ワンピース 絶滅天使と行く   作:ぬっく~

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第1話

豊・名声・力、かつて、この世の全てを手に入れた男“海賊王”ゴールド・ロジャー。

彼が死に際に放った一言は、全世界の人々を海へと駆り立てた。

 

「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやるぜ……。探してみろ、この世の全てをそこに置いてきた」

 

世は、大海賊時代を迎える―――

 

 

 

 

東の海にある小さな村に一年ほど前から停泊している海賊船があった。

村はいままでと変わらず平和だった。

 

「おい、ルフィ。何をする気だ」

 

海賊船の船首で一人の少年がナイフを片手に持ち、クルーたちに何かを宣言している。

 

「おれは遊び半分なんかじゃないっ!! もう、あったまきた!! 証拠を見せてやるっ!!!」

 

「だっはっは、おう! やってみろ。何をするか知らねぇがな!」

 

「また、ルフィが面白ェ事やってるよ」

 

村の少年、モンキー・D・ルフィは持っていたナイフを自分の左目の下に刺した。

 

『な……』

 

クルーは慌ててルフィを近くの診療所へと連れっていった。

本当に平和な村だった。

 

 

 

 

「野郎共、乾杯だ!!」

 

村の酒場でクルーたちは朝っぱらから、酒や肉を食べている。

 

「本当に飽きないのねぇ……あんたたちは」

 

酒場のバーで一人の少女が本を読んでいた。

 

「お! オリガミも来ていたのか。ほれジュースだ」

 

「ありがとうございます。シャンクスさん」

 

ルフィと同い年の少女、オリガミはシャンクスからジュースを受け取ると今読んでいた本を背にして飲み始める。

 

「シャンクス!! おれはケガだって、ぜんぜん怖くないんだ!! 連れってくれよ、次の航海」

 

「あんた、まだそんなことを言っているの?」

 

毎回のごとくルフィはシャンクスに船に乗せてくれと言ってくる。

 

「オリガミはいいのかよ!!」

 

「私は10年たったらにするわ」

 

「お! 分かっているな。オリガミは」

 

シャンクスは飯を食いながら話に乗ってくる。

 

「今のルフィの身体では足手まといだと、シャンクスさんは言っているのよ?」

 

「ぐっ……」

 

ルフィはオリガミの気迫に負けたのか、おとなしく下がった。

 

「シャンクス」

 

「なんだ」

 

「あと、どれぐらいこの村にいるの?」

 

ルフィはおとなしく席にすわり酒場の店主のマキノさんが出した料理を食べる。

 

「そうだなァ、この村を拠点に旅をしてもう、一年以上たつかな。あと2・3回航海したら、この村を離れてずっと北へ向かおうと思ってる」

 

「ふーん」

 

始まりがあれば終わりがあるようにシャンクスは後少ししたらここを出て行ってしまうことをルフィに話す。

その時、酒場の扉が蹴り飛ばされてきた。

 

「邪魔するぜェ」

 

入って来たのここらでは見ない人たちだった。

 

「おれ達は山賊だ。―――が……別に店を荒らしに来た訳じゃねェ。酒を売ってくれ、樽で10個ほど」

 

オリガミは山賊の顔を見るなり彼が賞金首だということを思い出す。

 

「ルフィ、こっちに来なさい」

 

「なんでだ?」

 

「いいから」

 

ルフィをシャンクスから離すと、山賊棟梁ヒグマはシャンクスが手渡そうとした酒瓶をかち割った。

その後、軽く荒らしてから山賊共は酒場を後にした。

 

「ぷっ!!」

 

「っだ―――っ。はっはっは、何てざまだ、お頭!!」

 

「はでにやられたなァ!!」

 

クルーたちはシャンクスのことを笑う。

 

「はっはっはっはっは!!」

 

「なんで、笑ってんだよ!!!」

 

唯一ルフィはこのことに満足いってなかったようだ。

 

「あんなの、かっこ悪いじゃないか!!!なんで戦わないんだよ。いくら、あいつらが大勢で強そうでも!! あんな事でされて笑ってるんなんて男じゃないぞ!!! 海賊じゃないっ!!!」

 

「…………」

 

オリガミにとってはこれがよかった気もするが、ルフィは違ったようだ。

 

「……ルフィ。シャンクスさんは酒をかけられたぐらいじゃ怒らないのよ」

 

「どうしてだよ!!」

 

「そんな程度で怒っていたらキリがないからよ」

 

海に出ればこんなことはしょっちゅ起こるだろう。

だからこんな程度で喧嘩する必要もないとシャンクスは判断したのだ。

 

「しるかっ!! もう知らん。弱虫がうつる!!」

 

そう言ってルフィは酒場を後にしようとした時、シャンクスが腕を掴んで止めようとした。

だが、ルフィの腕が伸びてしまった。

 

「手がのびた……!!!」

 

酒場にいた全員が驚く。

 

「ルフィ!! あんたいつ悪魔の実を食べたのよっ!!」

 

「悪魔の……実?」

 

「そうよ!! 海の秘宝と呼ばれる食べ物で食えば特殊能力をもらう代わりに一生泳げない身体になってしまうのよっ!!!」

 

「え――――――っ!!! うそ――――――!!!」

 

オリガミは頭を抱え、ルフィのバカさかげんに呆れていた。

 

 

 

 

数日後、事件が起こった。

酒場にあの時来た山賊共がルフィをぼこっていたのだ。

 

「ルフィ!! あんた何をやっているのよ!!」

 

事情はある程度聞いていたので分かっていたが、ルフィの行動は悪かった。

 

「オリガミ……」

 

「あの時の小娘か」

 

ヒグマは私のことを覚えていたらしい。

 

