拓哉と幼馴染達の休日、気楽に見てやってください!
それと、投稿更新はいつも基本的に日曜か月曜を予定してますので、そこのところもよろしくです!
では、どうぞ。
インターホンが鳴り、玄関を出ると、目の前にはそれはそれはもうニンマリと可愛らしい笑顔をした女の子が3人いた。
というか完全に幼馴染の3人だった。
「……何しに来た」
ちなみに今日は日曜日。μ'sの練習もなく、休日はいつも昼前まで寝るという、俺のいつものお決まりを朝の10時に訪問してきて見事に粉砕してくれた分からず屋の幼馴染達へとジト目を送りながら問いかける。……あ、俺の中では休日の10時はまだ朝だから。
すると、何食わぬ顔で、笑顔を絶やさないまま、代表して茶髪のサイドテールの幼馴染が答えた。
「遊びに来たよ!!」
「帰れ」
邂逅1番、俺にとっては朝っぱらからの1対3の戦争が始まった。
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「勝ったっ!」
「不幸だ……」
見事に負けました。ドアを閉めようとしたらまるで刑事が足を挟んで閉まるのを妨害するかのように穂乃果に邪魔され、3人がかりでドアを強制的に開けようとしたのを俺と3人の力比べになり、寝起きというのもあって力が上手く出ない俺と均衡している時に、兵器は使われた。
『たっくん……おねがぁい……!』
まあ吹っ飛ばされたよね。何にかは分からないが、何故か吹っ飛ばされたね。おまけに吐血もしたね。ことりのアレは殺傷能力ありすぎじゃない?主に俺限定で。
そして俺がドアから離れたのも束の間何とも言えない速さで家に入ってきたお三方。まだ許可してないんですけど……。家の人に主に俺に許可貰ってから入りなさいよ!!
「あっ、穂乃果ちゃんことりちゃん海未ちゃんいらっしゃい!」
「唯ちゃん、お邪魔しまーす!」
「お邪魔しまぁーす♪」
「お邪魔します、唯」
ホントに邪魔してるよな。俺の睡眠を。もう入ってしまったからには仕方がないのでとりあえずリビングへと誘導する。するとテーブルには何故か出来立てと思われる料理が用意されていた。
「あれ、何で飯があるんだ?唯も今さっき起きたのか?」
「も~、お兄ちゃんと一緒にしないでよっ。お母さんは仕事に行ったし、私以外に玄関に出たのはお兄ちゃんしかいないでしょ?だから起きたのに気付いてお兄ちゃん用の朝ご飯を作っていたのです!」
おお、さすが我が妹。お兄ちゃんの事をよく理解してらっしゃる。タイミングも合わせて温かい飯を用意してくれるあたりやはり俺の妹は世界一だな。あと可愛い。嫁には絶対出さない。
「拓哉君、まさか今の今まで寝ていたのですか……」
「当たり前だろ。休日というのは休む日と書いて休日なんだ。だから休みの日は気が済むまで寝るのが俺の流儀だ。ホントならこのまま寝ようと思ってたけど、唯が俺のために作ってくれたご飯を無駄にする訳にはいかない。だから食べる。いただきます」
「前にもこんな話をした気がしますね……」
あれ、前にそんな話したっけ?最近色々あったから拓哉さんすっかり忘れちまったよ。どうでも良い事はすぐに忘れるタイプなんだ。
「じゃあとりあえずたくちゃんがご飯食べ終わるまで待ってよっか」
唯の作ってくれた卵焼きを食べる。うむ、俺好みの甘い卵焼きだ。やっぱ持つべき者は可愛くて出来た妹って訳よ。将来僕は唯と結婚しようかと思います。……あ、唯は妹だったわ。つうか、
「そういや何でお前らうちに来たんだよ。来るとか言ってなかったろ」
ズズズッと味噌汁を啜りながらソファに座っている穂乃果達に問う。もちろん、事前に来ると分かってたら俺も一応ちゃんと起きてた。……ホントダヨ?でも急に来たから目的が分からない。活動の事で何か急用でもできたのだろうか。
