一夏、織斑捨てたってよ   作:ダメオ

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皆様お久し振りです。

今回は私の趣味が良い意味でも悪い意味でも
盛大に盛り込まれています。
そして、あらすじで出さないと言った
キャラクター達を解禁しています。

読む際はフィクションだと割り切って
チラ見してやって下さい


娘達、再会するってよ(閲覧注意)

夜、某国にて。二人の少女が六人程の男に囲まれていた。その男達の後ろには、歪んだ笑みを浮かべている女が立っていた。

 

 

「嗚呼……これはきっと、神様から私へのプレゼントに違いない!こんなに愛らしい『千冬様』がいるなんて!」

 

「…………」

 

 

女が叫び、二人の少女の片割れである黒髪の少女が睨む。

 

その黒髪の少女は、およそ十五、六歳程の頃の織斑千冬に酷似していた。

 

 

「隣の銀髪のガキも容姿は悪くないわね……コイツはアンタ達にくれてあげるわ」

 

 

女は男達にそう言い、笑みを浮かべて銀髪の少女を見つめる。

 

流れるような銀髪を持ち、隣の少女よりは歳下に見えるがその美しさはまるで精巧なドールを彷彿とさせる。

 

銀髪の少女は目を閉じたまま一切の反応を見せず、左手に持っていた杖を両手に持つ。黒髪の少女は左手に持っていた黒いスーツケースを下ろし、両手に装着した黒いレザーグローブを整えながら男達を睨む。

 

 

「さぁ、早いとこ連れてくわよ!」

 

「了解!」

 

 

男達が二人の少女に掴みかかる。

 

 

 

 

 

ーーーその瞬間、一人の男が吹き飛び、壁に叩きつけられる。地に転がり、口から血を流しながら事切れている男の鳩尾はぽっかりと凹んでいた。それを見た男達は少女達の方を見つめる。

 

 

「気安く触るな、ゲスめ」

 

 

黒髪の少女は右拳を突き出したままそう吐き捨てた。

 

 

「なんだーーー」

 

 

男達は激昂し、吠えようとした(・・・・・)。しかし、男達は最後まで吠えること叶わず喉から血を噴き出し、倒れた。

 

 

「申し訳ありません。つい、手が出てしまいました」

 

 

銀髪の少女はそう言い、手に持った杖を『納刀』する。銀髪の少女が持つ杖は座頭市宜しく仕込み杖だった。

 

 

「別にいい。コイツの一家は後々消す予定だったし、丁度手間が省けた」

 

 

黒髪の少女は指の骨を鳴らしながら女に歩み寄る。

 

 

「役立たずの男共め!なら、私が直々に捕まえてあげます!!千冬様ァ!!」

 

 

女はISを展開し、黒髪の少女に近接ブレードを振るう。黒髪の少女はそれを避け、間合を離す。

 

 

「大丈夫ですよぉ……手足を切り落とされるのはちょっと痛いですけど、そのあとは私がつきっきりで面倒を見てあげますから!食事だって作ります!お風呂だっていれてあげます!夜のお相手だってしてあげます!切り落とした貴女の手足は私が愛でてあげます、だからァ!!私に切られて下さい!!千冬様ァァァァァッ!!」

 

 

女はそう言いながら満面の笑みで瞬時加速で黒髪の少女に近付き、右肩目掛けて近接ブレードを振り下ろす。

 

 

「気持ち悪いな、お前」

 

 

黒髪の少女はそう言う。右手に近接ブレードの刃を握った状態で。女はそのブレードを再び振るおうとするが一切動かない。それを見た銀髪の少女が仕込み杖に手をかけると、その刹那に近接ブレードは刻まれてしまった。

 

 

「シィッ!」

 

「がはァッ!!」

 

 

そこに黒髪の少女が女の腹部に拳を叩き込む。その動きは迷彩柄のロングコートとスカーフェイスがトレードマークのあの親父(オトコ)を彷彿とさせる。女は腹部を抱えてその場に蹲り、血混じりの反吐を吐く。

 

 

「貴女のような下衆に、姉様に触れて良い権利はありません。姉様に触れて良いのは、『ファミリィ』と友だけです」

 

 

銀髪の少女は眼を見開き、女を睨みながら言う。黒の眼球に金の瞳を持つ少女の睨みは否応無しに威圧を放つ。

 

 

「い、イヤ……千冬様……どうして……千冬様……」

 

