ソードアート・オンライン~神速の剣帝~   作:エンジ

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キャリバー編
第一話 湖の秘密


GGOでの調査から、すでに二週間がたっていた。俺は、朝ごはんを食べている最中にキリトから<手伝ってくれないか?>というメールを受け取った。

何でも、伝説の武器<聖剣エクスキャリバー>をとりたいらしい。

 

「なあ、エクスキャリバーってそんな強いのか?」

 

俺は、ともに食事している、妹の琴音と居候の聡に聞いた。俺は、元々刀にしか興味がないし、今の<月光刀>も十分強いため、伝説の武器にはあまり関心がなかった。

 

「ええ、それはとても強いらしいですよ。なんでも、ユージーン将軍の<魔剣グラム>よりも強いとか」

 

「うん、でもダンジョンがあまりにも難しくて攻略しようとしている人はあんまりいなかったよ。それなのに、お兄ちゃんは伝説の武器級の武器を簡単に手に入れられたんだからうらやましいなあ・・・」

 

「・・・・たまたまだよ、たまたま。それに聡だって伝説の武器の盾を持ってるじゃんか。なんだっけ?」

 

「イージスの盾ですよ。魔法ダメージをほぼゼロにして、ダメージを三十%軽減するんです」

 

「ずるいよな、魔法をほぼ無効化し、なおかつダメージも減らすなんて・・・」

 

「天理さんは魔法を斬れるんだからいいじゃないですか」

 

「いやいや、大きい魔法とか斬る以前の問題だし・・・」

 

「とか言って、お兄ちゃん結局避けたりしてんじゃん」

 

「あれもたまたまだよ、たまたま」

 

俺は、みそ汁を飲み干す。今日の飯の味もいつもと変わらず最高だった。

 

「・・・・ところで、お前らも行くのか?」

 

「ううん、メールは来たけど、今日は聡君とシルフのパーティーでダンジョン攻略するって約束したから行けないんだぁ」

 

「はい、僕もご一緒したかったのですが」

 

「まあ、仕方ないか。・・・・本当にピンチになったら呼ぶわ」

 

俺は、食器をかたずけると、自室に戻る。集合時間まであと二十分ある。

食後直ぐに横になるのははばかられるが、ほかにやることがないのでALOにダイブする。

 

「リンクスタート」

 

俺の視界は白く包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、リズベットが経営している<リズベット武具店>に到着した。扉を開けるとまだ集合時間まで時間があるというのに、すでに俺以外の全員がそろっていた。

 

「おい、ラテンおせーぞ」

 

「あのなあ、クライン。集合時間までまだ十分もあるじゃねぇかよ」

 

「いつでも三十分前行動だ」

 

「あほか!」

 

「まあ、それよりラテンも手伝えよ、<霊刀カグツチ>の入手」

 

「え、まじかよ。あそこめっちゃ熱いじゃん」

 

「ラテンさん、お兄ちゃんと同じこと言ってる」

 

その場にいた俺とキリト以外が笑い始める。

 

「<光弓シュキナー>も手伝ってね」

 

「・・・・まあシノンには借りがあるからな」

 

「じゃ、人数もそろったことだしさっそく出発するか」

 

「「「「「「「おおー!」」」」」」」

 

俺達は、ヨツンヘイムへと移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁ、何段あるの?この階段」

 

「さあな、・・・・どうせなら数えながら進むか?」

 

目の前にあるのは、出口が見えないほど長い階段だ。

 

「あのなぁ、ノーマルなルートでヨツンヘイムに行こうと思ったら、ワンパーティーなら最速二時間かかるとこをここを降りれば五分だぞ!俺がリーファなら、通行料を一回千ユルドとってここを使わせる商売を始めるね」

 

「あのねぇお兄ちゃん、ここを降りてもトンキーが出口に来てくれないと、ヨツンヘイムの中央大空洞に落っこちて死ぬ以外ないよ」

 

「・・・・・俺は、落ちて死ぬのはごめんだぞ」

 

「・・・俺もだ」

 

俺とクラインがつぶやくと、笑いが漏れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

予測通り五分足らずで、トンネルを突破した。目の前には、雪が降っている白い世界が広がっていた。

アスナが、俺たち全員に凍結耐性を上げる魔法をかけた。

 

「んじゃあ、トンキーを」

 

「わかった」

 

リーファが右手の指を唇に当てて、高く口笛を鳴らす。数秒後に風の音にまじって、

くおぉぉぉー・・・・ん、という鳴き声を出しながら俺達に近づいてきた。初対面の四人が、階段上で後ずさる。

 

「あいかわらず、でかいなぁ」

 

「お、おい。キリト、大丈夫なのか?」

 

「へーきへーき、あいつああ見えて草食だから」

 

「でも、このあいだ地上から持ってきたお魚上げたら、一口でぺろっと食べたよ」

 

「・・・・・へ、へぇ」

 

クラインはさらに後ずさるが、これ以上後ろに下がれない。トンキーは特徴的な象の鼻をクラインに向けて伸ばして、頭をなでる。

 

「うほうほ!?」

 

「・・・ゴリラになってるぞ、クライン」

 