「さっきも言ったでしょ。遊びにきたの!」
「帰れ」
「返しが早いよ!それと嫌だよ!!」
ちっ、素直に従わないか。何で日曜に来るんだよ。いきなり遊びに来たとか言われても困るだけなんだが。拓哉さんは寝たいのです。あー唯の作ったご飯おいしっ。
「というより、何で遊びに来たんだよ。それも急に。約束もしてないし、あれか、唯と遊びたかったのか。そうかそうか、唯と存分に遊ぶがいい。俺は寝るわ」
「勝手に話を流さないでよー!たくちゃんと遊ぶために来たのー!!」
「えっ?俺と遊ぶために?何で?何を企んでる?ショッピングとかで俺をこき使うためか?それとも俺に全部奢らせようってのか……!?やだ、女の子って怖い!!」
「たっくんの中で女の子をどう捉えてるかよく分かんなくなってきたよ……」
大体の女の子は男子をATMだって思ってるとこの前ニュースで見た気がするけど、それを鵜呑みにしている訳ではないが、思い返せば俺は結構こいつらに奢らされてるような記憶がちらほらとする。
ファーストライブ終わってからのゲーセンで全部奢らされたりとか……あの時は財布がかわいそうになったなー……。やだ、ちょっと思い出しただけなのに白米がしょっぱく感じるよ。唯ちゃん白米に塩でもかけたのかな?
「その様子だと、本当に覚えてないようですね……」
目から生成される塩水を拭ってから海未を見ると、ほんの少しだけ呆れたような、それでいて少し寂しそうでありいじけているような表情をしていた。あれ、俺何か悪い事でもしたのか?
「覚えてないのたっくん?ファーストライブ前日の帰り道に私と海未ちゃんを途中まで送ってくれた頃の話だけど、休日にたっくんの家に行っていい?って言ったら良いって言ってくれたよ?」
言われて思い返してみる。……あー、何か、そんな事言ったような気がしなくもないな。思いっきり忘れてた。つうか逆によく覚えてたなこいつらも。翌日のファーストライブのせいで普通に空の彼方まで記憶がぶっ飛んでた。(※24話参照)
「よく覚えてたな。それにしても本当に穂乃果も一緒に来るとは思わなかったわ」
「なんか私だけ余計みたいな言い方してない?」
「偉いぞ穂乃果、よく分かったな」
「えへへ~褒められちゃっ……いやダメじゃん!!」
おお、ノリツッコミとはレベル上がったなこいつ。変に素直なのか単なるおバカなのか。いや、どっちもか。
「私も海未ちゃんもちゃんと覚えてたんだよ?あの後穂乃果ちゃんにも連絡していつ遊びに行こうかってなってたんだけど、ほら、色々あったからそんな余裕もなかったし……。でもオープンキャンパスも無事終わったから、行くなら今かなって」
「なるほどな。確かに色々あった」
ファーストライブが終わって、花陽、真姫、凛が新しく入り、にこさんとひと騒動あってにこさんも加入し、誰がリーダーになるかで色々やったり、赤点回避のために勉強したり、因縁だった絢瀬会長と真正面からぶつかって見事絢瀬会長も東條もμ'sに入ってようやく、μ'sは完成となった。
本当、色々あったもんだ。
でもその全てが無意味なものではなかった。ちゃんとそれぞれに意味があって、だからこそ今の形になる事ができた。それに、その形になるまでに、穂乃果達は努力を怠らなかった。多少の文句はあっても、最後にはそれらをやり遂げていた。
決して口には出さないが、俺もこいつらの努力を傍で見てきた。だからもう、こいつらは立派なスクールアイドルであり、μ'sであり、認められる存在だという事だ。……こいつら自身も、ちゃんと成長してるって事だな。
