリカルドの奴もからかい上手である。

 しかしあれだな、これだけのメンバーが一度に揃うのも中々珍しい。みんな世界大会の常連だから一年に一回は会っているが、世界大会以外の場でこうして会うのは初めてなんじゃないかと思う。

 

「しかしこれだけ揃っていて、イオリのセイはんが来ていないのは勿体ないですねぇ」

「そうだな。レイジとあの嬢ちゃんのことは仕方ないが、セイの奴には来てほしかったな」

「ジュリアンもな」

 

 あー何人かは来ていないが、そう言えばここに居る面々は、みんな第七回ガンプラバトル選手権に出場した強豪達でもあるのか。フッ、何を隠そうこの俺も嫁さえ居ればそんな彼らにもひけをとらんのだよ。嫁さえ居ればな!

 

「皆さん、こうしてせっかく集まったのですから、少しお話しませんか?」

「ん、何を?」

「この大会で、皆さんが注目している選手のこととか」

 

 そんなハイテンションなことを考えながら悦に浸っていると、ヤジマ・ニルス君が興味深い話題を提供してくれた。

 ……確かに、これだけの豊作年だと、当然目につく有望な学生ファイターの数は多い。今日の俺が唯一戦った選手であるカリマ・ケイ君も、中々の使い手だったし。

 

「いいですね、それ」

「なら俺から話そうか。今日俺が戦ったのは一人だけだったが、そいつが中々面白いガンプラを使う奴でな。ウイングガンダムゼロ炎って機体なんだが……」

 

 皆さんも割と乗り気でニルス君の提案に乗り、リカルドから順に自分の目に留まったファイター達を紹介していった。

 やれ誰が強そうだとか、誰が優勝しそうだとか。自分達がこの大会において脇役だからこそ好き勝手に語り合える、和気あいあいとした自由な議論タイムだった。

 

 見ての通りこの大会には俺達KTBKの社員が選んだ選りすぐりの変態、もとい実力者達が参加しており、十代の若い発想から生まれた機体はどれもバリエーション豊かなガンプラ達だった。

 

 俺がその中でもぶっ飛んでいると思ったのは、木星でマオ君達が戦ったと言う最強スーパーロボット軍団(仮)の存在だった。

 

「まさか、サテライトキャノンと真っ向から撃ち合おうとする子があんなに居るとは思いませんでしたよ。なんですジュンク・フォースって……あんなん絶対おかしいですわ」

 

 ――とは、実際に彼らと対決してみたマオ君の言葉だ。今の環境は火力が凄まじいからなぁ。サテライトキャノンに匹敵する武装とかも、今となってはそう珍しいものではなくなってしまったし――何と言うか今の時代は、続編ものの対戦ゲームにありがちなインフレ現象の真っただ中という印象だ。まあ、それでもマオ君にはサテライトキャノンの大火力をただ撃つだけじゃなくて器用に応用する特殊技能があるから、インフレに遅れを取るようなことはないだろうけどね。

 実際、マオ君は復刻版のガンダムX魔王を使って大多数のスーパーロボット軍団を相手に案外余裕で翻弄していたらしい。彼らにはガンプラのパワーがどれほど強くても、そのパワーに頼りすぎていてはいけないのだと良い教訓になっただろう。そうやって学生達を育てることも、この大会の目的の一つだったりする。

 しかしあのメイジンにも言えることだけど、マオ君や彼みたいな天才に年単位の経験を積ませると、やっぱりとんでもなく化けるもんよね。彼らにはいよいよ、嫁が居ないと勝てる気がしないや。

 

「うちはミナト君の実力は元からよく知っていましたが、一番驚いたのはビルダートJでしょうか……あれは近い将来、うちらのライバルになるかもしれませんねぇ」

「なんだその空が好きそうな名前……」

 