「……一つだけ言っておく」

 

 

黒髪の少女が言うと女は顔を上げる。そこには、右足を振り上げている黒髪の少女がいた。

 

 

「私は『織斑千冬』じゃない。私の名前は……『マドカ』だッ!」

 

 

マドカと名乗った少女の足が振り下ろされ、女の頭を踏みつける。

 

迫り来る靴底……それが、この狂信者の最期に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロエ、怪我は?」

 

「大丈夫です。姉様は?」

 

「私も大丈夫。さぁ、急ごう。きっともう待ってるだろうし」

 

「わかりました」

 

 

マドカとクロエと呼ばれた銀髪の少女は歩き出す。その先には二人が会いたい人が既に待っている。それを考えると、自然と足が動く。マドカとクロエは走り、波止場に到着した。そこには一人の男が立っていた。

 

長い黒髪、両目を隠す前髪、スカーフェイス、そして迷彩柄のロングコート。

 

二人は満面の笑みを浮かべて走り出し、男に抱き着いた。

 

 

「お父さぁん!!」

 

「お父様ぁ!!」

 

「おう、久し振りだな。マドカ、クロエ」

 

 

抱き着く二人を受け止め、抱き締めながら駁羅尋稀は言った。

 

黒髪の少女の名は駁羅マドカ。

 

織斑千冬に酷似した容姿の少女でその正体は織斑千冬のクローン。研究所を襲撃に来た尋稀と出会い、駁羅の姓と『マドカ』という名を与えられた。

 

銀髪の少女は駁羅クロエ。

 

ドイツにて作られ、その中で失敗作として破棄された『試験管ベビー』の唯一の生き残り。瀕死の所を尋稀に拾われ、同じく駁羅の姓を与えられた。

 

マドカとクロエは平穏な生活よりも尋稀の役に立ちたいと考え、今まで各国に出張に出ていたのだ。

 

 

「お疲れさん。それ、重かったろ」

 

「ちょっと重かったけど、お父さんの為なら軽く持てたよ!褒めて褒めて!」

 

「よぉしよし。ありがとな、マドカ」

 

「……お父様!私の頭も撫でて下さい!」

 

「悪い悪い」

 

 

二人の頭を撫でながら尋稀が言う。マドカとクロエはふにゃりと顔をほころばせながら尋稀に抱き着いている。

 

 

「さて、そろそろ我が家に行くか」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

マドカとクロエは尋稀と手を繋いで歩き出す。すると、全方位から黒光りの車が数十台走ってきて尋稀達を取り囲むように止まる。そして車から黒いスーツを着た男達が総勢数百人程降りてきて尋稀達を取り囲む。

 

 

「……なんだぁ、お前等」

 

 

尋稀はマドカとクロエから手を離さずに問いかける中、男達はその手に持った得物を構える。ナイフ、警棒、スラッパー、拳銃等々選り取り見取りだ。

 

 

「見つけたわよ、ガキンチョ」

 

 

男達の背後から一人の女が顔を出す。先程マドカが仕留めた女にどことなく似ている。

 

 

「……さっきの女の、姉妹?」

 

「正解。アンタ達が殺したの、私の妹。出かけてから連絡一つよこさないからどうしたかと探したら、死体になってたなんてビックリ」

 

「敵討ちのつもり……?」

 

「いや?正直参ってたのよ。口を開けば千冬様千冬様ってうるさかったし。ただ、ガキンチョ二人は最高の素材よ。高値で売れる。特に織斑千冬に似てる方はこれだけの人数動かしてもお釣りが来るくらいに、ね」

 

「…………」

 

「あぁ、動かない方が良いわよ。アンタ達二人は兎も角、そこのイケメンはズタズタにするから。流石にこの人数相手に彼を守りながら戦うのは、無理あるでしょ?」

 

 

女の言葉を聞いた瞬間、マドカとクロエは女を睨む。理由は一つ。尋稀をズタズタにするなどとほざいたから。たかがそれだけで、されどそれだけで、駁羅ファミリィは他者に対して殺意を抱く。

 

 

「……マドカ、クロエ」

 

 

尋稀は二人の名を呼びながら女を見据え、マドカとクロエから手を離す。その表情は不機嫌一色。それを見たマドカとクロエは血相を変えて狼狽する。

 

 

「(お父さん……怒ってる!?私とクロエのせいだ……、こんな面倒事に巻き込んだから……)」

 