ファーストライブも終わり、μ'sが揃い、オープンキャンパスも成功した。当初から頑張ってきたこいつらに俺が何かしてやれる事、それは、こいつらの願いを聞いてやる事が1番って訳か。
―――じゃあ、たまには付き合ってやるか。
残り少ないご飯をかっ込み、ごちそうさまと軽く言ってから穂乃果達に言い放つ。
「んじゃ、今日はとことん遊ぶかっ!!」
俺の言葉に、3人の顔は瞬く間に明るくなる。
まあ、寝起きにこいつらの笑顔が見れりゃ、たまには早起きも悪くはないなと思う。……もう11時になるけどね。
――――――――――――――
「で、何すんの」
俺の部屋に来て、最初に放った一言がそれだった。
「ほえ~、たくちゃんの部屋何年振りだろ!探索探索ー!!」
「おいこらバカやめなさい無意味な詮索はするんじゃありません何もないぞ」
「そう言う人に限って何かあるんだよねー」
いやホントに何もないんだが。というか何を探そうとしてるんだよ。いかがわしい本はないから期待はするな。穂乃果が何を期待してるのかは知らんが。
「……どうですか、穂乃果」
「何かあった?穂乃果ちゃん……」
「今のところ女の子が来た形跡はないね。たくちゃんの事だから心配してたけど、安心できそうかも……」
「何をコソコソと話してんだお前ら。勝手に人の部屋でわちゃわちゃしやがって」
女の子がどうとか聞こえたけど、一体何を言っているのやら。俺の部屋に来るのは精々唯くらいしかいないぞ、悲しい事に。実に悲しい事にな!ふええっ……。
「まあいいや。じゃあゲームでもしよっか!」
「つっても、何のゲームだよ。いつも俺1人だからパーティー用のゲームなんか持ってないぞ俺。2人用ならあるけど」
「ちなみに2人用のなら何があるの?」
「シューティングゲーム」
「うわぁ……男の子だね……」
「俺は男だよ!!男ならシューティングゲームだろ!!」
何でシューティングゲーム持ってるってだけで引かれないといけないんだ。音とか爽快感あっていいだろ。全年齢版という大変優しいゲームなんだぞ。最近やってないけどね。……いや、ほら、色々あったし?
「まあいっか。じゃあ交代制でやろうよ!」
「結局やんのかい」
どっちだよ。やるんだったら最初に引かないでくれる?拓哉さんあれで内心結構ヒビ入ったからね?海未とことりにまで言われてたら軽く家出しようかと思ったよ。帰りにパーティーゲーム買ってくる特典付きで。
とまあ、そんなこんなで交代制でシューティングゲームをやる事になった。
ホントに俺の家に来てまでやる必要あったのか?
「せっかくだから負けた方は勝った方の言う事を何でも聞くってのやらない?」
「おい、それだと経験者の俺張り切って全勝しちゃ……圧勝してしまって不公平になるんじゃないのか?」
あっぶねえ……思わず欲に忠実になりかけた。ん?今何でも聞くって言ったよね?とか言いそうになった。
「そうですよ。それじゃ拓哉君の1人勝ちになって私達全員が汚されますよ」
「ねえちょっと?今あなたとてつもなく遠回しに俺の事ケダモノって言ってない?」
「すいません、間違えました。拓哉君はケダモノです」
「直球になっただけじゃねえか……」
本格的に家出しそう。私実家に帰ります!!……ここが実家だったわ、世も末だな。
「海未ちゃん、そんな事言っちゃダメだよぉ。たっくんはケダモノさんなんかじゃないよ、ね?たっくん」
「あたぼうよ。俺がケダモノだったら速攻彼女作って部屋で健全に遊んでるわ」
「「「それは許せない」」」
「えっ」
何この子達、何言うか事前に打ち合わせでもしてんの?つか健全に部屋で女の子と遊ぶのもダメなの?俺は一体何に縛られてんの?疑問形が止まらないんだよ?
