どうも、今回から新章です。
シリアスが続くやもしれませんが、アニメを見ていた人なら大丈夫でしょう!!(多分)
では、『μ's崩壊編』どうぞ。
まだシリアスは始まらないから!!
真姫の脱退騒動から早くも数日がたった。
俺の説得も無力に近く、結局は真姫の最後のわがままで真姫の父親も許してくれた。まあそれがなければ今頃俺は総合病院の社長を殴っていて少年院にでも送られていたかもしれないと思うと、終わり良ければ全て良しと満面の笑みで言ってやる。
それからというもの、何故か頻繁に真姫が家に寄らないかと俺を誘ってくる事が増えた。一度理由を尋ねてみると、何やら真姫パパが俺と話したい事が色々とあるそうな。……嫌な予感しかしねえじゃんそれ。
よくよく考えてみればだ。俺は感情に任してたとはいえ、あの病院社長にタメ口で乱暴な口調、胸倉掴んで勝手に過去の事を説教して、しまいには殴ろうとまでしていた。……うん、よくよく考えなくても何されても文句言えないね俺。
真姫の口から出る真姫パパの色々話したい事が、俺の直感で危険だと警戒音が鳴りまくっている。新しい薬の実験台になってくれとか地下の謎研究室に連れて行かれてそのまま帰れなくなるとか絶対そんなんだよ。拓哉さんまだ死にたくない。
何でも真姫ママもまた来てほしいとか言っていたらしく、挙句の果てには真姫まで普通に誘ってくる。……ちょっとやだ、全力で俺の事潰そうと考えてるわよこの親子。SP辺りが俺を捕まえにきたら遺書残して家に帰ろう。普通に帰るんかい。
とまあ、後日談を言うとこんなところだ。
主に俺の命が物理的に危ないという事は分かっていただけたかと思う。もしボロボロになるような事があればすぐさま病院に行っていつでも逃げれるように治療してもらわねばならない。……あれ、近くの病院って西木野総合病院しかないじゃん詰んだ。
一応そんな平和な日常を送りつつ、いつも通りにμ's練習を見て、いつも通りに朝に家を出る前、いつも通りにスクールアイドルのサイトを見てランキングチェックをしていたらだ。
「……まじでか」
μ'sが19位になっていた。
「凄いってもんじゃないよ!19位だよ19位!!」
朝から騒がしい高坂家の長女である。でもまあテンションが上がる気持ちも分かる。何たって19位だ。今サイトに登録している数あるスクールアイドルの中で19位と考えれば、19位というのは十分に凄いというのが分かる。
それに。
「ラブライブに出場できるかもしれないんだよ!!」
最大の理由はこれにある。ラブライブに出るにはいくつか条件がある。まず最初に初歩的な事、つまりはスクールアイドル名をサイトに登録する事だ。それによって正式にスクールアイドルがサイトに動画を上げ、良いと思った人がそれに投票するというシステムが確立する。
そして2つ目、ランキングで20位以内に入る事。これが簡単に見えて実はとても難しい。数あるスクールアイドルがいて、その全部が20位以内をこぞって狙いにくるのだ。まさにアイドル戦争。全ての都道府県から想定しても軽く200は超えるであろうスクールアイドル。
それだけで20位以内に入るという事がどれだけ難しいかが分かる。なのに、それをこいつらは、μ'sは達成している。しかも短期間でだ。そのおかげもあってかサイト内でも注目されている。短期間で人気になった注目アイドルμ's。
「ラブライブに出場できれば、きっと学校もなくならない……!」
「穂乃果……!」
「穂乃果ちゃん……」
それを目標に今まで続けてきた。廃校を阻止するために、なくならせないために、今でこそやりたいから楽しくやっている穂乃果達だが、そもそもの話が廃校阻止するためにスクールアイドルやろうぜみたいな中島的なノリで始まった気がする。磯野と野球やってろ中島。
「ラブライブだ……!」
穂乃果が噛みしめるように口に出す。無理もない。20位以内になりますます注目度も上がって、音ノ木坂学院に興味を持つ中学生が増えれば、それだけ廃校阻止に繋がるのだから。それに、このまま順調に順位を保っていればラブライブに出場もできるかもしれない。
そんな2つの高揚感を、あの穂乃果が抑えられるはずがないのだ。
「ラブライブだァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
「……うん、気持ちは分かるけどここは外だから近所迷惑も考えような?」
気持ち爆発したまま暴発してますよ穂乃果さん……。
