ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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どうも、いつも月曜に投稿してるからまた月曜だと思った?
残念!今回は水曜でした!!(間に合わなかっただけ)


さあ、今回で合宿編も完結です!


ではどうぞ。




60.見てくれている人は必ずいる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぁ~、くぁ……っ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 珍しく目覚ましが鳴る前に目が覚めた。

 というよりよくある二度寝をする前の目覚めみたいなものだ。だからこのまま俺は優雅に二度寝を堪能する―――、

 

 

 

 

 

 

「わけにはいかねえよなあ……」

 

 

 

 携帯で時間を見れば目覚ましが鳴る10分前くらいだった。さすがにこれじゃ二度寝もできない。という事で体を起こす。ふむ、高級なふかふかベッドで寝て、朝の風をベランダから受ける。それが結構気持ちいい。

 

 

 

 結局のところ。

 絵里は昨夜のあのあと穂乃果達のいる1階へ戻って行った。絵里は普通っぽそうだったけど、俺はといえばもう普通に胸がドッキドキしてましたね、はい。だって金髪クォーター美少女だよ?ドキドキしない方がおかしくない?おかしくなくなくなくなくなくない?どっちだよ。

 

 まあ、俺の話を聞いて絵里がどう思ったのかまでは分からない。真姫は希に任せると言っただけだし、絵里からは俺は何もしないのかと思われているのかもしれない。これに関してはそれ以上の事を言ってない俺が悪いけど。

 

 しかし、全部を任せるわけじゃない。希だって絵里を救うまで、μ'sに困難があった時は影ながら支えてくれた事を俺は知っている。だったら、俺も何もしないわけにはいかない。影から何かしてやれる事だってあるはずだから。

 

 このままじゃ終わらない。俺にだって何かしてやる権利はある。それが手伝いってもんなんだから。それをドキドキしてたせいで絵里に全部言えなかった俺は相当なヘタレなのかもしれない。自分で認めてしまう辺り俺はヤバイ。

 

 絵里は何やら満足そうに帰っていったが、俺は俺でそのあと1時間は寝れなかったよちくしょう。絵里の頭の感触がまだ左肩に残ってるし、女の子特有の良い匂いしたし、思春期男子真っ盛りな拓哉さんには眠気を無くさせる特効薬ですの事よ!!それをテスト前に発揮させたい、切実。

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

 

 

 

 

 と、風を受けながら浜辺の方に視線をやってみれば、砂浜にいる希のとこへ真姫が向かっていた。何してんだあいつら。俺も行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、拓哉君も来たやん。早起きは三文の徳、お日様からたーっぷりパワー貰おうかっ」

「よお、早朝とはいえ、女の子が2人で砂浜にいるのはちょいと危険なんじゃねえか?」

「ここは別荘で私達の私有地だから、他に人は来ないわよ」

「あらやだマジかよ西木野家やべえな」

 

 寝起きから金持ちのヤバさを改めて思い知らされたのである。この辺一帯が私有地とか病院経営してるだけでそんな事があり得るのか。いやまあ西木野病院って日本有数のトップレベルで、しかも世界でも誇れる最新医療技術があるとか聞いた事あるし、不思議でもないのか。西木野家やべえ。

 

 

「で、どういうつもり……?」

「んー?何が~?」

 ここで話を無理矢理切り替えんばかりに、真姫が希に話しかけた。

 

「ッ、しらばっくれな―――、」

「別に真姫ちゃんのためじゃないんよ」

 おそらく、ここからは希と真姫の話になるだろう。とりあえず俺はこのまま黙っていく。出る幕はここじゃない。何となく、そう思った。

 

 

「海はいいよね~。見てるだけで大きいと思っていた悩み事が小さく見えてきたりする」

 この言葉の意味が何を指しているのか。それは多分、俺でもなく希でもない。真姫が1番分かっている事かもしれない。希は人の感情を読み取るのが優れている。しかも真姫なんかは結構顔に出やすいタイプだから尚更の事。

 

 真姫がもし悩んでいるのだとしたら、それは周りの事。つまり他のメンバーとの接し方に悩んでいる。ということは、真姫も本来はもっとみんなと砕けた接し方をしたいんじゃないか?