「それだったら今の俺は女の子達と健全に部屋で遊んでいる状態なんだが、これについてはどう思うかね」
「「「私達“は”いいんですっ!」」」
「いやそれはどうなのよ」
ジャイアンもびっくりの自己中的思考じゃねえか。まあいいけどさ。どうせこいつら以外に女の子との出会いなんかないしー!!悲しくなんてないしー!!
「……はあ、出会いが欲しい……」
「「「フンッ!!」」」
「ごべばうっ!?痛ってえ!いきなり何しやがるんだ己らはあ!!」
ちょっと呟いただけなのに穂乃果に顔面、海未に溝、ことりに腹を同時に殴られた。ちくしょう、だから何の打ち合わせしてきたんだこいつらは!普通に大ダメージだわ!
「たくちゃんが悪い」
「ですね」
「うんうんっ」
「え、何これ、俺が悪いの?何か変な事言ったの?ただ普通の男子高校生の悲しみの呟きをしただけなのに―――分かった、分かったから!もう言わないから再び拳を構えないでくんない!?」
何とか拳を引っ込めてくれた。幼馴染達が怖い今日この頃であります。他のμ'sがもし俺の家に来る場合はどうなるのか気になるところではあるが、今は聞くのやめとこう。拓哉さんも命が惜しいんです。
「で、結局どうすんだよ。その、負けたら何でも聞くっての、やるのか?」
「そだね、せっかくだしやろっか」
「ちょ、本当にやるのですか……?せめて拓哉君には何かハンデを……」
「海未ちゃん、もしかして負けるのが怖いの?」
「あ、おい」
バッカお前、そんな事言ったが最後だぞお前、どうなっても知らないぞお前。拓哉さんは関係ないからねお前。……何回お前って言うんだよ。
「……ほう?穂乃果は自信ありそうですねえ?いいでしょう、分かりました。そこまで言うなら私も引く訳にはいきません。さあ拓哉君!ハンデなんてものはいりません!全力を以て私の相手をしてください!!」
―――――――――――――――
「何で勝てないのですか……ッ!!」
「……いや、君初心者、俺経験者だからね?一応言っておくとこれが普通だからね?」
「そんな……初めての人でも簡単にできるって説明書に書いてあるじゃないですか!なら初心者の私でも拓哉君に勝てるはずなのです!なのに何故……」
「その、だから、これでもやり込んでる方だから俺。そう簡単には負けないからね。何で全力でこいなんて言ってきたんだよ……」
ちょっとやだ、本気で悔しんでるんだけどこの子。膝から崩れ落ちたようなポーズになってんだけど。本気で俺に勝てるとか思ってたのか。
「……まあ、なんだ。最初だし、今のは慣らすための練習って事で、罰はなしでいいだろ」
「だねー。私とことりちゃんも軽くやってみんなでたくちゃんに挑戦しよう!!」
「ん?何で3人が俺に勝とうとしてんだよ。バラバラにやるんじゃないのか?」
「そうも思ったんだけど、やっぱりたくちゃん強いから、私達で交代しながらたくちゃんに挑もうって思って!」
「言っとくが問答無用で蹴散らすぞ」
だって勝者は敗者に“何でも言う事を聞く”という絶対的な権限を持てるんだからな!これは何としても勝つしかないだろう。……勘違いしないでほしいが、別にこいつらに変な事させようとかそういうのは思っちゃいないからな。……ホントダヨ?
……海未はいつまで落ち込んでるんだよ。
―――――――――――――――
「やったぁー!!たっくんに勝っちゃったー!」
「なん……だと……!?」
慣らしが終わり、いざ初戦で一発華麗に勝とうと思ってたのに……ことりに負けた……だと……!?ちょっとヤバイと思って本気でやったのに普通に負けた。こっぴどく負けた。何でこんなに強いんだよことり。
って、あれ?となるとこれは……、
「……という訳でぇ~♪たっくんには私の言う事を“何でも”聞いてもらいまぁ~す!」
「おお、たくちゃんがさっきの海未ちゃんみたいに膝から崩れ落ちたっ!」
終わった……俺は一体ことりにどれだけ高価な物を買わされるのだろうか……。せめて俺の財布に優しい値段のにして!!
