ブラックサレナを使って、合法ロリと結婚する為にガンプラバトルをする男 作:GT(EW版)
○月×日 私はUMA……かつてガンプラビルダーと呼ばれた者
KTBKガンプラバトルアイランド杯開催。
この日をどれだけ待ち望んでいたことか。セカイの奴もこの日の為にガンプラの修行に銀髪美少女と一緒に励んでいたようで、その気合いも十分と言ったところか。
フミちゃんの方は選手権の時とは違い、この大会をアトラクションとして楽しむことを意識しているようだった。シアちゃんには敵意むき出しだったが。
しかしセカイの奴も、随分と立派なガンプラを作れるようになったもんだ。ガンプラビルダーとしては以前よりも何ランクも上がったように見えたが、元々の武闘家気質な性格は変わっていなかった。島でアワクネ・ユリちゃんと再会した時もすかさず宣戦布告を叩きつけていたところも、前と変わっていなくて少し安心した。
さて、「島がリングだ!」のキャッチコピー通り、島その物が巨大なバトルフィールドでは、これまでにない大規模なサバイバルレースが繰り広げられた。
それもゴールの場所は自分で探し出せ、という難題だ。そんな手探り感MAXな競技では初っ端からエステを使うわけにもいかず、僕はこの日の為に製作してきたもう一つの機体、ライトニングZガンダムで戦いに臨んだ。
スタートして早々にミナキ・ソウシと合流し、共同戦線を張ることが出来たのは嬉しい誤算だった。彼が使っている機体が虚無の申し子じゃなかったのはもっと誤算だったけど、機体を替えても彼の能力は健在だった。
正直、彼の指揮の恩恵を日頃から受けている本枚高校の面々には嫉妬を感じた。それぐらい、後ろに彼がいる戦闘は戦いやすかったのだ。
そんなこんなで彼とのツインドックで無双していると、僕達は月のD.O.M.Eへとたどり着いた。
そして遭遇した。EVA初号機、それもパーフェクトグレードモデルの奴と。
この競技において、ガンダム作品以外の機体が出てくるのは最初から予想していた。だってKTBKだし……それはいいんだ。重要なことじゃない。
ただ本当に……コイツの相手は骨が折れた。
でかい図体をしているくせに動きが偉い俊敏だし、NPC操作のくせに動きが獣みたいに規則性が無い。スケール差もあってか乱射してくるバレットライフルは一発一発が戦略兵器みたいな威力だったし、何より厄介だったのは全方位へのバリア――「ATフィールド」の存在だった。
ATフィールドと言えば、アニメ新世紀エヴァンゲリオンを語る上では外せない能力だろう。発動する際には正八角形の波紋っぽいものが発生するのが特徴だ。
このバリアは正面からはもちろん、上や後ろからの攻撃に対しても発動され、アニメの作中では戦略核さえも威力を大幅に軽減していたほどだ。このガンプラバトルでも、そのチートっぷりは健在だったよ。畜生。
しかし、あれと戦っている時のソウシは珍しくテンションが高かったものだ。
やっぱりあれかな、自分の好きなアニメの元ネタ作品みたいなもんが相手だったから、いつもより張り切っていたのだろう。しかし戦いが終わった後で彼が言っていた「近年のロボットアニメは何かにつけてエヴァっぽい、エヴァのパクリと言われる……理不尽だとは思わないか?」という言葉にはちょっと同意したものだ。うん、僕もエヴァは好きだけど、一部のエヴァファンが行うしつこいぐらいの起源主張には少しイラっとするよな。
……まあ、そんなこんなでソウシは張り切った。僕も張り切った。ただ――あの初号機、アホみたいに強かった。
サイズは反則級のPG。火力は圧倒的。防御も圧倒的。動きも俊敏……どうやって倒すんだよこの化け物。少なくとも、一対一で勝てる相手じゃなかったのは間違いないだろう。
案の定、僕のライトニングZガンダムとソウシのマークキュベレイも破損は免れなかった。僕のライトニングZはまだマシな方だったが、ソウシのキュベレイはあれの攻撃で右半身全部を失い、機能停止する寸前まで追いつめられたほどだ。あの時は、僕も流石にヤバいと思った。
