㊗お気に入り二百人&UA40000突破!
皆さん本当にありがとうございます!
まさか、ここまで読んでくださっている読者様方がいるとは……感激です!(笑)
そして、この祝い事に何もやらないわけにはいかないので、今回、初めてツイッターのアカウントを作りました!
詳細はエンジのページで(笑)
ちなみに、お気に入り件数三百件突破したら、エンジが想像するラテンを描きたいと思っています。ですが、読者様方が想像するラテンとエンジが想像するラテンの容姿は異なると思います。(特に髪形など)。
ですので、エンジが描いたラテンの容姿は一つの解釈として受け取っていただければ幸いです。まあ、まだ描くとは決まっていませんが(笑)
それで、またまた重大?発表があります。
ふと、この作品を読み返してみたのですがエンジは気づいてしまいました。
〖SAO編とALO編のできがあまりにもひどい〗ということに……。
なので、アリシゼーション編がひと段落したら、もう一度書き直したいと思っています。その時は、もう一度投稿させていただく形になりますので、どうか一目読んでいただければ幸いです。
長い前置きになってしまいましたが、これからもこの作品をよろしくお願いします!
「見ろぃ、この有様を!」
という濁声とともに、ラテン、キリト、ユージオの目の前にガランガランと音を立てて四角い石板がいくつも投げ出された。黒くきめ細かいそれは、東帝国特産の砥石らしいが、すべて厚さ二センチ以下にまですり減っていてもう使えそうになかった。
アル先輩との特別稽古から一日経っている。そして三人が今いるのは、ここら周辺ナンバーワンと自称している《サードレ金細工店》だ。店内には、金属を素材とする実用品から装飾品、はては武具までが所狭しと陳列されている。その中には刀のようなものもある。この世界には刀という概念がないと思っていたが、どうやらあったらしい。まあ、この央都《セントリア》内や、《帝立修剣学院》内では一目たりとも見かけたことがないので、人気はなさそうだ。
「この
「は、はあ……ほんと、すいません……」
「《ギガスシダー》の枝ってそんなに硬いのかよ…」
「硬いなんてもんじゃないわい!もはや鉄の塊じゃ」
皆さんはここで少々疑問を抱くだろう。それは、細工師と鍛冶師の違い。違うところを簡単に言うと使う道具の差だ。鍛冶師は、炉と
以前キリトと共にこのサードレのおっさんに聞いたことがある。それは『同じ剣を作るなら一つに統一したほうがいいのでは』ということだ。それに対しておっさんは『同じ鉄を使っても出来が違うんじゃい』と唸った。
どうやら、まったく同じ金属素材を使っても、そこから剣を削るのと、炉で熱して叩きだすのとでは、炉を使ったほうが
「そ、それで……剣は、できたんですか?」
どこまでも続きそうなサードレの文句を遮るようにキリトは口を開いた。
キリトはこのおっさんにギガスシダーの最上部の枝を一年前に渡したのだ。その時のサードレの顔は今でも鮮明に覚えている。
キリトに渡されたギガスシダーの枝を五分間絶句し、じっくり五分間検分してからこう言ったのだ。
――――一年くれ。一年かければ、この枝はとんでもない剣になる。
――――整合騎士の帯びる神器すら超えるほどの、な。
整合騎士が持っている神器。それはユージオが持っているクラス45の《青薔薇の剣》のように、優先度すなわちランクがものすごく高い武器のことだ。そのほとんどが、クラス40を超えているらしい。
サードレが、ふんっと鼻息を鳴らして身をかがめた。カウンターの下から両手を使って取り出したのは、細長い布包みだ。逞しい体に力を込め、気合を入れて持ちあげる。
ごとん!といかにも重そうな音を立ててカウンターにおかれたそれから、サードレは直ぐには手を離さなかった。