「じゃあたっくん、私の頭を撫でてください♪」
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「はい?」
「何でも言う事聞いてくれるんでしょ?だからぁ、私を撫でてください♪」
「……いや、俺的には非常にありがたいけど、“そんな事”でいいのか?」
「だってまだ一戦目だし、次にまた勝てば次のお願いを聞いてもらえるしね♪」
「ああ、そういう……」
ちくしょう、やっぱそういう事だろうと思ったよ。そう簡単には安全ルートにはいけないってな!次は絶対に勝ってやる……。そしてメイド姿にでもなってくれってお願いでもしてやろうか。
「ふぁ……、えへふぇ……♪」
ことりの頭を撫でながら考える。うん、そうだな。ことりならメイド姿似合いそうだし、それでいいか。メイド服はどこかで俺が調達するしかないけど、マイラブリーエンジェルのメイド姿が見れるのなら安いもんだ。
「いいなぁことりちゃん……たくちゃん!早く私ともやろうよ!!」
「……え?ああ、そうだな、やるか」
ことりの頭から手を離し、コントローラーを持つ。ふん、穂乃果なら軽く勝てるわ。フルボッコにして罰ゲームは3回クルッと回ってワンッて言ってもらうか。恥ずかしがる穂乃果を見て大爆笑してやる。
「あっ……もう終わり……むぅ……」
ことりが何故か残念そうにしていたが、頭くらいならいつでも撫でてやるんだけどな。
―――――――――――――――
「わったしの勝ちぃーー!!」
「嘘……だろ……!?」
何で、何で俺が穂乃果にまで負けるんだ……!?確かにもう負けないために最初から本気でいったはずなのに……!あいつらのどこにそんな実力があるってんだ……。
「絶対にたくちゃんに言う事聞かせるんだからって思ってたら勝てちゃった!!」
「そんなにしてまで俺をめちゃくちゃにしたいのか……」
勝ちへの執着心凄すぎだろ。俺よりも強いとかどうかしてるぞ。一体何をさせるつもりなんだ。さっき本気で殴ってきただろ。また俺を殴ろうとでも思ってんのか?
「ではたくちゃん、今から20秒動いちゃダメだからねっ!」
「え?お、おう……」
これはヤバい。動いちゃダメな命令系のやつは大概くすぐってきたり気が済むまでビンタをしてくるのが普通だ。だからほら、今も穂乃果は俺に優しく抱き付いてそのまま動かな―――、
「……あの、穂乃果さん?一体全体何をしてらっしゃるんでせうか……?」
「んー?見た通り、たくちゃんにくっついてるんだよー」
「いや、それくっついてるというより抱き付いて……やっぱ何でもない……」
なるほど、これは確かに罰ゲームだ。俺は棒立ちのまま動けないし、言ってしまえば穂乃果に為されるがまま、こんな状態をことりや海未に見られてるのに引きはがす事もできやしない。穂乃果め、とんでもない罰ゲームを与えてきやがったな。
……というよりも、俺が恥ずかしすぎて気が気じゃないんだが……!何で穂乃果は平然といられるんだよ!幼馴染だから恥ずかしくないとかか!?あいにく拓哉さんは純情少年なので幼馴染でも普通に意識してしまうのでありますのよ!!
まず可愛い幼馴染というのがいる時点で意識はしてしまうけどな!!何でこいつらは自分達が魅力的な女の子だって自覚がないんだよ。最近はスクールアイドルもやってるからか余計可愛く見えてくるし魅力的にもなってきた。
つまり、余計意識してしまう自分がいましてですね、殴ってやりたい。……まだか20秒!!どんだけ長いんだよ!!時が止まってるんじゃないのか!?どこかでザ・ワールドでも使ってんじゃないのか!?