「あんたたち……それ以上ルフィに何かしてみなさい。殺すわよ」

 

「ぷっ」

 

『くっはっはっは』

 

山賊共がオリガミの言葉に笑い出す。

 

「殺すだって? やってみるがいい」

 

ヒグマは刀を取り出し、ルフィの首に目掛けて振り下ろした。

だが、その刀はルフィの首に到達することはなかった。

 

「なっ!?」

 

剣は根本から折られていたのだ。

ヒグマはすぐさまオリガミに目を向ける。

そこにいたのは頭部を囲うように浮遊したリングから伸びた、光のベールをつけたオリガミがいた。

 

「〈絶滅天使(メタトロン)〉―――【光剣(カドウール)】」

 

オリガミから放たれる光線は山賊共を襲う。

ヒグマは後退し、その隙にルフィをこちらの元へと引き寄せた。

 

「無茶するんじゃないよ……」

 

「うわああああああ」

 

助けたルフィはオリガミの胸元で大泣きする。

 

「このクソガキが……」

 

オリガミが放った光線を逃れたヒグマと下っ端は刀をこちらに向けてくる。

 

「港に誰も迎えがないんで、何事かと思えば……いつかの山賊じゃないか」

 

聞き覚えのある声に全員、目を向ける。

 

「シャンクスさん」

 

丁度、シャンクスが帰ってきたのだ。

 

「オリガミ、お前も能力者だったんだな」

 

「まだまだ……だけどね」

 

オリガミは光のベールを消し、シャンクスはルフィに目を向けた。

そして、最後に山賊共の方に向き直った。

 

「いいか山賊……。おれは酒や食い物を頭からぶっかけられようが、つばを吐きかけられようが、たいていの事は笑って見過ごしてやる。…………だがな!!」

 

この時のシャンクスは怖かった。

 

「どんな理由があろうと!! おれは友達を傷つける奴は許さない!!!!」

 

「はっはっはっは、許さねェだと!? ブッ殺しちまえ野郎共!!!」

 

下っ端共はシャンクスたちに襲いかかるが、たばこを吸っている副船長が全てを片づけていく。

そして最後に残ったのはヒグマだけだった。

 

「……や!! 待てよ……仕掛けて来たのは、そこのガキだぜ」

 

「どの道、賞金首だろう」

 

「…………」

 

何を言おうがヒグマに後は無かった。

苦し間際にヒグマは煙幕を張った。

 

『!? 煙幕だ!!!』

 

「来いガキ!!」

 

「な!?」

 

「うわっ!! くそ!! はなせ、はなせェ!!!」

 

煙幕のせいで前が見えず、オリガミとルフィはヒグマに攫われてしまった。

 

 

 

 

ルフィたちがいたのは海の真ん中だった。

 

「はっはっはっはっは!!! まんまと逃げてやったぜ!!」

 

オリガミは不完全な力な為、力の限度が1日1回だった。

その為、ヒグマに抵抗出来なかったのだ。

 

「さて、てめェらは人質として一応連れて来たが、もう用なしだ」

 

「お前が死んじまえ!!」

 

ルフィは抵抗するが体格の差に負けてしまった。

 

「あばよ」

 

そしてオリガミとルフィはヒグマに蹴られ海へと落とされた。

悪魔の実を食べたルフィとオリガミは泳げない。

オリガミは必死にルフィを助けることに専念する。

ヒグマはこの海域の主である海王類に喰われ、次と言わんばかりにルフィとオリガミに襲いかかってかた。

だが、ルフィとオリガミは喰われることはなかった。

 

「…………!! シャンクス」

 

シャンクスが助けに入り、間一髪の所で助かったのだ。

 

「失せろ」

 

その一言で主は怯え始めた。

そして、主は逃げ出した。

 

「恩にきるよ、ルフィ。マキノさんから全部聞いたぞ。おれ達のために戦ってくれたんだってな」

 

ルフィとオリガミを助けるための犠牲は大きかった。

 

「おい泣くな、男だろ?」

 

「……だってよ……!!! ……………………!!! ジャングズ……!!! ……………………!!!」

 

それは………………。

 

「腕が!!!」

 

左腕と引き換えにルフィとオリガミは助かったのだ。

 

「安いものだ。腕の一本くらい……。無事でよかった」

 

シャンクスが航海に連れていってくれない理由。

海の過酷さ、己の非力さ、なによりシャンクスという男の偉大さをルフィは知った。

こんな男にいつかなりたいと心から思った。

 

 

 

 

そして、今日はシャンクスが旅立つ日だった。

オリガミは静かに酒場で本を読んでいる。

 

「見送りにはいかないの?」

 

「大丈夫だよ、マキノさん。私はもう、済ましてあるから」

 

外ではルフィが海賊王になると叫んでいた。

そして、少年と少女の冒険は10年後のこの場所から始まる。

 

 

 

 

10年後。

 

「とうとう、行っちゃいましたね、村長」

 

「村のハジじゃ、海賊になろうなんぞ!」

 

マキノと村長は見送っていた。

 

「やー、今日は船出日和だなー」

 

「そうね」

 

その時、ルフィとオリガミの前に近海の主が姿を表した。

 

「10年鍛えた、おれの技をみろ!!」

 

主は躊躇なく襲いかかるが……。

 

「ゴムゴムの…………銃!!!!」

 

ルフィの右ストレートパンチが決まり、主を倒した。

 

「思い知ったか魚め!!」

 

「お見事」

 

オリガミは拍手を送る。

 

「よっしゃ、いくぞ!!! 」

 

「はいはいっと」

 

「海賊王におれはなる!!!!」

 

まだ見ぬ彼の仲間達を巻き込まんと小さな船は海をゆく。

かくして大いなる旅は始まったのだ!!!


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