 色物強者勢揃い。このガンプラバトルアイランドの最初の招待客としては、彼らはこれ以上ない上客だろう。

 そして優勝候補を語る上で忘れてはいけないのは直近の選手権大会の優勝チーム、トライファイターズや竜宮城のメンバーだ。聞くにトライファイターズのエースのカミキ君はあのラルさんと交戦しておきながら、無事に生還を果たしたのだそうだ。そしてコウサカ・ユウマ君は竜宮城リーダーのミナキ君やガンプラ学園のキジマ君と組んでPGエヴァ初号機を破ったとか何とか……本当に、彼らは遠くない内にここの人達のライバルになるかもしれないね。俺もこの大会で、彼らと戦うことが出来たら嬉しいなって思ってたり。

 

「オチカさんとラズリさんは誰に注目していますか?」

 

 そんなことを考えていると、ニルス君が俺の方にも話を振ってきた。

 ククク……俺とラズリちゃんが誰に注目しているかだと? 愚問だな。そんなものは決まっているじゃないか。

 

「ユリちゃん」

「ユリちゃん」

 

 俺とラズリちゃんは口を揃えて即答する。うむ、流石だな俺ら。夫妻ながら素晴らしい相性だ。

 そう答えるとニルス君は心なしか引きつったような表情を浮かべ、リカルドは呆れ顔で頭を抱えていた。失敬な。

 

「俺の娘だからな。あの子が中高生を相手にどこまで戦えるか、気になるに決まっている」

「オチカと同じ。私もユリのガンプラを見てあげたり色々してたから、やっぱり気になる」

「そ、そうですか……」

「……まあ、この親ばか共ならそう答えるに決まってるな」

 

 ぶっちゃけ今もこの部屋を飛び出してさっさとユリちゃんのところへ行きたい。だけどがっつり大会の運営に関わっている俺が出場者のユリちゃんのところへ行くのは、公平性を欠くということで規則として認められていないのだ。そんな規則知ったことかと突っ込んでしまいたい気持ちは強いが、俺は嫁や娘の前では出来る男で居たいのだよ。ラズリちゃんだって我慢してるんだからね。

 

「俺も、あの子には注目していますよ」

「ルルヤマか……」

 

 と、そんなことを考えているとまた一人俺達の話にイケメンが参入してきた。

 細身な身体にモデルのような長い脚。端正整った中性的なご尊顔を持つ青年の名前はルルヤマ・ラン。ファイターとしての技量はもちろん、広報にテレビ出演にとありとあらゆる分野で活躍しているKTBK社随一の万能社員だ。だけどリアルの体力は無い。びっくりするほどのもやしっ子である。

 

「あんたは……ミスター・ゼロだっけ?」

「はは……みんなからは、そう呼ばれています」

 

 今はオフの状態の為その顔にはいつも被っている仮面は無く、しかし一度見たら忘れない特徴的なコスチュームはそのままであることからリカルドが正体を言い当て、ルルヤマ君が肯定する。

 自分が身に着けているゼロコスチュームにいかにも周りからこんなコスプレをさせられて困っていますみたいな表情をしているルルヤマ君だが、君が誰よりも仮装にノリノリなことを俺は知っている。だって楽屋裏とかでキレッキレのポージング練習とかしてるんだものこの子。

 そんなコスプレイケメンが、ユリちゃんのことについて熱く語り出した。

 

「実は俺の待機していたエリアに、あの子のガンプラが現れたんです。俺は小手調べに騎士団をけしかけてみたのですが、結果は全滅でした。間違いなく、昨年より遥かに強くなっていましたよ、アワクネ・ユリちゃんは」

「えっ」

「えっ」

 

 なにそれこわい。

 

 ……マジ?