俺とキリトとクライン以外のメンバーがトンキーに乗るが、クラインはまだ乗ろうとしない。

 

「早く乗れよクライン、トンキーがすねちゃうぞ」

 

「そ、そうは言ってもよぉ、俺、じいちゃんの遺言でアメ車と空飛ぶ象には乗るなって言われてよぉ・・・」

 

「このあいだ、お前の爺ちゃんが手作りの干し柿をくれただろ!うまかったからまたください!」

 

キリトが、クラインの背中を押す。クラインが下りると俺とキリトも後に続く。

 

「よぉーし、トンキー、ダンジョンの入り口までお願い!」

 

トンキーは、鼻を高く上げると、空に飛び始めた。

 

「ねぇ、これ、落っこちたらどうなるの?」

 

俺は、下を見る。相当高い。大体高度千メートルぐらいだろう。ここから落ちたことを考えると身震いをしてしまう。

 

「きっと、アインクラッドの外周の柱から次の層へ上ろうとして、落っこちた人たちが、いつか実験してくれるわよ」

 

「「・・・・・」」

 

俺とキリトは、目を逸らす。その場に笑い声が響いた。

あの時のことは思い出したくないな。

俺は、一人で決心していると、急にトンキーがダイブへと突入した。

 

「「「ああああああああ!!!!」

 

「「「「きゃああああああ!!!」」」

 

「やっほーーーーーーう!!」

 

俺は、リーファの精神を見習いたいと思った。トンキーが、急降下したかと思ったら急に減速し始めたため、俺達はトンキーの背中に張り付いた。

 

「あっ、お兄ちゃん、あれ見て!」

 

俺達は、リーファの指さす方向を見ると、トンキーと同じようなモンスターが四つの手を持った人が人型邪神と戦っていた。それは、ヨツンヘイムではよく見かける光景だ。だが、今回は違った。あろうことか、人型邪神とともに三十人以上いる大規模パーティーも象クラゲを攻撃しているのだ。

 

「・・・・あいつらなにやってんだ?」

 

「わからない。でも、もしかしたらスローター系のクエストかも」

 

「・・・・・!」

 

その場にいた全員が息をのむ。もしかしたら、このクエストをこなすことによって、<聖剣エクスキャリバー>を手にすることができるかもしれない。ならなぜ、わざわざ、氷のピラミッドの中に置くのか。

俺は、氷のピラミッドに顔を向ける。しかし、顔を向けたほうの目の前に巨大の美女が宙に浮いていた。

 

「私は<湖の女王>ウルズ。我らの眷属と絆を結びし妖精たちよ」

 

・・・・眷属?

 

一体何のことかわからない俺は、とりあえずこの巨大女王の話を聞くとする。

 

「そなたらに、私と二人の妹から一つ請願があります。どうかこの国を救ってほしい」

 

「ぱぱ、あの人はNPCです。でも少し妙です。コアプログラムに近い言語エンジン・モジュールに接続しています」

 

「・・・・つまり、AI化されているのか?」

 

「そうです、パパ」

 

「ヨツンヘイムの更に下層には、氷の国<ニブルヘイム>が存在します。彼の地を支配する霜の巨人族の王<スリュム>は、ある時狼の姿に変えてこの国に忍び込み、鍛冶の神ヴェルンドが鍛えた<全ての鉄と木を絶つ剣>エクスキャリバーを、世界の中心たる<ウルズの湖>に投げ入れました。剣は世界樹のもっとも大切な根を断ち切り、その瞬間、ヨツンヘイムからイグドラシルの恩寵は失われました」

 

ウルズが左手を持ち上げると、ウルズの湖に伸びていた世界樹の根が、浮き上がり、天蓋方向へ縮小していく。ウルズの湖を満たしていた膨大な水は一瞬で凍結し、超巨大の氷の塊を世界樹の根が上空に引き上げていく。そして、その氷の塊が半分ぐらい天蓋に突き刺さった。その形は、まさに<氷の逆ピラミッド>だ。

氷の塊の最下端に、きらきらと黄金の光が見える。それは、エクスキャリバーに違いない。

 

「妖精たちよ、どうかエクスキャリバーを<要の台座>より引き抜いてください」

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・どうするみんな?」

 

「・・・・こうなったらやるしかないよ」

 

リーファの言葉に、一同が頷く。

 

「どのみち、エクスキャリバーは手に入れる予定なんだから、一石二鳥だな」

 

「ああ、守りが薄いなら願ったりだ」

 

「オッシャ、今年最後の大クエストだ!バシーンと決めて、明日のMトモの一面に載ったろうぜ!」

 

「「「「おお!」」」」

 

クラインの言葉に、全員が唱和すると、トンキーまでもが、翼を大きく動かして「くるるーん!」と啼いた。

トンキーは、上昇し氷のピラミッドの入り口の横に、付いた。

俺達は、トンキーから降り、大きな二枚扉の前に屹立する。

扉が開くと、俺達は陣形を整えると氷の床を蹴り飛ばして、巨城<スリュムヘイム>へと突入した。

 

 

 

 




今回は、戦闘シーンがありませんでした。エクスキャリバー編は三話構成か二話構成にするつもりです。
この作品をよろしくお願いします!!

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