ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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㊗お気に入り三百人突破&UA50000突破!

皆様本当にありがとうございます!
この約二週間で、お気に入りが約百二十件も増えました!これもすべて皆様のおかげです

ちなみに、ラテンは描きました(笑)
イラストは今回で二回目なので、超低クオリティーです(笑)これからどんどん上達していけるように頑張りたいと思っています!

これからもよろしくお願いします!


【挿絵表示】



第十五話 突然の別れ

 休息日の翌日の二十二日は、その春初めての荒れた空模様になった。  

 時節吹き寄せる突風に乗って、大粒の雨が激しく寮を襲っているのがよくわかる。しかし、そんな天気とは裏腹にここ、上級修剣士の寮にある屋内修練場には静寂が漂っていた。

 

 一日の講義が終わり生徒たちがそれぞれ自分の部屋に戻っていく中、ここに来たのはこの場にいる二人だけだ。お互いに白い木剣を持ち、十メートルほどの距離を開け対峙している。

 

「……お前にとっては俺との初めての稽古だ。無理はするなよ?」

 

「誰に言っているんですか、ラテン先輩」

 

 シャロンがフッと笑いながら木剣を構えた。ラテンもそれに続き、木剣を構える。

 二人にとっては初めての稽古だというのに、初等練士であるシャロンには緊張が見られない。それはおそらく、年上との稽古はお家で散々やってきたからだろう。彼女はこういう状況には慣れているのかもしれない。

 

 ラテンはシャロンの目を見て迷いがないことを確かめると、地を蹴った。シャロンも間髪入れずに地を蹴る。

 

「やあああああ!!!」

 

「……うお」

 

 鈍い音と共に剣が火花を散らす。

 そんな中ラテンが最初に感じたのは、斬撃の重さだ。華奢な少女が繰り出したとは思えないような斬撃。見た限りでは体重移動は完ぺきで、隙を最小限に抑えている。

 初等練士からこんな技術を持った者はそうそういないはずだ。それは、彼女が幼少期から鍛錬してきた賜物なのかもしれない。

 

 ラテンはシャロンの木剣を押し返すと、距離を詰め右上から振り下ろす。少々隙の多い動作だったが、どう対応するのか見るためには絶好の機会だ。

 ラテンの予想ではしゃがんでそれを避け、そのままカウンターとするというものだ。だが、シャロンはラテンが予想していなかった動作に入る。

 

「……!」

 

 シャロンはラテンの斬撃を両手持ちで受け止める。だが、ラテンの手には衝撃が伝わってこなかった。疑問に思ったが、それもすぐに解決される。

 剣がそのままラテンの思い通りの軌道からはずれ、空を斬る。シャロンはラテンの斬撃を受け流したのだ。これほどまでに綺麗に斬撃を受け流されたのは、ラテンにとってアル先輩以外初めてだ。

 

「……ちっ!」

 

「やあっ!」

 

 シャロンはラテンの斬撃を受け流した勢いを使いその場で回転しながら、下段から斬り上げてくる。だが、それにいち早く反応したラテンはギリギリのタイミングで斬撃の軌道に木剣を持っていき、防いだ。だが、十分な体勢でとらえていないため後ろに倒れそうになる。

 

 このままの状態で体勢を立て直したとしても、次撃を防ぐことは難しい。それならそのまま倒れてもいいのだが、それでも次撃をかわすのは難しいし、何よりシャロンのことだ。「先輩は倒れたんだから、私の勝ちですね」なんて言いそうなので、倒れるという手段も却下する。

 なら、何をするべきか。ラテンには一つの手段しか浮かばなかった。まあ、体育の時以外に使ったことはないが。

 

「おりゃっ」

 

「え?」

 

 ラテンは弾き飛ばされる勢いを使いバク転をする。片手ではやったことはないが何とか成功し、シャロンと距離をとる。

 一方シャロンは三秒ほど呆然としていたが、すぐさま何が起こったのか把握する。

 

「ちぇ。今、勝ったと思ったのにな~」

 

