ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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今回は、朝露の少女のお話です。

では、本編へどうぞ!!

 修正しました!


第五話 黒鉄宮の地下 

 

 

 一陣の風が鳥のさえずりや木々が揺れる心地よいサウンドを運んでくれる。

 優しい風に背中を押されるようにラテンはゆっくりと森の中にある細道を歩いていた。

 見渡す限り自然豊かなこの場所は、アインクラッドで最も人口が少ないフロアの一つである第二十二層だ。

 何故ラテンがこんなフィールドモンスターもでないこのフロアにいるのかと言うと、ある者に呼ばれたからだ。もちろん正体不明の人物ではなく、ラテンの顔見知りだ。

 美しい森を楽しみながら 地図に記された場所にたどり着くと、そこには小さなログハウスが建っていた。

 

「へぇ、随分良い家を買ったもんだな」

 

 小さな階段を上がり、木製の扉をコンコンと叩く。

 数秒後、「は~い」と間抜けな声が聞こえ、扉が開かれる。

 ラテンを出迎えてくれたのは、簡素な格好をしたキリトだった。

 

「ようキリト、一週間ぶりだな。新婚生活は順調か?」

 

 何を隠そう、この家の持ち主は目の前にいるキリトだ。そして、そのキリトと『結婚』したアスナの家でもある。

 ちょうど一週間前。めでたく二人は『カップル』から『夫婦』になった。

 そんな新婚生活真っただ中の二人がラテンを呼んだ理由はわからない。ただ、前線を離れてまで、人の目を避けていたというのに、わざわざラテンを呼んだのだ。相当深刻な問題が発生したのだろう。

 

「あ、ああ、久しぶり。まあ、入ってくれ」

 

 どこかそわそわしたキリトの様子に疑問を持ちながら、促されるままに中に入る。

 リビングに到着すれば、小さな緑色のソファーにアスナが座っていた。

 

「久しぶりだな、アスナ。新婚生活のほうは……どう……だ……?」

 

 最後まですらすら言えなかったのには理由がある。

 その原因はアスナの隣にいる一人の少女だ。

 

「ひ、ひさしぶり、ラテン君……」

「…………」

 

 ラテンは目を見開いたまま動かない。

 無理もない。

 つい一週間前に夫婦なったばかりのキリトとアスナの家に可愛らしい少女がいるのだ。それもキリトとアスナに似た。

 そこから導き出される答えはただ一つ。

 

「へ、へぇ。SAOでも子供ってできるんだな…………お幸せに!!」

「「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

 玄関まで全力疾走するラテンの両肩をキリトとアスナが叫びながら掴む。この世界最速のラテンをいとも簡単に捕まえるとは。さすがは最強夫婦だ。

 

「何だよ! お前らのイチャイチャ話を聞いて、耐えられるほど俺は人間ができてない!」

「い、いいから落ち着け!」

 

 全力で逃れようとするラテン、と全力で引き留めようとする最強夫婦。

 両者の力は均衡し、時間だけが過ぎていった。

 無意味な戦闘からおよそ五分。

 先に折れたラテンは、仕方なく話だけでも聞いてやろうと思いソファーに座る。キリトとアスナはその反対側に座り事情を説明した。

 

「……なんだよ、そういうことだったのか。だったら早く言ってくれよ」

「言う前にお前が全力で逃げ出したんだろ……」

「そうだっけ?」

 

 軽くとぼけてみると、キリトがため息をついた。

 簡潔に説明するとこうらしい。

 キリトとアスナがいつものようにイチャイチャしながr「してねーよ!!」……森に入るとそこでキリトがいきなり最近噂になっている霊出現話をし始め、おびえていたアスナは話に出てきた幽霊らしき白い女が立っているのを目撃。だが白い女は倒れ、キリトが駆け寄ると、それはカーソルが出ない少女だった。置いてくわけもいかないので、とりあえず家に連れてきた、とのことだ。ちなみに少女の名は《ユイ》というらしい。

 

「……んで結局、俺は何のために呼ばれたわけ?」

「ラテン君なら何かわかるかなって思って」

「悪い、俺もさっぱりだ。『教会』に行けば何かわかるかもしれないけど……」

「教会?」

「ああ。《はじまりの街》にあるんだけど、そこに小学生ぐらいのプレイヤーが何人か住んでるんだよ。一人の女性がその子らの保護者になって育ててる。行ってみる価値はあると思うぜ」