 

 俺が思考を巡らせながらも、希の言葉は続く。

 

 

「ねえ真姫ちゃん。ウチな、μ'sのメンバーの事が大好きなん。ウチはμ'sの誰にも欠けてほしくないの」

 最後に聞こえたのは、希の本音だった。紛れもない本音。絵里の件の時以来に聞いた似非関西弁ではない標準語。それが全てを表していた。

 

「確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃん達だけど、ウチはずっと見てきた……。何かある事にアドバイスもしてきたつもり。それだけ、思い入れがある……」

 そうだ。μ'sを支えてきたのは俺だけじゃない。μ'sに入る前にも、μ'sが作られる前にも、希は俺達と関わって、いつもアドバイスをくれた。講堂が上手く使用できたのも希が上手く言ってくれたから。

 

 そうだ。そうだよ。希はいつだってμ'sの味方をしてくれていた。希のアドバイスがなかったら、ここまで来る事はできなかったかもしれない。音ノ木坂に来たばかりの俺じゃ分からない事も希なら分かるし、μ'sの穂乃果達には分からない客観的視感から希は助言もくれた。

 

 希がいたから、『μ's』という名前にもなった。それだけ、希はμ'sが大好きで、思い入れがある。当然の事だった。もしかしたら穂乃果達よりもμ'sに愛着があるのは希なのではないかと思ってしまうほどに。

 

 

 

 

 

 

 

「……ちょっと話し過ぎちゃったかも。みんなには秘密ねっ」

「……めんどくさい人ね、希」

 それに対する真姫の反応はそれだった。

 

 確かに。

 それだけ思っていて尚、希は表立ってアドバイスしようとしていないのだから。μ'sに入ってもそれは変わらなかった。意見する事はあっても、誰かを支えようとする時は、決して前面には出さない。手伝いの俺やリーダーの穂乃果に任せようとして、影から助言する。

 

 それを真姫はめんどくさいと言ったんだ。()()()()()()()

 

 

「あ、言われちゃったッ」

 希もそれを言われて笑みを零す。何というかまあ、俺の出る幕は結局どこにもなかったわけだ。

 

 せっかく何かしようと思ってここまで来たのに、これでは全然恰好がつかない。それほどまでに、希はやってくれたんだけど、それじゃ俺がおまけでしかないみたいで滑稽なんですがそれは。

 

 

 

「それで、拓哉君は何も言う事ないんかな?」

「ここで俺に振るって無茶振りじゃないですかね……」

「せっかく来たんやし、言おうとしてた事を言うだけでええんよ~」

 くっそ、何でそんな良い笑顔で言ってきやがんだこの似非関西弁娘。やめろその笑顔で見るな惚れちゃうから。新婚旅行どこにしようか考えちゃうでしょうがっ。

 

「な、何……?拓哉も私に何か言おうとしてたわけ?」

 真姫が少しジト目で見てくる。俺にはそういう趣味はないので喜ばないからね。一部の人だけだから喜ぶの。

 

 

 

「いや、まあ、あれだ……。お前があいつらを大事に思ってる限り、お前がどんな態度をとってもあいつらはお前にいつも通りの接し方をしてくれるから、そんなに気にする事でもねえよ、とだけ……」

「なっ」

 これはずっと俺が思っていた事でもある。真姫は相手に素直ではないが、自分には結構素直なのだ。だから何だかんだで今までμ'sで一緒に活動している。典型的なツンデレなのだ。

 

「というかだな、お前が今更態度変えても逆に変に思われる可能性が高い。それに真姫の性格はもうみんな知ってるし慣れてるんだよ。だからそのままでもいいし、お前が嫌なら少し変えてもいいけど、せめて名前呼びするこったなばべうッ!?」

「変に思われるって何よ!!」

 いやいきなり殴るとかそっちこそ何だよ……。寝起きの瞼がくっきり目覚めちゃったじゃないのよありがとうございます。でも痛みは勘弁してつかあさい。

 

 