「私たくちゃんの匂い大好きなんだぁ~……」
「お、おう……」
穂乃果の不意な言葉に思わず赤面してしまう。いきなり何言ってんだこいつ……。女の子が軽々しくそんな事言っちゃいけません。俺だから大丈夫なものの、他の男子ならコロッと勘違いして落ちちゃうから。
「穂乃果、もう20秒経ちましたよ!」
海未の声が部屋に響く。それと同時に穂乃果は少し惜しそうに俺から離れた。
「むぅ~……もう20秒かぁ。もっと長く設定すれば良かったな~」
やめろ。それは俺が色々と持たないから。穂乃果が俺の匂いがどうとか言ってたけど、抱き付かれてる時は穂乃果の頭が丁度下にあったせいか、女の子特有の甘い香りがした。純情少年には刺激が強いと思います。
「……では拓哉君、次は私です。拓哉君の戦い方は大体把握しました。これでもう負けません!!」
「こっちも二戦やって負けてるからな。手加減は無用でいかせてもらおうか!!」
―――――――――――――――
「ぐすっ……ひっく……っ」
「いや、その、あのですね?わたくしめも二敗してたんでそろそろホントに勝たないとなーって思ってたんですよ。しかも初心者のことりと穂乃果に負けたし、だからもしかしたら海未にも負けちゃうかもなーって思ってですね?……うん、何かホントにすいませんでした」
さっきまでの勝負は何だったのか。それが似合うほどの俺の圧勝だった。というか1度もダメージを喰らわずに勝ったから完勝だった。対して海未は相当のショックを受けたせいか軽く泣いてしまっている。……え、俺が悪いの?
「たくちゃん、さすがに海未ちゃん泣かすのはダメだよ……」
「よしよし、海未ちゃん、大丈夫大丈夫。たっくんが意地悪なのがいけないもんねぇ」
「ちょっと?いかにも俺が悪者みたいな言い方やめてくんない?俺だって勝ちたいんだよ!初心者に二敗したらそりゃ勝ちたくもなるでしょうよ!そしたら何か完勝しちゃったけど、これ勝負だからね!?俺何も悪くないからね!?」
穂乃果と同じように本気でやったら普通に勝ってしまった。それはもう傍から見ればフルボッコもいいとこだった。だって海未が俺の戦い方は把握したって言うから、本気でやらないと勝てないと思ったし……。
すると海未はあまりのショックに泣いてしまった。何故だろう。俺は悪くないのにもの凄く罪悪感が凄いと感じてしまうのは。これって理不尽じゃないかな……。でも海未をこのまま放っておくわけにもいかないし。仕方ねえな……。
「あー!そういや今海未が使ってたコントローラーさっきと違うやつじゃねえか!だから調子悪かったのか!!」
「ひっく……え……?」
「きっとそうだよ!そうに違いない!そりゃ初心者だから違うコントローラーだとやりにくいわな!これは俺が悪かった!今の勝負はなしだわ!!もっかいやるしかないなこれは!!」
少し形が違うコントローラーでよかった……。これなら初心者の海未も納得するはずだ。違うコントローラーだからさっきの実力が出せなかったんだとな。
「いや、でもこれは操作はいっ―――、」
「んじゃ俺とコントローラー変えてもう一戦だ海未!次も負けねえからな!!」
「海未ちゃん!次は勝てるよ!!勝ってたくちゃんにお願いを聞いてもらえばいいんだよ!例えば私への日頃の鬱憤をたくちゃんを殴って晴らすとか!」
「おいコラ何物騒な事言っちゃってんの?ゲームじゃなくてそれ本当に俺死んじゃうからね?」
とはいえ、すぐさまフォローしてくれた穂乃果にアイコンタクトで礼を言う。穂乃果もウインクで返してきた。ことりも親指を突き立ててるって事は俺の演技が分かってるって事か。
「…………」
「さあやるぞ、海未!」
