「このバギー一味!! 旗揚げ以来、奪いに奪ってハデに名を上げて来た!!」
ルフィたちが逃げてから数十分。バギー一味が目を覚ました。
(あの小娘……何処かで見た覚えが……)
バギーはルフィたちを連れ去った少女に何か違和感を抱いていた。
(いや、あり得ないな。だが、あの力は間違いない。しかも、あの悪魔の実は……)
白く長い髪の女性の後ろ姿。
かつてある船団でその女性率いる海賊団と戦った。
(あの女は……もう死んだはずだ)
既に忘れられし記憶。
その海賊団はロジャーの死後の後に報じられた。
船長の死、そして解散。
「生命の樹海賊団……」
かつてロジャー、白ひげと並び立った海賊をバギーは口にした。
◇
「あう……」
「あんた気付いたのね……」
私は身体をゆっくりと起こし、立ち上がる。
「あれ……ここは」
「おう! オリガミ、起きたか」
無事に檻から出られたのか、ルフィが私の前にいた。
「ゾロは?」
ルフィがいるのにゾロの姿が見えないので、辺りを見わたす。
「ゾロは町長の家よ」
「やあ、航海士さん」
「あんたもかよ!!」
オレンジ色の髪の少女がゾロの居場所を教えてくれ、私が眠っている間に起きたことを軽く説明してくれた。
バギー一味の追ってから逃げるために檻に入っていたルフィを置いて、私だけ背負って裏通りに隠れたらしい。
「俺、ちょっとゾロの所に行ってくる。あの着ぐるみ男、ゾロ探してたみてぇだから」
そう言って、ルフィは町長の忠告を無視して、ゾロのいる町長の家に向かった。
町長の家は先程私が気絶した所の横だったらしい。
「ワン!! ワン!! ワン!!」
犬の鳴き声……泣き声が聞こえてくる。燃える建物の前で。
その建物は犬の主人の形見。
私とルフィは無言のまま、ある所に進む。
「! てめぇは……」
先程ルフィを吹き飛ばしたバギー一味の前に私たちは出る。
猛獣使いのモージはルフィが死んだと思っていたが、私からしてみればあれぐらいでは死ぬ訳がない。
「また、俺の前に現れるってのバカだ!! 頭を噛み砕いてやれっ!!」
モージは乗っていたライオンに命令し、こっちに向かって来る。
「ふんっ!!」
私は向かってくるライオンの頭を地面めがけて殴り付けた。
「!!!? リッチー……!??」
ライオンの頭は地面に刺さり、沈黙した。
「なんだ!! ……お前……何なんだ!!?」
「海賊だが?」
ルフィの言う通り、私たちは海賊。
「よ……よしっ! お前たちにな! 好きなだけ宝をやろう!! そ……それと、ここは一つ穏便に謝ろうと思う!! ごめん!!」
モージは私たちの実力を知るいなや謝り始めた。
だけど……それはもう無意味。
「もう、謝んなくていいよ。今さら何しようとあの犬の宝は戻らねえんだから」
そうさ、もう戻らない。
だから……。
「「だから、俺は(私は)お前をぶっ飛ばしに来たんだ!!!!」」
ルフィはモージを引き寄せる。
「あ……あああおい!! や……やめてくれぇあああああ!!」
そして、私とルフィは思い切りモージの顔を……
「助け……」
殴り付けた。