「残念だったな、俺はそんなに甘くはないぜ?………ぶっちゃけやばかったけど」

 

 まさか稽古初日でこんなことになるなんて普通は思わないだろう。正直ここに入りたてのラテンよりも強い気がする。今のラテンでも案外簡単に抜かれてしまうかもしれない。それほど、この一瞬の出来事は印象に残るものだということだ。

 

「ったく、普通最初の稽古なら『キャー、先輩手加減してくださいよぅ』とか『もっと優しくしてくださぁい』とか言うもんだろ?そんなにマジでやるなんて…」

 

「……裏声とその言動、気持ち悪いです」

 

 『』の部分をできるだけシャロンに真似て言ってみたのだが 、どうやら似ていなかったらしい。まあ、一般人が見れば十中八九引くだろう。

 

「なんだよ。可愛げがねえな」

 

「な……!?」

 

 ラテンの挑発を真に受けてしまったのか、シャロンは顔を羞恥に染め斬りかかってきた。それをラテンは防ぐが、先ほどよりも威力が上がっているのは気のせいではないだろう。容赦ない斬撃がラテンに襲い掛かってくる。まるで、ラテンの天命が減少することなんて気にしないかのように。

 

「お、おいっ。ちょっと本気になりすぎてない?これを顔面に受けたら、稽古が終了するどころか、俺の人生が終了しちゃうよ!?」

 

「安心してください。禁忌目録に違反しない程度に痛みつけますから」

 

「安心できるかぁ!!」

 

 シャロンの斬撃の威力により徐々に後退していくラテン。一応は捌ききれるのだが、このままでは壁まで追い詰められ一本取られてしまうだろう。だが、今のシャロンの一本をくらったら、稽古が終わる所ではなくなる。

 

(こうなったら、やるしかない……!)

 

 ラテンは不敵に笑うと、シャロンが怪訝な眼差しを向けてくる。だが、斬撃の勢いは弱まることを知らない。そのままラテンは受け続けるが口元には微笑を浮かべている。そんなラテンに今度こそシャロンが不思議に思ったのか、一撃だけ先ほどよりも少し弱めの斬撃が降りかかった。

 

「もらったぁ!」

 

「ふぇ!?」

 

 ラテンは振り下ろされた斬撃を両手持ちで防ぐとしゃがみこみ、シャロンの脚に回し蹴りを繰り出した。シャロンはラテンの行動を予想していなかったのか受け身も取れず、派手にすっ転ぶ。

 

「痛ったぁ……ラテン先輩、卑怯ですよ!」

 

「悪いな、戦場は臨機応変に対応するもんだ」

 

 明らかに卑劣な行為だが、これが通用するのは油断している相手だけだろう。最も、鎧をフル装備している奴にやったら、こちらの脚がどうなるかは想像したくない。

 

「お前が油断しているからだよ。油断をするなんてまだまだ「やあっ!」――ぎょえ!?」

 

 バチーンとラテンが頭から地面に突っ込む。その足からはジンジンと鈍い痛みが発生していた。

 

「お、お前っ。卑怯だぞ!」

 

「先輩が言いますか!?」

 

 シャロンが油断していたラテンの脚に木剣を叩きつけたのだ。もちろん、これで終了だと思っていたラテンはそれに対応することができずに地面に倒れこむ。普通は先輩相手にこんなことはしないのだが、その先輩がラテンであるからだろう。

 

(他人行儀にしなくていいとは言ったが、さすがは貴族様だ。いや、負けず嫌いな女性と言ったほうがいいかもな)

 

 足をおさえながら、ラテンはその場に座り込む。シャロンはその隣で、木剣を眺めていた。

 

「……お前と稽古したら、命がいくつあっても足りないような気がする」

 

「……先輩。先ほど可愛げないと言いましたよね?」

 

「……言いましたっけ?」

 

「………」

 

「……はい。言ってしまいました」

 

「女性にそれは失礼です。ということで、今度の休息日にパイを奢ってください」

 