コントローラーを凝視している海未を無視して、俺もコントローラーを手に取る。
かくして、俺の見事な接待プレイが始まった。
―――――――――――――――
「勝った……。勝ちましたよ!穂乃果!ことり!」
「また負けちまったか」
と言ってもわざとだけどな。良い感じの接戦を演じて、見事に俺が負けてしまった。そういう風な流れにするように俺がしてやったというわけだ。海未は気付いてないんだろうけどな。
「やったね海未ちゃん!」
「私達の大勝利だね!」
海未も勝てたのがよほど嬉しかったのか、穂乃果とことりと一緒にはしゃいでいる。穂乃果もことりも俺と同じ共犯者なんだけど。……まあ、海未も満足できたようで何よりだ。
「じゃあ海未ちゃん。たくちゃんは“何でも”言う事を聞いてくれるから、何でも言っちゃって!!」
……覚悟しないとなー。日頃の鬱憤でも晴らそうと俺を殴るってんなら、それも受けよう。それで海未の気が済むなら、体がボロボロになっても構いやしないさ。入院はできれば勘弁したいけど。
「…………」
静かに海未は俺の側に近寄ってきた。さて、一発目は顔面かな。歯を食いしばっとかないと。さあ来い!!
「で、では……拓哉君が暇な時でいいので、私とで、デー……買い物に付き合ってください……!」
ん?
「……い、今何と……?」
思いっきり歯を食いしばってたからよく聞こえなかった。とりあえず殴られるわけではないようだけど、買い物?
「……だから、拓哉君の暇な時に、わ、私の買い物に付き合ってください……」
「…………」
思考が一瞬停止する。そしてまた動き出す。えっと、これは、つまり……。
「なるほど、荷物持ちか」
「……え?」
「いや、だから、買い物に付き合ってくれって、つまりは男である俺は荷物持ち担当だろ?」
何故だろうか。俺の部屋の空気が凍ったような気がした。
「さすがたくちゃんだね……」
「もはや称賛したいよたっくん……」
「あれ、褒められてるはずなのに何でそんな呆れた顔してんの?おかしくない?」
穂乃果は額に手をやり、ことりは苦笑い、ふむ、これは褒められてませんね。むしろ本気で呆れられてますね。解せぬ。
すると海未の口がようやく開く。
「そ、そうです!拓哉君には荷物持ちをしてもらいます!!“何でも”言う事を聞くんですから拒否権はありませんからね!!」
やっぱりそうか。大概女の子が買い物に付き合ってって言うと男は荷物持ち確定なのだ。これ世の常識だから。だから男は諦めた方がいい。女の子の機嫌を保ちたいならな。
「……分かったよ。付き合えばいいんだろ付き合えば」
「……ふふっ、そうです、付き合ってくれればいいんです♪」
納得してやればすぐこんな笑顔になる。だから女の子ってのはズルいんだよな……。まあ、それで納得してしまう俺も相当だけど。ちょろいとか言うな。でも、こいつらの笑顔が見れるんなら、たまにはこんな休日も悪くないかな……。
「いつ行くかは海未が決めておいていいからな。俺はちょっとトイレ行って来る」
そう言って部屋を出る。だから俺には聞こえなかった。
「コントローラーがどうとか、わざわざ私のために演技までしてくれて、ありがとうございます。拓哉君……」
海未の微かなお礼の言葉が。
さて、いかがでしょうか。
たまにはこういうお話があってもいいかなと(笑)
これからも日常回を時々挟んでいこうかと思っているので、その時は付き合ってやってくださいw
いつもご感想評価ありがとうございます+いつでもご感想評価お待ちしておりますホント!!
では、新たに高評価をくれた、
bocchiさん(☆9)、タカなすびさん(☆8)
本当にありがとうございます!!これからもどしどし高評価(9、10)待ってます!!