「(お父様が御怒りに……!一体、どうしましょう……!?)」

 

 

二人は冷や汗をかき、慌てふためく。二人の不安は負のスパイラルに陥り、思考がマイナス方向へと進んでいく。

 

 

「(このせいでお父さんに嫌われる……イヤだ!そんなの、絶対にイヤだ!!)」

 

「(嫌です!お父様に嫌われたくない!お父様に、捨てられたくないっ!!)」

 

 

最悪の未来を想像した二人は涙目になる。すると、二人の頭に尋稀の手が乗り、優しく頭を撫でる。マドカとクロエは涙目のまま尋稀を見上げる。

 

 

「アレを試す良い機会を作ってくれてサンキューな。やっぱり、お前等は自慢の娘だ」

 

「……ホント?」

 

「嫌いになったり、しないですか……?」

 

「当たり前だろ。例えお前等に嫌われようと、俺はお前等を、ファミリィを愛している」

 

 

この言葉を聞いてマドカとクロエは笑顔を浮かべる。尋稀は微笑みながら二人の頭を撫で続ける。

 

 

「よし……んじゃ、娘からお父さんに、任務の引き継ぎだ。いいかぁ二人共。上にそれをぶん投げたらちゃっちゃと離れろ」

 

 

二人は頷き、マドカが持っていたケースを上空に投げてから跳び、車の上に着地してから更に跳び、その場から離脱する。周りの男達はその瞬間に尋稀目掛けて襲い掛かる。尋稀は前方に走り出し、男二人を両手で掴み、背後に投げる。宙を舞う二人の男、そしてその腹部に落下するケース。二人の男はケースに腹部を押し潰され、事切れる。それを見た男達は思わずたじろぎ、足を止める。

 

 

「よっと!」

 

 

尋稀はケースの下に走り、その勢いのまま蹴り上げて右手でキャッチする。

 

 

「うん、良い重さだ。さぁて、一丁ぶっ放すとするぜ」

 

 

尋稀がそう言うとケースから回転式多銃身が生える。周りの男達と女はそれを見て逃げようとする。

 

 

「目標『チンケな弱小マフィア』!!任務開始ィ!」

 

 

尋稀の叫びと共に銃身が回転し、火を吹く。この場にいる男達が一斉に撃っても足りない程の銃弾を、その場でターンして全方位に乱射する。銃弾は逃げ惑った男達に浴びせられ、辺りは血の海と化す。

 

 

「いいなぁ!コイツァゴキゲンになっちまういい相棒(ウェポン)だ!」

 

「ーーーどけどけぇ!」

 

 

遠距離から声が響き、生きている男達が左右に逃げる。その奥に三人の男が立っており、その肩には皆大好きロケットランチャーを担いでいた。

 

 

「食らえぇ!!」

 

 

三人の男は吼えながらロケットランチャーを尋稀目掛けて発射する。それを見た尋稀はケースの銃身を収納し、飛来するロケット弾を二発海へと弾き飛ばしてから跳び、更にもう一発のロケット弾を蹴って更に高く跳ぶ。

 

 

「やられたらやり返す。倍返しだ!」

 

 

ケースが180度開き、中から八発のロケット弾が地上へと放たれる。最早戦場だろうと言いたくなるような多くの爆発が波止場に襲いかかる。車、男達、死体、一切合切が狼の吐息で吹き飛ぶ藁の家の如く飛び散る。尋稀は地獄絵図と化した波止場に着地し、ケースを閉じる。

 

 

「ふぅ……スッキリしたぜ」

 

 

硝煙が立ち込めてタンパク質の塊と鉄塊が散らばる中、尋稀は笑みを浮かべて言いながら右手のケースを目の前に突き出す。それと同時に煙を切り裂きIS用のブレードが振り下ろされ、ケースにぶつかる。

 

 

「クソッ……!」

 

「逃げたと思ってたが……なかなか度胸あるじゃねぇか」

 

 

尋稀はISを纏った女に問いかける。女は尋稀を睨みながらも力をいれるが、尋稀は全く動かない。

 

 

「さぁ、そろそろ仕留めるか」

 

 

不敵な笑みを浮かべながら尋稀は言い、ケースを振るって女を吹き飛ばしてからケースを前に構える。

 

 

「コイツを見て、チビっちまうんじゃねぇぞ!」

 

 

