無双しようぜガララさん!   作:筵 水月

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把握

 

(到着っと。はー、疲れた)

 

 

 ジンオウガとリオ夫婦の戦闘の場から去り、巣へと戻ってきた。何故か巣穴が一つになっているが気にしないことにする。

 

 戦いをただ見ていただけなのにやたらと疲労感があった。戦闘自体は未だに続いているようで、表皮で音を感じるがそれに関しても無視することにした。

 

 俺は尾をユラユラと揺らしながら、『気』について考えることにした。

 

 自分でも思うが、非常にわかりやすく単純な性格だと思う。興味のあることがあればテンションが目に見えて高くなるのだから。

 

 

(まず気の種類から考察していこう。緋色の気が身体能力の上昇、蒼色の気が耐久力の上昇だった。仮に名付けるとしたら、緋色の攻撃の気が『剛気(ごうき)』、蒼色の防御の気が『堅気(けんき)』ってところか)

 

 

 若干中二病っぽいのは許してもらいたい。だって思春期なんだもの。オリジナリティ溢れる名付けがしたいんです! 

 

 

(緋色の気の効果は身体能力の上昇だけど、あれはたぶん筋肉に影響していた。つまり、『気』という超常の力が動きをサポートしていたのではなくて、筋力の底上げをしたから身体能力が上がったんじゃないか?)

 

 

 もっとわかりやすく言うと、人間は走る時に自分の筋力で走る。だが、場合によっては追い風によって走る速度が上がる時があるだろう。『気』はそのような追い風的な存在とは違って、人間の筋力自体を補強し、より強靭にする効果があるということだ。

 

 

(まぁ、走った時を例えにしたけど俺は実際に走ったことないから合ってるかわからないんだけどね)

 

 

 ちなみに、なぜ『剛気』が筋肉に影響しているとわかったのか。それはピット器官のお陰だ。

 

 ピット器官と言うのは一部の蛇に備わっている『温度で獲物を認識する』ための器官で、前世で言う所の「サーモグラフィ」と呼ばれるやつだ。

 

 一応ガララアジャラは「蛇竜種」という種族に属するため蛇と同じ器官があるのではないかとは思っていた。だが、ピット器官自体が特定の蛇にしか備わっていなかったりするため、あればラッキー程度に考えていた。

 まあ、幸運な事に実際にあったんですがね。

 

 実はジンオウガ対リオ夫婦の戦闘を見ている時に、目に砂が入った。最初は戦闘を見られなくなったことに驚き、ついで目の見えないという事の怖さに少しパニックになった。

 

 巻き込まれて死んだら堪らないと、その場から逃げようとも考えたが目が見えないのどうしようもなかった。

 と、ちょうどその時に偶然ピット器官での視界の確保に成功したのだ。正直めちゃくちゃラッキーだった。

 

 初めは何がなんだかよくわからなかったが、しばらく混乱しているうちに前世での知識を思い出したのだ。

 

 そんなこんなで、本能的な感覚に頼るところが大きいがなんとかピット器官を使えるようになったわけだ。

 

 

(実際、あの時はやばかったなぁ……突然の危機に臨機応変に対応できなかったし。どんなことにでも即座に対応できるように訓練もしなきゃか……)

 

 

 自然界というのは大変危険な場所だ。何が起こっても不思議ではない。

 

 人間の時でさえ、やれ地震だの火災だのと予想外の事がひっきりなしに起こったのだ。自分がそんな目に遭うはずがないなんて高を括っていてはダメだ。きちんと自分がそのようなトラブルに巻き込まれることを常に想定していなくては。

 

 

(あ、と言うか今更だが、リオレウスの火弾でこの森燃えないのか?)

 

 

 一瞬で血の気が引く。ただ、冷静さは欠かない。

 

 

(待て、一旦落ち着け俺。さっきリオレウスの火弾が目の前で爆発したじゃないか。あの時は木が盾になってくれて、その肝心の木は焦げ目しかついてなかった。つまり、この森の木は火に対する耐性を持っていると考えるのが自然だ。うん、心配する必要はないな!)

 

 

 見事に杞憂に終わった。そもそも、リオレウスがこの森に住んでいて日常的に戦闘をしているとしたら、既に森はなくなっていてもいいはずなのだ。それが起きていないということは、恐らく大丈夫なのだろう。

 

 

(はぁ、なんか今の短い間でめちゃくちゃ疲れたな……もう寝るか)

 

 

 蒼色の気の考察と能力の確認は起きてからにしよう。そう思った俺は巣穴に潜り込み、シャーシャーとうるさい沢山の幼い兄弟に囲まれながらとぐろを巻き、意識を落とした。

 

 

 

 

 

 

 


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