ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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かよちん、誕生日おめでとう!!

さあ、いよいよμ'sの個人誕最後の1人でございます!
満を持して最後を飾るのは花陽です!

では、どうぞ!



小泉花陽 番外編.止まらない想い

 

 

 

 

 

 

 

「かよちん、頑張るにゃ!凛はかよちんの事応援してるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 親友の励ましがすぐ隣から聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思えば、一体どこからこんな話になったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し前まで戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休みという、学生なら誰しもが今か今かと思っていたであろういつもより少しだけ長い休み時間。

 

 

 

 そんな時、いつも通りに1つの机を囲むように3人の少女が座り、各々の弁当を広げていた。

 

 

 

「いただきますっ。ずっと待ってたよぉご飯~……!」

「花陽はいつもこの時間になったらそれを言うわね。儀式みたいなものなの?」

「凛はそんなかよちんも大好きにゃ!」

 

 

 

 小泉花陽、西木野真姫、星空凛。

 この3人は音ノ木坂学院のスクールアイドル、μ'sの一員であり、昼はいつもこのメンバーで弁当を食べる仲良し3人組という共通認識がクラス内ではあった。

 

 

「まず最初の一口は、やっぱりご飯だよね……」

「毎回思うけど、おかずも食べずにご飯を最初に食べるのは何なの?」

「あ、真姫ちゃんそれを言っ―――、」

「それはね真姫ちゃんっ!」

 

 凛が言い切る前に花陽が遮る。この時点で真姫は確信していた。しまった、と。大のお米好きである花陽にそんな事を聞く事こそが愚問だったのだ。そして一言でもお米の事を言ってしまったら、お米大好き少女は止まらない。

 

 

「おかずを食べてからご飯を食べるのは定石だよ。でも、おかずを食べずにご飯だけを食べるのも1つの楽しみ方なの!一見おかずがあるからこそメインを張れていると思われがちだけど、ご飯があるからこそのおかずなんです!どっちも大事だけど、どっちかと言われればご飯の方が大事なの!お米というのはね、昔から日本に親しみ込まれてきた伝統のある一品、作品なのっ!!本当ならおかずがなくてもご飯だけで私は大丈夫なの!でもおかずを食べてからのご飯がまた格別に美味しい……!だからそれを味わう前に、ご飯だけを食べ、ご飯そのものに含まれている美味しさ、甘さを楽しむんです……。言うなればメインの前菜。それが最初の一口なんです……!」

 

 

 一応言っておこう。このお米大好き少女は本来大人しく、どっちかと言われれば控えめな性格なのだと。ただ、アイドルの事と米の事になると人が変わったように饒舌になる。現に今も、クラスの全員が見ているにも関わらず、その少女は気にせず語っていたのだから。

 

 

「そ、そう……。とりあえず、聞いた私が悪かったわ……」

 いつもの彼女を知っているから、こういう時の彼女に少しの戸惑いを感じながらも真姫は諭す。いくら同じグループにいる仲間でも、何も動じないわけではない。花陽のお米好きが異常なだけだ。

 

「かよちん、落ち着くにゃ。ほら、周り周り」

「……へ?……あっ、はうぅ~……」

 長年の付き合いだからこそ、こういう時の対処は凛が頼りになる。多少強引でも花陽の控えめな性格を利用して正気に戻すのだ。そのおかげで花陽は顔が茹でだこのように赤くしながらまたご飯を一口食べる。

 

「ふぁ~、美味し~……」

「復活早いわね」

「これがご飯時のかよちんだからね。見てて飽きないにゃー」

 こうして、今日も何て事のない、いつもの平和な昼休みが1年の教室内で行われていた。

 

 

 

 唯一、いつもと違う変化が起きたと言うならば、こんな会話が周りの生徒の口から聞こえてしまったからかもしれない。

 

 

 

 

 

「ねえねえ、この前貸したマンガ読んだ?」

「読んだよ!いや~、同じ女子目線で見てもやっぱ恋する女の子ってのは可愛いね!」

「でしょー!好きな人の事を勝手に目で追っかけたり、何てことない仕草にドキッてするのが良いよね!私も恋したい!」

「いやここまだ女子高みたいなものでしょ。男子が1人しかいないし。現実に戻ってきなさい」

「それがマンガ貸してあげた人に向かって言うセリフ?」

 

 

 

 

 

 ただの貸し借りしたマンガの話。それだけのはずだった。

 

 

 なのに。

 

 

 自然に、凛は“不自然”な事を口にした。

 

 

 

「そういえばさ、かよちんってたくや君の事好きなの?」

「ふぇぇっ!?い、いきなりどうしたの、凛ちゃん……!?」

「まーた唐突な話になったわね」

 軽く弁当を突きながら、凛は興味あり気に花陽を見つめる。呆れながらおかずを口に含む真姫に対し、花陽は明らかにオロオロしながら目をグルグルと回していた。

 