――――――――――――――――――――――
「やったじゃーん!」
「クラスで今凄い話題になってるよ!」
そんなこんなで音ノ木坂学院の廊下。俺達が登校して教室に向かっていたら、いつも穂乃果達のライブの準備を手伝ってくれるヒデコ、フミコ、ミカの3人が穂乃果を見つけたと同時に駆け寄ってきてこんな状況になっている。
何でも既にクラス内でμ'sの事が話題になっているらしい。いやあ、若者って流行りには敏感だね。……俺も若者じゃん。
「くぅ~ん♪」
「よしよし、よく頑張った~!」
まるで犬が褒めて褒めてと尻尾をフリフリ振っているのが幻覚で見えてしまいそうなほどに穂乃果は犬っぽくなっていた。ミカはそれを気にせず平然と穂乃果の顎あたりを犬を撫でるかのように撫でている。何アレ、ああいうプレイなの?俺も参加していいですか。
「穂乃果の事だからすぐ飽きちゃうかと思ってたんだけどねえ」
「てへへ!」
それ褒められてるようであんまり褒められてないぞ穂乃果。遠回しにお前はいつも飽き性だって言われてるぞ。気付け、気付くんだ穂乃犬!!ほのけんって別に北斗の拳の略じゃないから。ことりなら南斗水鳥拳できそう。名前ピッタリじゃん。
「でもさあ、私達ってラブライブに出るμ'sの初ライブ見た事になるんだよね~!」
「感慨深いね!」
「なるほど、俺もそこに居合わせた事になるのか」
「たくちゃんは私達の手伝いなんだからいて当たり前でしょ!」
お、おう……そうだな。見守る必要があるんだから見てて当たり前か。手伝いっていう手伝いやってやれてる気がしないからたまに忘れる時がある。ヒフミの方が役に立ってんじゃね?
と、俺の存在意義って何なんだったっけ?と思っていたところに後ろから声をかけられた。
「穂乃果、拓哉、おはよ!」
「あ、絵里ちゃんおはよう!」
「よお、絵里」
軽く絵里と挨拶を交わし、手を振りながら去って行く絵里を見送る。するとヒフミトリオがいきなり騒ぎ出した。
「穂乃果、拓哉君!先輩だよ!?」
「ああ、大丈夫大丈夫!先輩後輩なしにしようって話したんだ~!」
「凄い、芸能人みたい!……あれ、でも拓哉君はお手伝いなのに、敬語じゃなくてもいいの?」
「俺もそう思ってたんだけど、あいつらが敬語はやめてくれって言うからタメ口になった」
「あいつらって……」
もう3年の事を普通に扱っているあたり、俺は慣れ過ぎているのかもしれないが、絵里相手に教室で怒鳴り合ったり、しまいにはどこぞの総合病院の社長相手に胸倉掴むくらいには俺の感覚は狂ってきているのかもしれない。嫌な慣れだなオイ。
「あっ、そうだ。でねでね!」
俺達の話を中断させるかのように入ってきたフミコに、俺達は颯爽と教室の方へ連れて行かれた。
「サイン?」
「これから有名になるんだから、記念に1枚書いてよ!」
俺まで引っ張られるから何事かと思ったけど、俺関係ないじゃん。スクールアイドルの穂乃果なら分かるけど俺全然関係ないじゃん。
「さっき園田さんにも書いてもらったんだけど……」
そう言ったミカの色紙を少し凝視する。サインならすぐ見つかると思ったが、パッと見じゃ分からない。サインって真ん中にデカデカと書くものじゃないのか?海未のサインって一体どこ、に……。
「……おい、そこの小心者ブルーヘアー」
「し、仕方ないでしょう!そ、そういうのにまだ慣れてないのです!……恥ずかしいですし」
最後のが本音だろ。左下の隅っこに小さくサイン書くやつがあるか。自分の持ち物に名前書く小学生じゃねえんだぞ。小学生ならむしろ名前書いててもいつの間にか自分で無くす究極技も付いてくる。
「ちっさ!」
「でしょ……恥ずかしいからこれが限界だって言うのよ。だから穂乃果はおっきく書いてね!」
「じゃあ……」
ミカの頼みに穂乃果はお望み通りと言わんばかりにでかくサインを書いていく。しかし、しかしだ穂乃果さんや。
「ごめん、入りきらなかった~」
海未とは真逆に穂乃果のサインはでかすぎて最後まで字が入りきっていない。穂乃果の果だけがとても小さくなっている。これじゃ語尾を小さく言ってほしいのかと思ってしまう。穂乃果ェ……。うん、これは違うか。
「本当アンタ達極端よね……」
ヒデコが呆れた声を出す。そうだ、もっと言ってやれ。真逆だからこそこいつらはある意味で噛みあうのかもしれないが。
「さっき矢澤先輩にも頼んだんだけど……」
「お前らって結構行動派だよな」
