「着きましたゾロの旦那!!」
ルフィがいる島へと到着したが、まさかバギーたちがいる島と重なってしまったことに私は少し不安を感じていた。
だって、ルフィの事だからバギーの禁句を口にするでしょ?
いや、絶対に言う。これは確信できる。
「じゃあとりあえず、そのバギーってのに会わせてくれ」
それ程大きな島でもないし、ゾロの言う通りバギーの所に行けばルフィに会える気がする。
そうと決まれば、私たちは三人組に案内されながらバギーのいる酒場へと向かう。
◇
「女一人に何人がかりだ」
「え……」
「ゾロォ!!」
ド派手な爆発音が聞こえ、私たちは酒場の屋上へと素早く上る。
そして、そこでは檻に入れられたルフィがいた。しかも大砲を向けられて。
「鳥に連れて行かれた次に檻の中って、一体何をやったらそうなるのよ……」
「オリガミ! これを開けてくれよ!!」
「はい、はい」
私は〈絶滅天使〉を部分展開し、檻を斬ろうとした時だった。
「へっへっへっへっへっ!!」
「あーっはっはっはっは!!」
何か笑い声が聞こえるのでゾロの所に目を向けた。
そこにあったのはバラバラに斬られたバギーがあったのだ。
「何が、そんなに可笑しい!!」
「ゾロ! 気を抜いてはダメ!!」
「はっ?」
私はバギーが食べた悪魔の実が何なのか知っていた。
それは、ゾロとは最も相性の悪い類であることも。
「ガフッ……」
ゾロの脇にナイフが刺さる。
しかも腕だけが浮いて。
「遅かったか……」
バギーが食べた悪魔の実は……。
「バラバラの実……!! それが、俺の食った悪魔の実の名だ!! 俺は斬っても斬れないバラバラ人間なのさ!!」
ルフィとは正反対の悪魔の実。
ゾロが手負いになってしまったのは不味い。
今の私ではこの数を相手するのはキツイ……。
「ゾロ……逃げるわよ」
「! ……何っ!?」
ゾロは私の判断に疑問を持つが、ルフィと私の目を見る。
「了解」
「馬鹿たれが逃がすかロロノア・ゾロ!!」
バギーは逃がすつもりはない。
私は今出せる力を開放した。
「!?」
風が私を中心に起きる。
「どう言うこと……」
近くにいた少女が目にしたのは、バギー海賊団の船員が次々と倒れていく光景だった。
全員、白目を向いて気絶している。
バギーは私が使った力が何なのか知っていた。
「……今の内に」
バギーの気が逸れているうちにここから脱出をする。
「小娘……その力は……」
バギーが何かを言い出そうとしているが、私は脱出を第一に考えていた。
「〈絶滅天使〉―――【砲冠】」
部分展開した〈絶滅天使〉を王冠形にする。
不完全な状態で私は砲撃を行う。だが、不完全と言え相当な威力があるそれは目眩ましには十分だった。
「ぎゃああああああ」
バギーと数名の船員の悲鳴が聞こえるが、そんなことを気にしている暇はなかった。
砂煙が出来た今の内に……。
「どチキショーが逃がさんぞぉ!!」
本当にタフだな……。
私はバギーの運に冷や汗を掻く。
「行くわよ!!」
本日だけでも相当な力を使っていた。意識のあるうちに……。
私はルフィが入った檻を掴む。
「〈絶滅天使〉―――【天翼】」
本来は飛行に使う物だが、私はその遠心力を使い檻ごと引っ張った。
檻は浮き上がり、そのまま下へと落とす。〈絶滅天使〉が使えるだけ私は移動する。
「もう、だいぶ酒場から離れた」
檻、ルフィ、ゾロを引っ張る私。
流石に限界が訪れ、地面に倒れ込む。
倒れこんだ時に横に犬がいた。
「犬?」
私は建物に背を預ける。
薄れていく意識の中、私は眠りについた。