「え、えっとぉ……い、言ってる意味が、よく分かんない、かなぁ……」

「えー!凛ちゃんと言ったよ!かよちんはたくや君の事が好きな―――、」

「声がデカいよ~ッ!!」

 珍しく凛よりも声を荒げて抗議する。そのせいでまた教室内の注目が花陽に集まる。そして照れて押し黙る花陽というさっきの二の舞になった。

 

「で、結局のところどうなの?かよちんは好きなの?」

 さすがの凛もこれ以上野暮が入ってくるのを避けるために小声で問いかける。モジモジしながらも確実に弁当の中身を減らしていく花陽もまた、消え入りそうな小声で返す。

 

 

「……う、うん……」

「や、やっぱりだにゃ……!凛の予想はばっちし当たってたよ真姫ちゃん……!」

「何で小声なのにうるさいのよ凛は……!ちゃんと聞こえてたわよ」

 弁当箱を囲みながらヒソヒソ話を繰り広げる3人の少女。傍から見ても違和感しか感じないのは、結局教室内の注目を集めているのが物語っていた。

 

 

「と、とりあえず早く食べて移動するわよ。ここじゃ聞かれちゃうわ」

 1人視線に気付いた真姫のおかげで、3人はそそくさと腹を満たし、人通りのない場所へと移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら大丈夫そうね」

「何気に真姫ちゃんが1番張り切ってないかにゃー?」

「べ、別になってないわよ!」

 

 

 ここは中庭。

 昼食を食べるにはもってこいの場所だが、今日は運が良く誰もいなかった。

 

 

「よし、じゃあかよちん。さっそくアタックにゃ!!」

「話が飛躍しすぎてないかな凛ちゃん!?」

「そんな事ないにゃ!好きなら真っ直ぐアタックするのが1番だにゃー!」

「当人じゃないからそんな事言えるのよね凛は。自分が当事者だったら絶対奥手になるのに」

 

 凛はμ'sの中でもっとも女の子らしいと言われている少女だった。けれどそれは自分の場合。これは花陽の問題なのだ。なら勝手は違ってくる。

 しかし、

 

「それはそれ、これはこれだよ!かよちんは絶対こういうのに奥手になっていつまでもアタックできないのは目に見えて分かるにゃ!だから少し強引でも手伝ってあげないと叶えられるものも叶えられないよ!」

「凛のくせに良い事言ってる……」

 凛と花陽は幼い頃からの幼馴染だ。だからお互いの性格もほとんど理解している。このままじゃ花陽は平行線を保ったままずっと前に進めない事も知っている。

 

「で、でも凛ちゃんと、真姫ちゃんは、いいの……?」

「「何が?」」

 突然の花陽の問いかけだった。未だに顔を赤らめ、正常な判断ができているのかも怪しい状態ではあるが、これも見慣れた光景だから心配はいらないと見える。

 

 

 

「そ、その……凛ちゃんと真姫ちゃんは、拓哉君の事、す、好きじゃないの……?」

 そう、あの少年はいつも何かしらをして気付けば見知らぬ美少女にも好意を持たれるような、典型的ラノベ主人公の特性を持っている野郎だ。ともすれば、今μ'sにいる全員も少年に何かしら救われてきた少女達だ。

 

 

 だから。

 当然と言えば当然で、花陽としては絶対に聞いておかなければならない質問だった。

 

 

「好きだよ?」

「まあ、好きか嫌いかで言うと、す、好きの部類には入るわね……」

 やっぱり、と。花陽は負け腰になる。この2人の方が可愛いからきっと少年はどちらかを選ぶ。それでなくとも、μ'sにはまだ少年を好いている他の少女がいるかもしれないのだ。

 

 そうすれば、自分は真っ先に選択肢から外されるだろうと、無意識的でも意識的でもそういう結論に行きついてしまう。昔からの悪い癖なのだが、それは一向に直る気配はない。

 

 しかし、そこで1つの疑問が出てくる。2人は花陽と同じ少年が好きなのに、何故応援にも似たような事をしようとするのか。

 答えはすぐにやってくる。

 

 

「じゃ、じゃあ、何で私を応援なんかするの……?」

「にゃ?かよちんは何か勘違いしてない?確かに凛はたくや君の事好きだけど、それは友達としてだにゃ!一緒にいるとワーワーできるし!」

「私も一緒よ。仲間として感謝もしてるけど、それは恋心とは違うわ」

 言うなればLikeとLoveの違いだった。花陽はLoveで、凛と真姫はLike。それだけの違い。だがそれが、花陽にとっては大きい問題だった。かくしてそれは解消された。

 

 

 では、ここからが本番だ。

 

 