 

 アスナとキリトは顔を見合わせると、同時に頷いた。

 

「ラテン。そこに案内してくれ」

「了解。早速行ってみるか」

 

 アスナはすでに寝ている少女を抱き、ラテンたちは教会に行くためにログハウスを出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませ~ん。誰かいらっしゃいませんか~?」

 

 《はじまりの街》の東七区にある教会に到着すると、アスナはさっそく声をかけた。だが、彼女の呼び声はただ壁を反響しただけで、誰も出てくる様子はない。

 知らない訪問者だからだろうか。

 仕方がないので、顔見知りであるラテンが声をかける。

 

「サーシャさん? 俺ですよ。ラテンです」

 

 教会の扉の前でそう言うと、扉が一気に開かれ、子供たちがなだれ込んできた。

 

「ラテン兄ちゃんだー!」

「久しぶりー!」

「ラテン兄ちゃんあそぼ!」

 

 目を丸くしているラテンに、子供たちは遠慮なく抱き着いてくる。

 ラテンの両足では支えきれず、背中を地面に打ち付ける羽目になった。

 

「随分な人気ぶりだな」

「ま、まあ、ちょっとな」

 

 ゆっくりと上体を起こすと手が差し伸べられる。

 見上げれば、修堂服を着た顔見知りの女性プレイヤーが立っていた。

 

「お久しぶりです、ラテンさん」

「お久しぶりです」

 

 手を取りながら一言返す。

 この女性の名は《サーシャ》。このデスゲームで孤独な子供を引き取って一緒に暮らしている心優しい女性だ。

 

「どうぞこちらへ」

 

 ラテンが事情を説明するよりも早く、サーシャさんがラテンたちを中に促す。

 ラテンたちは促されるまま、教会の中へと足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

「紹介するよ、こちらはサーシャさん。この教会で子供のプレイヤーを保護してるんだ。サーシャさん、こちらはキリト、そしてアスナです」

 

 用意された椅子に座り、共通の顔見知りであるラテンがこの場を持つ。

 キリトとアスナとサーシャが挨拶を終えると、二人はさっそく本題に入った。

 

「いきなりですがこの子……ユイという名前なんですが22層で迷子になってたんです。記憶もなくしているみたいで……。もしかしたら知っているんじゃないかと思って訪ねて来ました」

 

 数秒間の沈黙の後、サーシャは申し訳なさそうに口を開く。

 

「……私は二年間ずっと、毎日一エリアずつすべての建物を回って、困っている子供がいないか調べていました。でもその子は見たことがありません。そんな小さい子なら絶対気づいたはずです。ですので残念ながら……はじまりの街で暮らしていた子ではないと思います。お役に立てなくて、申し訳ありません」

「いえ、それだけでも十分です。ありがとうございます」

 

 キリトとアスナは小さく頭を下げた。 

 するとそこへ、一人の男の子が息を荒げながら駆け寄ってきた。

 

「サーシャ先生!大変だ!」

「いったいどうしたの?」

「ギン兄ィたちが、軍の奴らにつかまっちゃったよ!!東五区の道具屋の裏の空き地に……!」

 

 子供たちがそう言うとサーシャは顔を険しくし、間髪入れずに口を開く。

 

「わかった、すぐ行くわ」

 

《軍》。

 それは第七十四層で見かけたアインクラッド解放軍のことだ。このはじまりの街は、彼らの支配下に置かれている。

 すべての人々をこの世界から解放するために戦っているはずの彼らが、何故子供たちを捕まえたのだろうか。

 

「すいませんが、私は子供たちを助けに行かなければなりません。お話はまた後ほど……」

 

 再び申し訳なさそうに口を開いた、サーシャにキリトとアスナは顔を見合わせる。そして何かを決心したかのように、向き直った。

 

「私たちもお手伝いさせてください。少しでも多い方がいいはずです」

 

 サーシャは目を丸くする。 

 力になることができなかったのに、逆に手助けをしてもらうとは思っていなかったのだろう。

 何にせよ、キリトとアスナがいれば十分だ。 

 