そして月面に墜落していったキュベレイに向かって、エヴァが例の如くルパンダイブ。良い子のみんなのトラウマシーンの再現とばかりに、口を開けてキュベレイをムシャムシャしようとしていた。
――と、その時である。
「立ち上がれ! ソウシ!」
通信回線から突如割り込んできた男の声。瞬間、エヴァとキュベレイの間にルガーランスっぽい何かが突き刺さり、エヴァの両足をくるぶしのところまで一瞬だけ結晶化させた。……自分で書いておいてなんだけど、意味わかんないなあの攻撃。
そしてその声と同時に、センサーが新たな熱源を感知。僕達がメインカメラをそっちに向けると、月面の崖の上――そこに、ヒーロー然とした白いガンプラが立っていたのだ。
「お前はこんなところで朽ち果てるファイターではない!」
「キジマ・ウィルフリッド……!?」
――そう、みんな大好きキジマ・ウィルフリッドである。
ガンプラ学園首席。選手権ではチームを六連覇に導き、貪欲に強さを追い求める姿はまさに武人。まあ勝ちすぎて慢心したのか、今年の大会では妹に単独出撃をさせる痛恨のミスでソウシ達に敗れることになったわけだが……それでも彼の強さは疑いようもない。純粋なガンプラバトルの腕は、今でも中高生ナンバーワンだと僕は思っている。
そんなキジマが、新しいガンプラを駆って僕達の前に現れた。それも前大会で敗れたソウシに加勢する為にだ。まるで少年漫画みたいな展開に、不覚にもときめいてしまった。
「お前にも見えるだろう。見果てぬ先まで続く、我々の戦いのロードが!」
……と、なんかどこかで聞いたことのあるカッコいい台詞を吐きながらソウシを激励し、キジマのガンプラはエヴァ初号機に戦いを挑んだ。
彼の機体は相変わらず白いカラーリングだったが、前大会まで使っていたトランジェントガンダムアルストロメリアとは細部が異なっていた。
スマートでスタイリッシュで、動力源にGNドライヴを使っているところは変わらない。両手に収納式のクローを装備しており、ボソンジャンプによる瞬間移動能力を有しているのも変わらない。
以前と比べて大きく変わっていたのは、ソウシのマークキュベレイのように、胸や肩と言った部位のところどころに結晶体のようなクリアパーツが着いていたところだ。
それと武器。これがトランジェントの大剣から、ルガーランスっぽい何かに変わっていた。
その姿は何と言うか――トランジェントガンダムとアルストロメリアとエインヘリヤルファフナーを組み合わせた、三作品のロボット要素が集まったような機体だった。
僕がエアマスターとライトニングとスーパーエステバリスを組み合わせたのと同じように、彼もまた三作品によるクロスオーバー機を実現させたのである。
それでいて無理なキメラによる外観のゴテゴテ感は無く、全体像をスマートに纏めているのが彼の製作技術の高さを表している。正直言って、くっそカッコ良いガンダムだった。
敵ながら憎たらしいほどに惚れ惚れするその機体の名前は――
「エヴァよ、このジーベックガンダムが相手になろう!」
ジーベックガンダム――ナデシコ要素と蒼穹要素を混ぜ合わせた機体としては、何とも的確かつシンプルなネーミングである。
そして彼が戦いに加勢してから、戦いの形勢は変わった。
……とは言っても、やっぱりエヴァPGは強い。
三対一に立ってこちらの手数は増えたのだが、それでもあのATフィールドを完全に打ち破ることは最後まで出来なかった。
僕のライトニングZガンダムの切り札である火の鳥アタックもあんまり効果なかったし、ジーベックガンダムの同化アタックもすぐに解除されてしまう。ATフィールドは心の壁だから同化を拒んでいるんだとソウシは言っていた。……というかサラッとガンダムに同化能力を着けていたキジマに僕はびっくり。驚くのはまだ早いとルガーランスっぽい何かからグラビティブラストを発射していたのはもはやドン引きである。流石にガンプラ学園の首席は格が違った。