「さあ、凛と真姫ちゃんの誤解も解けたところで、作戦会議にゃ!」

「い、いきなりすぎないかな……」

「それが凛よ。諦めなさい」

 秋特有の涼しい風が、木陰で話す3人の髪を靡かせる。

 

「まずたくや君を攻略するには、たくや君の事をもっと知る必要があるにゃ」

「ほ、本格的になってきたねっ」

「急に花陽もやる気になったわね」

 このままモジモジしていても、真姫はまだしも凛は確実に離してくれないだろう。だったらもうやるしかない。やれるだけやってやろうではないか。多少躍起になってはいても、花陽は挑戦しようとしていた。

 

 

「いつかこんな日がくると思って凛はたくや君の行動をリサーチしていたにゃ」

「凛ちゃん凄いっ!」

「軽いストーカーじゃないそれ?だからたまに昼休みにさっさと食べて1人でどこか行ってたのね」

 凛がポケットから取り出したのは一冊の小さなメモ帳。それを開くと、本当に凛が書いたのかと疑問に感じるほどビッシリと書かれていたのだ。

 

「いっぱい書いてるね、凛ちゃん」

「何でその集中力を授業に使わないのよ……」

 真姫の呆れをよそに凛はノートの中身を話す。

 

「朝は学年違うから会えないし、放課後は練習があるからダメ。だからアタックするなら昼休みだと思ってたくや君の行動を把握してたんだにゃ!」

「無駄に頭使ってるわね」

「で、ど、どうなの凛ちゃん……?」

「この時間帯だと……たくや君はそろそろ1人で中庭の自販機にジュースを買いに来るはずにゃ!」

 ノートには時間帯と少年の行動まで細かく書かれていた。花陽が軽くノートを覗くと、今の時間帯の箇所には『たくや君、ジュースを買いに来る』と書かれている。

 

「本当に来るの?」

「実際に凛はたくや君にも直接聞きに行ったりしてるから確実だよ!」

「ホント行動力だけはあるわよね」

 聞けば凛は少年に直接会いに行って、昼休みのどの時間帯に何をしているかなどを聞きに行っていたらしい。ふと、花陽はそこで疑問が1つ生まれた。

 

「ねえ、凛ちゃん。凛ちゃんはどうして、私のためにそこまでしてくれるの?」

 素直な質問だった。花陽の性格を知ってるからというのもあると思うが、それ以上に凛は花陽のために行動しているのだ。わざわざ少年の動きを把握したり、少年に直接聞きに行くという、普通ならそこまではしないであろう事までもしている。

 

 だからこその質問。

 

「えっ?そ、それは……あれだよ。か、かよちんは普段奥手だから、凛がこういうとこまでやってあげないとなーって思って……!」

「?……そ、そうなんだ。ありがとね、凛ちゃん」

 凛の返答に、何故だか少し引っかかりを覚えた。それが何なのかは不明だが、まるで魚の小骨がずっと喉に詰まっているような、変な違和感を頭に覚えた花陽だった。

 

 

「あ、じゃあそろそろ私は音楽室に行くわ。作曲もしないといけないし」

「えー!もう行っちゃうの真姫ちゃん!?まだかよちんのファイトは始まってないにゃー!」

「ファイトって、穂乃果じゃないんだから……」

 真姫は昼休みのある時間になると音楽室でピアノを弾くのが日課になっていた。μ'sに入る前も入ってからも、それは変わっていない。弾いていたら新しい曲のアイデアが出てくると真姫は言っていた。

 

 

「とにかく私はもう行くから。……花陽、無理にとまでは言わないけど、頑張りなさいよ。そ、その、応援……してるから」

「……うんっ、ありがと、真姫ちゃん」

 真姫が応援してくれた。それだけで花陽は頑張れる、そう思っていた。真姫が去ってそのすぐあとの事だった。急に凛が声を上げる。

 

 

 

「あっ、かよちん、たくや君が来たよ!」

「ふぇっ!?」

 遠くの渡り廊下。そこに1人歩いている少年がいた。音ノ木坂学院が共学になったのにも関わらず、唯一の男子生徒と称されている少年、小泉花陽が恋心を抱いている渦中の少年、岡崎拓哉だった。

 

 

「ほらかよちん、行くにゃ!!」

「ええ!?い、いきなり!?」

「当たり前にゃ!リミットはたくや君がジュースを買って帰るまでなんだよ!早く行かないと間に合わなくなっちゃうにゃ!」

「そ、そんないきなり言われても……」

 唐突に訪れたチャンス。しかしそれはあまりにも唐突だった。話しかけても何を話せばいいか分からない花陽には、まだ荷が重すぎたのだ。

 

(真姫ちゃん、応援ありがとう。でも私は今にも心が折れそうです……)

 さっきまでの威勢とは何だったのか。それがあまりにも似合う光景だった。笑顔は皆無で、目には軽い涙まで浮かべている。いつもの困り眉の少女になっていた。

 