「若いの。まだ、研ぎ代の話をしとらんかったな」
「ウッ」
キリトは声を詰まらせた。もちろんキリトがこの場にお金を持ってきていないわけはないのだが、こいつは安息日ごとに街へ出て買い食いなどをしているので、相当な量は持っていないはずだ。少なくとも工期丸一年+高級砥石6個分は持っていないはずだ。
ラテンもユージオもこんな状況が起こりかねないと思って多少は持ってきているが、ここまでとは予想していなく、正直足りるかわからない。
「なあユージオ。お前、どれくらい持ってる?」
「結構持ってきてるけど、ここまでとは思わなかったよ。ラテンは?」
「俺も結構持ってきてるけど、正直に言っちまうと3人合わせても足りない気がする」
「……僕もそう思うよ」
キリトがラテンとユージオに顔を向けて、何かを訴えかけているようだ。残念ながら、その何かは二人には分からないのだが。
「―――――――タダにしといてやらんでもない」
たっぷりの間を取ってからサードレがそう言ったので、3人は盛大に安堵のため息をつこうとした。だが、その直前に「ただし」と続けられる。
「……ただし、若いの。お前さんが、この化け物を振れるなら、じゃ。素材の段階でとんでもなく重たかったこいつを、北の果てからセントリアまで運んできたんじゃから見込みはあろうが、……しかし、言っておくぞ。こいつ、剣として完成した途端、またひときわ重くなりよった。鍛冶師や細工師は、このテラリア神の加護で、どんな上等な剣でも運ぶことだけはできるはずなんじゃが……儂としても、一メル持ち上げるのが精一杯じゃ」
「………化け物、ですか」
キリトは大きく息を吸い、長く吐いてから、左手を包みに伸ばした。布ごと掴み、カウンター上で直立させる。布は緩く巻いてあったのか、立たせただけで上半分がずり落ち、柄が露わになった。
柄頭はシンプルな錘型で、握りには細く切った革が密に巻かれている。柄全体がまるでギガスシダーの枝のように漆黒で、少々透明感を持っている。巻き革も艶のある黒。
その先の刀身を呑み込む鞘も、同じく黒革仕上げだ。キリトは右手を伸ばすと、5本の指を一本ずつゆっくり握りに巻き付けた。キリトは少々何かを思い出しているようだったが、何かを決心したように黒革の鞘から一気に抜き放つ。
じゃりいぃぃん!と重い音が店内に響き渡る。キリトはその剣の切っ先を天に向けると、りぃん、と微かに刀身が鳴った。
「おお!」
「わあ……!」
「む………」
キリト以外の3人が密かに声を漏らす。キリトは剣に見入っているようだった。
その剣の全長は、かつてのキリトの相棒エリュシデータと全く同じように見える。まあ、キリトが寸法を頼んだのでそれは当然だが。
柄と一体構造の刀身は、同じく深い黒に染まる。しかし、やはりわずかに透明感があり、窓から差し込む陽光を内部から取り込んで、角度によっては淡い金色を呈する。形状は一目見て解るような片手用直剣だが、幅はユージオが持つ青薔薇の剣よりも広めに見える。
「………そいつを振れるかね」
サードレが低く声を発した。
キリトはちらりと店内を見渡すと、客がいないことを確かめたのか、体の向きを変え、長いカウンターと並行してたった。前方には5メートル以上の空間があり、試し振りをするなら十分のはずだ。
ラテンがキリトの構えを見入る。その姿は、あの浮遊城アインクラッドでの黒の剣士と謳われていたキリトに酷似していた。
(もともと、こいつには黒い剣が似合うのかもしれない)
そう思っているとキリトが右足を出した。
「シッ……!」
黒い光が一直線に走り、少し遅れて空気を切り裂く音がビュウッち響き渡る。切っ先は床板の寸前で止まったが、空撃ちの威力が放射状に拡散し、床をみしっと鳴らす。