「パイ?……パイってあれか!?あの、ウルトラスーパーデラックスなんとかっていう名前の……」

 

「なんですかそれ?……まあ、先輩想像しているモノだと思いますよ」

 

「……勘弁してくれ」

 

 シャロンが言っているパイ。それは、パイのくせに豪華な盛り付けがされてあって、とてもおいしいらしい。この前シャロンに教えてもらったのだが、蜂蜜パイ約三十個分の値段という恐ろしい化け物だったので食べたことはない。

 よもや、衛兵隊時代に稼いだ金でどうにかやりくりしているラテンにそんな化け物を要求するとは…。

 

「化け物取りはすでに化け物だってことか」

 

「……何言ってるんですか?」

 

「なんでもありません」

 

 これ以上何か言ったら、何を要求されるかわからない。事は穏便に済まさなければ最悪の事態がラテンを迎えに行ってしまうだろう。

 

「今日の稽古はこれで終わりだ。なかなかハードだったが、しっかり体を休ませろよ?」

 

「わかりました。ありがとうございました」

 

「おう」

 

「……今度は忘れないでくださいね?」

 

「わ、わかってるって」

 

 シャロンはニッと笑うと修練場から出ていった。ようやく足の痛みが引いてきたラテンは木剣を手に取り、定位置に戻すと自室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 

 午前八時半の鐘が鳴り、ラテンは着替えて自室から共有スペースへ足を運んだ。そこには、いつも通り早起きのアスベルがソファーに座っている。だが、いつもの日課の読書をしていない。それどころか、その顔には焦燥感が浮かび上がっていた。

 

「……どうしたんだ、アスベル。そんな顔をして」

 

「ら、ラテン。ようやく起きたか。……その様子じゃお前は聞いていないみたいだな」

 

「え、何のことだ?」

 

「……実は、キリトとユージオが禁忌目録違反をしたらしい」

 

「……は?」

 

「今は懲罰房にいるが、今日連れていかれるそうだ―――って、おい!ラテン!」

 

 ラテンはアスベルの言葉を最後まで聞かずに、廊下へ飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつもなら教室移動する生徒たちが行き交っているはずの学院敷地なのだが、今日はしんと静まり返り誰の姿も見当たらなかった。

 先ほど懲罰房に行ったのだが門はもう開いていて、キリトとユージオの姿はどこにも見当たらなかった。そうなると、もう連れて行かれた可能性が高くなる。もう手遅れかもしれないが、全力で学院内を走り続けた。

 

 しばらく走り、大修練場前のある広場にたどり着くと、前から険しい表情をしたアズリカ寮監が歩いてくる。ラテンはアズリカ寮監の元まで走ると、ものすごい形相で問い詰めた。

 

「キリトとユージオはっ!今どこですか?!」

 

「……二人はこの先だ。先ほど、ロニエ初等練士とティーゼ初等練士が向かって行きました。あなたは……」

 

 アズリカ寮監はそこまで言って口を閉ざした。おそらくラテンのしようとしていることを理解したのだろう。その目に迷いがないことを理解したのかアズリカ寮監はその場から無言で立ち去る。ラテンは深く一礼すると、アズリカ寮監が歩いてきた道を走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し走った先に、大きな影が二つと小さな影が六つ視認することができた。そこに向かって全力で声を張り上げる。

 

「待てぇ!!!」

 

 そこにいた影全員がこちらに顔を向けた。そこまで走っていくと、影四つの正体がキリトとユージオ、ロニエにティーゼだということが分かった。そして、見慣れない二人の女性と二匹の飛龍。 

 

 一人は薄手の黄金の鎧に身を包み、青色のロングスカートとマント。癖のない、つややかな長い金髪。ひと目見て美人だと思ったが、その瞳には冷酷さが浮かんでいる。

 もう一人は、見たところ鎧を付けてはいない。純白の服の上に模様が入ったコートを着ており、これまた純白のロングスカートを身に付けている。先ほどの女性と同様金髪で美人だが、違うところは先ほどの女性は後ろで髪をまとめているが、この女性はまとめていないということだ。腰には白い鞘に桜色の柄をした剣を帯刀してある。