 

「パパッと話しかけて遠回しにデートに誘っちゃえばいいにゃ!さあさあ!!」

「で、デート!?む、無理だよ~!」

「なーにを躊躇ってるにゃ!今行かないとせっかく応援してくれた真姫ちゃんにも悪いよ!」

「うう……」

 それを言われると弱い。あの真姫が照れながらも素直に応援してくれたのだ。それは純粋に嬉しかった。なのにそんな応援を無駄にしてのこのこと帰ったら、それこそ真姫に悪いではないか。

 

 

 ならば。

 

 

 

「わ、分かったよ……」

「かよちん、頑張るにゃ!凛はかよちんの事応援してるよ!!」

「う、うん……」

 これで物語は序盤に戻る。ここからは小泉花陽が頑張る正念場だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「か、かよちん……?」

「うう……や、やっぱりいきなりなんて無理だよぉ~……!!」

 正念場はものの数秒で終わった。これが小泉花陽クオリティなのである!!

 

 

「そこで折れちゃったらダメにゃかよちん!……ああっ!たくや君ジュース買っちゃったよ!?もうあとは帰るだけだよ!?」

 見れば少年はいつもの紙パックのカフェオレを既に買っており、渡り廊下に入ったところだった。ここを逃せば終わり。それをあの渡り廊下が言っているようにも見えた。

 

 

「ああもう、仕方ないにゃー!かよちん、凛がたくや君に話しかけて足止めするから、かよちんは後から自然に入ってきてね!そしたら凛はそそくさと退散するにゃ!」

「あ、凛ちゃ―――、」

「じゃあ先行ってるにゃ!」

 花陽の言葉を待たず、凛は走って行ってしまった。

 

 

(どうしよう、まだ心の準備が……何を話せばいいかも分からないし……)

 次々と脳内に浮かぶのは不安と緊張ばかり。プラスの事など一切出てこない。そんなので大丈夫かと問われれば、真っ先に逃げ出したいと答えるだろう。

 

 

 ふと凛の方を見れば、少年に話しかけて見事に足止めをしてくれている。いつまで持つかは分からないが、行くなら今しかないと思った。

 

 

(で、でも先に何を話すか決めておかないと……。会話が止まっちゃったらダメだし、な、何とか拓哉君とお、お出掛けする約束もしないといけないよね……)

 

 

 軽くだが話題は考えた。少年とお出掛け(デート)するための場所も一応考えた。あとは凛と少年のいる場所へ向かうのみ。最初の一歩が凄く重いと感じる。練習の時のように軽く声をかける時はこんな事一度も感じた事はなかった。

 

 こんなにも緊張して、こんなにも足が震えて、こんなにも重いのか?好きな人に声をかけるというのは。普段とは違う緊張感、不安、微かな期待。それが同時に襲ってくる。

 

 でもここでもう迷ってはいけない。真姫が応援してくれて、凛がここまでやってくれたのだ。それを無下にするわけにはいかない。どんなに重い一歩でも、踏み出してしまえば止まる事なんてない。

 

 そのまま駆け抜けてしまえばいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重い重い一歩を、踏み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――直前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 凛と話す少年の、笑顔を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 踏み出そうとした足が元ある場所に戻る。

 

 

 

 少年はとても楽しそうに凛と話していた。

 

 

 

 そういえば凛は言っていた。よく拓哉に直接聞きに行っていたと。それはつまり、拓哉とそれだけたくさん話してきたという事だ。普段の花陽より、練習以外ではたまにしか話せない花陽よりも、2人は色々と話してきたんだろう。

 

 何も話したりしないより、話した方が楽しいに決まっている。そんな事はほとんどの人が知っている。もちろん花陽も。だからこそ抉られる。少年と凛があんなにも楽しそうに話しているのを見て、心が抉られる。

 

 

 

 

 そして、1つの認識が花陽の中で生まれる。

 

 

 

 

 少年は、岡崎拓哉は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――星空凛の事が好きなのではないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 基本的には面倒くさがりの少年だ。

 適当に話を切り上げてその場から離れる事だってできるはずだ。なのに何故今までも今もこうしてずっと凛と話している?聞いた話では授業中でも寝て昼休みも教室で昼寝をするような男だったはずなのに。

 

 

 あんな純粋に楽しそうな笑顔を見てしまっては、凛の事が好きだと思ってしまっても仕方ないではないか。少年の事が好きなのに、大好きなのに、そんな自分から見ても、今の少年と凛は楽しそうに話す恋人にしか見えないではないか。

 

 ああ、きっと彼は親友の事が好きなんだろう。何回も話していく内に、無邪気で元気な女の子である少女に惹かれていったんだろう。笑顔で話に来てくれる凛の事が好きになったんだろう。

 

 

 

(ほら、やっぱり私には無理だったんだよ……。こんないつまでも奥手で、自信のない私に、恋をする資格なんてどこにもなかったんだよ……)

 

 

 

 一歩ずつ、ゆっくりと、しかし着実に、後ろへと下がって行く。前に行く事はできなかったのに、後ろへはどんどんと行く。行けてしまう。今すぐにでもここから走って逃げていきたい衝動に駆られる。

 

 

 

(ごめんね、凛ちゃん。私は、そこに行けない……。そんな眩しいところに、入っていけないよ……!)