「だ、だからあれだよ……。お前がどう態度変えたって、結局はあいつらのお前に対する態度は今までと変わる事はない。仲間であり、大切な友達ってだけだ……いてえ……」

「……、」

 結構綺麗に脇腹に刺さったぞ真姫の拳……。海未よりも力は劣るが、成長したら化けるなこれは。あまり怒らせないようにしよう。

 

 

 

 

「真姫ちゃーん!希ちゃーん!たくちゃーん!おーい!!」

 すると、別荘の方から穂乃果の声が聞こえた。振り返ったら俺達以外のメンバーが全員起きていて、こっちに向かってきていた。

 

 

「3人とも早起きだね!」

「あんま寝れなかったけどな」

「そうなの?何で?」

「うぇ?いや、あれだ……、慣れない高級ベッドで寝たからじゃないか……?」

 とりあえず誤魔化した。むしろ高級ベッド最高だったぞ。寝れなかったのは昨夜の出来事のせいだ。

 

「拓哉、あれからあまり眠れてなかったの?」

「え?あ、や、寝れたぞ?寝れたけど、ベッドがな、何かな?うん、何かだったんだよ……」

「そう……何か、悪い事しちゃったわね……」

「バッカお前、そういう事普通のボリュームで言うんじゃありません!」

「拓哉こそ、私より声が大きいんだけど……」

 

 今のを穂乃果達に聞かれたらシャレにならんぞコノヤロー。主に俺がヒドイ目に遭うんだからな。分かって言っているのかこの金髪娘。というか今何て言った?絵里より俺の方が声が大きい?おいおい、絵里より声大きいボリュームってそれ絶対聞かれてるやつじゃねえか~。

 

 

「たくちゃん?今の話どういう事?」

「たっくん、詳しく話を聞かせてくれないかな~♪」

「話によってはタダではおきませんから」

 ほら~!!バレてんじゃねえかー!!これ絶対面倒なパターンなやつだよ俺海未に殴られるやつだよもう真姫に殴られたよそれじゃダメですかねダメですよね助かりませんよね!!

 

 

「ち、違うのよっ。私が拓哉に相談事聞いてもらってただけなの!だから、穂乃果達が思うような事は何もないからねっ?」

 救世主エリーチカきたこれ!!いや最初に爆弾落としたのは絵里だから誤解を解くのは普通なんだけど、よく言ってくれた。俺が言っても絶対信じないのがこの幼馴染ウーマン共だからな!

 

 

「ふーん……まあ、絵里ちゃんが言うなら信用できるね」

「オイ、信用なさすぎかよ俺。さすがに泣くぞこら」

「たっくんの事はもちろん信用してるんだけど、女の子関連の事になると、少し信用感がね~……」

「海未よ、俺はどこで死ねばいい」

「強いて言うなら私の腕の中でですかね」

 

 

 トドメお前かよ慈悲すらねえな。傍から聞いたら女の子の腕の中で死ねるって素晴らしい響きかもしらんが、海未が言うとトドメさせられるとしか聞こえない。日本語って難しいね!!

 

 

「それよりみんな見てみ。朝日が昇るよ」

 それに釣られ、みんなの視線が海の方へと向いた。軽く俺の方を見てウインクもついでに。希、俺のためにヘイトをなくしてくれるなんて……やっぱお前は俺の女神だ、結婚しよう。……あ、女神と結婚なんて平凡な俺には到底無理だった。

 

 

 と言っても希の言った事は事実なようで、地平線の彼方から、優しく世界を照り付けるような光が昇ってきた。

 まるで、9人の女神にスポットライトを当てるかのように、その光は神々しく、優しく、その大きな包容力で世界を包み込むように、女神を照らしていく。

 

 

 

 それをするのに言葉はいらなかった。何も言わずに、9人の手が次々と繋がれていく。何の打ち合わせも、予備動作もなく、自然と9人は1つになった。俺はそれを数歩後ろから見守る。彼女達が安心できるように。

 

 

 

 

「ねえ、絵里」

「ん?」

 真姫が絵里に声をかける。俺はその意味をもう知っていた。少し気恥ずかしくなりながらも、真姫は希へ視線を向け、希はそれに笑みで返す。希も、ちゃんと理解している。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとっ……」