ケースの三方から丸鋸刃が生え、最後に尋稀の身の丈を越える大剣のような鎖鋸刃が生える。ケースはあっという間に巨大なチェーンソーに取ってつけたような丸鋸刃を搭載した最高に『悪趣味(イカス)系』武器と化した。

 

 

「往くぜッ!!」

 

 

ケースからけたたましいエンジン音が波止場に響き渡り、鎖鋸刃のカッティングアタッチメントと丸鋸刃が高速で回転を開始。それから尋稀は駆け出す。

 

 

「蜂の巣になれぇッ!!」

 

 

女は必死な形相でアサルトライフルを展開し、尋稀目掛けて放つ。尋稀は笑みを浮かべたまま弾丸をその身に受けながら直進する。

 

想像してほしい。弾丸を受けても傷一つ負わない男が巨大なチェーンソーを持って迫り来るのを。並の人間は勿論だが、歴戦の戦士だって大なり小なり狼狽えるだろう。女はアサルトライフルを投げ捨ててからブレードを展開し、目の前で尋稀が横に振るうチェーンソーを受け止めて火花を散らす。

 

 

「残念。受け太刀じゃ終わりだ」

 

 

女の耳に尋稀の声が聴こえたと同時に視界が捉えた。

 

斬られたIS用ブレードと迫り来るチェーンソーを。

 

 

「(大丈夫……ISには絶対防御がある!)」

 

 

女はそう思考する。だが、この女は知らなかった。目の前にいる駁羅尋稀は、生身で絶対防御を貫通出来る力を持っていることを。彼の扱う武器を造ったのが、篠ノ之束に並ぶ天才メカニック碧埜禎影だと言うことを。

 

女の首の左側に激痛が走り、視界が赤いペンキをぶちまけたように赤にまみれた。女の脳がその痛みを感知している間に鎖鋸刃は左側から右側に通り抜ける。

 

 

「(あ……もう痛くない……。でも……身体が、動かない)」

 

 

思考していると、女の視界が傾く。それから、回りながら落下していく。やがて地面に落ちるが痛みは無く、地面から横目で見上げるようにあるモノが見えた。

 

 

「(……あれ?なんで……私が立ってるの?……あ)」

 

 

 

 

 

ーーー私の首、無い。

 

 

 

 

 

首の無い自身の身体。これがこの女が最期に見た光景であり、それに対する違和感が最後の認識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー地獄って、きっとこういうことを言うんだと思う」

 

「私もそう思います」

 

 

マドカとクロエが波止場へと戻り、辺りの惨状を見て口を開く。その惨状の中、平然としてケースに腰を下ろしている尋稀の下に二人は駆け寄る。

 

 

「よっ、お前等」

 

 

尋稀はマドカとクロエの頭を撫でる。二人は尋稀の膝に座り、笑顔で頭を撫でられる。二人が尋稀に寄りかかった状態で尋稀は携帯を取り出し、後処理担当キモヲタメカニックの禎影へと電話をかける。

 

 

「…………もしもし、ヨシえもん?」

 

『やぁ、ひろ太くん。武器(ヒミツドウグ)はどうだった?』

 

「いやもう最高だったわ。ガトリングにロケラン、チェーンソー。言うこと無し」

 

『他にも色々積んだから自分で見つけてみろ』

 

「へぇ〜、分かった。後々試してみるわ」

 

『で、他に話は?』

 

「後処理頼む」

 

『了解。現場は片付けておくから忘れ物無く迅速に失せてくれ。それと、俺からも頼みがある』

 

「なによ?」

 

『俺の助手が良い具合に成長したと思うからマドカと手合わせをさせたい』

 

「ふーん……分かった。頼んどく。じゃあな」

 

 

尋稀は通話を終え、携帯を仕舞ってから二人を見つめる。

 

 

「マドカ。我が家に帰る前に頼みたいことがある」

 

「なに?」

 

「なんですか?」

 

「禎影がな、自分の助手の成長を見たいんだと。それで、是非ともマドカに手合わせしてもらいたい」

 

「うん、いいよ」

 

 

尋稀の頼みにマドカは即答する。愛しの父の言うことは素早く素直に聞く良い子である。

 

 

「んじゃ、一丁行きますか」

 

「うん!」

 

「はい!」

 

 

尋稀達は立ち上がり、歩き出す。

 

目指すは、中国。




マドカとクロエとの出会いは
いずれ書こうと思います

次回は
『りんにゃん、マドカと闘り合うってよ』を確実に書きます。絶対に書きます。

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