ヒフミトリオの行動力がパない。いち早く誰よりもサイン貰おうと行動している。ずる賢いと言うべきか素直と言うべきか……。
「『すいません、今プライベートなんで』って言われちゃってさ」
「私達、芸能人ってわけじゃないし……」
徹底しすぎかよあの自称エリートアイドル。にこだっていつも準備を手伝ってくれるヒフミトリオを知っているはずだからサインの1枚2枚くらい書いてやってもいいのに。
「あれ?そういやことりちゃんは?」
にこのアイドル像に呆れていると、穂乃果が思い出したように呟いた。そういえば確かにことりがいない。あの大天使コトリエルがいないのに気付かないはずがない……おのれにこ、ヒフミトリオの代わりに俺がにこにサイン書いてもらってやるからな。
「カバンもまだないし、教室来る前にトイレでも行ってんじゃねえの?俺にも何も言ってこなかったし」
「それが本当だとしてもたくちゃんが言っていい事じゃないよそれ」
「拓哉君、最低です」
「拓哉君それはないわ」
「デリカシーって知ってる?」
「拓哉君に言ったら言ったでそれは大問題のやつだよ」
女の子達が俺を言葉というナイフで何回も突き刺してくるんですけど。オーバーキルじゃないですかね。あっ、言葉だけじゃなく俺を見る目がまるで養豚場にいる豚を見る目をしていますね。これはジョセフもリサリサに軽く恐怖を抱く理由も分かるわ。超怖い。
「せんせー、女の子達が僕の事をいじめてきまーす」
「私も聞いてたぞー。全面的に岡崎が悪いからあとで教室に運ぶつもりだった大量のプリント持ってこい」
「うっかり職員室にプリント忘れてんじゃねえぞ教師」
予鈴が鳴る前からいた山田先生までも俺の事をいじめてくる件について。というか先生の方が悪質じゃねえか。生徒に任せる事じゃないと思います!!
結局、先生のせいで俺は職員室に行くはめになり、教室に戻った時には既にことりはいつも通り席に着いていた。
――――――――――――――――――――
ランキングの事は当然他のメンバーも知っていた。
「ふわぁ~……!!出場したらここでライブができるんだあ!!」
「凄いにゃ~!!」
放課後。早々に着替えを終えた穂乃果達はPC画面をうっとりと見惚れていた。画面に映っているのはラブライブに出た場合、そこでスクールアイドル達が踊るであろう会場。パッと見ただけでもスクールアイドルの大会という規模がどれだけ凄いのか分かってしまう。
「なあにうっとりしてんのよ。ら、ラブライブ出場くらいで……やったわね……にこ……!」
最後の方本音漏れてますよ矢澤パイセン。思いっきり喜びの声が出てますよ。まあ、にこがそんな気持ちになるのも無理はない。何せメンバーの中で1番にこがラブライブ出場を目標にしていたのだから。
1人の時じゃ決して叶えられなかったものを、ここにきてようやく叶えられそうなとこまできたんだし、ここは野暮な事は言うまい。俺だって空気を読む時はちゃんと読む。今朝のはあれだ。俺の周りが女の子しかいないからきっと俺も女の子に感化されて女子化していたのだ。うん、気持ち悪いな。
「まだ喜ぶのは早いわ」
「いや喜んでたのはに―――、」
「ああん?」
「何でもないですごめんなさい生まれてきてごめんなさい」
ツッコミもダメでしたか。これが空気読めないという事なのだろうか。あれか、世間で言うKYってか。KYってことりヤバイって意味じゃないの。可愛い的な意味で。違うか、違うな。
「ラブライブに出るのが決定したわけじゃないんだから、気合い入れていくわよー!!」
「気合いいれてけお前らー!!」
「おお、たくや君も気合い入ってるにゃー!」
とりあえずノッておく。あれだ、場に身を任せる事も時には必要なのだ。拓哉さん今日で色々学んだから。もうきっと失敗はしないはずだ、多分。
「その通りよ」
にこと一緒に拳を上げていると、絵里と希が来た。ちょっとやだ、まさか今の見られてたのかしら。右手をそっと下ろしてなかった事にする。何やら希が微笑みながら俺を見てくるが、気のせいだと思いたい。あっち向いてろ。
「7日間連続ライブ!?」
「そんなに!?」
絵里がPCを操作し、A-RISEのサイトを開く。そこには7日間連続でライブをすると書かれている。
「多いな」
「ラブライブ出場チームは、中間後の時点で20位以内にいたグループ。どのスクールアイドルも、最後の追い上げに必死なん」
「なるほど、それも当たり前か」
今のランキングを見て、諦めているスクールアイドルはまだきっといないはずだ。どのグループも最後のどんでん返しを狙っている可能性の方が大きいって事か。