ラテンとユージオは、二人に顔を向けたキリトに拍手と歓声を浴びせる。一方サードレは自分が持つだけで精一杯の剣を、キリトが軽々振り切ったのに少々嫉妬したのか激しく鼻息を噴出させた。
「ふん。……学院のひよっこ練士が、そいつを振りよったか」
「いい剣です」
キリトがそれ以上の言葉は人ようないというつもりで答えると、サードレはここでようやくニヤリと笑った。
「当たり前じゃい。黒煉岩の砥石6個じゃぞ。……だがまあ、研ぎ代はいらん、出世したら細工師サードレの作と広めてくりゃそれでいいわい。そいつはたった今からお前さんのモンだ」
「……本当に、ありがとうございました」
ぺこりとキリトが頭を下げると二人もそれに続く。サードレは二秒ばかりじっと黒い剣に視線を注いでいたが、すぐにもう一度笑った。
「銘はお前さんが考えるんじゃぞ。ウチの店の看板でもあるんじゃから、妙な名前をつけんでくれよ」
「うっ……」
キリトが少々言葉を詰まらせた。おそらくネーミングセンスが自分にはないと思っているのだろう。ラテンがキリトだけに聞こえるように小声で口を開く。
「……お前、エリュシデータ、なんてつけたら茅場さんに著作権で訴えられるぞ」
「つ、つけねぇよ……たぶん」
たぶんかい!と突っ込みたくなったが、これ以上小声で話していると二人に怪しまれるため、口を紡いだ。
三人は再び頭を下げると、戸口に向けて数歩歩きだす。
しかし、そこでいきなり、背後からグワラーン!と盛大な金属音が聞こえ、思わず軽く飛び上がる。振り向くと、サードレが両目を丸くして西の壁を眺めている。
視線をたどった先にあるものは中心から真っ二つに断ち割られ、右半分を床に落下させた売り物のバックラーだった。
「……オレハカネモッテナイヨ?」
「アッ。ボクモダッタ」
「……お前ら、見損なったぞ!」
①、商店の売り物を意図して壊したなら禁忌目録違反。
②、意図せざる事故によって壊し、弁償しなかった場合もやがり禁忌目録違反。
③、②の状況で店主が許してくれた場合のみ、違反にならない。
よくわからないが、こういうことらしい。普通は店内の売り物を壊したら、弁償するのが当たり前だが、キリトは③の選択肢で何とか生き延びた。
「……ただの試し振りで奥義使ってんじゃねえよ」
「いやいや。俺はソー……奥義を使ったつもりはないんだけどなー」
「いいや、僕は見たよキリト。ラテンも見たよね?振り下ろした瞬間に、刀身がちょっとだけ光ったもの。僕がまだ知らないアインクラッド流の奥義としか思えないよ!」
「う、うーん……アインクラッド流に、そんな技はなかったと思うけどなあ……」
「確かに、見たことはないな」
そんなことを言い合いしていると、不意に甘いにおいが鼻腔に飛び込み、脳天を直撃する。どうやら、いつの間にか食材市場に到達していたようだ。ここに着いたということはほぼ間違いなくあいつが反応するに違いない。
「………なあ、ラテン、ユージオ。盾の弁償金もだけど、こいつの研ぎ賃も、タダにして貰えてよかったな」
「お前は運が良かったんだよ。そう何度も続くもんじゃないぜ、こんなことは」
「わ、わかってるよ。……それよりさ、せっかくお金も浮いたことだし、三つずつくらいならいいよな?」
「二つにしとこうよ……」
「ああ。二つだな」
三人は進路を左斜め前方へと変更し、ちょうど店先のお持ち帰りコーナーに焼き立ての蜂蜜パイの並べ始めたお姉さんへと歩き出した。キリトは駆けていったが。
今回はキリトがメインの回でしたね。
さあ、ラテンの剣はどうなるのか……。楽しみにしていてください。
ちなみに、刀は存在はしているもののあまり使われていない設定にしました。その理由は作中に出てくると思いますのでしばしお待ちを。