 

 

 

 自分じゃきっと、少年をあんな笑顔にはできないだろう。ただ黙ってしまって困らせるのがオチだろう。それに比べて、凛ならきっと少年をずっと笑顔にしていてくれるに違いない。

 

 初恋は実らずに終わってしまうけども、幼い頃からの親友になら、負けても悔いは残らないはずだ。心から祝福してあげられるはずだ。潔く、いっそ清々しいと思えてしまうはずだ。いつかは忘れてしまうはずだ。

 

 だから。

 

 

(お似合いだよ、凛ちゃん。凛ちゃんなら、私も、納得できるから……。いつか、凛ちゃんも自分の本当の気持ちに気付いて、拓哉君と一緒に、しあ、わ……せに……ッ!!)

 

 

 限界だった。振り返り、ただ走る。どこか行く場所があるわけでもない。ただがむしゃらに、どこへでもいいからこの学校内で人のいない場所へ走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラリと、輝く水滴を散らしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その瞬間だけを、見てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただいつも通りに他愛ない話をしているだけだった。後から来るはずの大事な親友を待ちながら。一途な恋心を抱いている親友へ託すために。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 しかし、いつまで経っても親友が来る気配はなかった。いつになったら来るのか、まだ緊張しているのか、話す内容でも考えているのか、心の準備をしているのか。内心でそんな手間のかかる親友を可愛いと思いつつ、待っていた。

 

 そして、来ないにしても時間の掛かりすぎと思ってふと、何気なくチラッと元いた場所へ目を一瞬やると、走って去って行く親友の後ろ姿が見えた。もし見間違えでなければ、自分の親友は、泣いていた……?

 

 

 何故?

 緊張で?

 やはりまだ無理と思ったから?

 応援してくれた真姫に申し訳ないと感じたから?

 自分がここまでやったのにできないと思ってしまったから?

 

 

 どれかかもしれないし、花陽の事だから全部あるかもしれない。だけど、その全てを違うと言ってやれる自信が凛にはあった。

 

 

 緊張。これはある程度仕方ない。でもそんなのずっと話していれば和らいでいく。

 無理だと感じたから。違う。無理なんかじゃない。勇気を出せばいけるんだから。

 応援してくれた真姫に申し訳ないと感じたから。それも違う。真姫自体がそれを否定するに決まっている。

 自分がここまでやったのにできないと思ってしまったから。それだって違う。これは自分が好きでやっているだけだ。花陽が罪悪感を覚える必要なんてどこにもない。

 

 

 

「どうした、凛?」

「……え?あ、や、な、何でもないにゃー!あははは~……」

 不意に拓哉から掛けられた声で我に帰る。今は花陽がいた事を悟られないようにしなければならない。

 

 

「そうか。ならいいんだけど」

「にゃはははー」

 今日は失敗。それだけしか今の凛の頭にはなかった。泣いていたように見えるのも、いつも緊張で軽く泣くほどの花陽だから別段おかしいというわけでもない。多少は引っかかるが。

 

 

 

「それで、凛、ここから話は変わるんだけど。その、()()()で……」

 さっきまでの楽しそうな雰囲気はすぐに消えた。ここからは真剣な話し合いが始まる。そんな雰囲気を纏っていた。

 

 

「……うん、分かった。だったらもう少し人通りの少ないとこに行くにゃ」

 

 

 

 

 

 2人にしか分からない会話は、今日もまた始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 数日が経った。

 

 

 

 

 

 

 

 あの日から花陽は一度も拓哉にアタックしようとはしなかった。

 

 

 凛が昼休み連れて行こうとしても、

 

 

「今日はいいよ……。また、他の日に、挑戦してみるから……」

 

 

 この一言でいつも断られる。普段の凛なら強引にでも花陽を連れて行くのだが、この頃の花陽の雰囲気は何か違っていた。その違和感のせいでいつものように強制的に連れて行く事ができなかったのだ。

 

 

 喋っている時はいつもと変わらない。練習の時も普通に拓哉と接している。しかし、それはあくまで練習での業務的な会話でしかない。何気ない世間話やふざけた会話が、2人にはなかった。

 

 教室から外を覗いたら凛と拓哉が楽しそうに話しているのを何度も見た。その度に胸が強く締め付けられるような思いをした。それを誤魔化すように真姫に笑顔を取り繕っていた事もあった。