 後ろにいるから俺には真姫の表情が見えない。けれど、声音からでもちゃんと分かる。真姫は、笑っていた。絵里は合宿の最初から真姫を気にかけていた。それを真姫もちゃんと気付いていたのだ。だからこその、お礼。

 

 

 

「……ハラショー!」

 ……返答がそれって大丈夫なんですかね絵里さんや。もうちょっと空気に似合った返答をですね?何なの、それがクォータークオリティなの。それに慣れないといけないの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし!ラブライブに向けてμ's、頑張るぞー!!」

「「「「「「「「おおー!!」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 ああ、誰も絵里の返答に対して何も疑問感じてないのね。俺がおかしいのね。そうかい分かったよ俺も気にしないよ努力するよ頑張れよお前らー!!

 っと、その前に。

 

 

 

「んじゃま、とりあえずは全員別荘に戻るぞ。練習の前に朝飯作るから」

「たくちゃんの朝ご飯!!何々!?」

「無難にベーコンエッグとサラダ、お好みで白飯かパンを選べるようにどっちも用意してある」

「パンあるの!?やったー!!たくちゃんやっぱり大好きー!!」

「うるせー、分かったから離れろ暑苦しい」

 

 ちくしょう、穂乃果も良い匂いしやがる。女の子ってのは何なんだ。男にはない機能でも付いてんのか。男はいずれ加齢臭という逃れられない運命が待っているというのに。そういや中学の頃は親父がやけに気にしてたな。確かにオッサン臭かった。

 

 

 

 

「さあ、朝ご飯を食べて準備が終わったら練習を始めますよ!」

 海未の声にみんなが反応する。それぞれが別荘へ戻って行くのを後ろから見ながら、何故だか笑みが零れる。9人の女神は、確かに1つになった。最初からμ'sの成り行きを見てきた俺にとってそれは、自然と笑みが零れるくらいには嬉しい事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 合宿は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 やろうと思えば全員最初から集中できていた事もあって、特に問題もなく練習も進み滞りなく終わる事ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 岡崎拓哉も、東條希も、絢瀬絵里も、西木野真姫の問題はこれで終わりだと安心していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし。

 まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当の西木野真姫の問題は終わってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?


見てくれている人はちゃんとその人を見ているのです。
今回で合宿編が終わり、次回はノーブラ回(意味深ではない)に入るかと思われますが、その前に少し海未のSID編を1つ挟もうかと思っています。
察しの良い人ならもう何の話をするのかお分かりになっているかと思いますが、まあ、上条……ゲフンゲフン、岡崎に活躍してもらいたいのでね(笑)


いつもご感想高評価(☆9、☆10)をありがとうございます!!


では、新たに高評価(☆9、☆10)を入れてくださった、


くりとしさん(☆10)、つんつん。さん(☆10)


計2名の方からいただきました。本当にありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆9、☆10)お待ちしております!!



さて、つい先日鍵のすけさん主催『ラブライブ!サンシャイン!』の企画小説が全て終わりましたが、その中に私が書いた作品もありますので、良ければ是非見て下さい!!
私の作品は『空白のページに願いを』というタイトルですので、ご感想などがあればあちらの方でご感想を書いてくださると助かります。




そして、6月より新作も始まります。まだ日にちは決まっていませんが、6月中には始まります。


↓以下、新作のあらすじ。



『奇跡と軌跡の物語』とは別に、もう1つの物語が始まる。


 それは日常ではなく、どうしようもない悲劇だった。
 岡崎拓哉を恨む何者かによってマインドコントロールされたμ's。それによる使命は、岡崎拓哉を殺せという命令だった。
 しかし、それは純粋な悪意の話ではない。彼女達は自分の愛によって、様々な武器を用いて岡崎を殺そうとする。

 
 彼女達の歪んだ愛(殺し)が、容赦なく岡崎に猛威を振るう。



 何が何だか分からないまま彼女達に命を狙われる岡崎。何度も彼女達に傷付けられ、死に掛けた。



 そして。


 そして。


 そして。



 少年は、再び彼女達と笑い合える日常へ戻るために、拳を握った。



 彼女達を元に戻し、黒幕を探す物語が、始まる。



 『ラブライブ!~悲劇と喜劇の物語~』



 6月―――――始動。

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