 俺とラズリちゃんは口を揃えて思わず聞き返してしまったが、ルルヤマ君の話によるとユリちゃんの実力は俺が思っていたよりも数段上を行っていたらしい。

 去年は忙しくて、俺がユリちゃんのガンプラバトルを見たのは小学生の部の決勝戦だけだったからなぁ……他の試合も録画してもらったビデオから見ようと思ったんだけど、そうしようとするといつもユリちゃんが「つまらないから見ないで」って頑なに嫌がるもんだから中々見ることが出来ないのよ。

 それでも決勝戦だけは直に内緒で生で見てきたけど……それでもユリちゃんが黒の偽騎士団を倒したっていうのには驚きだった。

 

「……本当か? あいつらだって世界大会に行ける実力はあっただろう」

「ええ、本当です。彼女の成長スピードは、俺の予想以上でしたよ」

 

 黒の偽騎士団とはルルヤマ君の扮するミスター・ゼロのカリスマオーラに当てられて集まってきたへんた……もとい実力者達のことで、「撃墜王」タマキやら「扇動隊長」オーギやら「唯一聖剣」ウラベやら、全員が中々に濃い称号を持つ腕利きのファイター達である。

 元ネタで言うところの強キャラ担当の人が居ないのが唯一にして最大の難点である。

 

「俺の中では既に、この大会の覇者は決まっています。もちろん、どんでん返しも期待していますがね」

 

 そんなルルヤマ君は今日、間近でユリちゃんのバトルを見たことで何か確信めいたものを抱いたように言い切った。

 なんか、うちの娘が偉いべた褒めである。いやあ、我が娘ながら鼻が高い。そうか、これだけのファイター達が居る中で、ルルヤマ君はぶっちぎりの最年少選手であるユリちゃんを優勝候補筆頭に挙げるのか。ルルヤマ君も中々、人を見る目があるようで……

 

 ……あれ? ひょっとしてユリちゃん、もう俺より強くなってたりしないよね?

 

 

 

 しないよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ○月×日 逆襲のメイジン

 

 

 僕の名前はユウマ。地球は狙われている。

 

 ……はい、大会二日目の日記です。いやあ、エヴァ初号機は強敵でしたねぇ……。

 初日分の試合が終わった後は、選手達全員に自由時間が与えられた。とは言ってもこの大会ではダメージレベル設定が付けられていない為、大多数の人はガンプラの修理に勤しんでいた感じだが。

 僕のライトニングZもそれなりに傷を負ったが……スペアパーツもあったしそう酷い状態でもなかったので修復はすぐに出来た。一方でダメージの大きかったソウシのキュベレイは少々時間が掛かりそうだったので、僕は一人でブラブラとこの島の探索を行うことにした。

 まあ、一人でと言っても程なくすれば同じく好奇心に釣られて探索に出ていたセカイ&キジマ妹のご両人やフミちゃんと合流したりと、気が付けばトライファイターズプラスαのメンバーで探索を行っていた。

 ついでに、セカイ達とはチームメイトのよしみでお互いに情報交換を行っておいた。話によるとセカイとキジマ妹は地球の新宿エリアからのスタートだったらしく、二人は共同戦線を組んで手掛かりの捜索に当たっていたらしい。そうしていたら僕達で言うところのエヴァ的なポジションとしてラルさんのドムR35が登場し、二人のガンプラに襲い掛かってきたのだそうだ。

 ラルさんとガチ勝負が出来るとは、なんとも羨ましい奴である。しかしセカイも負けはしなかったがキジマ妹との二人掛かりでもラルさんを倒すことは出来なかったと聞いて、僕は青い巨星の恐ろしさを改めて再認識した。いつか僕も、あの人の高みに行きたいものだ。

 フミちゃんの方にはレディーカワグチが参戦してきたらしい。あれ? なんで皆さん普通にガンプラバトルしてるの? という疑問を抱く僕に、フミちゃんが無言のチョップを喰らわせてきた。解せぬ。

 僕達のところにガンダムどころか人造人間が出てきたのは、KTBK主催と言えど案外レアなケースだったのかもしれない。

 