 

 たまたま廊下などで拓哉とばったり会っても、拓哉が声をかけたところで言い訳を取り繕い、その場を去る事も少なくなかった。練習以外で拓哉と側にいたらダメだと考えたから。

 

 離れていないと、無意識に目で追いかけてしまう。想いが強くなってしまう。蘇ってしまう。だから、出来る限り拓哉とは会わないように意識してきた。早く凛と拓哉が付き合う事を願って。そうすれば、無理矢理にでも踏ん切りが付けられると思って。

 

 

 

 

 

 

 

 凛のために、拓哉のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――自分は身を引こうと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数日後の事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、花陽は珍しく1人で廊下を歩いていた。今日は生憎と雨だった。だからμ'sの練習も今日はなしになり、各自が次々と帰るなり適当に喋るなりをしていたが、花陽だけは雨雲と雨のせいでグレーの景色をバックに廊下をランダムに歩いていた。

 

 

 何か目的の場所があるわけでもない。ただ何となく1人になりたかったから。雨のせいか学校に残っている生徒もほとんどいない。俯いたまま歩いていたせいか、ここが何階でどこの校舎なのかも少し曖昧だった。

 

 こうして歩いていれば少年と会う事はないはずだ。出来る限り会わないようにしていたおかげか、あの時よりかは気持ちが落ち着いてきている。変に取り乱す事はない。これでいいのだと、花陽は自分の心に強く刻み付ける。

 

 このままいけば、きっと自分はあの少年への気持ちを諦める、忘れられる事ができるはずだ。やっとこの胸の苦しさから解放される。そういう気持ちがどこかにあったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――それが迂闊だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花陽?」

「……ッ!?」

 意識していなかったせいで気付くのが遅れた。ここは2階、2年がいる階だ。その1つの教室に、岡崎拓哉はいた。

 

「な、何で……ここに……?」

 まるで会いたくなかったのに会ってしまったかのような言い方だった。それに違和感を覚えつつも拓哉は答える。

 

「ああ、そういや教室にノートを忘れててさ、取りに戻って来てたんだよ」

「そ、そうなんだ……。じゃあ、私は、これで……」

 いつもと変わらない。適当に話を切り上げて退散する。それだけだ。しかし、今回はそれができなかった。

 

「待てよ、花陽。……話があるんだ」

 思わず止まってしまう。走り去って無視もできたかもしれないのに、名前を呼ばれた事で反射的に止まってしまった。とりあえずは花陽が止まった事で話を聞いてくれると思った拓哉は続きを話す。

 

 

「お前、最近俺を避けてないか?」

 単刀直入だった。何の容赦もないドストレートの質問だった。仮にそうだと答えればどういう反応をするかなどは気になるが、話をややこしくしたくないので普通に答える。

 

「そ、そう、かな。そんな事、ないよ……?」

 振り返りはしない。振り返ったら彼を見てしまう。見てしまったら、ダメなのだ。今までの苦労が水の泡になってしまう。何のために今まで会わないようにしてきたのかが分からなくなってしまう。

 

「それは嘘だ。練習の時でも、必要以上の事は喋らなくなった。前までは普通に話してたのに」

 これが厄介なのだ。この少年はこういう時、とても鋭い。原因を確実に把握して、それを解消しようとする。だからこそ、花陽は極力拓哉と話さないようにしてきた。だが、それはたった今、無駄に終わった。

 

 

「一体何があったっていうんだよ」

 

 

 ふと、花陽の中に何か、薄黒い何かが芽生え始めた。

 

 

 少年はきっと、ただ純粋に気になっただけなのだろう。何か悪い事をしたのならすぐにでも謝ろうと思ってくれているのだろう。だけど、それとは無関係に、黒い感情が徐々に大きくなっていく。

 

 元はといえば、少年を好きになった自分がいつまでも奥手で何もアタックできなかったのが原因なのに、少年に対しての理不尽な感情しか生まれてこない。我慢しようとしても、それは言葉となって出てきてしまう。

 

 

「……拓哉君が、楽しそうに話してたから」

「……俺が?誰と?」

 一度吐き出してしまった毒はもうコントロールできない。いつもは出てこないのに、こういう時だけスラスラと出てきてしまう。

 

「凛ちゃんと……凄く、楽しそうに話してましたよね」

「あ、ああ……見てたのか。まあ、あいつは普段が明るいからな。話してて飽きないよ。バカな事言って笑わしてくれるし。……で、それがどうかしたのか?」

 振り返らなくても声だけで分かる。少年は今も楽しそうに言った。それが証拠だ。忘れかけていたはずなのに、チクリと、何かが胸を刺す。

 

 