「サーシャさんここは俺が残ります」

「ありがとうございます。お気持ちに甘えさせていただきますね」

 

 サーシャは深く一礼すると、眼鏡をぐっと押し上げた。

 

「それでは、すいませんけど走ります!」

 

 サーシャを先頭にキリトとアスナがその後を着いていく。その背中が見えなくなる頃に、はっと思い出す。

 

「あの女の子、預かっておくべきだったな」

 

 まあそれでもここは安全な圏内だ。危険はない。

 先ほどの席へ戻ると、子供たちが駆け寄ってくる。

 

「ラテン兄ちゃん、ギン兄ィたちは大丈夫かな?」

 

 不安になっている子供の頭を優しく撫でる。

 

「大丈夫だ。あの、兄ちゃんと姉ちゃんはすごく強いぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから戻ってきたのは、意外とすぐだった。

 しかし、見慣れない女性プレイヤーが険しい表情で同行していた。

 

「ラテン君とりあえずついて来てくれないかな?」

 

 アスナの言葉に少し真剣みが帯びているのを感じ、一言サーシャさんにあいさつするとアスナたちとともに教会を出って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩きながらラテンは事情の説明を聞いていた。

 女性プレイヤーは、《ユリエール》という名らしい。

 何でも軍のボスだった《シンカー》という男性プレイヤーが一人の男に騙され、三日間<黒鉄宮>の最下層に閉じ込められているらしく、その救助を依頼してきたのだ。

 今は《休暇中》の二人でも、ユリエールの裏がない悲痛な訴えに心を動かされたらしく、こうして同行していたラテンをも巻き込んで引き受けたという訳だ。

 別にそれについての不満はない。

 キリトとアスナもそうだが、ラテンも困っている人は見過ごせないたちだからだ。キリトたちではなく、ラテンが子供たちを救出してユリエールに依頼されても同じように引き受けただろう。

 それに加えシンカーのいる場所も気になる。黒鉄宮の地下にダンジョンがあるなど、聞いたこともなかったからだ。

 

 

 

 ユリエールに案内されたダンジョンをラテンとキリトが主体となって、出現する敵を次から次へとポリゴン片に変えていく。

 このダンジョンのモンスターと戦ってみてわかったのだが《第一層》の割にモンスターが随分と強い。

 ユリエールいわく、ダンジョンは六十層当たりの強さらしくそれを聞いたラテンはすぐに納得した。

 

「つうことは、ボスも六十層くらいか?」

「ああ、たぶんな」

「だったら、三人でも大丈夫だな」

 

 七十層くらいのレベルであったら増援を呼ぶべきなのだが、六十層程度ならば、ラテンもキリトもレベルは90を超えているし、アスナもそれくらいなため相当なへまをしない限三人だけでもボスは大丈夫なはずだ。

 

「ぬおおおおおお」

 

 いつの間にかキリトが単身で突っ込んでおり、カエル型モンスターを二刀流で無双していた。この一週間近く剣を持っていなかったキリトだが、見る限りでは剣の腕や反応速度はまったく衰えていない。さすがは《黒の剣士》だ。

 すべてのカエルを一掃したキリトは、アイテムストレージからあるものを取り出す。それは先ほど倒したカエルの足だった。

 

「ゲテモノの肉って旨いっていうからな。後で料理してくれよアスナ」

「絶、対、嫌!!」

 

 料理好きのアスナでもさすがにカエルの足は生理的に厳しいのか、キリトと同じようにアイテムウインドウを開くと、次々とキリトが集めたカエルの肉をゴミ箱に放り込む。このSAO内で《結婚》をすれば、アイテムがすべて共有されるため、このようなこともできるのだ。

 

「あっ! あああぁぁぁ・・・」

 

 情けない顔で悲痛な声を上げるキリトを見て、ユリエールさんは思わず吹き出す。

 

「お姉ちゃん、初めて笑った!」

 

 ユイが嬉しそうに叫んだ。ユリエールも満面の笑みを浮かべている。

 

「さあ、先に進みましょう!」

 

 アスナの言葉に、その場にいた皆が同調してさらに奥へ足を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョンに入って二時間経った頃、ついにシンカーがいるであろう安全エリアが見えてくる。