 そんな風に駄弁りながら行った島の探索は、思っていたよりもかなり楽しめた。

 まだ試験段階だとはパンフレットに書いてあったけど、探索可能なエリアにもガンプラショップやナデプラショップに事欠かすことがなく、今日は見ていくだけにする予定がついつい色々買ってしまった。四月発売予定のMGダイテツジンをこんなにも早くフラゲ出来たのは収穫だったな、うん。

 

 

 ――さて、初日のことはこの辺りにして、そろそろ今日の大会のことを書くことにしよう。

 

 ナデシコ級4番艦「シャクヤク」に乗って月を旅立ったところから再開した僕達は、そのままD.O.M.Eの導きにより地球へと進路を進めた。道中ではNPCのハイモック達や、僕達と同様にサラミス級やナスカ級と言った戦艦を手に入れたファイター達と出くわして艦隊戦を行ったりもしたが、どれも割とすんなり退けることが出来た。

 いやね、シャクヤクまじっパネェ。グラビティブラストの一撃によって目標纏めて全部撃ち落としていく光景には、美しさのあまり目まいすら覚えた。回線越しに聴こえてくるキジマの高笑いがすんごいうるさかった。お前そんなキャラじゃなかっただろどうしちまったんだ。

 それはそれとして、流石ナデシコ級の性能はチート染みていた。これに相転移砲を付けなかったのは、運営側の良心だったのかなと思う。これはヌルゲーすぎて申し訳ありませんわと雑魚を寄せ付けない強さには僕も左うちわだった。

 

 ……まあ、そんなに甘くはなかったんですけどね。

 

 主にシャクヤクとキジマ機の無双によって、僕達は思いのほか簡単に地球圏へと到達した。プラフスキー粒子が再現した青の星の美しさはこれまたリアルな造形で、壮大なフィールドと相まって本物の宇宙空間を流離っている気分だった。

 そんな感じでシャクヤクのカメラから覗く地球の姿に見惚れていると、事件(イベント)は起こった。

 

【警告 地球に向けて、アクシズの接近を確認! 至急調査せよ!】

 

 僕達の操作すりウインドウ上に、甲高い警報音と共にその一文が表示された。

 レーダーを確認してみると、まだ遠くの方ではあったが「NEXT」というエヴァの時と同じ表示が動きながら(・・・・・)点滅を繰り返していた。

 

《ソウシ! 行くしかあるまい!》

 

 と、真っ先に声を上げたのはシャクヤクに同乗するキジマ・ウィルフリッド氏。選手権で直にやられたせいか、この人ソウシに対して偉い執心している様子だった。その姿には、なんか古き良き少年漫画のライバルキャラみたいな風格が漂い始めている気がすると僕はしょうもない感想を抱いた。

 

《アクシズの接近……そういうことか》

「そういうことでしょうね」

 

 この警告は、ガンダムファンなら一目で詳細に悟ることが出来るだろう。

 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア。アムロ・レイとシャア・アズナブルの決着の話であり、初代ガンダムシリーズの結末の物語。地球に巨大隕石を落とし、主人公が阻止するという話は、他作品でも度々オマージュされていることでも有名だ。

 おそらく今回のこれは、そういうことなのだろう。これはもう、キジマの言う通り行くしかなかった。

 地球ではなく、宇宙からスタートした僕達の特権である。こんな愉快なイベントに参加しない理由は無い。

 

 万場一致で可決し、地球へ降下する予定だったシャクヤクは進路を変更。衝突を阻止すべくアクシズに向かって全速前進した。

 

 ――そして、僕達はその光景と対面する。

 

 

 えっ、アクシズってこんなにでかいの? アムロさんやべぇ……

 

 

 最初にその姿を見た時、僕はあまりの目標の大きさに言葉を失った。

 今までも何度かガンプラバトルの舞台としてアクシズの姿を見たことはあるが、今回のそれは今までの比ではなかった。

 なんかもう、本来の設定サイズよりも何倍も大きいように見える。地球さん休ませるどころか無事死亡だよこんなの。

 その時の僕達は、この島ならではのスケール感に圧倒されていた。

 