「遠くで見てて、2人共、凄くお似合いだったよ。まるで本当の恋人みたい、だったし……」

「…………は?俺と、凛が、恋人……?そりゃあねえよ。だってあいつは―――、」

「拓哉君がまだ、自分の気持ちに気付いてないだけなんです……っ。見てれば分かるんです……。拓哉君は凛ちゃんが好きなんだって」

「……な、おい、ちょっと、待てよ……ッ」

 

 まだ止まらない。ここまできたら止まる事はもうできない。今までの想いが吐き出される。無理だと分かっていても、叶わないと承知していても、吐き出さずにはいられなかった。

 

「ずっと見てたんです……。楽しそうな2人を、好きな人が友達と話してるのを見て、耐えられなかったんです……!」

「ッ……はな、よ……。おま―――、」

 少年に今話させるわけにはいかない。何を言われるかなど大体は分かっているつもりだった。だから、自分の中にある全てを吐き出して、逃げ出したかった。

 

 

「凄く楽しそうな拓哉君の笑顔を見て思ったんです……。私じゃ拓哉君をあんな笑顔にできないって。いつも大人しくて奥手な私なんかじゃ拓哉君に気を遣わせて迷惑にしかならないって!……だから、諦めようとしたんです。拓哉君から出来るだけ距離を置いて、会わないようにして、そしたら諦めがつくかもって思って……。なのに、なのに……せっかく忘れかけていたのに……!」

 少女は静かに叫んだ。全てを吐き出してしまえば、本当に諦めがつくと信じて。何の根拠もないのに忘れられると決めて。そして、少年は、

 

 

「……花陽―――、」

「来ないでください……!」

 歩み寄ろうとする少年を、振り返らずに突っぱねる。

 

「こんな事しか言えないような私なんて放っておいて、拓哉君は凛ちゃんの事だけ考えていればいいんですッ。拓哉君の行くべき場所は凛ちゃんのとこです……」

「何言ってんだよ花―――、」

「私に構わないで!」

 誰もいない廊下に、1人の少女の声が響く。今まで聞いた事もないような少女の声だった。全力の否定だった。それでも少年は止まらない。

 

「おい、待てよ花陽!」

「やめて……!離して、ください……ッ!!」

 拓哉が花陽の片腕を掴み、花陽はそれから逃げようと抵抗する。しかし男と女じゃ力の差は歴然だった。

 

 

 

 ただ、少し違和感があるとすれば、拓哉は花陽を後ろから抱き締めた。

 

 

 

「……ッ……優しく、しないで、ください……ッ」

 その声は震えていた。もう限界だったのだ。自分の素直な気持ちに嘘をつくのも、拓哉にヒドイ事を言うのも、親友のとこへ行けばいいと言う事さえも、限界だったのだ。

 

「せっかく……忘れられると、思ってた……のに……ッ!」

 少年は何も言わない。ずっと花陽を後ろから抱き締めている。力を入れ過ぎず、包み込むような優しさで。

 

「……拓哉君に、そんな事されちゃうと……私、バカだから……っ、優しくされると、勘違いっ、しちゃうじゃ、ないですか……」

 震え声は止まらない。少女の涙はそのまま少年の腕へと落ちていく。

 

 

「……怖かったんです。告白するのが怖かったんです……っ。拓哉君に告白して、もしフラれちゃったら……もう、友達としてすらいられないかもしれない……。だったら、諦めた方がいいッ。そしたら、傷つかないって思ってたのに……今は、後悔しか、してないんです……。バカですよね、自分で決めた事なのに……」

 

 

 それが少女の最後の告白だった。

 好きになって、でも奥手で何もできず、その結果に好きな人は親友を好きになって、だから諦めようとした。でも、だけど、結局は諦めきれなかった。自分の決めた事に後悔までしていた。

 

 

 

 

 

 

 ――――――どうしても好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、ようやっと、少年は口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最初に言っておく。花陽、俺はお前が好きだ」

「…………え?」

 信じられないとでもいうかのような反応が返ってきた。そのまま、決して抱き締めている腕を離さずに、少年は続ける。

 

 

「信じられないかもしれないけど、俺は花陽が好きなんだ。決して凛じゃない。確かにあいつと話してて楽しかったよ……。でもそれは友達としてなんだ。……それに、俺は凛に昼休みを利用して相談に乗ってもらっていた」

「……そ、相談?」

「ああ、花陽と凛は小さい頃からの幼馴染だろ?だから、凛なら花陽の事について色々知ってるし、花陽の好きな店とか物とか、そういうのを教えてもらってたんだ」

 

 そこでようやく、花陽はあの時の凛の言った言葉の違和感を理解した。

 

 

『えっ?そ、それは……あれだよ。か、かよちんは普段奥手だから、凛がこういうとこまでやってあげないとなーって思って……!』

 

 

 あれは、凛が拓哉が花陽の事を好きだからというのを気付かれないように言っていたのだ。そう聞いてみれば違和感はなくなる。

 

 