ファイターの技量は、悔しいがキジマが三人の中で抜きん出ていた。最後までエヴァ相手に一度も被弾をしなかったし、決め手になったのも彼だった。
彼は言った。
ATフィールドにより実弾、ビーム問わず一切のダメージを受け付けない人造人間エヴァンゲリオン。
しかしそれにも限界はある。いかに固い防壁を張ろうとも、防壁に使われるエネルギーは無限ではないのだと――そう言い放ったキジマの言葉に、ソウシと僕はようやく敵の弱点へと思い至ったものだ。
PGエヴァンゲリオン初号機――HG基準の僕達の機体とは根本から性能が違うが、ガンプラバトルにおける動力は同じプラフスキー粒子だ。
圧倒的な戦闘力とスケールに目が曇っていたが、どんな化け物であろうとも稼働時間には限界があるのだと。
プラフスキー粒子の残量切れ――多くのスーパーロボットビルダー達が現在進行形で苦しめられているそれが、僕達を勝利に導いた。
僕達はエヴァのATフィールドその物を攻略するのではなく、逆にATフィールドを使わせることによって粒子を消費させ、徹底的に粒子切れを狙う作戦へと切り替えたのだ。
だからこそ僕は火の鳥アタックを連射し、ソウシはファンネルを一斉発射、キジマはトランザム同化グラビティブラストを撃ちまくり――約一名はおかしな火力で普通にATフィールドを突破していたような気がするが――そんなスパロボのボス戦みたいな荒々しい戦法は、本来燃費が良い筈の僕達の粒子残量までも限界寸前に追い込むほどだった。
――そして粒子残量ギリギリまで打ち尽くした結果、僅かな差でエヴァの粒子残量が底をついた。
紫色の巨人はナイフを振り上げた態勢で沈黙し、ピタリと動かなくなったのだ。
しかし相手はあのエヴァンゲリオン。動かなくなったと思ったらさらに凶暴になって暴れ出しかねないと判断した僕達は万場一致でとどめを刺すことに決め、最後は比較的粒子残量に余裕のあったキジマの手で撃ち抜かれることになった。
さらばエヴァ。あれが爆散する姿にはちょっと胸が痛んだが、これはあくまでガンプラバトルだ。思い入れのある機体が砕け散る光景なんかは、今までだって飽きるほど見慣れたものだった。
そうして、僕達は一つ目の関門を乗り越えた。キジマは新機体の力を存分に発揮出来てご満悦。ソウシはポエムを喋り。僕はなんか早くもやりきった感を出してしまった。それほどまでに、エヴァとの激闘は消耗が激しかったのだ。
エヴァを倒した後、再びレーダーに矢印の反応が点滅した。それはD.O.M.Eの内部を示したものであり、モニターから確認出来る位置ではドームの方が僕達を招き入れようとしているように、月面の地下へと続くシャッターが開いていた。
しかしこちらの粒子残量は既に危険域。これ以上敵は出ませんようにと祈りながら、僕達はD.O.M.Eの内部へと入った。
そしたら何と言うことでしょう。
『私はD.O.M.E……かつて、ニュータイプと呼ばれた者』
はい、居ました。
D.O.M.Eの内部に進入すると、丁寧にも武装を解除したビットMSの群れがわらわらと僕達を奥まで案内してくれて、その先に到着すると突然プラフスキー粒子の光がブワーっと広がり、どこからかとてもいい声が聴こえてきた。
なんというか、感激した。
超感激した。
一番好きなガンダムは? と聞かれたら、僕は「エアマスター」と即答するだろう。そして僕は、ガンダム作品の中でガンダムXが一番好きだ。打ち切りだったけど大好きだ。ナデシコで登場したXバリスもガンダムXの打ち切りを皮肉った機体らしいが、それでも好きなものは好きなのである。
だからD.O.M.Eの声の人まで参戦してくれたのは……何と言うかファンとして涙が出た。まるでその時、ガンダムXのクライマックスシーンに自分が参加しているような気分になったからね。
――そして、D.O.M.Eは僕達に話した。
いわく、エヴァの魂を鎮めてくれてありがとう。これで彼女も安らかに眠れるだろう――と。