 

「あっ、安全地帯よ!」

 

 アスナが言うとキリトも気づいたらしい。

 

「奥にプレイヤーがいるな……グリーンだ」

 

 索敵スキル使って目を凝らすと、グリーンのカーソルがついた一人の男性プレイヤーが安全エリアの中にいた。

 

「シンカー!」

 

 もう我慢できないというふうに一声叫んだユリエールが、長い銀髪を大きく揺らして走り始める。ラテンたちも慌てて後を追った。

 明かりを目指して数秒間走ると、やがて前方に大きな十字路が出現した。数メートル先には安全エリアがある。

 入り口で一人の男が激しく両手を振り回していた。

 きっと体全身を使って喜んでいるのだろう、と思っていたラテンだったが実際はほぼ百八十度違った。

 

「ユリエール!来るな!その通路は……!」

 

 ラテンたちはその言葉にぎょっとして速度を緩めるが、シンカーに会うことができたユリエールにはシンカーの言葉が聞こえていないらしく、一直線に駆け寄っていく。

 その時。

 通路と交わっている道の右側死角部分に黄色いカーソル突然出現する。

 すぐさま名前を確認する。

 《The Fatal-scythe》  

 ボスモンスターだ。

 

「だめ――っ!! ユリエールさん、戻って!!」

 

 アスナが絶叫するが、ユリエールは止まらない。このままではボスとユリエールが衝突してしまう。

 ラテンは足に力を込めるが、それよりも早くキリトが一陣の風になる。あまりの速さに周りの壁が震えた。

 瞬間移動にも等しい勢いで数メートルの距離を縮めたキリトは、ユリエールを抱えて十字路ギリギリで止まる。

 その瞬間、ごおおおおっと地響きを立てて巨大な黒い影が十字路を横切った。

 黄色いカーソルは、左の通路に飛び込むと十メートルほど移動してから停止する。姿が見えないボスモンスターがゆっくりと向きを変えた。

 再び突進する気配。

 ラテンとキリトはボスモンスターを塞ぐように、左の通路に飛び込んだ。

 

「この子と一緒に安全地帯に退避してください!」

 

 後ろで呆然としているユリエールにアスナが叫ぶ。

 蒼白な顔で頷いた鞭使いは、ユイを抱えて安全エリアへ駆けだした。

 身長二メートル半ばほどの、ぼろぼろになった黒いローブをまとった、死神のようなボスモンスターと対峙してラテンは目を見開く。そして同時に無双刀を素早く構えた。

 

「こいつが六十層程度のボスモンスター? 冗談きつすぎるだろ!」

「くそっ! アスナ、今すぐ安全エリアの三人を連れて、クリスタルで脱出しろ!」

「え……?」

 

 アスナは目を丸くする。

 彼女はまだ、こいつが六十層程度のボスモンスターだと思っているのだろう。

 それはキリトも予想できたようで、簡潔に目の前の死神の強さを説明する。

 

「こいつ、やばい。俺の識別スキルでもデータが見えない。強さ的には多分九十層クラスだ……」

「…………!?」

 

 アスナが息を呑む。

 その間にも、死神は徐々に距離を詰めてきていた。

 

「いや、キリト。お前もアスナと一緒に行け。俺が時間を稼ぐ」

「何言ってんだ、お前ひとりじゃ危険すぎる!」

「こいつの前じゃ、一人も二人も同じようなもんだろ! いいから早く行け!」 

 

 キリトとアスナは《休暇中》なのだ。こんな時に命を懸ける必要はない。

 それにラテンの敏捷値はキリトよりも高いのだ。ボスに追いつかれることなく安全エリアまで到達ことができる可能性がある。あくまで可能性の話だが。

 

「っ!?」

 

 頑に離脱しようとしないキリトにもう一度怒鳴ろうしたとき、ラテンの本能が危険を察知し体を震わせた。

 すぐさま右に転がるが、地面すれすれになった視界にはキリトとアスナが剣を交差させて防御態勢を取っていた。

 次の瞬間。

 攻略組でもトップに位置するであろう二人の体が視認できないスピードで壁に激突した。

 すぐさま二人のHPを確認すると、死神の横なぎを一振り防御しただけだというのに、半分を割っていた。二人の無情なイエロー表示は、次の攻撃を耐えることができないことを意味している。それはすなわち、二人の死。