「だから、まあ、何だ。花陽のそれは勘違いだ。俺が好きなのは凛じゃなくて、花陽なんだよ。これだけは何がなんでも断言してやる」

 その言葉は、少女が最も欲していた言葉だった。今までの胸の苦しさは消え、悩みが消える。

 

「本当に……私で、いいんですか……?」

「当たり前だ。お前以外なんて考えられない」

「凛ちゃんみたいに、拓哉君をいつも笑顔にさせてあげられないかもしれませんよ……?」

「んなのどうだっていい。花陽の側にいられるなら、俺はいつだって本望だ」

 

 確かめ合う。互いを。それだけでよかった。花陽の瞳からは、徐々に悲しみではなく、喜びの涙が出てきていた。

 

「……良いんですよね。もう、拓哉君の事を、思いきり大好きって言っても……抱き付いても良いんですよね……」

「ああ……、その分俺も言ってやる。抱き締め返してやる。凛との事で悲しませてしまった分、思う存分花陽を愛してやる……」

 拓哉の言葉の終わりと同時に、花陽は一旦拓哉から離れたと思うと、素早く拓哉に抱き付いた。

 

 

「好き……大好きです……!!どうしようもないくらい、大好きなんです……!初めてできた大好きな人なんです。離れたくないんです……ッ!」

「離れねえよ。お前が離れようとしても俺が離れねえ。どんなにクサイ台詞だろうが言ってやる。俺はお前とこの先ずっと一緒にいたいんだ」

 

 言うだけ言った。その分気持ちも晴れた。それが関係しているのかしていないのかは定かではないが、いつの間にか、雨は止み、外では太陽の光がまるで2人を祝福しているかのような幻想をも感じさせた。

 

 

 

「……花陽」

「何ですか?」

「帰るか」

「はいっ!」

 

 お互いの気持ちを全部吐き出して、何もかもがスッキリした2人にシリアスな空気なんてものはもうない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雨も止んだし、どこか寄って帰るか」

「あの、じゃあ、拓哉君と行きたい場所があるんだけど……」

「おっ、どこだ?ああ言ったからにはどこにでも行ってやるぞ。拓哉さんは嘘は付かないからな」

 楽しそうに廊下を歩く2人を誰かが見れば、きっと誰もが同じ事を思うだろう。

 

 

 

 

 

「ご飯屋さんです!初めて実施するらしいんですけど、何と白ご飯だけ食べ放題というメニューが出来たそうなんです!」

「オーケー待つんだ花陽。1度考え直そう。仮にも付き合って2人で初めて行く店なんだ。白ご飯だけ食べ放題なとこじゃなくて、他にもっと良いとこ―――、」

「さあ行きましょうっ!」

「アッハイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ただ、そこにはもう、ありふれた男女のカップルが歩いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拓哉君」

「ん、何だ?」

「これが私が拓哉君を大好きって一番分からせるための証明ですっ」

 

 

 

 

 

 軽く、2人の口が重なる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ッ!?なっ、お、お前なあ……!」

「ふふっ……私だってたまには大胆にする時くらいあるんですっ」

 

 

 

 

 

 

 そんな事を言いながらも、顔は物凄く赤くなっていて、照れているのが一目で分かる花陽に、拓哉は怒る気力も失せて笑みが零れる。

 

 

 

 

 

 

 ふと、外に出ると同時に花陽が口を開いた。

 

 

 

 

 

「虹が出てますね……」

 まるで2人を迎え入れてくれるように、2つの虹が平行線のように重なっていた。

 

 

 

 

 言うなれば、それはレインボーロードだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?

見事に最後の個人誕を締めてくれましたね。
個人的には満足しております(笑)
これで全員の個人誕が終わった訳ですが、個人誕2周目に入る予定はございません。
ネタが出てこないというのもありますが、最近のリアルの忙しさを考えるとどうにも無理そうなのでw

前回も言いましたが、いつもやってきた本編週一更新も、リアルの都合のため、これからは週一更新できない事もありますので、ご了承くださいませ。


そして、一周年記念として同じラ!小説を執筆している薮椿さんの作品、『ラブライブ!~μ'sとの新たなる日常~』とコラボさせていただく事が前回も言いましたが決定いたしました!
読んでいる方が多数も思いますが、もしまだ読んでいらっしゃらない方がいれば、是非薮椿さんの作品を読みにいきましょう!
あわよくばご感想も書いちゃいましょう!それだけでやる気は超上がりますので!!

日程につきましては、まだ未定のままです。最新話を投稿する度に、決まった事を随時報告していく予定です。


いつもご感想高評価(☆9、☆10)ありがとうございます!


では、新たに高評価(☆9、☆10)をくださった、

STER.Nさん(☆9)、元SEALs隊員さん(☆10)

大変ありがとうございました!!

これからもご感想高評価お待ちしております!!

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