え? あそこに居たPGエヴァって実は本物ではなく、中の人の思念が生み出した魔物だったの? という今明かされる衝撃のオカルト設定に驚きながら、僕達はD.O.M.Eの話を聞いた。
彼はそんなエヴァを倒してくれたお礼にと、僕達のガンプラにビットMS達のエネルギーを分け与えることによってプラフスキー粒子を補給してくれた。機体の損傷部までは直せなかったが、それだけでも大分助かったと言えよう。
そして、D.O.M.Eは僕達にゴールの場所の手掛かりを教えてくれた。「ここを出発し、地球へ向かうといいだろう」的な言葉で。なんともアバウトな情報だったが、とりあえずゴールの場所は月には無く、地球にあることがわかったのはかなり大きな収穫だった。
しかし、MSでここから地球へ向かうには時間もエネルギーの消耗も激しい。何より道中では先ほどのエヴァのような敵との交戦も想定される為、今しがた補給を受けたとは言え粒子残量の問題は深刻なものになるだろう。キジマのボソンジャンプを使うという手もあるにはあるが、あれはジャンプ先のイメージが必須な為、まだこの巨大フィールドの全体像が見えていない以上、使用するのは危険だという結論が出ていた。中々、ままならないものである。
そんな感じで僕達が今後の動向に悩んでいると、こんなこともあろうかとD.O.M.Eさんは僕達に餞別を送ってくれた。
僕達のガンプラを乗せる宇宙戦艦――ナデシコ級4番艦「シャクヤク」を。
夢にまで見たナデシコ級への搭乗に、僕とキジマは歓喜した。
正直、そっちかよという思いはあったけどNE。
ビットMSに連行されて着いたのは地下のドックに収められている白い戦艦。うん、やっぱりナデシコ級は美しい。
しかしこの艦を操縦するには、誰か一人が今のガンプラからこの艦にコントロールを移す必要があるとD.O.M.Eは言っていた。
ナデシコファンとして僕が動かしたいところだったけど、艦の操作は戦術指揮能力の高さとキュベレイの損傷の激しさからソウシが行うことになり、僕のライトニングZとキジマのジーベックガンダムはシャクヤク内の格納庫へと乗り込むことになった。
そして「全速前進DA!」と興奮したキジマの指示を受けたソウシの操作によって、遂にシャクヤクは出港したのである。
あのシャクヤクが。
ナデシコ本編では竣工前に破壊され、日の目を見ることのなかったシャクヤクが。
残念ながらYユニットはオミットされているようだったが、シャクヤクは僕達の手によって念願の出港を果たしたのである。それはなんとも感慨深い光景だった。
しかしあれだな、キジマ・ウィルフリッドもいけ好かない男だと思っていたが、話してみれば中々愉快な人である。今度は戦場以外で語り合いたいものだ。
そうして成り行きで共闘することになった僕達三人のガンプラを乗せたシャクヤクがD.O.M.Eから飛び立ち、月を後にする。
向かう先は地球。遠くに光る青の星を目指して、僕達は旅立った。
――それからほどなくして場内にアナウンスが響き渡り、一日目の競技は終了した。
~三人がエヴァと戦っている時の皆さん~
セカイ 地球エリア「新宿」にてシアと合流し、共にラルさんのドムR35と交戦。
フミナ ギャン子と合流、「グリプス2」周辺にて共にレディーカワグチと交戦。
シモン 地球エリア「ベルリン」にてアスカと交戦。黒騎士率いるオーラバトラー部隊の乱入により決着つかずも、意気投合して共同戦線を組む。
アドウ 地球エリア「サンクキングダム」にてスガと交戦するも、チョマー軍団の乱入によりうやむやに。
ユリ 火星エリアにてミスター・ゼロ配下の騎士団と交戦、殲滅する。
ミナト 木星エリアにてビルダートJやその他最強スーパーロボ軍団と共に「魔改31ガンプラ」を名乗る謎の変態ビルダーズと交戦。
オチカ コロニー「アマテラス」内部で挑戦者が来るまで待機中。暇なので嫁といちゃいちゃしていたらタイミング悪くカリマ乱入。
次回、カリマ死す! ガンプラバトルスタンバイ☆