 

「……あなたは何者ですか?」

 

「俺はラテンだ。この学院の上級修剣士三席」

 

「そのあなたが何の用ですか?」

 

「………」

 

 ラテンは無言でキリトとユージオを見据える。ユージオは困惑している様子だったが、キリトは「何で来た?」という視線を送ってきた。

 

「……どうしても、キリトとユージオを連れていく気なんだな」

 

「もちろんです。罪人ですから」

 

 純白の服を着た女性がラテンを冷ややかな目で見る。その顔は誰かに似ているような気がしたが、今はそんなことを考えている暇もない。

 

「その二人を連れていくなら、俺も連れて行け」

 

「おいっ、ラテン!」

 

「キリトは黙ってろ」

 

 ラテンは目の前の女性を見据える。その女性は、ラテンに事を怪訝に思っているに違いない。なぜなら、何の罪もない者が進んで牢にぶち込まれたいなんて、変人以外の何物でもないからだ。

 

「残念ながら、罪人ではない限り連れていくことはできません。速やかに、学院に戻りなさい」

 

 もちろんラテンは罪人ではない。今までに学院で少々やらかしたこともあるが、禁忌目録違反や学院則違反まではしなかった。そう。今までは(・・・・)

 

(こうなったらやるしかない、か)

 

「どんなことをしても俺を連れて行ってくれないんだな?」

 

「そういうことです。ですから……!」

 

 純白の服を着た女性が少々目を見開く。なぜなら、ラテンが刀を抜き放ったからだ。それをその女性に向けている。

 

「これで、俺にも罪が与えられるな。《反逆罪》」

 

 キリトとユージオが目を見開いた。だが、二人の女性はあくまで冷ややかな視線をラテンに向け続けている。

 

「……いいでしょう。あなたも罪人として連れていきます」

 

 その言葉を聞いてラテンは納刀すると、純白の服を着た女性に刀を投げ渡した。そして、キリトとユージオと同じく拘束具を巻かれ、飛龍の脚に繋がれる。

 

「ロニエ、ティーゼ。シャロンに約束は守れそうにないと伝えておいてくれ」

 

「ラテン先輩……」

 

 ラテンは二人に微笑む。本当は本人に言うべきなのだろうが、今回はそれもできそうにない。

 

「上級修剣士ユージオ。上級修剣士キリト。上級修剣士ラテン。そなたらを禁忌条項抵触の咎により捕縛、連行し、審問ののち処刑します」

 

 処刑という言葉に少々驚いたがよくよく考えたら当たり前だ。禁忌目録違反、現実世界で言う法律違反を犯してしまったからには、それ相応の罰が与えられる。現実世界とはそれが、処刑か投獄かの違いだ。

 黄金の鎧を身に包んだ女性がもう一人の女性に声をかける。

 

「それでは行きましょう、リリア」

 

「……!?」

 

(リリア?今、リリアって言ったか!?)

 

 ラテンが飛龍に乗っている純白の服を着た女性を見つめる。確かに、よく見たらマリンに似ている気がする。ラテンの探していた女性をようやく見つけることができた。形式は予想と大きく異なっているが。

 

「……何故笑っているのですか?」

 

「いや、なんでもないさ」

 

 飛龍が大きく翼をはばたかせる。たちまち、周囲に風が発生し二人の少女の髪を揺らした。大きな足を蹴ると同時にラテンが宙に浮き始める。

 飛龍が螺旋を描いて空に舞い上がるにつれて、眼下のロニエとティーゼがどんどん小さくなっていく。やがて、それも見えなくなり、北セントリア帝立修剣学院の全景もたちまち遠ざかっていく。

 

 二体の飛龍は真ん中にそびえる巨大な塔、公理教会セントラル・カセドラルを目指して、一直線で飛翔し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半はやっぱり無理やり感がある……。すいませんm(_ _)m


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