 そんな、忌まわしい記憶を乗せて点火した状態になっているアクシズへとシャクヤクで近づきながら、僕とキジマが格納庫から発進の準備を行う。シャクヤクのモニターを拡大してみると、既にアクシズの周辺は大規模な戦闘区域になっている様子であり、戦艦やMSの爆発の光が各所に広がっていた。

 

《グラビティブラスト、発射!》

 

 シャクヤクを操縦するソウシが初撃として密集しているハイモックの群れに艦主砲を発射した後、同時に僕のライトニングZとキジマのジーベックガンダムが発進する。

 混沌とした戦場の中で、ソウシはとりあえず状況を見て艦を先行させながら、アクシズの破砕や軌道変更の手を講じてみると言っていた。僕達の割り当てられた役目は、専らその時間稼ぎと言ったところか。

 今更ながら、チームの頭の役目を後ろに任せておけるのはいいもんだと思った。トライファイターズでは割と個人技が多かったからそこまで神経を張り巡らせていたわけではなかったが、こうして目の前の戦いだけに集中出来るのはかなり助かる。

 

《なんだあの戦艦は……!》

《あっ、相転移砲だけ持っていかれた奴だ》

《そんなことより見ろよキジマの機体! 素通りしただけでモックをバラバラにしてるぜ!》

 

 先にアクシズの周辺宙域にたどり着いていたファイター達も、僕達の存在に気が付いて多種多様な反応を見せる。

 彼らは皆協力してハイモックと交戦していた様子で、こちらに対しても戦闘の意志は無いらしく、寧ろ通信回線から共闘を要請してくるぐらいだった。

 それもその筈。このアクシズのでかさである。そしてそのアクシズを守るNPC機の膨大な機体数である。シャクヤクを守りながら彼らの中に参入した僕が目にした圧倒的な物量は、かつてテレビ中継で見たアリスタの暴走事故現場の光景を彷彿させた。

 

《その機体……ガンダムだけどユウ君?》

 

 そんな軍勢と相対するファイター達の中には、フミちゃんのスターウイニングの姿もあった。

 そしてその後ろには、フミちゃんと背中合わせで戦っているサザキ・カオルコ――通称ギャン子の新機体、ギャンスロット・アルビオンの姿もあった。

 

 ……ごめん、フミちゃん。ここは君との合流を喜ぶ場面なのに、ギャン子の機体に全部持ってかれたよ。ゼロさん、あんたの宿敵兼懐刀ここに居ました。

 

 

 ここまで来ると圧倒的な物量差なのに負ける気がしないというか、何というか。そんなことを僕は思った。

 キジマも居るしナデシコ級も居るしフミちゃんも他の優秀なファイター達も居る。問題は予想外なアクシズの大きさだけど、これだけの役者が揃っているなら何とかなるのではないかと――ハイモックを爽快に撃墜しながら、僕の心にそんな安心感が芽生え始めた。

 

 しかしそんなことを言ってられるのも、光を放ちながら「紅の彗星」が突っ込んでくるまでのことだった。

 

 

《地球に住むガンプラファイター達は、ガンプラバトルをスーパーロボット大戦としか考えていない! だから抹殺すると私は宣言したぁっ!!》

 

 

 紅の彗星、アメイジングレッドウォーリアより開かれた通信回線から突き刺さってきたのは、ぐうの音も出ない正論を叫ぶ絶賛ロールプレイ中のメイジン・カワグチの声だった。

 

 

 さっき僕は負ける気がしないと言っていたが、そんなことはなかったぜ。

 

 

 

 

 






 初代メイジンが遺した三体の「神のガンプラ」を巡るガンプラバトルシティ編は開幕しません。
 セイ君達がカードゲームをやっても、王様達がガンプラバトルをしてもなんか違和感が無い気がする今日この頃。

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