 

 その瞬間。

 ラテンは神経が研ぎ澄まされていくのを感じた。

 思考がクリアになり、先ほどまでラテンを包んでいた恐怖感はどこかへ行ってしまっている。

 のそりと立ち上がったラテンに巨大な鎌が振り下ろされる。

 だがそれは、解っていた(・・・・・)

 バックステップで距離を取り顔を上げれば、先ほどまでいたラテンの場所に巨大な鎌が突き刺さっていた。距離を取ったにもかかわらず、衝撃波がラテンを襲い体が浮きそうになる。

 それを何とかこらえると、すぐに地を蹴った。

 

「うおおおおおおおおおおおお!!」

 

 叫びながら無我夢中で斬りかかる。

 自分が使えるあらゆるソードスキルを駆使し、死神にぶつける。

 もちろん死神がラテンの連撃をじっと受け続けるわけもなく、巨大な鎌が質量を感じさせないほどの速さで振り回される。

 防御していない状態でその一撃を受けたら、ラテンのHPがどれほど減るかはわからない。下手をすれば、全損する可能性だってある。それに防御しても意味がないことは、キリトたちを見てわかっている。

 視覚、聴覚を駆使し、死神の攻撃を紙一重で避け続ける。だが、鎌を避けることができても衝撃波は避けることができず、ラテンのHPはじりじりと削られていった。

 だがそれは死神も同様で、流星ように繰り出されるソードスキルが死神のHPをじわじわと削っていき、やがてイエローゾーンに到達する。

 それを見て、このまま押し切れるのでは、と思ったラテンだったが、やはり現実はそう甘くはない。ラテンのHPバーはイエローを越え、レッドゾーンへと突入していたのだ。あと数分打ち合えば、HPバーは消滅し、ラテンをポリゴン片へと変えるだろう。

 途端、それまで感じていなかった死への恐怖が頭をよぎり、一瞬だけラテンの判断を遅らせた。その一瞬が命取りなる。

 死神の横なぎをギリギリで躱すが、一瞬だけ遅れたことにより十分な距離を稼ぐことができず、後ろへ吹き飛ぶ。

 視界の端にあるHPバーは赤いドットがギリギリ見えるくらいしかない

 

(死ぬ……のか……?)

 

 そう思った瞬間、視界に炎が映りだす。

 ここにきてボスの特殊技が繰り出されるというのか。

 最後は大技で倒してやるという武士道のような情けなのだろうか。だったら死神様はさぞや気分がいいんだろう。

 

「くそったれ……」

 

 一思いに睨んでやろうと首を上げれば、その炎の正体が死神のものではなかったことがわかった。  

 ユイが炎に包まれた巨大な剣を持っている。

 彼女がこちらを振り向き口を動かした。

 それが閉じた瞬間、ラテンの視界はブラックアウトた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞼を持ち上げると白い光が視界に入り込んできた。

 HPバーはMAXまで回復している。

 ゆっくりと上体をあげれば、すすり泣きが耳に入り込んできた。そちらに顔を向けると、アスナが胸の前に両手を当て泣いていた。隣ではキリトが悲しい表情をしている。

 おそらくユイが身を挺してラテンたちを守ってくれたのだろう。

 

「何が、『ありがとう』だよ。ラテンは何もできなかった……何も」 

 

 ラテンがもっと強ければ。

 あるいはユイを失わずに済んだのかもしれない。二人を悲しませずに済んだのかもしれない。

 自分の無力さを呪ったのは、この世界に来てから二度目だった。

 

 

 

 

 




すいません!結構いろいろ簡略化しすぎました。本当にすいません!m(_ _)m

一通り書き終わったら少し修正します。

今回はユイちゃんの話でしたが、死神強すぎますよね。一撃で、攻略組トップクラスの

キリトとアスナのHPを黄色にしてしまうんですから。

SAO編は後2話くらいです。もちろん、SAO編の小話とかはやるつもりです。

すべて終わってからですけどね・・・。まだまだ先は長い!

今後ともこの小説をよろしくお願いします!


編集しました。

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