「20位以下に落ちたとこだってまだ諦めていないだろうし、また追い上げて、何とか出場を勝ち取ろうとしているスクールアイドルもたくさんいる」
「つまり、これからが本番ってわけね」
「ストレートに言えばそういう事。喜んでる暇はないわ」
真姫の言葉に絵里は頷く。ここで20位以内になれたからといって気を抜いたら簡単に順位を抜かれる。むしろ今だからこそもっと頑張って自分達ももっと上位に行こうと思うくらいの気持ちが必要だという事だ。
「よーし、もっと頑張らないと!」
「とはいえ、特別な事を今からやっても仕方ないわ。まずは目の前にある学園祭で、精一杯良いステージを見せる事。それが目標よ」
さすが絵里だ。生徒会長やってるだけの事はある。今やるべき事をしっかりと把握していて、余計な事は視野に入れない。あくまで今まで通りを続ける。それが最善だってちゃんと分かってるんだ。
「よし、そうとなったらまずはこの部長に仕事をちょうだい!!」
にこがいつにも増してやる気になっている。部長として何かしたくて仕方ないんだろう。単純だなオイ。それに絵里は待ってましたと言わんばかりににこへと笑顔を向けた。
「じゃあにこ、うってつけの仕事があるわよ!」
「……何?」
着いてきなさいと言われ、全員が絵里の後ろを着いて行く。
「なるほど、これは重要だな」
やってきたのは生徒会室。そこで見たのは福引でもやっているのかと勘違いしてもおかしくはないであろうくじがあった。
「何で講堂がくじなわけ……」
「昔から伝統らしくて……」
どんな伝統だよ……。というか俺達の前にいた女の子達は見事行動1時間の使用権を手に入れていた。君ら書道部って言われてたよね?講堂使う必要ありますかね?
「では続いてアイドル研究部の……わっ!?」
「見てなさい……!!」
おいにこ、生徒会の子怖がってるから睨むのやめなさい。必死になる気持ちは分かるけど。
「にこちゃん、頼んだよ!!」
「講堂が使えるかどうかで、ライブのアピール度は大きく変わるわ!!」
そんなプレッシャーかけないであげて!ああ見えて繊細なところもあるんだからきっと!!きっとね!!
緊張の面持ちでにこは恐る恐るくじを回していく。その変な遅さが余計に周りの緊張感を増やしているような感覚に襲われる。そんな時、凛がおもむろに呟いた。
「でも逆ににこちゃんなら当てちゃいそうな気もするけどにゃー」
「おいバカ何でそういう事言うの!?それは完全にフラグとしか捉えようがないじゃん!!これ絶対ハズレ引いちゃうやつじゃん!!絶対講堂使えないや―――、」
「「ああっ……」」
俺の声を遮るように、後ろからにこと穂乃果の微かな声が聞こえた。小さな声だったのに、何故かそれを鮮明に聞こえるくらいには、今のにこ達の声は印象強かった。希望に満ち溢れた声とは真逆の絶望しか感じられない声だったから。
信じられずに、俺は結果を見ようとくじの方へ向かう。分かってはいても、ちゃんと見るまでは認めたくなくて。
そして、くじを見ると。
金色の玉ではなく、真っ白な、何もないただの玉がそこにはあった。
次いで、生徒会の女の子の声が室内に響いた。俺達を現実という絶望へ叩き落とすかのような言葉で。
「残念!アイドル研究部、学園祭で講堂は使用できません!!」
それを合図に、9人の女神とどこにでもいる平凡な高校生は崩れ落ちた。
「ツイてねえ……」
さて、いかがでしたでしょうか?
まだシリアスは始まらないので!片鱗はありましたけどね←
これから書くのが楽しみだー(白目)
いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆9、☆10)を入れてくださった、
龍紋さん(☆10)、アオモさん(☆10)
計2名の方から高評価(☆9、☆10)をいただきました。
ありがとうございます。
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!
【告知】
現在、『奇跡と軌跡の物語』とは他に、『悲劇と喜劇の物語』という作品も投稿しています。
同じ主人公の岡崎がμ'sとバトルを繰り広げるので、そういうのも大丈夫な方はぜひご覧になってみてください!!
あちらは不定期更新ですが、感想とかお気に入りとか評価の伸びによっては更新速度が早くなったり←
『μ's崩壊編』って自分で名付けたけど、割と怖い名称だな~(笑)